ISに振り回されて平穏が遠い   作:風呂

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楽屋にて
夏「出番まで暇だな。確か漫画があった筈……ん? なんだこれ?」

『ブリュンヒルデ様が見ている』(24P 表紙・裏表紙含む)

夏「…………いやいや」


その4

 入学二日目になっても、一人目の男性IS操縦者である織斑さん家の一夏君の開幕スタートダッシュは、衰えというものを知らないようだった。

 今度はイギリスのお嬢様系金髪縦ロール少女とトラブルを起こしたらしい。

 どうやらクラス代表を決める際、件の彼女と互いの国を侮辱するような域にまで口喧嘩が発展し、一週間後にISでの戦闘で決着をつけることになったそうだ。

 クラス代表か。二組はどうすんのかね。ナナコ先生、なんにも言わなかったけど忘れてたのかな。

 ふと廊下の窓から空を仰ぎ見る。今日も天気は良く、雲の白が青空に映えて見ているだけで気分を落ち着かせてくれる。

 こんな日には外でのんびり美味しい昼食でも食べれば、さぞや幸せな気分になれるだろう。

 あー、腹減ってきた。腕時計を見ると、もう昼休み入って十五分ほど経ってた。

「ちょっとアナタ! せっかくワタクシが話をしているというのに何ですかその態度は!?」

「あ、はい、申し訳ございません」

 条件反射で謝る俺。ただし心は込もっていなかった。

 さてここで改めて、今現在の状況を簡潔に語るとしたらこうだ。

 金髪縦ロールの外国人貴族少女に絡まれた。以上。勿論、織斑と口論したという件の少女、セシリア・オルコット嬢に、である。

 昼休みが始まってすぐ、昨日と同じように屋上に行こうとしたら、

「そこのアナタ、お待ちなさい!」

 と、呼び止められてしまったのだ。

 聞こえないふりをして走り去っても良かったのだが、どうにも後々面倒になりそうと思ったので、仕方なく呼び止める声に応じたのが失敗だった。

 まさか十五分以上も公衆の面前で延々と、自身とお国の自慢を聞かされるとは思ってもみなかった。

 背は俺より低いくせに、腰に手を当てたモデルポーズで下から見下すという器用なことをして妙に迫力があるもんだから、気が疲れること疲れること。

 やっぱりテキトーに相槌うってたのがいけなかったのか。寄り道しないで済むように既に購入済みだった昼食と腹の虫が泣(鳴)いてるぜチクショウ。

 更に言うと彼女の一方的な話の十五分間の内約は、六割自慢、四割罵詈雑言(一組での騒ぎ≒織斑について)である。俺の名前なんて、一度として出てこない辺り、相当腹に据えかねているようです。

 因みに一組の教室から出てきてこの光景を見た織斑は、(目が合ったにも関わらず)篠ノ之と飯食いに行きやがりましたとさ。あとで覚えてろ。

「ところで、聞いておきたいことがあるのですが」

「ハイ、ナンデショウ?」

 最早カタコトである。早く飯食いたい。あと周りの奴ら、ご愁傷様、みたいな顔すんな。泣きたくなってくるだろうが。

「もしかしてアナタ、あのイエローモンキーの様に入試での実技試験で試験官を倒していたりしてないでしょうね?」

 うわぁ……、ここまで発音の良い悪口初めて聞いたわ。流石本場のブリティッシュイングリッシュ。しかしプライベートならともかく、パブリックな場で気品の欠片もないこと言ってるのに気づいているのだろうかこの貴族娘。あと、俺もイエローモンキーなのですがそこんとこどうなのさ?

「実技試験? いや、刀一本で完膚なきまで叩きのめされたよ。五、六回は避けたんだけどそれからは全然。手も足も出なかった」

 事実である。

 そもそもIS学園の入試試験はIS適性が発覚して、IS学園に放り込まれる際に形式的に受けさせられたのだ。

 通常、筆記試験・実技試験・面接の三つを二日に分けて受けるところをたった半日の強行軍で受けさせられたので、成績なんて言わずもがな。元々IS学園入試レベルの勉強なんてしてなかったわけでもあるし。

