【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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7-10……全国大会に出場する学校

 

午後の部の表彰式が始まる。

 

部員たちは観客席に座っているけれど、俺は滝野(たきの)先生に連行されてしまい、先生方と一緒に立っている。

 

「あの……俺は何でここに?」

 

「仕方ないだろう。観客席に空きがないんだから。外に出すわけにもいかんだろう?」

 

滝野先生にこう言われたら、逆らうわけにもいかないし、確かに席が空いていない……。

 

滝野先生の隣には、園田(そのだ)先生、坂部(さかべ)さん、高坂(こうさか)さん、橋本(はしもと)さんが並ぶ。

 

「そうだよ。金山くんがいなかったら、今日の北宇治の演奏は無かったんだから、外で待たせるなんて出来ないよ。(たき)クンの代わりにお礼を言いたいよ」

 

「金山くんのお陰だよ」

 

「ありがとう」

 

「ど、どういたしまして……」

 

先生方のお礼に、たじろいでしまう。

 

やっぱり、こういうのは慣れていない……。

 

「今日の功労者は金山くんかな?」

 

園田先生まで……。

 

「あ……。そういえば、滝野先生さっきどこに行っていたんですか? 表彰式のあと、みんな捜してましたよ」

 

「滝先生に電話してたんだよ。みんな、金賞に感動して誰一人滝先生と松本(まつもと)先生に報告しようとしないから」

 

あ……。確かに忘れていた。

 

「そうしたら、滝先生話長いからさ……。切るに切れなかった。先生歳とってからその辺が……いだだだっ!」

 

滝野先生が急に悲鳴を上げる。

 

足元を見ると、高坂さんの(かかと)が乗っている……。踵落としだ。

 

「高坂お前……」

 

「滝先生を悪く言うからです!」

 

ちょっと。声大きいですよ……。

 

「悪くって。事実だろう、歳とったってのは……」

 

「高坂、滝野先生。場所考えてください。喧嘩するなら表出ろ」

 

坂部さんが二人を制す。

 

「はい」

 

「失礼しました」

 

会場が一際ざわめいたと思ったら、ステージ上に司会者が現れた。

 

「あ、先生方。表彰式始まりますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お待たせ致しました。これより午後の部の表彰式を開始します』

 

北宇治は既に金賞を受賞しているので、ここでの結果発表は、そこまで重要ではない。

 

もちろん、全国大会へ進む学校は、午前と午後で金賞を取った学校から選ばれるから、看過(かんか)することでもないが。

 

 

『プログラム15番、京都府代表、立華(りっか)高等学校。銀賞』

 

立華が銀だ。

 

かつて、滝野先生が高校生だった頃は、北宇治の上をゆく強豪校だった。その立華が銀。

 

しかし、それも仕方ないのかもしれない。

 

コロナウイルスを理由として活動を縮小していたマーチングを、今年から再度本格化したらしい。そういう意味では、去年までの立華(りっか)とは違うのだ……。

 

『プログラム17番、京都府代表、舞鶴海港高等学校。銅賞』

 

園田先生が『顧問が変わって強くなった』と言っていた。

 

府大会では『番狂わせが起きた』とも言われた。

 

その海港が銅賞だ……。

 

関西とはそういう所なんだと実感する。

 

『プログラム19番、大阪府代表、明静工科(みょうじょうこうか)高等学校。ゴールド金賞』

 

流石関西三強の一つ。

 

金賞が当たり前のような反応だ。

 

全く喜ばない訳ではないが、控えめな歓声と拍手だけ。

 

そんな余裕は北宇治にはない。

 

『プログラム22番、大阪府代表、関西大学付属高等学校。ゴールド金賞』

 

 

 

 

全22校の結果が発表された。

 

これで金賞の7校が揃う。

 

この7校の中から、全国大会へ出場できるのは3校だけだ。

 

演奏した順に発表されるので、北山高校は銀賞だったから、一番最初に北宇治が呼ばれるはずだ。呼ばれなければ、全国大会への道は閉ざされる。

 

東照(とうしょう)の名前が出た時点で終わり。

 

『それでは、(きた)る10月に行われます、全国大会に出場する学校を発表します』

 

誰もが祈る。

 

祈ってどうにかなることではないのは分かっている。でも、手を合わせ祈る。

 

俺の手には、近江神宮で買った必勝祈願の御守り。

 

頼む。呼ばれてくれ!

 

 

 

『1校目。2番』

 

来た!

 

『北宇治高等学校』

 

歓声というか悲鳴に近い声が沸き起こる。

 

ガッツポーズを決める者、抱擁(ほうよう)しあう者、大きく万歳している者。十人十色の反応を見せている。

 

『2校目。7番、大阪東照(とうしょう)高等学校』

 

もちろん、その間も全国出場校の発表は続く。

 

あーあ。強豪校の余裕か。東照(とうしょう)から聞こえるのは控えめな歓声だけ。

 

俺たちのような反応はない……。

 

『そして3校目。19番、明静工科(みょうじょうこうか)高等学校』

 

残り2つは三強で埋まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生方の方を向く。

 

「全国大会出場おめでとうございます」

 

「ありがとう。でも、それを言う相手は私じゃあないでしょう?」

 

言われてみれば。

 

視線を高坂さんと坂部さんの方へ移す。

 

「俺たちでもないよ。ね?」

 

「はい。言うべき相手、分かってるよね」

 

「そうそう。あ、ボクは滝クンに連絡するからね」

 

橋本さんは携帯片手にホールを飛び出してゆく。

 

高坂さんたちに促され、観客席の方を見る。

 

泣いている加納(かのう)先輩と、他の人たちに抱きつかれている堀田(ほりた)先輩。

 

「そう、ですね。俺が言うべき相手は……」

 

帰りのバスは同じだし、この後集合の時に一緒になるだろう。

 

ちゃんと伝えよう。

 

 

 

 

 

 

全国大会出場おめでとうございます。って。

 

 

 

 






関西大会編、完結です。

いや~ぁ、設定の関係上、北宇治の演奏を午前中に持ってきたので、大会模写は完全に手探りでした。

そもそも、私が吹奏楽未経験なのもありますから、違和感のある部分も多々あったと思います。

それでも、皆様に支えていただきながらここまでやってこれました。ありがとうございます。


総合評価が100を越えたため、いつの間にか『読み上げ』が使えるようになりました!

ゆかりさんの声で、私の作品が読まれていくの、感慨深いですね。


さて。物語はまだまだ続きます。

今後ともよろしくお願いいたします。
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