【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
中間試験をこの一話にまとめたので、少し長くなりました……。
あっという間に試験当日になった。
中間試験は5教科のみなので、日程は1日だけ。
この1日の為に、各々頑張っていたわけだ。
午前の4教科が終わると、やって来るのは昼休み。
普段なら騒がしい昼休みも、今日は静かだ。
早く昼食を済ませ、少しでも次の試験勉強をしようというのだろう。
もちろん、全員が全員そうとは限らない。
「はるかっ。どうだ?」
例えば、今話しかけてきた
「工、お前勉強いいのか?」
わざわざ違うクラスに顔出しに来ている。
「今更だろ。ここで
「流石工。これで頭良ければなお凄い。出番あって良かったな」
「頭悪くて悪かったな。……出番ってなんの話?」
工は成績こそ良くないものの、普段使えるような雑学をたくさん知っているので、一概に頭が悪いと言い切れないんだよね。
『今更足掻いても』か……。お。
お弁当を食べながら、問題集を見ている。
そんなに見つめたら穴開くんじゃないか?
というか、箸止まってる。
さて、そんな一夜漬けの成果は
「はい。そこまで!」
チャイムが鳴り、
「おわった~!」
「疲れた……」
中間試験終了。
クラス内の反応は三者三様。
このために一週間勉強していた人が大多数だろうから、納得。
「待って待って。答案用紙回収するまで待って」
終わった
「まだって言ってるでしょ。言うこと聞かないんなら0点にするからね」
「うわ。ちーちゃん先生厳しい」
「こらそこ。ちーちゃん呼ばないの」
先生が順に答案用紙を回収してゆく。
『ちーちゃん先生』か。確か、下の名前
だからちーちゃん。
滝野先生が『純ちゃん先生』だっけか。
すると、滝先生や松本先生にもそういったニックネームがあるんだろうか?
……『粘着イケメン悪魔』と『
「なに考えてるの?」
えっ!
突然降りかかった声に驚いた。
「なんでもないです……」
「そう?」
西尾先生に驚かされた……。
「hとnをしっかり分かるように書き分けられたか不安になりましたよ。変なこと言うから」
「ドンマイ。その時はその時だよ」
軽いな……。
「はい。じゃあ解散。気を付けて帰ってね。部活の人も、忘れ物無いようにね」
答案用紙を集め終えると、解散となった。
「部活は?」
「今日ぐらい休ませろよ」
「でも行かなきゃ怒られるぞ」
「どうだった?」
「まあまあかな」
教室が騒がしくなってきた。
荷物を
とりあえず、部室へ行ってテストの自己採点だ。
この時間なら、園田先生が居るだろうし、鍵を借りずに直行。
ん?
部室の前に誰か居る。
防音室か……こんな時間から?
それに、室内に先生が居るならば、外で待つのも不自然。居ない?
鍵を借りに引き返そうと思ったが、部屋の前に居るのが誰か分かり、そのまま向かう。
「お。来た来た」
「何してるんですか? 滝野先生」
「加納に呼ばれた」
「私が呼んだ」
「加納先輩も、こんな所で何してるんですか?」
部室の前に立っていたのは、滝野先生と加納先輩だ。話しぶりからして、俺を待っていたらしい。
滝野先生の手には、電動ドライバー……。
ふと扉の方を見ると、部室の扉の横に、看板のようなものがぶら下げられているのに気づいた。昨日まで無かったぞ。
「何ですか、これ?」
「書いてあるとおり、『
加納先輩はさも当たり前のように言い放つ。
ホームセンターで売っている、大きいプラスチックの板に、『
その『黄前』の部分に取消線が引かれ、横に『金山』と書いてある。
「相談所が何かも気になりますけど、この『黄前』って誰ですか?」
再利用なのか、使い回しなのか……。
「知らない。音楽準備室の片隅に置いてあったから、使えると思って」
「滝野先生、何か知ってるんですか?」
先生は隣で俺たちのやり取りを笑って見ている。
「さて?」
何か隠してる。
「そういえば、一つ下の後輩に黄前って名前の奴がいたな……」
「知ってるんですね?」
「いやいや、俺接点無かったし。名前覚えてるだけだよ」
これは本当だろう。
この間、傘木さんが言っていたことから察した。
「ところで。相談所って何をすれば良いんですか?」
こうなったら乗りかかった船だ。今更降りる気にはなれない。
相当な無茶振りでなければ、頼まれたことは引き受けよう……。
「基本、今まで通りで大丈夫だよ。防音室を貸してもらうのと、大会の時の楽器運搬とか?」
とか、って。そう
「それと、今回みたいにテスト前に勉強手伝ってもらったり。場所貸してもらうのも含めて」
まあ、今と大して変わらないか。
「分かりました。改めてまして、これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ。頑張って全国行ってくるからね」
流石北宇治の部長。頼もしいな……。
さて。それでは俺が考えていることを、この部長さんにお話するとしますか。
「加納先輩、実は折り入って相談があるんですが……」