【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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5-4……先生の予想は当たりましたよ

 

放課後。

 

今日最初の防音室予約は加納(かのう)先輩だ。

 

昨日のお土産は、そのときに渡せば良いだろうと思い、まだ持っている。

 

さて。防音室が使われる時間まで一時間半。今日は合奏練習だと聞いている。

 

というか、貰ったスケジュールにそう書いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまり足音を立てないように音楽室へ向かう。

 

我ながらまるで不審者だな……。

 

合奏中のようで、演奏が聞こえている。足音は響かないので、気にしなくても良かったか。

 

「そこまで」

 

滝先生が演奏を止めた。

 

扉の前で聞く耳を立てる。

 

「何ですか、これ」

 

扉越しではあるが、酷く冷たい声だ。

 

「皆さん、ちゃんと集中していますか?」

 

俺には分からなかったが、散々な合奏だったのだろう。

 

「先生、先日の騒動を解決しないことにはみんな集中出来ないと思います。先生は不正について肯定も否定もしませんでしたよね?」

 

誰かが異を唱えた。この声は誰だろう?

 

「そうですか……」

 

先生の声には、呆れも混じっているように聞こえる。

 

確かに。不正って言っても理由があれではね。

 

先生は悪くない。強いて言うなら、加納先輩が熱中症になってしまったことに対しての監督責任だろうか。

 

「皆さん。来週ホールを借りて練習することになっているのは、ご承知だと思います。その場で、再オーディションを行いたいと思います」

 

再オーディション……?

 

室内が騒がしくなる。

 

「今回の騒動を要約すると、加納さんがオーディションの時に本調子ではなかったため、小牧(こまき)さんがソロに決まった、ということが根本(こんぽん)にあると考えます。だから、加納さんと小牧さんの二人に、全員の前で演奏し、ソロには誰がふさわしいか、全員で決定してもらいます」

 

これはこれで酷い話だ。

 

室内には賛否両論(さんぴりょうろん)様々な声が飛び交う。

 

「先生が、小牧さんに決めたのだから、それで良いじゃないですか!」

 

「でも、加納先輩は最後のチャンスなんだよ!」

 

「しかし先生。これは良く言えば公開オーディションですが。悪く言うならば公開処刑です。仮に、オーディションの時の加納さんが全力を出し切っていたのであれば、それより上手い(あずさ)ちゃんを先生は選んだ。梓ちゃんの方が、加納さんより上手いって全員に見せるようなものです」

 

その通り。

 

「ちょっと! 加納先輩の方が下手だって言いたいの!」

 

(つなぐ)は黙ってて!」

 

「皆さん。静かに」

 

先生が宥める。

 

「これについて、小牧さんと加納さん、二人の同意と、皆さんの賛同が必要です。貴重なホールでの練習時間を割くわけですから、私の独断で決めることは出来ません」

 

ホール練習。

 

確かに。移動するのに時間を要するし、楽器の運搬も必要だ。

 

「それではまず、二人に尋ねます。加納さん、ソロパートの再オーディションを希望しますか?」

 

すぐには返事がなかった。

 

「再オーディションをお願いします!」

 

力強い返事が聞こえてきた。

 

「わかりました。それでは小牧さん。加納さんの再オーディションに際し、あなたにももう一度演奏してもらうことになります。宜しいですか?」

 

「はい。手加減するつもりはありません。正々堂々戦いますからそのつもりで!」

 

間をおかず、すぐに梓らしい返事が聞こえてきた。

 

「分かりました。それでは、今度のホール練習の日、今ソロパートに決まっている小牧さんと、加納さんとでソロパートの再オーディションを実施します。皆さんの前で演奏してもらい、皆さんでソロを選ぶ。これで異論はないでしょう」

 

再オーディションの実施が決まったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまり長居をすると変な噂になりかねないので、急いで退散する。

 

「失礼します」

 

「あら、遅かったわね」

 

部室には園田(そのだ)先生がいる。

 

「ちょっとした用事です。まあ、とりあえず、俺が何かするでもなく、俺が良いと思った方向に話は進んでいきましたから」

 

先生は首を(かし)げた。

 

「よく分からないけど、忙しそうね」

 

「『金山(かなやま)相談所』ですからね、ここ。引き受けた以上やれるだけ頑張るだけです。それと、園田先生の予想は当たりましたよ」

 

先生は首を傾げたままだった。

 

 

 

 

 

 

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