Fate / Way of Last Faith 作:兵藤影虎
第二話「祝福を与える少女—妖精は誰を愛するのか」
素敵で、素敵で、優雅な一瞬。夢中になれて、才能あふれて、何でもできる無敵な時間。私はそういう人を眺めるのが好きだったし、才能持つ人がすごいなって思ってた。
だけど、私自身は何もできない。ちょっと人よりすごいだけ。彼女の力も借りてやっと少し何とかなるだけ。
それでも、やっぱり思うんだ。人間って努力と報酬があれば、何でも出来るんじゃないかって。
私はそういう人間の可能性を信じたいなって思うのでした。だから、今日は誰を愛そうかな?
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「~♪」
「(まさかもう顔を合わせてしまうとは…どうするかな)」
不思議なデザインをした空色のドレスを身に纏う少女が、鼻歌を口ずさみながら街中を歩く。そんな少女の様子を、脇道の影に隠れながらうかがう青年が一人。
青年の名前は流川春。聖杯戦争に参加しているマスターの一人である。
「多分、もう始まったってことなんだろうなぁ…お友達にお話しするのも早めにした方が良いかも…とりあえず、お友達にお手紙送らなきゃ。」
独り言だろうか。少女はぶつぶつ呟きながら手帳を取り出し、何かを書き始める。
「なんか立ち止まって書き始めてる…どうします、ジェーンさん?」
「飯食いに行こうぜ。あの桃色頭誘って。」
「な、なるほど…?」
建物の影から少女の様子を伺う春は、自分の背後にいる男、ジェーン・ドゥに質問を投げかけた。
それに対し気軽に答えるジェーンは、特に気負うことなく少女に向かって歩き出す。その気軽さに一瞬あっけにとられるも、離れるほうが危険と察した春はジェーンの後をついていく。
「どうか、遊びに来てください…と。ん?なんか気配…?」
「へいよーぐっつすっす」
「こんばんはー。なかなか聞きなれない挨拶だけど、なにか用かなー?」
少女は手帳を閉じて振り向く。ジェーンが挨拶し少女もそれに応えるが、それにしてもこの傭兵はノリが軽い。
「一緒に飯食いにいかない?いい場所知ってるんだけど…この坊ちゃんが」
「俺かよ!?まぁ知らないこともないけど…それなりに満足できるとは思うよ?」
「おー!これがナンパってやつだね!?」
平常心平常心、とつぶやきながらジェーンの無茶ぶりに答える春。対する少女は人生初のナンパにやや興奮気味のようであった。
「うんうん、行く行く!お礼は…そうだなぁ。体でどう?」
「は…?」
「あ、別に春を売るとかじゃないよ?そうだなぁ…」
唐突に爆弾発言を投下しながら、どこか妖しい光を宿した目で春とジェーンを見つめる少女。
「そっちのパートナーさんを動きやすくしてあげる。だって、私にそんな優しく声かけて来たってことはそういう事でしょ?」
その言葉に、春の心拍数が上がった。
「…気づいていたのか?」
「もちろん。でも、優しくしてくれたから気に入っちゃった。だから…君たちが楽しめるよう、『祝福』してあげたいなーって」
それは物語の妖精が、気に入った相手に呪い(まじない)をかけるかのような。実に軽い口調で言葉を紡ぐ少女。
「ほ~ん…取り敢えず飯食いながら考えない?奢るからさ。この坊ちゃんが」
「え?まぁ、いいけど。ほどほどにしてくださいよ?あまり高いのは無理だから。」
さも当然のように年下に奢らせる提案をするジェーン。
そんなジェーンの言葉に驚きつつも、仕方がないといった風に応じる春。まだ高校生のはずなのに、この少年は既に苦労人の素質が開花しつつあるらしい。
「ふーん…ま、いいや。それじゃ、そこの緑色の子を『祝福』しちゃおうかな?私が見るに、自分の意見を通す前に周りに押されるタイプと見た!そういう子、応援したいな~…ね、どうかな?私に『祝福』、させてくれない?」
二人を見極めるように観察していた少女だが、何かが琴線に触れたのか、春に対し不思議な提案をする。
祝福…言葉通りに受け止めれば、悪いものではないとはずだが、現時点では謎が多い。
「…わかった。」
しばし考え込み、春はその提案に応じる。リスクは承知済み。対象に害を及ぼす可能性も十分にあるが、その詳細を自分の身をもって確認する価値はあると判断したのだろう。
そんな春の了承を得て、少女は元気よく春の手を取り、呪文を口にする。
「ありがと!それじゃ、ちょっと本気出しちゃって…せーの!」
―――貴方に才能を、私に恋を―――
瞬間、春は自身の令呪に強い力が漲るのを感じる。否、これは令呪に作用しているものではない。力の漲り、それは春のサーヴァントから流れてくる魔力だった。彼女の祝福とは、対象が契約しているサーヴァントを強化するものなのだろうか?
