【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
午後の部の表彰式が始まる。
部員たちは観客席に座っているけれど、俺は
「あの……俺は何でここに?」
「仕方ないだろう。観客席に空きがないんだから。外に出すわけにもいかんだろう?」
滝野先生にこう言われたら、逆らうわけにもいかないし、確かに席が空いていない……。
滝野先生の隣には、
「そうだよ。金山くんがいなかったら、今日の北宇治の演奏は無かったんだから、外で待たせるなんて出来ないよ。
「金山くんのお陰だよ」
「ありがとう」
「ど、どういたしまして……」
先生方のお礼に、たじろいでしまう。
やっぱり、こういうのは慣れていない……。
「今日の功労者は金山くんかな?」
園田先生まで……。
「あ……。そういえば、滝野先生さっきどこに行っていたんですか? 表彰式のあと、みんな捜してましたよ」
「滝先生に電話してたんだよ。みんな、金賞に感動して誰一人滝先生と
あ……。確かに忘れていた。
「そうしたら、滝先生話長いからさ……。切るに切れなかった。先生歳とってからその辺が……いだだだっ!」
滝野先生が急に悲鳴を上げる。
足元を見ると、高坂さんの
「高坂お前……」
「滝先生を悪く言うからです!」
ちょっと。声大きいですよ……。
「悪くって。事実だろう、歳とったってのは……」
「高坂、滝野先生。場所考えてください。喧嘩するなら表出ろ」
坂部さんが二人を制す。
「はい」
「失礼しました」
会場が一際ざわめいたと思ったら、ステージ上に司会者が現れた。
「あ、先生方。表彰式始まりますよ」
『お待たせ致しました。これより午後の部の表彰式を開始します』
北宇治は既に金賞を受賞しているので、ここでの結果発表は、そこまで重要ではない。
もちろん、全国大会へ進む学校は、午前と午後で金賞を取った学校から選ばれるから、
『プログラム15番、京都府代表、
立華が銀だ。
かつて、滝野先生が高校生だった頃は、北宇治の上をゆく強豪校だった。その立華が銀。
しかし、それも仕方ないのかもしれない。
コロナウイルスを理由として活動を縮小していたマーチングを、今年から再度本格化したらしい。そういう意味では、去年までの
『プログラム17番、京都府代表、舞鶴海港高等学校。銅賞』
園田先生が『顧問が変わって強くなった』と言っていた。
府大会では『番狂わせが起きた』とも言われた。
その海港が銅賞だ……。
関西とはそういう所なんだと実感する。
『プログラム19番、大阪府代表、
流石関西三強の一つ。
金賞が当たり前のような反応だ。
全く喜ばない訳ではないが、控えめな歓声と拍手だけ。
そんな余裕は北宇治にはない。
『プログラム22番、大阪府代表、関西大学付属高等学校。ゴールド金賞』
全22校の結果が発表された。
これで金賞の7校が揃う。
この7校の中から、全国大会へ出場できるのは3校だけだ。
演奏した順に発表されるので、北山高校は銀賞だったから、一番最初に北宇治が呼ばれるはずだ。呼ばれなければ、全国大会への道は閉ざされる。
『それでは、
誰もが祈る。
祈ってどうにかなることではないのは分かっている。でも、手を合わせ祈る。
俺の手には、近江神宮で買った必勝祈願の御守り。
頼む。呼ばれてくれ!
『1校目。2番』
来た!
『北宇治高等学校』
歓声というか悲鳴に近い声が沸き起こる。
ガッツポーズを決める者、
『2校目。7番、大阪
もちろん、その間も全国出場校の発表は続く。
あーあ。強豪校の余裕か。
俺たちのような反応はない……。
『そして3校目。19番、
残り2つは三強で埋まった。
先生方の方を向く。
「全国大会出場おめでとうございます」
「ありがとう。でも、それを言う相手は私じゃあないでしょう?」
言われてみれば。
視線を高坂さんと坂部さんの方へ移す。
「俺たちでもないよ。ね?」
「はい。言うべき相手、分かってるよね」
「そうそう。あ、ボクは滝クンに連絡するからね」
橋本さんは携帯片手にホールを飛び出してゆく。
高坂さんたちに促され、観客席の方を見る。
泣いている
「そう、ですね。俺が言うべき相手は……」
帰りのバスは同じだし、この後集合の時に一緒になるだろう。
ちゃんと伝えよう。
全国大会出場おめでとうございます。って。
関西大会編、完結です。
いや~ぁ、設定の関係上、北宇治の演奏を午前中に持ってきたので、大会模写は完全に手探りでした。
そもそも、私が吹奏楽未経験なのもありますから、違和感のある部分も多々あったと思います。
それでも、皆様に支えていただきながらここまでやってこれました。ありがとうございます。
総合評価が100を越えたため、いつの間にか『読み上げ』が使えるようになりました!
ゆかりさんの声で、私の作品が読まれていくの、感慨深いですね。
さて。物語はまだまだ続きます。
今後ともよろしくお願いいたします。