陽の昇りたる異界、星落とされたる覇者   作:C6N2

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毎度感想・誤字報告ありがとうございます。

ミリシアルをミシリアルって書いちゃうの、日本国召喚あるあるだと思うのは自分だけですかね?

そして、遅々として筆が進まない・・・・。まだ戦争が始まっているわけでもないのにこんな高評価を頂けているので、それに応えたい応えたいと思ってはいるんです。想像力を働かせねば。


第五話 不可侵条約

「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。」

 

日本全国のラジオに、その放送が流れる。

 

「帝国外務省、十二月八日午前六時発表。

大日本帝国は本八日未明、アメリカ合衆国と相互不可侵条約を締結せり。」

 

歴史が変わったことを象徴する瞬間であった。

 

 

 

 

「やったぞ!これで日本は救われた!」

 

外務大臣の東郷は果報を耳にして手放しで喜んだ。

 

異世界に転移するという現象は、両国の同盟国を一瞬にして失わせるという結果を生んだ。

そのためアメリカは日本側が変な要求をしてこなければ、同盟はともかく不可侵条約の締結は満更でもない。

そして日本では、不可侵条約の締結は天命となっていた。さらに首相は、上司たる天皇の命令なら何がなんでも実行する東條英機だ。

両国がたった一週間半で合意に達するのも、当然といえた。

 

「ロデニウス大陸の2国とも上手く話がまとまった。あの外交官は、異世界の国々との外交の取りまとめ役となっても充分なほどの活躍をしている。」

 

確か名前は香谷といったか。うるさいきらいはあるが、今回は昇格させても問題ないだろう。

 

「我々は歴史に名を残しますよ。転移という事象があったとはいえ、アメリカと不可侵条約を結んだのですから」

 

外務次官の西春も少々浮かれ気味だ。まあ当然だろう。それほどまでに今回の成果は大きい。

国内の不況は・・・アメリカもいるため思うようにはできないだろうが、ロデニウス大陸の開発で何とかできると思いたい。

 

「ただ、ひとつ心配なのは・・・クワ・トイネからの情報ですが、この世界にはクワ・トイネより高い魔法技術を持った国があり、そうした国は軒並みプライドが高いということですね。

もし戦争になったら、アメリカを巻き込まないとやってられません。そいつらが馬鹿ならアメリカも否応なく巻き込まれるでしょうが・・・」

 

「まあ、それは今考えても仕方あるまい?とりあえず、ひと段落着いたのだ。」

 

「そうですね。」

 

2人は満足気に頷いた。

 

 

 

 

 

 

「これでひとまず、国防上の重大な危機は去った。」

 

フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、ホワイトハウスにて満足げに言葉を発した。

 

「クイラ資源地帯を奪取されるという事態は避けられましたね。にしても連中、急に大幅な譲歩をするようになりましたが・・・何かあったのでしょうか?」

 

会話の相手は副大統領のヘンリー・A・ウォレスである。

 

天皇(Emperor)の命令でもあったのではないか?日本は少なくとも形式上は天皇に主権があるから、その天皇が例えばわれわれとの不可侵条約の締結を命じたら政府も迅速に対応するだろう。」

 

「なるほど。」

 

イギリスからの参戦要求が物理的に消滅した今、日本との不可侵条約の締結には一切何の問題もなかった。もともとの目的としていた満州についてはさすがに拒否されたものの、フロンティアたるロデニウスの門戸開放を相手側が大幅譲歩してくれたのだから、もはや同盟を結ぶのも吝かではないレベルだ。

地球世界での同盟国はすべて消滅しており、異世界では何がやってくるかわからない。今のところ、日本はまともな国家同士の付き合いができる唯一の国であった。関係を強固にしておいて損はない。

だが────

 

「にしても、まさかあの日本を盟友とすることになるとは。調子に乗らせると何が起こるかわかったもんじゃないですし、あくまで向こうは黄色人種の国ですからね。」

 

人種という、極めてデリケートな問題が横たわっている。

 

「日本人を黄色い猿と罵るのはけっこうだが、今のわが国には同盟国が必要だ。それにロデニウス大陸では、エルフやドワーフといった亜人なるものが存在している。つい先ほどの使節団からの情報によれば、クイラやクワ・トイネと国境を接するロウリア王国では亜人迫害の風潮がはびこっているらしいではないか。使節団に対する応対もあまり良いものではないとの情報もある。いずれロウリアとクワ・トイネやクイラは戦争になるだろうが、その時亜人に対する人種差別への対抗という大義名分を掲げて参戦するためには、我々もそういったところは気を付けなければならない」

 

将来のことを見据えたルーズベルトの発言に、ヘンリーは感嘆したが────

 

 

 

彼とて、まさかそれが数か月内に起こるとは想定だにしていなかった。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

さらに3ヶ月ほど後───

 

「いくら転移国家と言っても、これはさすがに凄すぎやしないか・・・?」

 

