【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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7-8……午前の部の表彰式

 

午前の部の成績発表は、昼過ぎに行われる。

 

各校の金銀銅賞が発表され、ここで金賞を受賞した学校と、午後の部で金賞を受賞した学校の中から、3校が全国大会へ出場するのだ。

 

 

 

各校の部員たちが観客席に座り、自分たちの結果が読み上げられるのを待つ。

 

壇上には、トロフィー・表彰状が置かれている。

 

そして、各校の代表者2名づつが登壇している。我が校は、言うまでもなく、加納(かのう)部長と堀田(ほりた)副部長だ。

 

「緊張してきた……」

 

「マジヤバいって」

 

各々(おのおの)緊張している様子が伝わってくる。

 

最初、俺は先生方の居るところで成績発表を聞こうと思っていたんだけど、先輩方に半ば強引に観客席に連行された……。

 

俺まで緊張してきた。

 

「絶対金取れるよ」

 

「分かってるけど怖い」

 

なんだか胃が痛くなってきた……。

 

「心臓破裂しそう。あ、そうだ金山くん。何処(どこ)行ってたの?」

 

え、ここで俺に振る?

 

「えっと、近くの喫茶店に……」

 

電源が使えたので、時間一杯入り浸ってきました。

 

「喫茶店に? 宿題でもやってたの?」

 

「俺はとっくの昔に宿題は片づけてますよ」

 

まだ終わってなかったら駄目だろう。

 

嘲笑(ちょうしょう)したな」

 

「えっ、そんなつもりは……」

 

「でも、なんか金山くん見てたら緊張も(ほぐ)れたかな。ありがとう」

 

「私も。ありがとね」

 

何とかなったのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

『お待たせ致しました。これより午前の部の表彰式を開始します』

 

始まった。

 

ここで金賞をとれなかったとしたら、その時点で全国大会への道は無くなる。

 

『プログラム1番。和歌山県代表、北山高等学校。銀賞』

 

北山の部員たちから歓声が上がる。

 

関西大会自体が創部以来初の快挙らしいから、銀賞は喜びが大きいのだろう。

 

次が我ら北宇治だ。

 

『プログラム2番。京都府代表、北宇治高等学校。ゴールド金賞』

 

歓声が爆発する。

 

よっしゃぁ!

 

それにつられ、俺も心の中でガッツポーズ。

 

でも、まだ全国大会へ行けるかは分からない。ここで油断したら駄目なんだ……。

 

『プログラム5番、兵庫県代表、加古川(かこがわ)高等学校。銀賞』

 

次々結果が読まれてゆく。

 

感激のあまり、3番目と4番目の成績を聞き逃してしまった……。

 

結果が読まれる度に、歓声や泣き声、喜びの叫びなど様々な声が上がる。

 

『プログラム7番、大阪府代表、大阪東照(とうしょう)高等学校。ゴールド金賞』

 

流石。全国大会常連のシード校だ。

 

呼ばれたのに大して歓声も上がらない。

 

しかし、その隣でマキノ商業の部員たちから悲鳴のような声が上がっている。

 

何が起こった?

 

待て。確か今マキノ商業の結果が読み上げられなかったぞ。

 

どういう事なんだろう……?

 

 

 

 

『プログラム11番、奈良県代表、天理学園高等部。ゴールド金賞』

 

ここも確か強豪校だ。

 

大した歓声は上がらない。

 

11校目。つまり、全ての結果が発表された。

 

……と、思ったが、1校だけ読まれていないんだった。

 

『なお、プログラム6番の滋賀県代表、マキノ商業高等学校は、演奏時間超過のため失格とします。以上』

 

飛ばされた1校が読み上げられた。

 

時間超過だって……?

 

会場全体がざわめく。

 

さっき、悲鳴のような声が上がった場所からは、再び悲鳴や泣き声が聞こえてくる。

 

「やっぱり……」

 

隣に座っている、えっと、オーボエの鳴海(なるみ)先輩が呟いた。

 

「どういう事ですか?」

 

「演奏時間は12分以内って決まってるの。超えたら失格なの」

 

あ。滝先生が言っていた『制限時間は12分。過ぎるのは駄目だけど、焦って演奏を台無しにするのも駄目』というのは、こういう意味なのか……。

 

「マキノ商業のファゴットの子がね、課題曲から自由曲の間に、ファゴットからコントラファゴットに持ち替えたんだけど、その時に奏者の子が(つまづ)いて転んじゃったの」

 

あ。あのざわめきの正体はそれか!

 

「その時にリードがダメになったみたいで、代わりのリードを用意するのにもたついてたから、それがタイムロスになったみたいね」

 

それで12分を超えてしまったのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の部の表彰式が終わった。

 

「お待たせ~!」

 

ロビーの待機場所で待っていると、表彰式に出席していた加納先輩と堀田(ほりた)先輩が、(たて)と賞状を持って走ってきた。

 

「えっと、みんなお疲れ様でした」

 

まずは部長である加納先輩から。

 

「この通り、金賞とれました。みんなのお陰です」

 

そう言い、持っている盾を掲げる。

 

それに対し、拍手が起こる。

 

「まだ、これから午後の部の演奏があるから、油断したら駄目だからね! オッケー?」

 

「「「はい!」」」

 

「私からは以上。あやちは?」

 

部長の次は、副部長の堀田(ほりた)先輩だ。

 

「最高の演奏だったよ。まだ全国行けるか分からないけど、ひとまずお疲れ様でした。私からは以上です」

 

再び、大きな拍手が起こる。

 

次は先生方の番だ。

 

「お疲れ様でした。素晴らしい演奏だと思います。小牧(こまき)さんのソロも完璧でした」

 

「そうですね。高坂(こうさか)先生の仰るとおり、小牧さんのソロは素晴らしかったですよ。もちろん、清水(しみず)さんのソロや、他のみなさんの演奏全てが素晴らしかったと思います」

 

「最高! 以上!」

 

橋本(はしもと)先生……。えっと、今私が言いたいことは特にありません。午後の結果を待ってからお話します」

 

園田(そのだ)先生は、『全国大会出場』か『ダメ金』か、分かってから言うつもりらしい……。

 

「ひとまず、お疲れ様でした。記念撮影あるから、みんな並んで」

 

「賞状はあやち持って」

 

「盾は沙也が?」

 

「もちろん」

 

列を形成し、撮影……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰か、滝野先生見なかった?」

 

そういえば、滝野先生がいない……。

 

どこに行ったのだろう?

 

 

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