【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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7-6……北宇治の演奏が始まる……

 

道中問題なく、関西大会の会場、和歌山県民文化会館に到着した。

 

男子部員が乗っている2号車の方が先に到着しており、既に楽器の荷卸しが始まっていた。

 

「移動お疲れ様。待ってたよ」

 

バスを降りると、園田(そのだ)先生が待っていた。

「おはようございます。今日はお願いします」

 

俺が頼むことでもないんだけどね……。

 

「おはよう。金山(かなやま)くん」

 

急に指揮者になったのに、先生はさほど緊張しているように見えない。

 

「さ、楽器運搬係の手伝い、よろしくね」

 

「はい」

 

先生と挨拶を交わしたら、トラックへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「金山くん、そっち持って」

 

「はい」

 

「あ、パーカスの順序が違うから、運ぶとき気をつけて」

 

「了解です」

 

多屋(たや)開明(かいめい)は、金山くんに指示出して。一緒に行ったって」

 

楽器運搬係の野間(のま)先輩の指示でトラックから降ろした楽器を運ぶ。

 

 

 

それが終わったら開会式だ。

 

演奏するメンバーが開会式に参加している間、俺と『チームほたか』のメンバーは、ロビーで待つことになる。

 

この間にやる事がある。

 

「あ、もしもし。金山です」

 

松本(まつもと)先生に電話を掛けるんだ。

 

しかし、何故か俺が電話をすることになった……。

 

『金山か。話は園田先生から聞いているな?』

 

相手は松本先生だ。緊張するな……。

 

「はい、掌握(しょうあく)しております」

 

どうやら、車の流れが止まった時点で、間に合わなくなることを悟った松本先生は、真っ先に園田先生へ電話をしたらしい。

 

事前に、園田先生が前日中に和歌山入りする話を聞いていたらしく、自分たちが会場に行けなくなったから、指揮者の代理と、交代を本部へ申請するようにお願いしたと。

 

『間に合って良かった。今の状況は?』

 

「開会式の最中ですね。ところで、先生方はまだ近江大鳥(おうみおおどり)橋のところですか?」

 

園田先生から連絡が入っていて、あのXの動画に映っていたのは、滝先生と松本先生であることが確認できている。

 

『ああ。火災は鎮圧できたみたいだ。今は順番に引き返して、手前の信楽(しがらき)インターから下ろしている感じだな』

 

やはり。火が消えたところで、トンネルは使えないから、後退させるのだろう。

 

あれだけ大量の黒煙が上がる火災だから、向こう暫く通行止だろう。そう滝野(たきの)先生が言っていた。

 

『ああ。(たき)先生が変わって欲しいそうだ』

 

えっ?

 

『もしもし。金山くんですね』

 

滝先生の声だ。

 

「はい。金山です」

 

『度々申し訳ありません。いつも助けてもらってばかりで……』

 

この人の声を聞くと、毎回なんだかほっとするな……。

 

「お気になさらず。俺が手伝えることは、これぐらいしかありませんから」

 

『そう言っていただけると有り難いです』

 

「あ、園田先生から伝言です。今年こそ必ず全国に連れて行きます。安心してください。とのことです」

 

『ありがとうございます』

 

「それから、部長と副部長から。必ず全国を手に帰るから、待っていてくださいって。長旅でお疲れでしょうし、そんな中でのトラブルですから、無理なさらずに。ってことでしょう」

 

『ははは……。ありがとうございます』

 

先生が照れ臭そうに笑っている。

 

先生が無理してでも、こちらへ来ようとしているのが分かっているんだ。あの2人は。

 

『それでは、また後ほど』

 

電話が切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「先生は何て?」

 

「今の状況は?」

 

「大丈夫そう?」

 

電話をしまった途端、集中砲火を喰らう。

 

「えっと。順に話します」

 

とりあえず、静まらせる。

 

俺は聖徳太子(しょうとくたいし)ではないんだから……。

 

 

 

 

『プログラム1番、和歌山県代表、北山高等学校。指揮は、田村(たむら) (りん)です』

 

開会式が終わったらしく、最初の学校の演奏が始まるようだ。

 

「えっと。巻き込まれている火災は治まったみたいです。引き返して手前のインターから一般道に降りるって言ってました」

 

「そう」

 

「良かった……」

 

状況を知れたからか、安堵(あんど)の声が漏れた。

 

「あの先生のことですから、多少無理してでもここ来ようとするだろうから、部長に言われたように、来なくていいって遠回しに伝えました」

 

「金山くん、ありがとう」

 

「どういたしまして。えっと、北宇治は2番目ですよね?」

 

「うん。今は、最初の学校だね」

 

ホールの方から、演奏が聞こえてくる。

 

ホールとロビーを(へだ)てる扉には『換気のため、扉は閉めないでください』という貼り紙があり、扉が開いているから、ロビーでも演奏が聴ける。

 

課題曲が終わって、自由曲が始まっている。

 

曲は、『西部警察メインテーマ』と『ワンダフル・ガイズ』。パートⅠと、パートⅡ・Ⅲの主題歌。かなり前の曲だ。

 

そもそも西部警察って、松本先生の世代じゃないのか?

 

「この曲は、サックスとペットのソロが格好良い曲だから、決まると最高に格好良い」

 

細畑(ほそばた)先輩の言うとおり、ソロが綺麗に決まると、入口扉から中を覗いている人たちが、小さく拍手をした。

 

演奏している人たちと同じ制服。恐らくうちで言う『ほたか』の人たちだろう。

 

 

 

1番目の演奏が終わった。

 

 

 

次は2番目。いよいよだ。

 

『プログラム2番。京都府代表、北宇治高等学校。指揮は、園田 涼子(りょうこ)です』

 

北宇治の演奏が始まる……。

 

 

 

 

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