 そして、実技試験。

 実はこれはあまりに酷いものじゃなければ合否にほとんど影響なかったりする。

 これをする真の目的は、IS適正とISに対する適応力を見るためのものなのだ。

 なのでこれに関してだけはその他大勢の受験者と同じ条件で受けることになったのだが。(このことを知ったのは試験後)

 そもそもISに乗るだけでおっかなびっくりな状態なのだから、内容と結果なんて推して知るべしだ。

 相手を務めてくれた試験官は最初の二合までは手を抜いてくれたのだろうが、三擊目からは素人目から見ても分かるくらいその鋭さが増していた。

 いやぁ、見えてはいたんだけどなぁ。身体が付いてこなかった。ままならないもんだ。

「フ、フン! やはり所詮男なんてそんなものですわね。きっとあれも何かの間違いで……」

 大方、織斑のことを言っているのだろう。俺と織斑は別々に実技試験を受けて直接見たわけではないが、試験の合間にそれについて語り合ったりはしたのだ。

 それによると織斑は運に恵まれたとはいえ、実技試験で相手を倒してしまったらしい。

 試験開始直後、飛び出した試験官の方が緊張して壁に激突とか、それは倒したと言えるのか? という顛末だが。

「偶々試験官を倒せたからっていい気になって、これだから男は……」

 機嫌が悪そうに悪態を付くのを続けるオルコット嬢ではあるが、

「あのさ、そろそろその辺にしてもらえないか?」

 トーンを落とした俺の言葉に、動きを止めた。

「な、なんですの?」

 一変した雰囲気に圧されてか、オルコット嬢が若干怯む。

 こちらを伺っていた女子たちもそれに当てられてか、固唾を飲んで見守っている。

 そして数瞬の後、俺は口を開いた。

「腹減って死にそうなんだよ。解放してくんね?」

「…………は?」

 昼食が入ったビニール袋を掲げつつ言った一言に、オルコット嬢はおろか周りも呆気にとられていた。

「いや、そろそろ空腹で限界だし、言いたいことは分かったしもう良いよな?」

 流石にもう付き合ってられないのである。普段なら嫌ではあるが、体裁を気にして最後まで付き合ってやってもいいと思えるかもしれないが、ごめん、今はもう無理だわ。空腹な上にしょうもない話を聞かされるとか、拷問でしかない。

 それじゃ、と袋を持った手で腹を抑え、反対の手で軽く(心のこもっていない)謝罪しつつ彼女の脇を通り過ぎる。

「なっ!? 待ちなさい! ヘイユー!!」

 慌ててオルコット嬢が俺を呼び止めるが、知らないし聞こえねえ。

 尚も静止を促す声が聞こえるが、それを全て無視してその場を後にした。

 

 

 で、

 そのまま中庭に出て微妙に人が疎らな場所にあるベンチに座って、俺は昼食にかぶりついていた。

 俺に気づいた女子たちがこちらを遠巻きに見ているが、話しかけてくる様子はなさそうだった。

「そりゃそうだ」

 さっきの騒ぎも知らないのにそうなのだから、今の俺は相当機嫌が悪く見えているのだろう。正直、有り難くはある。

 初対面の相手に、しかも自分には何ら関係ないことで散々捲し立てられたおかげで、精神がガリガリ削られて結構疲れたのだ。

 あまり良くない傾向ではある。

 世界で二人しかいないIS操縦者という立場上、ここでの生活、そして卒業後のことを考えると周囲との人間関係は円滑にしておかなければならない。

 そもそも織斑みたいに後ろ盾が何もない俺は、在学中にIS業界の関係者と友好な関係を築いておかなければ冗談抜きで命の危険がある。

 それに関することを春休みの間に散々政府の役人さんに吹き込まれたせいで、若干人間不信に陥りそうだったのは忘れたい過去だった。

 兎にも角にも、このままではいけないってことだ。

 そもそも、昼休みに人目を避けるってのも良くない。良くはないんだがこの学園の空気に押され気味でどうにもやる気が出なかった。

 どうにもしっくりこないのだ。ズレてるというか、現実味がないというか。要は未だに自分の中で受け入れらていないんだろう、世界で二人だけの男性IS操縦者という肩書きを。

