【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
道中問題なく、関西大会の会場、和歌山県民文化会館に到着した。
男子部員が乗っている2号車の方が先に到着しており、既に楽器の荷卸しが始まっていた。
「移動お疲れ様。待ってたよ」
バスを降りると、
「おはようございます。今日はお願いします」
俺が頼むことでもないんだけどね……。
「おはよう。
急に指揮者になったのに、先生はさほど緊張しているように見えない。
「さ、楽器運搬係の手伝い、よろしくね」
「はい」
先生と挨拶を交わしたら、トラックへ向かう。
「金山くん、そっち持って」
「はい」
「あ、パーカスの順序が違うから、運ぶとき気をつけて」
「了解です」
「
楽器運搬係の
それが終わったら開会式だ。
演奏するメンバーが開会式に参加している間、俺と『チームほたか』のメンバーは、ロビーで待つことになる。
この間にやる事がある。
「あ、もしもし。金山です」
しかし、何故か俺が電話をすることになった……。
『金山か。話は園田先生から聞いているな?』
相手は松本先生だ。緊張するな……。
「はい、
どうやら、車の流れが止まった時点で、間に合わなくなることを悟った松本先生は、真っ先に園田先生へ電話をしたらしい。
事前に、園田先生が前日中に和歌山入りする話を聞いていたらしく、自分たちが会場に行けなくなったから、指揮者の代理と、交代を本部へ申請するようにお願いしたと。
『間に合って良かった。今の状況は?』
「開会式の最中ですね。ところで、先生方はまだ
園田先生から連絡が入っていて、あのXの動画に映っていたのは、滝先生と松本先生であることが確認できている。
『ああ。火災は鎮圧できたみたいだ。今は順番に引き返して、手前の
やはり。火が消えたところで、トンネルは使えないから、後退させるのだろう。
あれだけ大量の黒煙が上がる火災だから、向こう暫く通行止だろう。そう
『ああ。
えっ?
『もしもし。金山くんですね』
滝先生の声だ。
「はい。金山です」
『度々申し訳ありません。いつも助けてもらってばかりで……』
この人の声を聞くと、毎回なんだかほっとするな……。
「お気になさらず。俺が手伝えることは、これぐらいしかありませんから」
『そう言っていただけると有り難いです』
「あ、園田先生から伝言です。今年こそ必ず全国に連れて行きます。安心してください。とのことです」
『ありがとうございます』
「それから、部長と副部長から。必ず全国を手に帰るから、待っていてくださいって。長旅でお疲れでしょうし、そんな中でのトラブルですから、無理なさらずに。ってことでしょう」
『ははは……。ありがとうございます』
先生が照れ臭そうに笑っている。
先生が無理してでも、こちらへ来ようとしているのが分かっているんだ。あの2人は。
『それでは、また後ほど』
電話が切れた。
「先生は何て?」
「今の状況は?」
「大丈夫そう?」
電話をしまった途端、集中砲火を喰らう。
「えっと。順に話します」
とりあえず、静まらせる。
俺は
『プログラム1番、和歌山県代表、北山高等学校。指揮は、
開会式が終わったらしく、最初の学校の演奏が始まるようだ。
「えっと。巻き込まれている火災は治まったみたいです。引き返して手前のインターから一般道に降りるって言ってました」
「そう」
「良かった……」
状況を知れたからか、
「あの先生のことですから、多少無理してでもここ来ようとするだろうから、部長に言われたように、来なくていいって遠回しに伝えました」
「金山くん、ありがとう」
「どういたしまして。えっと、北宇治は2番目ですよね?」
「うん。今は、最初の学校だね」
ホールの方から、演奏が聞こえてくる。
ホールとロビーを
課題曲が終わって、自由曲が始まっている。
曲は、『西部警察メインテーマ』と『ワンダフル・ガイズ』。パートⅠと、パートⅡ・Ⅲの主題歌。かなり前の曲だ。
そもそも西部警察って、松本先生の世代じゃないのか?
「この曲は、サックスとペットのソロが格好良い曲だから、決まると最高に格好良い」
演奏している人たちと同じ制服。恐らくうちで言う『ほたか』の人たちだろう。
1番目の演奏が終わった。
次は2番目。いよいよだ。
『プログラム2番。京都府代表、北宇治高等学校。指揮は、園田
北宇治の演奏が始まる……。