【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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今回は、別視点でのお話しです。

偶々日付が重なったので、ここで投稿します。

アニメでは、滝先生と松本先生が巡回しているシーンがあったので、登場人物を変更して書いてみました。

少し長いですが、お楽しみいただけると幸いです。


11月18日追記

最初に投稿した時点で、前編 後編に分かれていたお話を、統合しました。





     あがた祭りの夜

 

今日はあがた祭りだ。

 

毎年6月5日に行われている。

 

ご覧のように数多くの出店が並び、大勢の人で賑わっている。

 

この祭りは日にちが固定されているので、今日みたいに土曜日に開催されるとは限らない。平日開催の場合もあるし、そちらの方が多い。

 

しかし、人出はもちろん土日開催の方が多くなる。

 

「はあ……」

 

溜息一つ。

 

「何度目の溜息ですかね? 滝野(たきの)先生」

 

本来、休日に行われる祭りなら、教員が見回る必要はないと思うのだが、今日は学校があった。

 

それゆえ、下校途中の生徒も多いのだ。

 

だから、こうやって教員が見回りをしている。

 

 

 

「何度目でしょうね。数えてませんよ」

 

「そんなに私と回るのが嫌ですか?」

 

「違いますよ。そんな訳無いでしょう」

 

一緒にいるのは滝昇(たきのぼる)先生だ。

 

俺と同じ北宇治高校の音楽教師で吹奏楽部顧問。

 

俺も学生時代、部活でお世話になった人だ。

 

厳しい先生だが、嫌いではない。本当に。

 

強いて、理由を挙げるなら……。

 

「今日は土曜日ですからね。学校があったとはいえ」

 

「ああ。気持ちは分かりますよ」

 

分かるのか? 部活で土日も休むことなく働いているのに。

 

「休みの日はゆっくり休みたいですよね。まあ、そうはいきませんけれど」

 

「毎日お疲れ様です」

 

心の中で敬礼。

 

「今年の吹部はどんな調子ですか? ……あ、こら! スカート丈直せ!」

 

服装違反の生徒を見つけて叱る。

 

(じゅん)ちゃん先生だ、逃げろ~。とか叫びながら走っていった。

 

「人気ですね。滝野くん……失礼、滝野先生」

 

生徒だった頃の癖が抜けないようだ。

 

そういえば、この前高坂(こうさか)の名前を出したときも、同じようなことがあったな……。

 

「別に人気者でも何でもありません。俺が甘いだけです」

 

そもそも、今の奴らは3年生で、俺と関わりは無いはずだ。

 

知ってる顔でもなかった。

 

「生徒に好かれているのは良いことですよ。それが滝野先生の良いところです」

 

光栄です。でも、なにも出ませんよ?

 

「少し息抜きしませんか? ほら、コーヒーでも」

 

そう言いながら指差す先には自販機。

 

「そうですね。ちょっと休憩しましょうか」

 

「はい。ご馳走様です、滝野先生」

 

俺が(おご)るのかよ!

 

俺の知ってる滝先生、こんなキャラだっけか? まあ、良いけどね。

 

 

 

 

 

「はい。どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

コーヒーを手に、近くにあったベンチに腰掛ける。

 

ここは出店通りから離れているので、人通りも疎ら。祭りの喧騒(けんそう)は遠くに聞こえる。

 

「さっきは途中になっちゃいましたが、今年は全国行けそうですか?」

 

コーヒーを飲みながら、滝先生に話し掛ける。

 

「油断は禁物ですよ。でも、園田(そのだ)先生が優秀な方ですから、二年生・三年生の実力は相当なものです」

 

その園田先生が、滝先生の着任で顧問を外された……。世の中上手くいかないものだ。

 

「十分全国を狙えると思っています」

 

「去年の関西はダメ金でしたっけ?」

 

「そう思うのも無理はないでしょう。しかし、残念ながら銀賞でした」

 

関西大会銀賞……。あの演奏で銀賞か……。

 

去年の関西は、偶々(たまたま)チケットが手に入ったので、聞きに行った。

 

 

11年前と同じ会場だった。

 

『胸を張って帰らなきゃ』

 

あのとき聞いた台詞が頭の中でこだましている。

 

どんなに完璧で最高の演奏をしても、上がいる。審査員に影響される。

 

コンクールとはそういうものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチで一休みしている。

 

しかし、一休み と言うには(いささ)か長い時間休憩している。

 

何故かって?