 できることなら犬のエサにでもしてやりたかったがそうもいかないのが辛いところ。

 ああ、

「なんかもう、早速全部放り投げたくなってきた」

 パンの袋やジュースの紙パックをビニール袋に片付けて、大きく伸びをする。

 食欲が満たされたのと春の陽気もあって、だいぶ気分は落ち着いてきた。

 そんな俺は心に余裕ができたおかげか、ふと視界の片隅に見慣れないものがいるのに気がづいた。

 手のひらに乗るくらいのサイズで、触ると柔らかくて気持ちよさそうな体毛、大きなつぶらな瞳、体と同サイズな尻尾、茶色くて四足歩行する小動物。

「……リス?」

 そう、リスだ。リスが離れた茂みからこちらを伺うようにして顔を出していた。

 何故こんなところにリスが? 元々この島にいた原生生物だろうか。

 生でリスを見るのが初めてな俺は、しばらくそのリスを観察した。

 最初は結構可愛いもんだなと和んでいたが、理由のわからない違和感を持ち始めてもいた。

「どうしましたか?」

 なんだろうと疑問符を浮かべつつリスを眺めていると、横から突然声をかけられた。

 振り向くとそこには、我がクラスである一年二組の副担任、木本美南先生が第一印象と変わらない、冷めたような目でこっちを見ていた。

「あ、木本先生。どうしてここに?」

「質問を質問で返すのはあまり良くないですが、まあ良いでしょう。生徒たちが噂していたんですよ。男性操縦者の一人が一組の女子生徒に絡まれて機嫌が悪そうだ、と」

「ありゃ、先生の耳にも届いてましたか。すんません、それについてはもう落ち着いたんで問題ねぇッス」

 もう先生にまで知られているなんて、女の噂の伝達速度は音速並だな。いや、ある意味音速ではあるけど。

「それで? 貴方は何を?」

「いや、大したことはないんですけど。見えます? あそこにリスがいるんですけど……」

 言いながらリスのいる茂みを指差す。

 そちらに視線を向けてリスを視認すると、木本先生は微かに驚いたような表情を作る。

 あ、この人別に無感動ってわけでもないのか。

 こんなことを考えるのは失礼だとは思うが許して欲しい。てっきり無感動系クール美人かと思っていたのだ。

 それはともかく。

「珍しいですね。学園内では初めて見ました」

「そうなんですか? てっきり前からいる原生生物かなって思っていたんですけど」

「それはどうでしょう? 学園が作られた時の開拓で島の自然も大分人間の手が入ったようですし」

 ふむ。だとしても島の生物を絶滅させたわけでもないだろう。別にいても不思議ではない。

 別の可能性として誰かのペットという線も考えられなくもないが、学園島はそもそもペットの持ち込みは基本禁止であるので除外だ。

 などと考えながらリスを眺めていると木村先生が、

「おいで」

 と、リスにおもむろに近づきしゃがんで手を伸ばす。

 しかしリスの方は警戒したのか、伸ばされた手から瞬時に距離を取り、そのまま走り去ってしまった。

「むぅ」

「残念でしたね先生」

 そう言って俺は、ちょっと寂しそうな目をした先生と共にリスを見送る。

「落ち込まないでくださいよ先生。また縁が合えば会えますって」

「……そうですね」

 そう言いつつ立ち上がった木本先生の表情は、元の無表情に戻っていた。

 当たり障りのない慰めではあったが、気を悪くしたわけではなさそうなので良しとする。

 その後、何事もなく午後の授業を受けた。

 その間、リスに対する違和感はなんだったのだろうと考え続けて、漸くその正体が分かった。

 あのリスはこちらを見ている間、微動だにすらしていなかったのだ。

 

 

 リスに関しては気になることがあるとはいえ、どうなることでもないことなので一旦置いておいて。

「そういう訳やからクラス代表、明日の放課後までに皆で相談して決めといてなー」

 そう言いながらチャイムが鳴ると同時に教室を出ていく金髪教師。

 ……おい待てコラ。

 本日の授業終わりのHRのシメに、我等が関西弁教師が爆弾を投下していきやがりましたとさ。

 どうにもナナコ先生、今朝の時点ではクラス代表のことを忘れていたらしく、一組の騒ぎを知って思い出したそうな。

 クラス代表は読んで字の如く、行事毎にクラスを纏めたり矢面(クラス対抗などのIS戦闘含む)に立ったりする、所謂学級委員長というやつである。

 でまあ、二組の代表を決めるにあたって、ナナコ先生は三つの条件を提示してきた。

 一つ、決定期限は明日の放課後のHRまで。

 一つ、立候補制は無し。他薦もNG。機会は皆平等に与えること。

 一つ、いかなる方法を採るにせよ、教室内で済ませること。

「あと話し合いの進行役は君がせえよ。ええな?」

「は? なんで俺が!?」

「君が一番平等やからね。他の子やと政治が絡んできて八百長とかの可能性もあるからや。それくらいには馬鹿にできへんもんよクラス代表。ま、誰か専用機でも持ってたらあまり角も立たずに済むんやけど」

