ISに振り回されて平穏が遠い   作:風呂

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俺「…………(黙々とプラモを作っている)」
夏「あれ? また同じの作ってるのか?」
俺「んー? まあ、な……。それよりお前も何か作ってみたら? 一個作ってないのやるぞ? ほれ」
夏「良いのか!? それじゃあ試しに作ってみるか!」


その11

 結局の所、織斑と凰の関係はどうなったかというと。

「アンタにフラれてすっきりしたわ。これからも今まで通り良い友達でいましょ?」

「お、おう。でも、良いのか? その、なんていうか……」

「良いの! うじうじ未練がましくしてても仕方ないしね。そんなのアタシじゃないし! けど……」

「けど?」

「アタシをフッたんだから、アタシより良い女を捕まえないと絶対に許さないんだから! 良いわね?」

「……ッ、ああ!」

 という会話が、朝早く他に誰もいない二組の教室で交わされた。

 凰から早朝に織斑と一緒に来てくれと連絡があり、出向いた先での話だった。

 少し離れたところでそれを聞いていた俺は、安堵と共に一息吐いたのであった。

 厄介事が減り、これで漸く落ち着けるかと思ったのだが、この時の俺はもう一つ問題が残っていたのを忘れていたのだった。

 そして半日後の、生徒指導室。

 そこで昨日の事件に関わった生徒達が呼び出された。

 ここは普通の教室からは少し遠く、しかし職員室には程近い場所で、更に生徒指導室とは名ばかりに半分倉庫と化している、生徒はもとより教師ですらあまり寄り付く者もいないような所だった。

「……実は俺と織斑ってさ、事情聴取されるの二度目なんだよな」

「ん? アンタ達二人まとめてって事は……」

「そ、初めてIS動かした時に連行された先でさ。あんときはマジでビビったよな、織斑?」

「ああ、あの時は本当に生きた心地がしなかったな。訳も分からないまま質問攻めされて、訊きたいのはこっちだって言うのに」

「しかも休憩なしで連続三時間」

「うわ、それはご愁傷様だったわね……って、あれ? それ私が二組の連中に尋問されたのと同じくらい?」

「ははは、イグザクトリィ」

「ノンノン。発音が宜しくありませんわ。Exactly、ですわ」

「おお、やっぱり本場の発音は違うね」

 等と割と穏やかな雰囲気で雑談に興じる俺達だが、

「……貴様ら、昨日の今日で元気だな?」

「これなら今日の授業、手加減しなくても良かったですね」

『………………』

 一気に現実に引き戻された。

 オーケイちょっと待て。授業でIS乱取りと、時間一杯まで走り込みさせた人の言うセリフじゃないですよね? 織斑先生に木本先生?

 どこのヒーローのアカデミアだよって気分だが、あながち間違いでもないのが恐ろしい。流石IS学園。ここは御山かと言いたい。俺達、総長連合入り目指してたっけ? というか、そんなきっつい授業内容に最近ちょっと慣れ始めた自分が怖い。

「なんだその顔は?」

「いえ、何でも……ありません」

 なのでこの場にいた生徒全員、唖然とした顔をしても許されると思うんです、ハイ。

 さて、ここには俺、織斑、木刀さん、オルコット嬢、凰、菊池が呼び出されている。

 勿論理由は明白で、昨日のIS襲撃事件についての事情聴取と、再度の箝口令を出す為だ。

 昨日の時点で簡単な聴取と口止めはされていたが、それを改めて、という訳である。

 事情聴取は兎も角、箝口令の部分が重要で、一、二組の担任と副担任がこの場に揃っている事(更に言えば織斑先生は学年主任)からもその重要さが察せられる。

 この場に呼ばれた生徒は皆最後まであの場にいて、襲ってきたISが無人機だったというのを目撃したメンバーだ。

 無人機。

 それは各国の専門の機関が開発に乗り出すも、未だ研究段階を出ない代物である。

 例えばドローンや無人偵察機等、遠隔もしくは自動操縦で動く代物というのは民間から軍事まで幅広く運用されてはいるが、それらは今の所単純作業や決められた行動をするだけの存在である。

 それがISで、しかも不確定要素ばかりの近接戦闘までこなしていたのである。少なくとも今現在のAI技術でISを実戦レベルで動かすのはスタンドアローン方式は不可能の筈だ。

 ならば遠隔操縦ならどうか。

 例えばオルコット嬢のブルーティアーズ。

 アレのビットのように操縦するとしたら?