 

滝先生がトイレに行ったっきり戻ってこないからだ。

 

俺が知る頃から先生は迷い癖があるけれど、未だに治らないようだ。……治るものなのか?

 

これ、合流出来なかったらどうする?

 

だからって、俺が動くと尚合流出来なくなる可能性が高いから、動くに動けん。

 

「あ、純ちゃん先生だ」

 

後ろから聞き覚えのある声が掛かった。

 

振り向くと、担当しているクラスの女子生徒が二人立っている。確か、黒田(くろだ)牛山(うしやま)

 

制服だから、学校帰りだろう。

 

手には綿菓子・チュロス・金魚すくいで捕ったであろう金魚。

それなりにお祭りを楽しんでいるらしい。

 

って、そのスカート丈で金魚すくいやったのか……。屋台のおっちゃんの顔が……って、確かおばちゃんだったな。

 

「お前ら、スカート直せ。教頭に通報すんぞ」

 

「はーい」

 

「先生厳しいー」

 

ブーブー言いながらも直している。そうそう、それで良い。

 

「厳しくねえよ。俺は激甘だよ」

 

松本先生が学校一厳しい先生なら、俺はその逆だろう。

 

「で、こんなところでどうした?」

 

「それは私の台詞ですよ。先生見回りは? サボり?」

 

「んな訳あるか。滝先生が戻ってこないんだよ。トイレ行ったきり」

 

滝先生、と口にした途端、二人の目の色が変わった。

 

「えっ! 純ちゃん先生、滝先生と一緒に居るんだ。いいな~」

 

そうか。この二人陸上部だっけ。

 

「滝先生格好いいもんね。若いし」

 

若いって、もう40半ばだぞ。確か。

 

「滝先生ファン倶楽部としては、聞き逃せないよ。この話」

 

ファン倶楽部なんかあるのか。……吹奏楽部の部員はゼロだろう。断言できる。

 

「純ちゃん先生。滝先生の話してよー」

 

この二人のクラスは、音楽の担当が滝先生だ。

 

音楽の授業は多くないから、接する時間も少ないのだろう。

 

そうなると、先生について知ってることも少ない。

 

『粘着イケメン悪魔』という渾名(あだな)も知らないかもしれないな。

 

「おいおい。話って何? 俺が知ってることは少ないぞ」

 

「何でもいいから」

 

まあ、この二人よりは俺の方が色々知ってる。

 

「そうか。じゃあ……滝先生がブラックコーヒーを飲むのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり話し込んでしまった。

 

時間にして15分くらいだろうか。

 

「電話してみたら?」

 

遅い気はする。

 

しかし、こういう祭りの時って、男女問わずトイレは混雑する。

 

長い時間待って、大きい方だったりしたら、まだ戻ってこなくても不思議ではない。

 

トイレが近くにあれば別だが、ここからだと往復5分くらい掛かるからな。

 

「もし自分との闘いの最中だったら失礼だろ。トイレで電話鳴ったら恥ずかしいからな」

 

「あー。そういうことか……。でも、そうなの?」

 

ストレートに言うわけにもいかず濁したが、理解してくれたようだ。

 

「男ってのはそんなもんさ。まあ、あまりに時間掛かるようだったら電話するか」

 

スマホを取り出す。

 

トイレに立ってからざっと30分。流石に遅すぎるか。

 

電話しよう。

 

「それじゃあ純ちゃん先生、またね~」

 

「バイバーイ」

 