「政治がどうこうって、俺が一番絡んでると思うんスけど」

「君の場合は絡みすぎて逆にどこも動けないからへーきや」

「や、でも……」

「ぎゃーぎゃー言うなや、男やろ? それと、ないとは思うけどハニートラップだけには気いつけや。あ、それは卒業するまでずっとか」

 ハハハと笑うお気楽教師。くっそ、他人事だからって……!

 あと、何人か微妙に顔逸らしただろ。顔覚えたからな! ブラックリストに登録だお前ら。

「大変だね?」

「言葉だけでもありがてぇよ」

 隣の都下の労いに、机に突っ伏して応える。でも、涙が出ちゃう。だって男の子だもん。

 この半端ない振り回され感も最初だけ最初だけと、なんとか自分に喝を入れて俺は立ち上がる。

「あー、んじゃまー、クラス代表決めろってことだけどさ、どーするよ?」

 教室内を見渡しながら問いかける。なんかデジャヴを感じるが昨日の今日なので仕方なし。

「やはりここは戦いで決めるのが」「入試の成績じゃだめ?」「いやいや、どうやってそれを知るのよ? 学園側は見せてくれないと思うよ」「立候補出来ないってのが辛いわね」「力ある者がだな……」「教室内でバトルロイヤルをやれと? 無理無理」「なんかもうゲームとかでよくない?」「何も思い浮かばないよ」「ISに関係あることで決めたいわね」「ならばやはり戦いで……」「ちょっと黙っとこうか」

 ……ふむ。これだ! という具体案が出ないまでも皆意見を出し合ってるな。クラスメイトのことを知るには結構良い機会なのかもしれん。何人かキャラが濃いのもいるし。

「都下はなんか意見ねーの?」

「え? 私? そうだなあ、トランプ……とか?」

「トランプ?」

「う、うん。けどよく考えたらお気楽すぎるし、この人数じゃ時間もかかるし……」

「……いや、良い考えかも」

「え?」

 確かに普通のトランプじゃ時間もかかるし人数捌けないし、ISの適正を見るって言う意味でもイマイチだ。

 だけど一つだけ、一つだけそれら全てを満たせそうなゲームがある。

「なあ皆、ちょっといいか?」

 そう言って、俺は白熱しすぎそうになっていた議論に割り込みをかけた。

「あのさ、トランプのスピードで決めね?」

『は?』

 異口同音に発せられる疑問の声。

「戸惑うのはわかるが、まずは聞いてくれ。前提としてスピードのルール知ってる人は?」

 戸惑いながらも手を上げるクラスメイトたち。だがその数は極少数。特に海外勢は全滅という有様。

 というわけで説明タイムである。

 1.プレイヤーは二名で、赤と黒の二組に分けた手札を一組ずつ裏向きに持つ。

 2.よく切ったあと相手と交換。そして場にそれぞれ四枚のカードを表向きにセット。これが場札となる。

 3.「スピード」の掛け声(別にどんなのでもいいが)とともに、お互いデッキの一番上から自分と相手の中央に一枚出す。これが台札だ。

 4.自分の場札をみて二枚の台札と隣り合う数字があればそれを台札の上に出す。場札に出せるカードがなくなれば、手札から最大枚数が四枚となるように設置。台札に出せるようならまた出し、これを繰り返して先に手札場札をなくしたほうが勝ちである。

