【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
花火大会はあっという間に終わった。
今は、方向が同じ
「えっ? 宇治川花火大会って復活したものなんですか!」
「そうなんです。2013年が台風で中止になって、その後ずるずる引き
知らなかった。
2013年っていったら、俺も先輩も幼稚園あたり。知らなくても仕方ないだろう。
「そのまま再開ってわけにもいきませんから、『
「だからですね。お兄ちゃんから聞いた話だと、昔はもっと盛大に行われてたって」
「ですね。出店の数も多かったし、お客さんの数も多くて、なにより花火の数が桁違いでした」
そういえば、俺もどこかでそんな話を聞いたことがある。
「そういえば、
話が花火大会前に途中だった話へ戻った。
「いや。別に根拠とかがあるわけじゃあないんです。類は友を呼ぶ、ってやつですかね……」
一緒にいるから、もしかしたらと思っただけだったんだが……。
「まさか本当に吹奏楽部の出身だったとは……」
「
前にも聞いたことがある。全国大会で金賞をとったときのメンバーだと。
話を聞く限り、この3人は同級生らしい。
「
話が浴衣に変わっている。
「
「私も着てこれたら良かったのですが、仕事終わりに直行してきたので、時間が無かったんです」
そんなことを言っていたな。
「お仕事は、
「はい。……あれ? そういえば、この間私の電車に乗りませんでした?」
川島さんの電車?
塚本さんと同じ職場ということは、
「あ、あの時の!」
俺たちが乗ったのは1回だけ。必勝祈願に
「やっぱりそうでしたか! 確か、彩香ちゃんだけ制服でしたよね? だから、北宇治の子だって分かったし、それで印象に残りました」
京阪宇治駅に着いた。
駅は、そんなに混雑していない。
「思いの外空いてますね」
「でしょう。たいていの人は、運賃が安いJRに向かっちゃいますから。奈良線の複線化で、うちには勝ち目が無いんですよ」
確かに。
京阪が京都駅へ乗り入れていないのも、大きいだろう。
差があるとすれば、運賃だけ。
「でも、うちは通学定期券を安くしてますから、学生さんに乗ってもらえてるんですよ。ラッシュ時は学生さんで混雑しますね。私も久美子ちゃんも、高校時代は京阪で通学してました。まあ、方向は逆でしたけれど」
高校時代にお世話になっていた会社で働いているのか。どんな感じなんだろう?
ん? 逆って言った?
「川島さんは何処まで乗るんですか?」
黄前先生(宇治)と逆、ということは、
「
えっ?
六地蔵~稲荷・伏見稲荷って、JRだと乗換無しだけど、京阪だとあの頃は中書島乗換だったんじゃ?
定期券が安かったから、わざわざ京阪に乗ってたのだろう。
それとも、何か『大人の事情』って奴だろうか……?
『お待たせ致しました。本線直通、
先頭車両まで来たら、余裕で座れた。
「あ、今日は車掌乗務なんだ……」
アナウンスを聞いた川島さんが呟く。
「来るときもそうでしたよ。ね、先輩」
「うん。普段乗ってないから珍しいなって思いました」
「大津線と
川島さんは車掌もやっていたのか……。
「まあ、直通列車は、本線に入ったら普段から車掌乗務ですね」
あれ……? 少し前まで宇治線って線内折り返し運転だった気がする。
「そういえば、最近直通再開しましたよね?」
堀田先輩は再開って言った。つまり、昔は有ったということか。
「はい。中書島が特急通過になった代わりに、樟葉と
話し込んでる間に、列車は発車していた。
隣の
「じゃあね」
「お疲れさまです」
「川島さん、今日はありがとうございました。はるか、また学校でね」
「はい。気をつけてくださいね」
そして、俺は六地蔵駅で降りる。
「またね」
「ありがとうございました」
川島さんと別れ、一人帰路につく。
俺にとっては花火大会の帰り道となるこの道も、堀田先輩や加納先輩には登校する道になるんだな……。
朝は登校、夕方は下校する生徒で賑わうこの道も、夜遅い時間だと、仕事帰りと思われる人が多い。
要するに、一日中賑やかだ。
そんなことを考えながら歩いていく。
もう夏休みも折り返しか。
明日からも頑張ろう……。