【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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2-6……これは一体どういうことでしょう?

 

「懐かしいなぁ。久し振りだね」

 

傘木さんと一緒に北宇治の校門を潜る。

 

「卒業して11年かあ……」

 

感慨深い感じだろう。

 

俺は生徒用の昇降口から上履きに履き替え、傘木さんは来客用玄関から校舎へ入る。

 

一応、部活中の体を整えるには部室の鍵が必要だし、傘木さんも来客手続きを踏まなければ不審者・侵入者に扱われてしまう。

 

『職員室』

 

誰がいるかな……。

 

「し、失礼します……」

 

ゆっくり扉を開く。

 

良かった。居るのは滝野(たきの)先生と西尾先生だけらしい。

 

「1-2の金山です。図書館閉架書庫の鍵を借りにきました。それと、来客が一名……」

 

後半、変な感じになってしまった。

 

「あれ? 金山くんだ。……隣はどなた?」

 

西尾先生が俺に気づき、傘木さんにも気づく。

 

そして、首を傾げる。

 

その様子に、隣の滝野先生も顔を上げた。

 

「傘木……!」

 

声を上げながら立ち上がった。

 

驚いているのか?

 

そうか……。傘木さんと滝野先生はここにいた時期が被るのか。

 

もしかして同級生か?

 

「滝野じゃん! どうしたの?」

 

「それ俺の台詞。俺はここの教師だよ」

 

「滝野先生……?」

 

二人のやり取りに、西尾先生がまた首を傾げる。

 

「彼女は、傘木希美といいます。ここの卒業生で、俺とは同級生なんです」

 

俺の読み通りだ。

 

「そうでしたか。あ、来客手続きですね。こっちの用紙に記名お願いします」

 

西尾先生の案内で、傘木さんが来客手続きを行う。

 

「吹部に用か?」

 

「えっ? うん。そうだよ」

 

「せっかくだし、俺も少し顔出すか。確か、滝先生も松本先生も外出中だしな」

 

滝野先生も来るの……?

 

 

 

「そっか……。今年は高坂が来るのか」

 

「うん。高坂さんと、私の大学の先輩がね。新山先生の代わりに」

 

「高坂もすっかり有名人だもんな」

 

職員室を出た俺たちは、音楽室へ向かっている。

 

二人は昔の話などで会話が弾んでいるが、俺は蚊帳の外……。

 

「滝先生も戻ってきたし、今年は全国行けそうだな。まあ、過度に期待しすぎるとプレッシャーになるか」

 

「程々にね」

 

階段を昇る。

 

それにつれ、聞こえてくる楽器の音も大きくなる。

 

「園田先生も頑張ってたんだけど、一昨年の全国銀止まりで、去年は関西銀。だから、滝先生が戻ってきたもんだから、玉突きで、顧問外されてしまったんだよな……」

 

なるほど。そんなことがあったのか。

 

『音楽室』

 

俺は初めて来たが、傘木さんは久し振りなのだろう。

 

「待ってて」

 

そう声を掛け、滝野先生が音楽室へ入って行く。

 

「失礼します。って、滝先生に加納。戻っていらしたんですね」

 

驚いた声。

 

思わず、傘木さんと顔を見合わせる。

 

「ええ。打ち合わせが終わって先ほど戻りました。松本先生は直帰です」

 

「純ちゃん先生、ペット教えてくださいよ」

 

純ちゃん先生……? 滝野先生のことか。そんな渾名(あだな)初めて聞いた。

 

「俺から教えれることは無いよ。てかお前、地理大丈夫なのか?」

 

「あやち~、純ちゃん先生苛めてくるよ」

 

「はいはい。分かってるって」

 

堀田先輩の声だ。

 

「堀田さんも戻ったんですね」

 

「堀田さんは外部指導者との打ち合わせに行っていました。一旦帰宅してから来たみたいですよ。坂の下で拾ってきましたから。滝野くん……失礼、滝野先生はどうしたのですか?」

 

「ちょっと俺には話が読めませんから、入ってもらいますね。二人とも、入ってきて」

 

滝野先生の声に、二人で音楽室へ入る。

 

「失礼します……」

 

「金山くん? それに傘木さん……。これは一体どういうことでしょう?」

 

滝先生も驚いている。

 

それどころか室内の全員が驚いているようにも見える。仕方ない。

 

 

 

 

順番に状況を説明する。

 

 堀田先輩と俺が、外部指導者の打ち合わせに行った。

 

 帰りに傘木さんに送って頂いたが、俺は部室に用があり、学校へ送ってもらった。

 

 傘木さんがお手洗いを借りに校内へ入っていたところ、校門に停まっていた車を見つけた堀田先輩から連絡があり、お連れするように言われ、やって来た。

 

 