 確かにそうすれば不可能ではないだろうが、それだと操縦する側とされる側、二機分のISが必要になり、コストとリターンのバランスが取れない。

 もっと言えば、ISを動かす為のエネルギーの問題もあるし、デメリットに関しては言い出したらキリがない。

 あえてメリットを上げるとすれば、人命を危険に晒さなくていい事くらいか。

 他にもメリットデメリットがあるかもしれないが、足りない頭で思いつくのはこれくらいだろうか。

 兎も角、そんな扱いに困るものを軽々しく口にしてはまたぞろ厄介な問題が発生しかねない故の箝口令だった。

「ま、それがいつまで通用するかは謎なんやけどなー」

 と、疲れた様子でナナコ先生は言った。

 色々対応に追われていたんだろう。お疲れ様ですとしか言いようがない。

「新年度早々こんな事になって、先が思いやられます……」

 あ、山田先生が重症っぽいな。

 だけど誠に遺憾ではあるが、多分今年は波乱の一年になると思いますよ。全くどこ行った平穏、早く帰って来い。いや、ホント、マジで。

 そんな感じに一時間程教師陣からの話(と愚痴)を聞き、解散の流れになったのだが、

「あ、篠ノ之さんと貴方は居残りです」

 と、山田先生に呼び止められた。

「え? なんでです?」

「貴様ら、IS同士の戦いの場に生身で近づいただろ。危険行為をしたという事で反省文を書いてもらう」

 うげっ、と思わず変な声が出た。

「いや、でもあれにはそれなりに理由が……」

「確かに分からんでもないんやけどやな、やっぱり危険行為は見逃せへんよ。ま、事情も事情やし、原稿用紙一枚分くらい書いてくれたらそれでええから」

 要は形式上、必要だからって事らしい。

 あの場に生身でいるなんて、自殺行為にも等しいと言われれば反論しようもないので、仕方ないか。

 そういう訳で他の連中を見送り、大人しく木刀さんと共に反省文を書く事になった。

「…………」

 大人しく反省文を書きつつ、木刀さんの様子を窺う。

 木刀さんは黙って反省文を書いているが、どこか遠くを見ているような、心ここに在らず、といった様子だった。

 そういえばここに来た時からずっとこの調子で、何か思いつめているようであった。

 少し気にはなるが俺は特に何か言う事もなく、そのまま三十分程で反省文を書きあげた。

「先生、お願いします」

「はい、確かに。もう戻ってもらって構いませんよ」

「うぃっす」

 席を立ち、残ってくれた山田先生に反省文を渡し、生徒指導室を出て行こうとするのだが、

「ま、待ってくれ。少し話があるんだ。すぐに書き終わるから」

 何故か木刀さんに呼び止められてしまった。

「ん? ……別に良いけど」

 特に急ぐ理由もなかったので、そのまま席に座りなおして木刀さんが反省文を書き終わるのを待つことにした。

 木刀さんが反省文を書き終えるまで暫く、何をするでもなくぼうっと待ち続けた。

 指導室内には木刀さんがペンを走らせる音だけが鳴っていた。

 この学園にいて、誰かといる状況でこんなに静かなのは数えるほどしかないなと思い返す。

 皆キャラ濃いからな。誰がどう濃いかについては言及を避けるけど。

 そういえば山田先生は何をしているのかと振り返ると、情報端末を開いて熱心に画面を見ていた。雰囲気から察するになにか電子書籍でも読んでいるのだろうか。

 ただ、姿勢が少し前かがみになっていて、ただでさえ大きい胸なのにそれが首元からより覗けるような角度でこちらから見え、非常に教育に悪かった。勿論眼福である。

 もっと眺めていたい誘惑を辛うじて振り切り、木刀さんを横目で見ると、これまた豊な胸部装甲造形が真横から見れた。

 その立体感は素晴らしいの一言であり、よく見ると胸に限らず身体のバランスや各部の肉の付き方等も制服姿から察せられる範囲だけでもかなりの高レベルで、非常に目に毒であり、そして目に優しかった。

