【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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4……きたるオーディション
4-1……猛勉強中


 

吹奏楽部のイベント、サンライズフェスティバルが終わった。

 

そろそろ中間試験だ。

 

普段の図書館閉架書庫室(としょかんへいかしょこしつ)は、パソコンに向かい黙々と入力する俺と、読書(時々仕事を)している園田先生だけなので、静か。

 

しかし……。

 

「ここは?」

 

「前の式に当てはめてみい」

 

「出た数字は?」

 

「そこ逆だって」

 

今の室内は騒がしい。

 

試験一週間前は部活動禁止期間なので、当然吹奏楽部や我が文芸同好会もお休み。

 

従って、防音室の貸出も同様。

 

俺も、部活は休まなければならない。学校の決まりだから逆らうのは良くない。と、思っていたのだが……。

 

吹奏楽部の先輩から、図書館が一杯で勉強する場所に困っていると相談された。

 

そんなわけで、勉強する場所として、部室を貸すことになった。

 

まあ、部室は園田先生がいる関係でこの部屋は毎日開いているし、俺も密かに執筆出来るから助かる。

 

つまり、俺は部活を休んでいない訳だ……。

 

 

 

 

 

今日も、男子部員が集まって勉強会だ。

 

「で、ここにその値を導入して……」

 

トランペット、町方(まちかた) 明宏(あきひろ)

 

「そこはXとYを入れ替えるの」

 

「でも、Zはどこに入れれるんですか?」

 

トロンボーンの白沢(しらさわ) タカヒロ先輩と、布袋(ほてい)……楽器と下の名前が分からん……。

 

以上、三名が数学の猛勉強中。

 

「なんでそうなるの?」

 

「なんでこうならないんですか?」

 

うん?

 

「布袋、それ見してみ」

 

なんか勘違いしてないか?

 

「えっ? これだけど」

 

「どれどれ。ああ。これはな、その考え方が間違ってる。ここは……」

 

「マジか」

 

「すげぇよ。金山頭良いんだな」

 

これぐらい簡単だよ。俺を誰だと思ってるんだ。

 

「進学クラス除けば、5教科全部順位一桁だったの知らない?」

 

一応、勉強は出来る方だと思っている。

 

進学クラスでもやっていけるだろう程度には。

 

「何々? そういえば、金山確か、実力テストで全教科10位以内だったよな?」

 

町方は知っているのか。

 

「ところで、小牧(こまき)さんって頭良いのか?」

 

布袋が思い出したように呟いた。

 

(あずさ)

 

「布袋、梓と同じクラスだっけか」

 

梓は1-3。滝野先生のクラスだ。

 

「梓? あ、小牧梓さんね。小牧さんはどうなの?」

 

「あれで頭良かったら化け物だろ。梓の演奏技術は知ってるよね?」

 

トランペットの腕は部内一だと聞いている。

 

「うん」

 

「確かに」

 

「それは納得」

 

だろう。勉強は、というと……。

 

「俺と同じくらいだよ」

 

「いや、それ充分頭良いじゃん!」

 

「というか、それ遠回しに小牧さんのこと、化け物って言ってるよね?」

 

バレた? むしろ、梓にとって化け物は褒め言葉だよ。

 

物心付いた頃からずっとトランペット一筋だし、演奏技術はプロ並み。

 

それに加え、ある程度勉強も出来る。

 

ルックスも良い。

 

中学の頃、何人か告白している奴を見掛けたが、そこら辺の有象無象が落とせる相手ではない。

 

 

 

 

「皆さん、手を動かしてくださいね。勉強しないなら部屋閉めますよ?」

 

手が止まっている。

 

一応、この部屋の使用権限は、俺にもある。

 

元々、勉強する場所に困ってこの部屋に来てるのだから、追い出されて困るのは彼らだろう。

 

「ごめんなさい。勉強します」

 

そう、それでいい。

 

「そういえば、紅葉(くれは)さんはどうなんだろう?」

 

またお喋りを……。って、紅葉(くれは)

 

紅葉(くれは)は壊滅的だぞ。あいつは勉強全く出来ない」

 

紅葉(くれは)の話ということで気になって聞いていると、なんか凄い話を聞けそうだ。

 

「でも、実力テスト順位一桁だったよな? 金山くんには敵わないけど」

 

確かに。俺の2つぐらい下で名前を見た。

 

でも、順位一桁はかなり頭良いんじゃないか?

