【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
お待たせしております。
実は、次回作の執筆を開始したため、こちらの執筆が物凄く遅くなっております。申し訳ありません。
なお、次回作はユーフォとは全く関係の無い、しかしながら『滝野 純一』くんを主人公にしたクロスオーバー作の予定です。
……話が脱線しないうちに、本編どうぞ。
日曜日の朝、文芸同好会部室にて。
「聞いてた話と違うんですよ」
「確かにね……」
先輩は定位置の椅子に座り、本を読んでいる。
犬山さんはその隣に座り、構い無しに話し掛けている。見慣れた光景だ。
「
あ、俺もそれ気になってた。
「休みです。みなみ先輩に会いに来たんですよ」
そうですか……。
「そう」
先輩の態度は素っ気ない。休みの日に可愛い後輩が、わざわざ自分に会いに来たというのに。
……違う?
まあ、さっきも言ったが、いつもの光景だ。
「それで、違うじゃないか! って詰め寄ったら、一言『うそやでー』って。どう思います?」
「それ、誰の話?」
「私の
「そうね。確か、前はキャンプ場を作って運営してるって言ってなかった?」
「はい。でも、教員は副業が禁止されている筈だから、嘘だと思うんですよ。どちらかが」
「でも、前に見せてくれた写真だと、キャンプ場建設に関わっていたのは事実よね?」
「はい。だから、もう何処までが本当なのか、分からないんですよ」
息詰まった。お茶を飲もう。
俺の机に置いてあるのは、『美濃白川茶』。ペットボトルのお茶だけど、これは……。
「これ、犬山さんが?」
そう尋ねると、二人の視線が俺を向く。
「うん、私の。引っ越す時に通りすがった白川町の道の駅で、買ってきたやつ。賞味期限ヤバいから持ってきたの」
賞味期限……って、昨日じゃないか!
「犬山さん、これ期限切れ!」
「賞味期限だから、1日2日過ぎたぐらいなら、大丈夫だよ」
まあ、確かにそうだけど……。お腹壊したらどうするんだよ……。
「引っ越す時に、美濃白川を通ったの?」
さっき犬山さんが言ったことに、加木屋先輩が反応する。
「はい。……そういえば、みなみ先輩って前は何処に住んでいたんですか?」
「
「マジですか! 私は高山市です」
お。二人とも岐阜県出身だったのか。
「高山市から41号線を南下して、途中から高速道路通ってきました。先輩は?」
「私のところは、可児市と言っても
「新幹線だったんですね。ところで、京都に引っ越してきて驚いたことってありますか?」
話が変わった。
引っ越してきて驚いたこと。それは俺も気になる。
「そうね。やっぱり味の違いかしら」
「先輩もですか!」
確かに味は違う。
全国大会前日に、名古屋駅のホームで食べたきしめんは、こっちの方とは異なる濃い味付けになっていた。
「あとは、京都の町並み……風景かな?」
「と、言いますと?」
「ほら、今までだと、写真やテレビでしか見たことの無い建物や風景が、自分の目で見ると、本当に存在していたんだな……って、実感したの」
「なるほど。それは私も思いましたね」
「奈良の東大寺と、
「
「泊まったホテルが無くなってたのは驚いたわ……」
「それじゃあ、私はバイトあるからこれで……」
時計を見ると、丁度10時。
今日お昼からのシフトらしい。
本を畳んで鞄に入れ、その鞄を持って立ち上がる。
同時に犬山さんも立ち上がった。帰るのだろう。
「今日はありがとうございました」
「私も。面白い話も聞けたし、良かったよ」
扉を開け、二人が外へ出た。
「それじゃあ」
「また」
よし。これで静かになる。
「それでね。金山くん!」
と思ったのが間違いだった。
犬山さんは戻ってきた。まだ帰らないらしい……。