二人が去ってゆく。

 

「おう、遅くならないようにな。西尾(にしお)先生にチクるぞ」

 

「嫌だよ~」

 

「じゃあ早く帰れ。気を付けてな!」

 

『はい。滝です』

 

「あ、滝先生今どちらに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「滝野先生、お待たせしました!」

 

滝先生が走ってくる。

 

「待たされましたよ。何処行っていたんですか?」

 

「ちょっと周辺の見回りを……」

 

あ、これは嘘だ。

 

顔を見れば分かる。

 

「単独行動は禁止されてますよね? 本当のことを言いましょう。口外しませんから」

 

「ちょっと、迷ってました……」

 

やっぱり。

 

「トイレ混んでましたか?」

 

「女性の方は並んでましたね」

 

なるほど。こういったイベントではよくあることだ。

 

同時に、滝先生がどのくらい彷徨(さまよ)っていたのかも分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出店通りから離れた、宇治神社周辺を歩く。

 

この辺りは会場から離れているので、たむろしている連中も多い。

 

「せっかくですからお参りしていきましょうか」

 

不意に、滝先生が言った。

 

お参りって……。

 

「もちろん、巡回も兼ねて」

 

ですよね。

 

 

 

列に並んで順番待ち。

 

「あ、純ちゃん先生」

 

「おお。前のボタンは閉めろよ」

 

「はーい」

 

すれ違う生徒から声を掛けられた。

 

「本当に人気者ですね」

 

滝先生に言われ、苦笑い。

 

こうも声掛けられ続けると、言い返す言葉もない。

 

順番が回ってきた。

 

さて、俺がお願いすることは……。

 

まあ、神頼みしてもこればかりは本人たちの努力次第だけどな。

 

「何をお願いしたのですか?」

 

「内緒です。あ、おみくじ引きましょう」

 

社務所で二人、おみくじを引いた。

 

さて……。

 

「おお。大凶が出た」

 

なんと、大凶を引いてしまった。

 

なんというか……。感動。

 

『縁談 (まと)まらない』

 

ほっとけ。

 

『願望 他人の助けにより、早く成功します』

 

……。

 

そうか……。

 

そうなのか。

 

「なに笑ってるんですか? おや、滝野先生大凶ですか。初めて見ましたよ」

 

滝先生が興味深そうに覗いてくる。

 

「俺もです。ここ、大凶入ってるんですね……」

 

大凶は抜いている(引いても出てこない)所が多いから珍しい。

 

「凶のおみくじは、高い位置に結ぶと良いって、聞いたことがあります。あと、『悪運はサル』とひっかけて、猿の石像に食べてもらう所もあるとか……。結びましょうか?」

 

滝先生は俺より背が高いので、より高所に届く。

 

気遣いは有り難いが……。

 

「持って帰りますよ、記念に」

 

おみくじは持って帰っても良いからな。

 

「あ、滝先生はどうでしたか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社を出て、京阪(けいはん)宇治駅の方向へ歩く。

 

途中、何処からともなく、トランペットの音色が聞こえてきた。

 

「これは大吉山(だいきちやま)でしょうか?」

 

大吉山? そうか。

 

「展望台でしょう。あがた祭りの日に、ウチの生徒が演奏するのが伝統行事になっているらしいです」

 

加納(かのう)が言っていた。

 

去年は加納と堀田(ほりた)が、その前は黒田(くろだ)ともう一人誰か。……覚えてない。

 

「そうなんですね。ちょっと行ってみましょうか」

 

えっ!