 

「あれ、テスト前夜に俺が一緒に一夜漬けしてるだけだぞ」

 

「マジかよ。ってか、町方は紅葉(くれは)さんとどういう関係なんだよ?」

 

前夜に一緒に一夜漬けって、なかなか凄い話だな……。

 

「幼なじみだよ。それなりに長い付き合いだし。家も隣同士。それに、おそらく俺に惚れてると思う」

 

「えっ」

 

「マジかよ……」

 

そうなのか。

 

惚れてるなんて初めて聞いた。

 

となると、立華(りっか)の推薦を断ってまで北宇治に来た本当の理由は、これなのか。

 

「なんで付き合わないの?」

 

「演奏に集中させるためだよ。関係進展させて、演奏が疎かになったら大変だろうに」

 

そういうものなのか……。

 

ってか、また手止まってる。

 

「皆さん。本当に部室閉めますよ?」

 

 

 

 

この後、三人とも集中して時間一杯勉強してくれた。

 

俺も静かな環境で集中出来た。良かった。……のか?

 

俺だけ試験勉強全くしてないな。

 

まあ、勉強しなくたって試験ぐらい楽勝だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に試験当日になった。

 

中間試験は5教科のみなので、日程は1日だけ。

 

この1日の為に、各々頑張っていたわけだ。

 

午前の4教科が終わると、やって来るのは昼休み。

 

普段なら騒がしい昼休みも、今日は静かだ。

 

早く昼食を済ませ、少しでも次の試験勉強をしようというのだろう。

 

もちろん、全員が全員そうとは限らない。

 

「はるかっ。どうだ?」

 

例えば、今話しかけてきた(たくみ)とか。

 

「工、お前勉強いいのか?」

 

わざわざ違うクラスに顔出しに来ている。

 

「今更だろ。ここで足掻(あが)くぐらいなら、もっと早くからやってた方が良いだろうに。どうにかなるもんでも無いだろ」

 

「流石工。これで頭良ければなお凄い。出番あって良かったな」

 

「頭悪くて悪かったな。……出番ってなんの話?」

 

工は成績こそ良くないものの、普段使えるような雑学をたくさん知っているので、一概に頭が悪いと言い切れないんだよね。

 

『今更足掻いても』か……。お。

 

紅葉(くれは)はテスト範囲を頭に叩き込んでいる模様。

 

お弁当を食べながら、問題集を見ている。

 

そんなに見つめたら穴開くんじゃないか?

 

というか、箸止まってる。

 

 

さて、そんな一夜漬けの成果は如何程(いかほど)か……。

 

 

 

 

 

 

「はい。そこまで!」

 

チャイムが鳴り、西尾(にしお)先生の号令がかかる。

 

「おわった~!」

 

「疲れた……」

 

中間試験終了。

 

クラス内の反応は三者三様。

 

このために一週間勉強していた人が大多数だろうから、納得。

 

「待って待って。答案用紙回収するまで待って」

 

終わった安堵(あんど)感から立ち上がろうとする人を、先生が(たしな)める。

 

「まだって言ってるでしょ。言うこと聞かないんなら0点にするからね」

 

「うわ。ちーちゃん先生厳しい」

 

「こらそこ。ちーちゃん呼ばないの」

 

先生が順に答案用紙を回収してゆく。

 

『ちーちゃん先生』か。確か、下の名前千夏(ちなつ)だよな。

 

だからちーちゃん。

 

滝野先生が『純ちゃん先生』だっけか。

 

すると、滝先生や松本先生にもそういったニックネームがあるんだろうか?

 

……『粘着イケメン悪魔』と『軍曹(ぐんそう)先生』が強すぎるな……。

 

「なに考えてるの?」

 

えっ!

 

突然降りかかった声に驚いた。

 

「なんでもないです……」

 

「そう?」

 

西尾先生に驚かされた……。

 

「hとnをしっかり分かるように書き分けられたか不安になりましたよ。変なこと言うから」

 

「ドンマイ。その時はその時だよ」

 

軽いな……。

 

 

 

 

 

「はい。じゃあ解散。気を付けて帰ってね。部活の人も、忘れ物無いようにね」

 

答案用紙を集め終えると、解散となった。

 

「部活は?」

 

「今日ぐらい休ませろよ」

 

「でも行かなきゃ怒られるぞ」

 

「どうだった?」

 

「まあまあかな」

 

教室が騒がしくなってきた。

 

荷物を(まと)め、そんな教室を出る。

 

とりあえず、部室へ行ってテストの自己採点だ。

 

この時間なら、園田先生が居るだろうし、鍵を借りずに直行。

 

 

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