【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
「ごゆっくりどうぞ」
飲み物と人数が揃った。
「
美人だ……。
隣の堀田先輩には敵わないけど。
「
こちらは美青年といった感じ。
「高坂さんは、私の高校時代の後輩で、金管のプロなの」
ということは、高坂さんも俺たちの先輩なんだな。
「坂部先生は、私の大学の先輩で、木管指導のプロね。去年までお世話になってた
なるほど。
一部、知らない話が出てきた。
新山先生って誰?
「吹奏楽部副部長の堀田 彩花です。彼は、文芸同好会部長の金山 はるかです」
「「文芸……同好会?」」
傘木さんと同じ反応を二人共したので、同じように理由を説明。
飲み物をいただきながら、今後の打ち合わせをする。
どうやら、外部指導者の先生は、高坂さんと坂部さんで、傘木さんは付き添いのようだ。
「まずはサンフェスですよね」
「曲は決まってるの?」
「それが中々決まらなくて……」
話し合いを聞きながら、俺はそれをメモする。
話し合いに加われないので書記みたいになっている。
先生は最初から俺を、書記代わりにするつもりだったのか……?
「フライデーナイトファンタジーって声もあるんですが」
「あれ、行進の曲になるのか?」
「あの曲で謎ステップするの、想像できません」
謎ステップ? 俺には全部が謎……。
「もう一つは、トランペット吹きの休日」
「死ぬね」
「死にます」
本当にどんな会話?
「それでは指導をお願いするのは、連休明けからですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくね」
打ち合わせが終わり、5人揃ってお店を出る。
高坂さんと坂部さんは、同じ車で来たらしく2人で駐車場へ歩いて行った。
俺と堀田先輩と傘木さんが残る。
「2人とも、時間有るかな?」
唐突に傘木さんが言った。
「俺は大丈夫ですよ」
「私も」
「それじゃあちょっと付き合って」
そう言って歩き出した彼女の背中を追いかける。
「ちょっとお散歩していこうか」
打ち合わせが終わり、傘木さんの発案で、少し
話しながら歩いているが、当然のように話題は吹奏楽の話になっていた。
「堀田さんはユーフォ吹いているんだ……」
「はい。中学の頃からずっと。傘木さんは?」
「私はフルート。北宇治の吹部では、色々あったんだよね……。金山くんは……吹奏楽関係ないんだよね?」
話の流れで振られそうになった。
振られても困る。
「俺は吹奏楽の知識は殆ど無いです。今日も、みなさんの話聞いててチンプンカンプンでしたから」
苦笑い。
「だよね。文芸部だっけ? 同好会か……。何してるの?」
実は俺、小説家で今は次回作の執筆をしています。
……本当のことは言えない。
しかし、部活動として活動しないわけにもいかないので、ちゃんと形に残る活動をしている。その事を言おう。
「文化祭で出展する冊子用に、物語を書いてます」
「なるほどね。でも、そうなると吹奏楽部と接点有るのかな。いくら顧問の先生や部長が不在だからって、全く無関係の人を駆り出す訳にもいかないよね?」
そこ気になるのか……。全く無関係と言いたい。言えるものなら。
「顧問の先生が、去年吹奏楽部の顧問だったので、なんというか……駆り出されました」
「園田先生だよね」
知ってるのか。
「園田先生をご存知ですか?」
「そりゃあ、一応OGだから。大会の成績とかは把握してるよ。去年も関西大会は観に行ったし……。今年こそ全国行けると良いね」
途中、言い
確か、去年は関西大会銀賞だったっけ。
傘木さんも似たような経験があるんだろう。
「大丈夫ですよ。高坂先生と坂部先生、
堀田先輩は力強くこう言った。
10年前、北宇治を全国大会金賞に導いた滝先生と松本先生。
それに高坂さんと坂部さんの指導が加われば、どの様な結果を残すだろうか……?
「付き合わせちゃってごめんね。送っていくよ」
傘木さんは、駅近くの駐車場に車を停めていた。
「こんな所に……?」
「あっちより駐車料金安いからね」
なるほど。
そう思うと、その高い駐車場に止めていた坂部さんとは、経済的な差が有るのだろうか? ……考え過ぎか。
料金を精算してから車に乗せてもらう。
なんとなく、傘木さんにぴったりと思う、スポーツタイプの軽自動車だ。
大阪万博のロゴ入りの白ナンバー。希望ナンバーを取得しているのか?