クワ・トイネ王国の首相カナタは、自国の急激な発展ぶりに、ただただアメリカと日本に感嘆するばかりだった。

 

「そうですね。特にアメリカの製品には目を見張るものがあります」

 

秘書のフロウアが答える。

日本の製品はいかにも職人技といった感じのものが多いが、アメリカ商品は画一的で個性がない。

しかしそれは全くもって短所ではなく、むしろ堂々たる長所なのである。

細かな部品ひとつひとつまで統一され、たとえどれかひとつが壊れても部品さえあればすぐに元に戻せる。

あれだけ大量に生産できているのも、そういった統一──規格化、というらしい──のおかげなのだろう。

ひとまずマイハーク港の浚渫・拡張工事も大詰めを迎えている。たったの3ヶ月で工事をほぼ完了させ、しかもそれを待たずに続々と色々な物品が運び込まれ売られている。交通網や上下水道の整備も着々と進んでいる。

 

「いったいあの国は、どれだけ我が国の開発に本気を出しているのだ…?」

 

「我が国が豊かになれば、その分アメリカや日本との取引も増えます。向こうとしてはそれを狙っているのでしょう。」

 

「我が国の主要輸出品目である食料は高い関税をかけられてしまっている。どうにかしてこちらからまともに輸出できるものを見出さねば」

 

「そうは言っても、向こうとこちらでは文明のレベルが違いますから、輸出できるとしたら我が国で育てることによって生まれる美味しい作物ぐらいのものでしょう。関税がかかっていてもなお売れる、というようなことがあればいいのですが…

ともあれ、今は向こうの技術を吸収して、国力の増大を図るよりほかありません。」

 

「・・・そうだな。」

 

いつかは向こうに輸出できるほどの産業が生まれて欲しい、と願うカナタであった。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「設営隊の奴ら、ずいぶんと張り切ったな・・・」

 

台南空所属の太田敏夫二飛曹は、眼下の滑走路を見て呟いた。

 

アメリカとともにクワ・トイネとクイラに軍を駐屯させることとなり、相手よりも早く基地を完成させてやる、と一種の競争のような状態になった。

隣で重機を用いてどんどん作業を進める米軍建設部隊を尻目に──設営隊長は機械化の重要性を痛感した──必死に鶴嘴(つるはし)(もっこ)を担いで作業し、米軍よりも遅く、小規模ではあったものの、何とか二か月半で滑走路を完成させたのである。

 

そうしてできたマイ・ハーク飛行場に、早速太田ら台南海軍航空隊の人員のうち一部が進出したのである。

 

「にしても・・・」

 

太田は、進出したすぐ後にある任務に緊張していた。

 

「アメさんと模擬空戦か。どうなる事やら・・・」

 

つい先日まで敵と想定していた国の飛行機と模擬空戦をやるとは、お上も妙なことを考えたものである。少なくともやる側からしたら緊張して仕方がない。

 

「まあ、深く考えずに、いつも通りやればいいか。」

 

相手の機種が違うこと以外は、普段の模擬空戦と変わりない。肩の力を抜こうと、太田は自己暗示をかけた。

 

 

──────────────────────

 

「それにしても、なんでジャップと模擬空戦をやることになったんだ?」

 

トマス・A・モーリー少尉は、突然与えられた任務に困惑していた。

 

「なんでも、不可侵条約締結に伴う日米親善の一環だそうだ。クワ・トイネの連中も見に来るらしいぞ。」

 

「条約を結んだところで我々の感情はそう変化するものでもないんだがな・・・」

 

アメリカでの日本人移民排斥運動はまだ衰えていない。19世紀末には早くも中国人排斥法が制定されていたため、今や「黄禍」と言えば「日禍」である。

彼は農家の生まれであり、親が日本人移民と度々軋轢を起こすのを見てきた。そのため日本人に対して、同情はすれどあまりいい感情は抱いていない。

 

「まあ、いいじゃないか?普段の訓練とくらべたら、いい刺激になると思うぞ。ただしくれぐれも侮るなよ」

 

話している相手はトッド・E・ネイラー少尉である。積極的な人種差別をあまり支持していないため奇人と見なされあまり関係の深いものは多くないが、善人という印象が大きい。「侮るなよ」というのも、有色人種の肩を持つためというよりは単に気を抜くなという意味だろう。

 

「そうだな。くれぐれも負けないようにしたい」

 

「おいおい、そんなこと言ってると負けるかもしれないぞ・・・」

 

などと雑談しながら、合同訓練の始まる時間まで待った。

 

 

 

──────────────────────

 

輪止めが払われ、機体が動き出す。零戦の離陸動作ももう慣れたものだ。

防弾性能に不安はあるものの、ここまで格闘戦の能力が高い機体は、アメリカであってもそうそうないのではないか。少なくともこの軽快な運動性能は、パイロットからすれば非常に扱いやすい。

何よりこの機体は美しい。隣の飛行場にある米軍のそれと比べても、零戦はかなり精悍な機体のように思えた。

そんなことを考えながら機体を上昇させる。

 