 ……あー、エロと思考が直結してんなぁ。

 考える端から頭を空っぽにするようにアホな考えを捨てているので、欲情する程ではないがどうにも馬鹿だろ俺。いや落ち着けよ。女子高で生活することになって色々鬱憤が溜まっているのだろうか。そろそろここらで一度発散させとくべきだろうか。いやだから落ち着け。

 しかし木刀さん、こうやって黙って静かにしていれば結構な美人さんなんだよな。普段の言動がちと残念で破天荒なだけで。

 なんて事を考えていると、

「ふぅ。終わった。……あ、なな、何だ?」

「いや? 何も」

 反省文を書き終えた木刀さんがこちらに気付いたが、なんだろう? いつもより動揺が大きい気がする。

「はい、じゃあここ閉めますからね。早く出てくださいね?」

 少し疑問に思うも、山田先生に声をかけられ、木刀さんと共に大人しくその場を後にした。

 そして暫く廊下を歩いたところで、木刀さんに尋ねた。

「で、話って何さ?」

「うっ、その、出来れば人に聞かれたくないんだが」

 と、言われたのでさてどうするか。

 今の時間帯だともうすぐ夕食時である為、人が集まりだす食堂は使えないだろう。屋上で話すにしても、島の上という立地の為に夕方以降はちょっと風が強く落ち着いて話せるという感じでもない。となれば……、

「じゃあ、教室に戻るか。流石にもう誰も残っていないだろうし」

「ああ、それで構わない」

 同意を得られたので、教室へ。

 その間、やはり木刀さんは無言だった。

 いつもと違う態度に、それ程重要な話でもするのだろうかと首を傾げるも、それもすぐに分かるかと思い直す。

 まあ、実の所。

 ――俺は木刀さんが少々苦手だったりする。

 そりゃあ折角作ったプラモぶっ壊されて、命辛々助けたと思ったら殴られりゃ、俺じゃなくても良い感情はないだろう。

 そうでなくとも普段の織斑に対するツンギレっぷりを見てれば、なんというか……引くよね?

 とまあ、あまり俺の評価は宜しくないのだが、だからといって嫌いか? と問われれば首を横に振るう。

 今まで木刀さんからは色々と被害を被ってきた訳だが、ワザとやったわけでも悪意があった訳でもないからだ(多分)。

 何故そこまでされて嫌わないのかと問われれば、出来るだけ人を嫌う事はしたくはないからだ、と俺は答える。

 座右の銘は日々平穏。標語は皆で幸せになろうよ。事なかれ主義と笑いたければ笑え。それが俺の基本スタンスだ。

 

 

 とまあ、無駄な脱線をしている間に教室に到着。

 教室の真ん中辺りで木刀さんと向き合う。

「……で、話って?」

 なんとなく言いにくそうにしているので、こちらから話をするよう促す。

「その、な……。き、昨日はすまなかった!」

「お、おおぅ?」

 それでも暫く口籠っていたが、腹をくくったのか勢い良くこちらに頭を下げた。

 というか勢いつきすぎて、跳ねたポニーテールが鞭のようこちらに飛んできたんですが。勿論避けましたよ? ええ。

「俺を殴った件か?」

「ああ。折角助けてくれたのに思わず殴ってしまって」

 いやまあ、あれは俺も少しは悪い訳で。多分倒れて手を着いた時、木刀さんの胸触った筈だからな。人生初のラッキースケベでした。……思いっきり殴られた所為で感触思い出せないけど。

「いやらしく手を動かすなっ!」

「ア、ハイ。スンマセン」

 正直もったいないとは思ったが、口には出さない方が賢明って、俺、IS学園で学んだよ?