 5.もしお互い出せるカードがなければ3から仕切り直す。

「とまあ、これがスピードのルール。ちなみにエースとキングは隣り合う数字として扱うからな」

 いろいろローカルルールもあるが、とりあえずこれが基本だ。

「これがどうして、相応しい勝負になるの?」

「それはやってみせたほうがわかりやすいだろ。誰かトランプ持ってる奴いる?」

「あるよー」

「お、用意がいいねえ。確かさっき手、挙げてたろ。ええっと……」

「菊池。菊池健美だよ。宜しく」

「こちらこそ。んじゃ、やってみる?」

「当然!」

 教室の中央の席をを借りて、机を挟んで対峙する俺と菊池。周りには興味津々と女子たちが俺たち二人を囲んでいる。

 おおう、やっべ、香りきっつ。

 いつもより狭い範囲で囲まれているせいか、女子の香りに当てられそうになった。

「どうしたの? あっれぇ~、もしかして~?」

「ナンデモナイデスヨキクチサン。サアショウブヲハジメマショウカ」

 いかんいかん、と首を振る。いや、もう、ホント、マジ生物学的にアウェーすぎるよIS学園。

 ともあれ、準備完了だ。

 黒スートの俺と、赤スートの菊池という塩梅で、場札も勿論セット済み。

 構えを取った俺たちの間に流れる緊張と静寂。

 そして、

 次の瞬間。

『スピード!!』

 菊池と同時に叫び、ゲームが開始される。

 出された台札は俺がスペードのAで、菊池がハートの8だ。

 こちらの場札には左から7、Q、3、Jと並べられている。

 出せる場札は7のみ。なのでそれを掴んで8の上に素早く置く。

 その間に菊池はAの上に2を置いたのですかさず3を置いてやる。

 だがここで俺の場札に出せるカードはなくなったので、手札から場に二枚追加する。

 5とKが入り、その間に菊池が更にカードを二枚出していく。

「やるな」

「そっちもね。けどまだまだ本気じゃないよ!」

「俺もだよ。練習とは言え負けてやんねーぞ!」

 軽口を叩きつつもカードから一切目を離さない。勝負はこれからだ!

 

 と張り切りつつ、手に汗握る攻防が繰り広げられた結果、

「っはー! ギリギリで勝てた……」

「まさか、私が負けるなんて……」

 天井を仰ぎ大きく息を吐く俺と、頭垂れて呆然としてる菊池の図が出来上がっていた。

「お疲れー。よくわかんないけど凄く白熱したゲームだったね」

 都下がねぎらいの声をかけてくれる。

 その名の通り、スピード感があるゲームだからそういう感想が出るのも無理はない。

 実際、周りにいる女子たちほぼ全員がその早さに驚いていたようだった。

 小中学時代とかでもあまり見なかったのだろう。こんな唯一怪我人が出る可能性のあるトランプゲーム、男子しかやってるイメージないし。

 このゲーム、下手すると突き指の危険性があるんだよな。これが結構痛い。

 俺も小学校で流行ったとき、しょっちゅう痛い目を見てたっけか。担任にバレてトランプ持ち込み禁止令が出そうになったのはいい思い出である。(その時は仲のいい男子たちと必死に頭下げて先生を説得した)

「でさ、なんで俺がこのゲームが良いって言ったかわかる?」

 問いかけると大体の女子が頷いてくれた。

「反射神経が大事だからだよね」

「あと、カードの絵柄を確かめてどうするかの判断能力かな?」

「……正確で素早い動作も要求される」

「カード運も実力に入る、かな」

 等々。

 スピードが得意だからってISを動かすのが上手いって訳じゃないけど、必要な部分が似てるってのもまた事実。

 お手軽に代表者を出さないといけない今回の場合、割と適切な決め方じゃなかろうか。

「どうかな? ジャンケンとかでもいいけど、他になんか案がなければこれでいいかな」

 それからしばらく話し合ったあと、この方法に決定した。

 そしてカードや対戦表などを必要数用意して夕食後の自由時間に対戦をし、上位四人が明日の昼休憩で準決勝と決勝戦を行うことになった。

 その結果、序盤で俺に勝った菊池がそのまま優勝して晴れて代表の座を獲得した。

 この間、特に面白いこともなかったので割愛させていただく。強いて言えば、消灯時間間際に現れた寮長の織斑先生とナナコ先生が何故かエキシビジョンマッチを行い、下馬評を覆してナナコ先生が圧勝したことくらいか。

 菊池が、「ダイス神ならぬカード神の悪戯だね」と言っていたが、その通りだと思う。




オリキャラは、大体ネタや何かをもじったりする方向。
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