【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
今度は扉の鍵が開いている。
「失礼します……」
「あら、遅かったわね。
何処って。
「それ、俺の
「というと?」
「ここに来ても先生がいないから、職員室に鍵を借りに行って。そうしたら、滝野先生に捕まって。戻ってきたら開いていた……。俺、なんのために職員室行ったんでしょうね」
「あら、職員室来てたの。ごめんなさい、気づかなかったわ」
やはり、俺に気づいてなかったのか。
「集中してましたよね」
「えっと……あれはね。滝先生と松本先生が、私を挟んで両隣だから、オーディション結果のやり取りを、私を挟んで話していてね。邪魔にならないように小さくなってたの」
それは……。何というか。気の毒だな……。
「でも、オーディション結果丸聞こえじゃないですか?」
間に部外者がいるのに重要な話をするなんて、あの先生たちは何を考えているのか。
いや、部外者ではない、という判断の元かもしれない……。
「うん。全部聞こえてるから知ってる。あれは
「揉める……どういう意味ですか?」
「さて? じきに分かるわよ。ね。『金山相談所』所長さん?」
俺の嫌な予感は的中するのか……。
そういうときに限って、一番目の予約が
因みに、今日はコンクールメンバーでの合奏練習を時間一杯行うためか、18時からしか予約が入ってない。
時計を見ると、17時55分。いつもなら、そろそろ来る時間だ。
しかし、今日は時間ギリギリまで練習するらしいから、少し過ぎるかもしれないな……。
案の定、扉が叩かれたのは、それから5分後のことだ。
「失礼します」
ノックの後、扉が開く。
「失礼します」
「遅れましたが、防音室お借りします」
加納先輩と、
3人入ってきたら扉が閉まった。
予約表には4人と書いてあるが、3人だけ……。
そのままカーテンの向こうへ消える。
俺や園田先生と一言も喋ることなく。
『ペット 加納 吉浜 新川
いつもなら何かしら会話してから入っていくのだが、今日は無言だったし、雰囲気も悪かった。
普段と大違いだ。
時間が押しているから、というのは理由ではないだろう。
別の理由がありそうだ。
「トランペットは、開明さんだけ落ちたみたいね」
「開明先輩が……」
「彼女、高校入ってから吹奏楽始めたから、経験者の子たちには
いろいろって
「それに今回、トランペットソロ、
「
「一年生がソロなのは揉めるわね。でも、本気で全国目指すなら、学年関係なく上手い子が吹くべきだと思う」
高坂さんが興味を持ったほどの演奏だ。
「まあ、いずれにせよ、私が口を出す立場ではないからね。顧問じゃないから」
冷たいな……。
でも、そんなものだろう。
部外者が口を出したら余計に
「先生」
「何かしら?」
「この様子だと俺の出番は、当分先でしょうね」
先生が、部外者を理由に口出ししないと言うのなら、それは俺とて同じ……。
「さて? 案外すぐかもしれないわよ」
いたずらが見つかった子どものように苦笑いする先生を見て、嫌な予感が的中しないことを願ってしまった。