「……実はな、助けてくれたのがお前じゃなくて、一夏なら良かったのにと思ったんだ」

 ……そんな事も言ってたな。

「命の恩人にそんな事を思うなんて最低だろう? 私自身そう思う」

 うん、まあ、確かに。あまり褒められたものではないな。

 けどそれを被害者である俺に、正直に自分から言ってきてくれるのは悪くないとは思う。

「だから私の事を罵ってくれて構わない。なんなら殴ってくれても構わない。お前にはそれだけの、恩を仇で返すような事をしたんだから」

 自罰行為の為ってのがマイナスだけど。

 今回だけじゃない。IS学園に来る以前からも、思わず誰かを傷つけてしまう事があったんだと彼女は言う。

 成程、彼女の態度からその以前の事も含み、後悔も反省もして、俺に対しても後ろめたく思っているのは分かった。

 だから俺は、木刀さんの言葉に対して、

「ハアアァ~~~」

 思いっきり溜息をついたのだった。

「な、なんだその態度は! こっちが謝っているのに!!」

「あーうん。そのな? 木刀さんが誠心誠意を以て謝ってくれているのは分かるんだ。だけどだからって罰を求められても困る。ってか、実際にやったら俺が悪役になっちゃうし。それにな、そんな事をしても楽になるのお前だけじゃん?」