「これは…!」
「ふぅ、満足。さてと…どうかな?」
満足げな少女に対し驚きながらも、春は冷静に事象の分析を行う。
今のところ体に悪影響はない。むしろすこぶる調子がいいと言えるだろう。流れてくる魔力も正常。サーヴァントへの影響も悪いものはなさそうだ。
「…ありがたいな。今後の動きを優位に進められそうだ。」
しかし、意図が読めない。何故少女は本来敵対関係にあるはずの存在に対し、優位に働く能力を行使したのか。
それに、春のサーヴァント、バーサーカーのこともある。彼女は…
「なに?どうかした?」
「いや、気にしないでくれ。こっちの都合だ。悪いほうに運ぶつもりはないから安心してほしい。」
真意こそ不明ではあるが、少女の祝福は現状間違いなくこちらの利となっている。それに、この少女が知る由もないが、令呪と言うリソースを既に1画消費している春からしてみれば、まさに渡り舟と言える状況だ。それを踏まえて、春は少女に「なんでもない」と答える。
「ん、それは良かった。それじゃ…これから祝福あげ続けるから、数日間よろしくね?そっちのお兄さんも」
「ん?あぁ、おう。宜しく頼むわ」
割と蚊帳の外扱いだったジェーン。その目線の先には人がごった返す居酒屋。それに気づいた少女はジェーンに苦言を呈す。
「あ、飲まないからね?私、小食だから。」
「俺も未成年だし。」
「…………そうか。じゃあまぁ、ファミレスかどこかにするか。」
「はーい!」
「OK、適当に予約しときます。」
少女の意見に春も同調し、ジェーンは残念そうに引き下がる。未成年に飲酒をさせない程度の良識はあったらしい。
しょぼくれるジェーンをしり目に、ファミレスの予約をしながら春は思考する
「(とりあえず穏便に済んでよかった…着々と戦力も増やせているし。)」
いくつかの予想外はあったが、順調な滑り出しと言えるだろう。少女は当面の間、春たちと敵対するつもりはないらしい。
だが、彼の背中には少なくない量の冷や汗が流れていた。
「(問題は、ミナが俺を離すまいと霊体化しながら、獣みたいな目つきでしがみついていることか。)」
自身に対し一途な愛情を注いでくれる彼のサーヴァント「ミナ」。そんな彼女の前で、少女は「恋」と名の付く宝具を使った。ミナの逸話を考えれば、そんな少女に対して警戒しないほうがおかしい。
「(ごめんなミナ、相手もお前に悪い気があるわけじゃないみたいだし、今はどうか我慢してくれ…。)」
念話で己のサーヴァントに謝罪する春。そんな春の想いなどつゆ知らず、ふと思い出したように少女が切り出した
「そういえば自己紹介がまだだったね。私は…」
少女の名前はシンヴァ。
「No.3」の番号を与えられた、デミ・サーヴァントである。
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今日は素敵な出会いがあった日。
緑色と、どこかから感じる念が非常に強かった春っていう…●が強いけど表に出せてない子。
そして、ナンパしてきたジェーンさん。こっちは…うん、我が強いのは読み取れるかな。結構いい●かも。
でも、私は春くんの事がちょっと気になって。念を食らいながらも私は彼に祝●を渡した。
聖●戦●とは思えないほどのどかな初日…でも、これで五日後には私は彼の魔●師らしき力を●い取ってまた一つ成長できる。
…って、こんな考えに毒されてるから彼女と決●できないんだろうな。
私はただ、お友達が欲しいだけなのに…結局こうして●福か呪●かわからないものを渡している。
とはいえ、彼はいつか輝くかもしれない。●いた瞬間を見るのがとても楽しみだな。