「堀田さん、家はどの辺り?」
「
宇治川の近く。あの辺りだと、徒歩で40分位掛かるんじゃないか?
「えっと、
「行き過ぎです。本当に橋のすぐ北東ですよ」
「……だいたい分かったよ……」
本当に? 道に迷われても困るんだけど……。
「金山くんは?」
「北宇治高校までお願いします」
流石に休日に学校というのに疑問を抱いたようだ。
「学校? 家まで送ってくよ?」
「いえ、学校で大丈夫です」
「了解。それじゃあ先に堀田さんの家に寄ってから北宇治行こう」
誰も
国道9号線を西へ走り出した時は、どこへ向かっているのか心配になったが、高速へ向かっていただけだった。
「そこの路地を左折です」
隠元橋を渡った。
その先の細かい指示を、堀田先輩が出す。
「オッケー」
「そしてそこ、手前から5軒目です」
「はい……。ここね。堀田さん家到着」
『HORITA』
至って普通の一軒家。
本当に隠元橋すぐ北東だ。
「それでは傘木先輩、今日はありがとうございました」
「こちらこそ。サンフェス行くから頑張ってね」
「はるかも、また学校で」
「はい、お疲れ様でした」
堀田先輩が運転席の傘木さんに声を掛けてから、後ろの席の俺にも声を掛け、車を降りて家へと入っていった。
「さて。次は北宇治ね」
「はい、お願いします。ところで道分かってますか?」
「もちろん。三年間通ってたんだからね」
車が走り出す。
JR奈良線の踏切を渡り、宇治街道を北上。
交通量が多い割に、道幅は相変わらず狭い。
「渋滞してるねぇ……」
「いつものことですよ。この道は」
「これでも奈良線複線化で、少しはマシになったんだけどね」
「渋滞は変わりませんよ」
ミラー越しに、傘木さんと目が合う。
「なかなか進まないねぇ……」
どうした? 傘木さん。
「何でしょう? 何かありますか」
何か変だ。何か言いたげ。
「えっと、金山くんは堀田さんとどういう関係なのかな……?」
気になるのか。まあ、当然ですよね……。
「ただの顔見知りですよ。部も違うし、これといった接点もないし」
「えっ? そ、そうなんだ」
驚くところか?
「だって、彼女金山くんのこと、名前で呼んでたから。親しいのかなって」
名前呼び……?
『
『はるかは来たことあるの?』
「本当だ……」
全然気が付かなかった。
えっ?
入学式翌日の朝、
それ以降、今朝まで会っていない。
どういうことなんだ?
「えっと……混乱させちゃったかな……。ごめんね」
「あ、いえ。気にしないでください……」
謝られてしまった。
宇治街道はなかなか進まない。
下手すると、
信号にも引っ掛かる。
結局、
「懐かしいなぁ。この辺りも変わらないね」
学校の前の坂に差し掛かる。
「ここで停めてください」
ちょうど、校門の前で車を停めてもらう。
「学校に用があるの?」
今日は土曜日。
学校は休みだけれど、部活はある。
現に、グラウンドからは野球部と思われる掛け声、校舎からは吹奏楽部の様々な楽器の音が聞こえてきている。
「いいえ。ここが俺の家です」
「えっ! 校門の真ん前!」
驚くところか?
「てっきり学校に来たのかと思ったよ。びっくりした……」
はい、驚きますよね……。
「あ、良ければ上がっていきますか? お礼にお茶でも如何ですか?」
土曜のこの時間なら、母がいる。ゆうきは……分からない。
「えっ? まあ、せっかくだしね……」
『大阪万博のロゴ入り白ナンバー』。
そんなものありませんね……。
万博が2025年の予定なので、あり得るかな。と思って作りました。
そうなると、大阪の交通網は大きく変化しているかもしれませんね。
はるか 達には、あまり大阪へ行かないように言っておきます(笑)
22年5月18日追記、
なんと、大阪万博のロゴ入りナンバープレートの交付が決定したみたいです!
本当になってしまいました(汗)
今後、どうなるかが楽しみです。