 開き直らないだけマシではあるが。

 俺は思うのだ。私は罪を犯した。だから罰を受けました。よって償われました。だから満足です。そうじゃねえだろう、と。

 確かに償ってもらわないといけない事も世の中にはあるが、今回の件に関しては俺は別にそこまで思っていないのだ。

 その代り、俺の平穏の為に協力はしてもらう――。

「じゃあ私は一体どうしたら良い!?」

「変われば良いんじゃね?」

「え?」

 今のままで、今の自分では迷惑をかける、誰かを傷つける、そんな自分が嫌だというのであれば。

「そんなに今の自分が嫌なら変わるしかないんじゃねえかな。自分自身とは縁を切ることなんて出来ないんだし」

「そ……そんな簡単に言うが、それが出来ていれば苦労はしない!!」

 今まで木刀さんと会話してきた中で、一番力の籠った叫びだった。

 きっと彼女なりに努力した事もあったのだろう。切実さが声に表れていて、視線も揺れている。

「そりゃ、今すぐには無理だろうさ。だけど、ちょっとずつならどうにかなるかもよ?」

「そこまで言うからには、何か考えがあるのか?」

「大した事じゃないんだけどな」

 ちょっと一計を案じてみようかな、と。

 という訳で再び移動である。

 向かう場所は木刀さんの寮室だ。

 そこまでの道すがら、俺は木刀さんから色々話を聞き情報収集をする。

 内容は人間関係についてだ。

 何故そんな事を聞くかというと、今までの彼女を思い返すに、彼女が発端となったトラブルの原因は人付き合いに対する経験値が足りていないのではないかと思ったのだ。

 ぶっちゃければ、コミュニケーション能力の不足。スラング的な言い方をすればコミュ障だ。

 すぐに手が出る、我慢強くない、頑固、周りが目に入らない、子供の癇癪かと思えるくらいに歳不相応に感情の起伏が激しい、等々。

 いくらか誇張も入るが、概ねこんな感想を抱くことは難しくない。

 言われて木刀さんが吐血したが、知ったことじゃない。かっこ笑い。

 じゃあ人間関係の経験値を意図的に得るにはどうしたら良いか。

 皆と会話をしたら良いのである。

「しかし私は口下手で、その、……話すのは苦手なんだ」

「そうか? 俺や織斑とかとは会話できてるだろ。現にこうして話してるんだし」

「それは、そうだが……」

 俯く木刀さん。変なところで自信がないな、この娘は。

 確かに織斑やその周り以外の人と喋っている姿を殆ど見たことがなかったが、割と重症のようだ。

 だがそれも仕方ない事なのかもしれない。

 小さい頃から各地を転々とし、友達を作ってもすぐに別れる生活を送っていて、次第に自分から友達を作る事をやめていた、という事情があったのだし。

 そんなだから意識が自分の内へ内へと向き、以前から習っていた実家がやっていた剣道に打ち込むしかなく、気付けば周囲に友人と呼べる存在がいなくなっていたらしい。

 ……うん、これ、思った通りヘビィな話だったわ。

 けど、めげてはいけない。彼女の為、ひいては俺の為にならないのだから。

 そんなこんなで俺達は一〇五二号室に到着。ノックする。

「態々する必要あるか? 鍵ならあるぞ?」

「良いんだよ。これから二人でお願いするんだから」

 礼儀というかなんというか。心の持ちようの話だ。

「はーい」

 と、扉の奥から声が聞こえてくる。いてくれて助かった。

「やっ」

「あれ、どうしたの? 珍しい組み合わせだね」

 現れたのは木刀さんの同居人、そして一組最後の良心、鷹月さんだ。

 以前織斑の歓迎パーティーの設営の手伝いをした時に少し話をした子だ。

 あの時も思ったが、やっぱりしっかり者の雰囲気があり、委員長みたいな職が似合う子だなと感じる。

 ……この子ならお願いしても大丈夫かな。

「まあな。で、実は頼みたいことがあってさ」

 かくかくしかじかうまうまと、事情を説明。

 彼女は話を聞いてうんうんと頷き、

「それで、私にどうしてほしいの?」

「ちょっと考えがあってさ。木刀さんと一緒に毎日ドラマとか映画とかを観て感想を言い合ってもらいたいんだよね」

「うん?」

「どういう事?」

 俺の言葉に、二人は首を傾げる。

「いやさ、木刀さんの話を聞くとさ、口下手以前に人付き合いの知識そのものが足りてない気がしたんだよ。あまり娯楽自体してないって言うし。ほら、普通は学校以外でも家でテレビ見たり本読んだりして、無意識にその辺の知識を吸収したり影響されたりするってあるだろ? だから今からでも少し駆け足になるけど見て体験してもらおうかと」

「成程ね」

 無理のない範囲でと考えたら、毎日一~二時間くらいか。ドラマなら一話か二話分。映画なら一本分で鑑賞会をしてくれたら良いんではないかと。

「……それ、上手くいくと思う?」

「実は三、七で分が悪いかなあとは思ってる」

 鷹月と一緒に頷き合う。

「おい貴様」

 自分の胸に手を当てて考えてみろよ木刀さん。それに俺だって本職のカウンセラーとかじゃないんだから。

「私の趣味でも良いの?」

「常識の範囲内でなら。健全に頼むぜ健全に。あと恋愛要素が入ってる作品だと後々織斑の苦労が減る、かもしれない。だからって激甘な恋愛系ばかり見えて恋愛脳になって貰っても困るから程々にな」

 どうやら前向きに協力してくれるらしい。軍資金に関しては電子マネーを鷹月が使えるようにして一万円分渡しておいた。

 最初は遠慮した鷹月だが、IS関係のスポンサー料で小遣いはあるからというのとデザート数回分で納得し、受け取ってくれた。

「おすすめの作品とかある?」

「バック・トゥ・ザ・タイムと回る大捜査線」

「ああ、好きそうだよね君」

「そっちは?」

「プリティー・ガールとオーリー」

「恋愛系と感動系かぁ。まあこの辺りを攻めてもらえると助かるか」

 あ、木刀さんが不思議そうな顔をしてる。結構名作ばかりなんだが聞いた事すらないか。

 兎も角、鑑賞後に感想を言い合うのが大切だと思っている。

 ただ漫然と観るだけではなく、それがどんな話で、登場人物がどう思って行動したかというのが理屈で分かるし、議論そのものが人付き合いの練習にもなるだろう。

 そういった事を期待しているんだが、上手くいくと良いなぁ。

「上手くいくかは分からんが、取り敢えずやってみる。本当にすまんな」

「いいのいいの。回りまわって俺の為になるんだから。いや、ホントに。もう二度と御免だぜ? 正直に言えばプラモの件は未だに根に持ってるし」

「それに関しては本当に申し訳なかった」

 木刀さん、最敬礼である。

 こうして木刀さんこと、篠ノ之箒性格矯正プログラムは始動した。

 

 

 暫くの後、仲間内以外の人とも険のとれた表情で会話している木刀さんを見る事になり、少しは効果があったのだろうと思うのだった。




次は転入組の話にするか、扇子持った残念姉の話にするか。迷ってる。いやそろそろ転入組やれよという話。


束「箒ちゃんにはそーいうの、必要ないんだけどなー」

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