【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
今回は少し長いです。
お楽しみいただけると幸いです。
顧問でも部員でもないのに、肝心なメンバーよりも先に到着してしまった。
聞こえてくる話だと、
この公園は、その両道路の真ん中にあるため、影響は大きいだろう。
「来ませんね……」
「確かに交通量多かったから気になったけど、高速が通れないのなら、仕方ないかな」
「園田先生の運転が、凄くて驚きましたよ」
「そう?」
うん。交通量が多いからって、細い路地や裏道、家の
早いはずだ。
「普通なら楽器乗せたトラックが先に来るんだけどね」
「ト、の字すら見えませんよ」
しかし、こういうイベントの場合って、どちらかが来ない場合、面倒なことになるんじゃ?
楽器だけあっても演奏者が居ないと意味ないし、逆も
時間だけが過ぎてゆく……。
俺と
高速道路が通行止めになっており、近隣の道路が渋滞しているからだ。
うちの学校だけではなく、他も殆ど来ていない。
「はい。北宇治園田です」
園田先生が電話をしている。
「はい、そうですか。了解しました」
なんか、俄かに会場が慌ただしくなってきた。
観客の間をスタッフと思われる人たちが駆けずり回っている。
「では失礼します」
「何かあったんですか?」
先生の電話が終わったので、声を掛けた。
「
立華の鳥居先生?
「園田先生、立華の先生と知り合いなんですか?」
「そりゃ、大会で会ってれば連絡先ぐらい交換するでしょう」
それもそうか……。
「立華、あと一時間掛かるかもしれないそうよ。しかも、車が全然進まないから、それ以上掛かるかもって」
立華、ここからそんなに遠くないはずだけど……。そういうレベルなのか。
『大会本部より連絡します』
公園のスピーカーから声が流れる
『
えっ? 先生呼ばれた。
「私? 全く……。ちょっと行ってくる」
先生はなんか不服のようだ。
「怒ってますか?」
「私は観客よ。いくら集めれる先生が少ないからって……。
「はい。行ってらっしゃいませ」
先生が行ってしまったので、一人残される。
さて、どうしたものか。
……あ、スマホが震えている。ライン電話だ。
相手は……
着拒……というのは冗談。今出ます。
「はい。金山です……」
『あ、金山くん?』
加納先輩の声。
「今どの辺ですか?」
『そう言ったってことは、今の状況を把握してるってことだね。さすがはるか!』
『うるさくてごめん。状況分かってるんだね』
隣は堀田先輩か。
ざわざわしてるけど、それ以外の音は聞こえない。状況的にバスの中だろう。
「はい。今も園田先生が本部に呼ばれて行きました」
『えっ? 金山くん太陽公園着いてるの?』
「かれこれ30分前に。先輩、バスは今どの辺りですか?」
『あと20分で着きそう。国道から外れたから、流れはスムーズだし』
そうか。お。
「分かりました。待ってます」
通話を切る。
ちょうど、駐車場に『南宇治高校』と書かれたバスが入って来た。
同じ府立高校なのに、あっちは自校のバスがあるのか……。この差は何だろう?
南宇治高校には、北中の人が多く進学しているので、知り合いは多い。
でも、俺は(中学の時の)吹奏楽部に知り合いは殆どいないから、声を掛けられることはないだろう。
……と思ったのが間違いだった。
「はるか か?」
えっ? この声……。
「
帽子ありの衣装だから、一瞬気づかなかったが、そこにいたのは
「やっぱりはるかや。え、吹部に入ったん?」
マーチング衣装を身に
独特の喋り方も相変わらずだな。
「いや、俺が吹奏楽部に入る訳無いだろ。それは秋子だって知ってるじゃないか」
俺と秋子は幼なじみだ。
それこそ生まれた頃からの。
「知っとる。それやったら、なんでここにおるん? しかも制服着とるし。肝心な吹部よりもまだ来とらんに」
「それは俺も聞きたいよ……」
溜め息。
「うちよりも近い南宇治でさえ、ようやく到着か。そんなに渋滞酷かったか?」
「酷いなんて比じゃないて。バス一台分進むのに5分掛かってん! 歩いて行くって人まで出て、バスん中大騒ぎやったわ」
「分かった。分かったから」
声が大きい。顔が近い。
こいつは昔からこうだ……。
「あ、集合やで行くね。またね~」
足早と自分たちの場所へ帰って行った。
気楽というか、自由というか。
まあ、それが秋子を憎めない理由でもある。
あ、因みに秋子には彼氏がいるので誤解無きよう。
その彼氏は俺のことを知らなかったらしく。それに加えて、秋子のあの距離感。
俺が秋子を略奪したとか疑われて、殺されかけたことがある。
そんな事実は一切無かった。
誤解が解けた時の土下座は見ものだった。
思い出してみれば、略奪疑惑といい、賞の受賞といい。
俺の中学生活散々だったな……。
北宇治のバスはまだ来ない。
「お待たせ~」
園田先生が戻ってきた。
「お帰りなさい。何かありましたか?」
本部に呼ばれたということは、何か決まったのだろうか?
「会場に到着している先生方かき集めて、話し合い。開会を二時間遅らせることになったの」
二時間か……。
「それと、行進する順番も、当初の予定を基準に進めるけど、いない場合は後回しで、準備出来次第割り込みになるって」
あ、またスマホが震えている。
えっと……加納先輩か。
「先生、このこと部員たちは?」
「松本先生には連絡してあるから、知ってるかも」
「分かりました。加納先輩から電話なので、出ますね」
ライン電話に出る。
「はい。金山です」
『あ、金山くん。もう着くところだけど、会場に立華着いてる?』
「立華ですか? まだ来てないと思いますけれど。今いるのは、南宇治・東馬堀……」
周りのバスを見渡す。
南宇治のように自校でバスを持っている学校は少ない。
そうなると、バスの前面にあるツアーの表示札を見るしかない。
『ありがと。立華まだなんだね』
「それが?」
『うちの行進順、立華の次なのよ。だから少し気になったの』
分かりました。そう告げて電話を切る。
「加納さんは何て言ってたの?」
「もうすぐ着くそうです。それと、立華が着いているか聞かれました」
「なるほどね。立華の次がうちだから気になるのよ」
立華か。北宇治と負けず劣らずの強豪校だっけ。
「立華の
確かに。
「逆に、中途半端な演奏だったら、誰も気にしない。下手だと逆の意味で目立つ」
然り。
「そんなこと言っても、北宇治も強豪校だから、どっちでも目立つと思うけどね……」
あ、トラックが来た。
朝積み込んだトラックだから、うちの楽器だ。
「先生、楽器が来ましたよ。先に」
「あら。バスも来たんじゃない?」
本当だ。トラックの後ろにバスがいる。
部員の乗ったバスだ。