「見えたな」

 

米軍飛行場から上がってきたグラマンを見つけ、機首を巡らせる。

 

「気を抜くなよ────」

 

自分にそう言い聞かせ、米軍機に近づいていく。

 

反航状態に入ってすぐに旋回をかける。敵機も同じことを考えていたようで旋回したが少々旋回半径が大きい。隙をついて後ろをとりにいく。

 

あっけなく勝負がつくかと思ったがさすがにそうはいかない。敵機が宙返りをかけてきた。こちらも旋回しながら高度を上げ、宙返りから戻った敵機の上から降下する。

 

敵機も逃げようと急降下する。零戦の最大の弱点は急降下時の許容速度の低さだが、ここは機体をなだめすかして追随するほかない。

 

左右に首を振って自機を振り切ろうとしてくるが、零戦の運動性能から逃れることは不可能だ。

しかしそろそろ機体が悲鳴をあげている。仕方なしに機首を上げ、いったん高度をとる。所謂ハイヨーヨーだ。高度を速度に変換して敵機へと向かう。

 

敵機はインメンマル旋回を試みたが、その隙をついて完全に後ろをとった。

 

 

「思っていたよりもすぐに終わったな」

 

やはり零戦の格闘性能は非常に高い──そのことを実感した。

 

 

 

 

「なんなんだこの化け物は!?」

 

モーリー少尉は今までに経験したことのない恐怖に直面していた。

 

どうやら敵機はわがF4Fよりも旋回半径が短いようで、最初の旋回の時点で既に後方に入られかけていた。

宙返りや急降下で必死に逃げたがそれも虚しく、敵機は既に自機の真後ろにいる。急降下性能が少し悪いようだが、先程はその弱点を高い運動性でカバーされてしまった。

 

「あの機体とドッグファイトをしてはならない・・・」

 

彼の思いはその一言に集約されていた。

 

 

 

──────────────────────

 

「いやあ、見事な戦いだったな」

 

同僚から声をかけられた。マールパティマはワイバーン乗りであるために今回の訓練を見学することになり、つい先程まで飛行機械たちの熾烈な空戦を目の当たりにしていた。

 

「そうだな。・・・なんだか自分も、あれに乗って戦ってみたくなってきた。」

 

「確かそろそろ港の工事が終わって、アメリカや日本からの軍事支援が本格化するはずだぞ。飛行機械の部隊も作られるだろうから、そこに入ることならできるんじゃないかな。ところで、お前はどっちの機械が好みだ?」

 

「そりゃあ、赤丸の方だろう。なんと言っても形がいい。星マークの方はちょっとずんぐりむっくりって感じがしてな。そういえばあの赤丸の機械、俺が北東の偵察に出た時に見たって言った飛行機械と同じように見えるぞ」

 

「あの時速400キロ超えって言ってたヤツか?ならあの性能も納得だな。宙返りに急降下に、果たしてワイバーンにあんな動きができるのかね…

というかいい加減国の名前覚えようぜ。赤丸の方は日本、星のほうはアメリカだ。」

 

「悪い悪い、物覚えが良くないのはいつものことだろ?

・・・少なくともあの機械たちがいれば、ロウリアに攻められても大丈夫だろうな。」

 

まあ、本当は攻めてこないで欲しいものだが…と、淡い願望をいだくマールパティマであった。

 

 

──────────────────────

 

なんてこった(Oh, my God)...」

 

リーロイ・グラマンは舞い込んだ凶報に頭を抱えていた。

 

クワ・トイネ公国の経済都市マイ・ハークで行われた日本海軍航空隊との空戦演習。

はっきり言って甘くみていた。負けるはずがないというのがアメリカ側の結果予想の大半を占めていた。

 

 

しかし、結果は・・・惨敗。日本海軍の零式艦上戦闘機(ZeroFighter)の運動性はとてつもなく高く、我が方のF4Fワイルドキャットは次々に後ろを取られ敗退した。

ただ、救いがない訳では無い。急降下性能においてはこちらが勝る、すなわち・・・

 

「・・・一撃離脱戦法にかけるよりあるまい。F6Fの設計にも反映しておかねば」

 

次期戦闘機F4Uの保険として開発が進められているF6Fは、あくまでF4Fの流れを汲む戦闘機である。そのためこのままでは、採用されても格闘戦において零戦と互角以下になる可能性があった。

 

米軍は史実同様、一撃離脱戦法の研究を深めていくこととなる。

 

 

 

 




いやあ、無事に不可侵条約締結できましたがこれが東郷じゃなくて松岡だったらと思うと・・・恐ろしい恐ろしい。

空戦の描写は・・・素人が書けばこんなものか、程度に思っておいてください(ぉ
いやほんと、どうやったら上手く書けるんだろうか



次回:序章最終話
『叭波瑠散亜』




──この物語はフィクションであり、実在するいかなる人物、団体、国家、歴史とも無関係です。
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