 

「登るんですか? 今から」

 

「巡回ですよ」

 

そう言われれば逆らえない。

 

まあいいだろう。吹部の頃にこの人にさんざん(きた)えられたから、体力には自信がある。

 

一丁登ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見回り、という名目で大吉山の散策路を歩く。

 

「この音色、加納じゃないですよね?」

 

聞こえてくるトランペットの音は、聞き覚えがあるんだけど、思い出せない。

 

懐かしいような音だけど。

 

「確かに。加納さんではなさそうです。でも、それならこの音は一体誰の……おや?」

 

ユーフォニアムとフルートが加わった。

 

しかも、トランペットは2本あるようだ。

 

「フライデーナイトファンタジー。もしかして……」

 

滝先生は何かに気づいたようで、歩くスピードが速くなった。

 

でも、そんなに飛ばしたらバテませんかね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定、展望台に着く頃には滝先生の息が上がっていた。

 

高坂(こうさか)?」

 

展望台で演奏をしていたのは、なんと高坂・傘木(かさぎ)・堀田・加納というメンバーだった。

 

「滝先生……」

 

俺の声で、一緒にいる滝先生の存在に気付いたようだ。

 

「おや、高坂さん……堀田さんに加納さんも。傘木さんまで……」

 

滝先生はこのメンバーに驚きを隠せない。

 

「って、金山(かなやま)くん?」

 

なんと金山までいて、しかも泣いていた。

 

それに滝先生が再び驚く。

 

あ、黄前(おうまえ)もいるのか……。

 

「滝野先生、何やってるんですか。こんな所で」

 

「失礼な。あがた祭りの巡回だよ。そう言うお前こそ、久し振りに先輩に会ってそういう言い方は良くないぞ」

 

このやり取りに、涙が収まった金山が不思議そうな顔で見ていた。

 

「滝野先生、黄前さんと知り合いなんですか?」

 

金山、お前……。

 

「前にも言っただろ。吹部の後輩だよ」

 

「じゃあ、まさか『黄前相談所』って……」

 

「その まさか だ」

 

おや、金山の隣にもう1人女の子が立っている。誰だろう?

 

「金山、その子は?」

 

「えっ? ああ、妹です。ほら」

 

「あ、兄がいつもお世話になってます。妹のゆうきと言います。北中の2年生です」

 

なるほど、妹か。なんとなく似ている。

 

「社会科教師の滝野 純一です。いつも……」

 

「『黄前相談所』? えっ! あの看板まだ残っていたんですか!」

 

黄前が突然叫ぶ。

 

「お前……」

 

急だからびっくりしたじゃないか。

 

「えっと、あの看板は音楽準備室の片隅に置いてあったんだぞ。な、加納」

 

そう。

 

音楽準備室の片隅に放置されていたそれを、再利用して金山相談所に転用したんだ。

 

「はい。あれ? 黄前先生知りませんでした?」

 

加納が首を傾げる。

 

最初に発見したのは、加納が1年生、入学したての頃だった。

 

「知りませんでした。捨てたと思ってたし……」

 

もう忘れたいから……。

 

黄前は相変わらずだな。

 

本音というか、心の声というか。それが声に出る。それがこいつの癖だ。

 

俺の知る限り、ずっと前から。

 

 

 

……さっき、何の話をしていたんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思い出すな……」

 

ふと、黄前が呟く。

 

「何を?」

 

「えっ?」

 

俺は気になって声を掛けたが、何で声掛けられたのかが理解出来ていない様だ。

 

また、あの癖か。

 

「声出てるぞ」

 

そう言うと、慌てて口元を押さえた。

 

「相変わらずだな、その癖は。治らんもんだな」

 

「治らないんです。滝野先輩、何かいい方法知りませんか?」

 

「そんなこと俺は知らんよ。で、何を思い出したんだ?」

 

「あがた祭りの日に、初めてここに来たときの麗奈(れいな)の服装が、今の加納さんの服装と被るんです。なので、その時のことを思い出しました」

 

「加納の?」

 

白いワンピース。少し高い位置で(まと)めてある髪。

 

「普段の加納からは想像できんな。きれいな奴だったとは」

 

少々乱暴な奴だけど、今の服装だけ見れば、数倍清楚に見える。

 

勿論、乱暴と言っても、暴れる子というわけではない。そこら辺お間違いなく……。

 

