【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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7-3……花火大会の帰り道

 

花火大会はあっという間に終わった。

 

今は、方向が同じ堀田(ほりた)先輩と川島さんと一緒に、駅へ向かって歩いている。

 

「えっ? 宇治川花火大会って復活したものなんですか!」

 

「そうなんです。2013年が台風で中止になって、その後ずるずる引き()った挙げ句、安全上の理由で中止のまま廃止されてしまったんです」

 

知らなかった。

 

2013年っていったら、俺も先輩も幼稚園あたり。知らなくても仕方ないだろう。

 

「そのまま再開ってわけにもいきませんから、『天ヶ瀬(あまがせ)宇治川花火大会』って、名前を変えて、2025年から開催してます。事実上の復活ですね」

 

「だからですね。お兄ちゃんから聞いた話だと、昔はもっと盛大に行われてたって」

 

「ですね。出店の数も多かったし、お客さんの数も多くて、なにより花火の数が桁違いでした」

 

そういえば、俺もどこかでそんな話を聞いたことがある。

 

 

「そういえば、金山(かなやま)くんは何で私が吹奏楽部だったって分かったんですか?」

 

話が花火大会前に途中だった話へ戻った。

 

「いや。別に根拠とかがあるわけじゃあないんです。類は友を呼ぶ、ってやつですかね……」

 

加納(かのう)先輩に黄前(おうまえ)先生と塚本(つかもと)さん。みんな吹奏楽部・元吹奏楽部だ。

 

一緒にいるから、もしかしたらと思っただけだったんだが……。

 

「まさか本当に吹奏楽部の出身だったとは……」

 

久美子(くみこ)ちゃんが部長で、秀一(しゅういち)くんが副部長でした」

 

前にも聞いたことがある。全国大会で金賞をとったときのメンバーだと。

 

話を聞く限り、この3人は同級生らしい。

 

 

彩香(あやか)ちゃんの浴衣、彩香ちゃんによく似合ってますよ」

 

話が浴衣に変わっている。

 

沙也(さや)や黄前先生の浴衣も綺麗でしたね」

 

「私も着てこれたら良かったのですが、仕事終わりに直行してきたので、時間が無かったんです」

 

そんなことを言っていたな。

 

「お仕事は、京阪(けいはん)の運転士なんですね」

 

「はい。……あれ? そういえば、この間私の電車に乗りませんでした?」

 

川島さんの電車?

 

塚本さんと同じ職場ということは、石山坂本(いしやまさかもと)線だろう。

 

「あ、あの時の!」

 

俺たちが乗ったのは1回だけ。必勝祈願に近江神宮(おうみじんぐう)へ行った時だ。1駅間だけ乗車したんだ。

 

「やっぱりそうでしたか! 確か、彩香ちゃんだけ制服でしたよね? だから、北宇治の子だって分かったし、それで印象に残りました」

 

京阪宇治駅に着いた。

 

駅は、そんなに混雑していない。

 

「思いの外空いてますね」

 

「でしょう。たいていの人は、運賃が安いJRに向かっちゃいますから。奈良線の複線化で、うちには勝ち目が無いんですよ」

 

確かに。

 

六地蔵(ろくじぞう)~宇治は、両社線が殆ど併走していて、奈良線が単線だった頃は京阪の方が早いこともあったが、複線化以降は本数・所要時間とも、両社に差は無くなった。

 

京阪が京都駅へ乗り入れていないのも、大きいだろう。

 

差があるとすれば、運賃だけ。

 

「でも、うちは通学定期券を安くしてますから、学生さんに乗ってもらえてるんですよ。ラッシュ時は学生さんで混雑しますね。私も久美子ちゃんも、高校時代は京阪で通学してました。まあ、方向は逆でしたけれど」

 

高校時代にお世話になっていた会社で働いているのか。どんな感じなんだろう?

 

ん? 逆って言った?

 

「川島さんは何処まで乗るんですか?」

 

黄前先生(宇治)と逆、ということは、中書島(ちゅうしょじま)側だよな……。

 

伏見稲荷(ふしみいなり)までです」

 

えっ?

 

六地蔵~稲荷・伏見稲荷って、JRだと乗換無しだけど、京阪だとあの頃は中書島乗換だったんじゃ?

 

定期券が安かったから、わざわざ京阪に乗ってたのだろう。

 

それとも、何か『大人の事情』って奴だろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お待たせ致しました。本線直通、樟葉(くずは)行きです。間もなく発車致します』

 

先頭車両まで来たら、余裕で座れた。

 

「あ、今日は車掌乗務なんだ……」

 

アナウンスを聞いた川島さんが呟く。

 

「来るときもそうでしたよ。ね、先輩」

 

「うん。普段乗ってないから珍しいなって思いました」

 

「大津線と交野(かたの)線・宇治線はワンマン運転ですからね。今日みたいにお祭りとかで、お客さんが多いときだけ乗るみたいです。私も、車掌だった頃に数回だけ乗務しましたよ」

 

川島さんは車掌もやっていたのか……。

 

「まあ、直通列車は、本線に入ったら普段から車掌乗務ですね」

 

あれ……? 少し前まで宇治線って線内折り返し運転だった気がする。

 

「そういえば、最近直通再開しましたよね?」

 

堀田先輩は再開って言った。つまり、昔は有ったということか。

 

「はい。中書島が特急通過になった代わりに、樟葉と深草(ふかくさ)までの直通列車が設定されたんです。特急に乗り換えしやすいように」

 

話し込んでる間に、列車は発車していた。

 

隣の三室戸(みむろど)駅を出ると、次が堀田先輩の降りる駅だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄檗(おうばく)駅で堀田先輩が降りる。

 

「じゃあね」

 

「お疲れさまです」

 

「川島さん、今日はありがとうございました。はるか、また学校でね」

 

「はい。気をつけてくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺は六地蔵駅で降りる。

 

「またね」

 

「ありがとうございました」

 

川島さんと別れ、一人帰路につく。

 

 

 

俺にとっては花火大会の帰り道となるこの道も、堀田先輩や加納先輩には登校する道になるんだな……。

 

朝は登校、夕方は下校する生徒で賑わうこの道も、夜遅い時間だと、仕事帰りと思われる人が多い。

 

要するに、一日中賑やかだ。

 

そんなことを考えながら歩いていく。

 

 

 

 

 

もう夏休みも折り返しか。

 

明日からも頑張ろう……。

 

 

 

 

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