ちょっと違う部分もあるけれど、だいたいこんな感じだろう……。

 

 

 

 

 

 

音楽室の黒板前に、(たき)先生 滝野(たきの)先生 傘木(かさぎ)さんが並んでいる。

 

そして、何故か三人の隣に俺も……。

 

俺は部外者です。早く帰りたい。

 

とは言えまい。

 

「それでは皆さん。と言っても全員は居ませんから、また改めて説明しますが、せっかくですから居る人は聞いてください」

 

滝先生が話し始める。

 

「二・三年生は覚えてると思いますが、今年も昨年同様、外部指導者の指導を予定しています」

 

外部指導者……? (にわか)に騒がしくなる。

 

「プロの木管指導者 坂部(さかべ)先生、金管の演奏家の高坂(こうさか)先生、そしてパーカッションの橋本(はしもと)先生の三名にお願いします」

 

先生の名前を聞いた途端、静かになった。

 

やはり、有名な人たちなんだろう。

 

「本来なら私が直接打ち合わせに行くべきでしたが、生憎サンライズフェスティバルの打ち合わせで行けませんでした。代わりに、堀田(ほりた)さんと金山(かなやま)くんにお願いしまして、今日行ってきて頂いたところです」

 

はい。行って、帰ってきました……。

 

「ところで滝先生、打ち合わせ私たちで良かったんですか?」

 

聞く側の堀田先輩が手を上げて言った。

 

先輩、こっち側の人では?

 

「大丈夫ですよ。高坂さ……高坂先生とは事前にお会いしていますし、坂部先生にはお電話でお話していますから。日程の調整だけが、まだだったのです」

 

そういうことだったのか。

 

それなら尚のこと俺が行く必要無かったんじゃないのか?

 

「滝先生、そちらの女性は何方ですか?」

 

加納(かのう)先輩が手を上げて言う。

 

「彼女は、傘木希美(のぞみ)さんです」

 

「傘木希美です。ここの卒業生でフルートを演奏しています」

 

フルート。

 

そう言うなり、加納先輩がキョロキョロし始めた。

 

誰を捜しているのか、俺にも検討がついた。

 

しかし、彼女は音楽室にはいない。

 

そういえば、この部屋には(あずさ)もいない。

 

となると、もしかして……。

 

俺はグラウンドが見える側の窓に寄る。

 

どれどれ……。

 

いた。紅葉(くれは)と梓だ。

 

「加納先輩、あっちです」

 

俺は加納先輩の方を向き、窓の外を指差しながら言った。

 

「あっち? 何のこと……って、紅葉(くれは)ちゃんいるじゃん!」

 

紅葉(くれは)を見つけて驚く。

 

「なんで分かったの?」

 

「いや、音楽室に居ないなら、紅葉(くれは)と梓二人で練習してるんじゃないかな……って」

 

なんとなく、だけどね。

 

「そっちじゃない。私が紅葉(くれは)ちゃんを探してることに気付いたの?」

 

俺がそれに気付いたことに驚いているのか。

 

「なんで分かったの?」

 

「傘木さんがフルート奏者だと分かった途端、加納先輩キョロキョロし始めたから……。なんとなく」

 

「凄い……」

 

「でしょ?」

 

なんでそこで堀田先輩がドヤ顔なんですか。

 

 

 

「金山、清水(しみず)さん呼んで」

 

加納先輩が当たり前のように言い放った。

 

「え? いや、俺紅葉(くれは)の連絡先知りませんよ」

 

「傘木さんに演奏聞いてもらいたいのよ」

 

いや、人の話聞いてますか?

 

待てよ。使えるか?

 

「分かりました。ちょっと呼びに行ってきます」

 

渋々、という感じを装って音楽室を出る。

 

 

よし。音楽室脱出成功。

 

これで解放された。

 

俺は吹奏楽部とは無関係の部外者のはずなのに、まるで関係者のように扱われて疲れる。でも。

 

「今日は仕方ないのか……」

 

「何が?」

 

「えっ!」

 

階段を降りる途中で、下から急に声掛けられるとビックリするんだけど!

 

「あ、練習終わりにしたのか?」

 

下に紅葉(くれは)と梓が立っている。

 

この立ち位置、逆だったらスカートの中が見えているだろう……。

 

「ちょっと風強くなってきたから」

 

なるほど。梓の頭を見ると、髪が少し乱れている。

 

「なんでここにいるの?」

 

「ああ、加納先輩に紅葉(くれは)を呼んで欲しいって言われて。さっき、築山に居るのが見えたから、呼びに行くところだったんだよ」

 

「私を?」

 

「そう。音楽室に居るよ」

 

オッケー。そう言って紅葉は音楽室へ向け、階段を登って行く。

 

それを梓が追い掛ける。

 

よし。俺はお役御免、帰ろう……。

 

 

 

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