「滝野先輩、それ失礼ですよ。だから女子にモテないんです」

 

「ほっとけ」

 

古傷(えぐ)られた……。

 

しかしまあ、加納は着痩せするタイプだったとは……。

 

高校生とは思えぬプロポーションには驚いたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう遅いですし気を付けて帰ってくださいね」

 

滝先生がみんなを送り出す。というか、帰路につかせる。

 

「あ、この子たちは私が送りますので」

 

「そうですか。では、傘木さんお願いします」

 

「それじゃあ行こうか」

 

金山・金山妹・堀田は、傘木が送っていくらしい。

 

4人揃って下山して行く。

 

「純ちゃん先生さよなら」

 

「おう。気を付けて」

 

加納は家が近いから大丈夫だろう。

 

黄前と高坂は大人だから、心配することはないな。

 

今は滝先生と何か話している。

 

「黄前先生は家近くですよね。あ……あれはご実家でしょうか?」

 

「今日は実家に子ども預けてきましたし、泊まっていくことになってます。大丈夫です」

 

「そうですか。では、気を付けて」

 

そして、俺の方へ来る。

 

「滝野先輩もお気をつけて」

 

「おお。またな」

 

「それではまた」

 

高坂と黄前は一緒に歩いてゆく。

 

 

 

さて。

 

残されたのは俺たち二人。

 

「もう一度出店通りを見てから帰りましょうか」

 

「売れ残り目当てですか?」

 

「まさか。ちゃんと見回りですよ。ついでで良ければ、売れ残りも探しましょうか?」

 

滝先生、本当にキャラ変わったよな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

22時を回っているので、明かりの灯っている出店は数えるほどになっている。

 

ウチの生徒が居ないか確認しながら歩く。

 

もし居たら補導対象だから洒落にならんが……。

 

「あ、滝先生! 滝野!」

 

出店の一つから、聞き覚えのある声が掛かった。

 

「あ、ナックル先輩」

 

一つ上の田邊(たなべ)先輩だ。名前が、田邊 名来(ならい)なので、通称が『ナックル』。

 

パーカスのパトリで、俺もお世話になった人だ。

 

「こんな時間にどうしたんですか? 滝野何か悪いことでも……?」

 

俺は何もしてません。

 

「違います。二人で巡回してるんですよ。ですよね、滝先生」

 

「はい。滝野先生と一緒にあがた祭りの見回りです」

 

そうか。ナックル先輩は俺が教師になったこと知らないのか。

 

まあ、俺とてナックル先輩が出店やってたことに驚いたけれど。

 

「そうか、先生か……。あ、余り物でよければ持って行きますか? 滝野もどう?」

 

絵に描いたような展開に、滝先生と顔を見合わせる。

 

「はい。持って行ってください」

 

余り物だという焼きそばやトウモロコシを分けて貰った。

 

「ありがとうございます。こんなに良いんですか?」

 

かなりの量だ。

 

「こんなにあっても俺1人じゃあ余すので、貰ってくれて助かりました」

 

「それでは戴きます。またお願いしますね」

 

悔しいが、この言葉の意味を知るのは少し先だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫でしょう。今日はお疲れ様でした」

 

JR宇治駅で解散する。

 

「お疲れ様でした」

 

滝先生と別れ、帰路につく。

 

さて、帰るか……。

 

 

愛する家族の待つ、俺の家へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて言おうものなら、只じゃ済まないだろう……。

 

北宇治に赴任する時に、さやかの提案で、妹家族の住む家に居候しているだけなのだから……。

 

『愛する家族の待つ』は間違っていないが、『俺の家』ではない……。

 

 

 





本編では書かなかった部分の大吉山での出来事を書いてみました。

ここで、黄前さんの登場です。

ここから彼女の出番が増えていく予定ですので、原作ファンの方にもお楽しみいただける作品に出来るよう精進いたします。

とはいえ、設定に関しては賛否ありそうですけれど……。


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