【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

59 / 90
     4人の打ち上げ

 

文化祭が終わった。

 

我々2-1・2-2合同の喫茶店は大盛況で終わり、有り難いことに、用意した食材は使い切った。

 

閉会式が終わり、教室に集まっている。

 

あとは号令が掛かれば解散だろう。

 

「打ち上げ行く人~!」

 

クラス委員長が打ち上げ参加者を募っている。

 

でも、両クラス合わせて80人。こんな大所帯を受け入れてくれるお店なんて有るのかな?

 

「あ、場所は森下(もりした)のところだから、歩いていける距離だよ」

 

ああ。森下さんのお家が居酒屋やってるんだっけ。

 

それならそこまで遠くないし、宴会場が100人まで対応してるらしいから、全員行っても大丈夫だね。

 

「挙手して! 数えるからそのままでね!」

 

あ、私は手を挙げていないよ。私たちが行く場所は決まってるからね。

 

「オッケー。えっと67人だね。開始は18時からだから、遅れないようにお願いします。では解散!」

 

委員長から号令が掛かり、解散になった。

 

「行こうか」

 

「楽しかったな」

 

「お前、衣装似合ってなかったけど」

 

「そういうあんたはどうなの?」

 

各々、喋ったりしながら移動し始めている。

 

 

 

「アカネさん。俺たちも行こうか」

 

佳介(けいすけ)くんがやって来た。

 

「オッケー」

 

「お願いします……」

 

白沢(しらさわ)くんと加木屋(かぎや)さんも来る。

 

「うん。行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、いうわけで、佳介くん白沢くん、加木屋さんと私の4人でカラオケにやって来た。

 

文化祭でみんな疲れているだろうし、ステージでの演奏と、その前の練習もあったので、今日は元々部活は休みになっている。

 

だから、この機会にみんなでカラオケに行くことにしていた。

 

 

 

「最初は俺で良い?」

 

「勿論。しっかり頼むよ!」

 

「アカネさんは?」

 

「私は、最初の曲は決めてるからね。加木屋さんは決まった?」

 

「うん……」

 

親睦を深めるのも含め、加木屋さんを連れてきたけれど、大丈夫だろうか。

 

普段からあまり話さないし、彼女のことがいまいち分からない。

 

でも、カラオケに誘った時は、渋々という感じはしなかったので、大丈夫だと思うけど。強引に連れてきてしまったみたいで、なんか不安。

 

 

 

まずは白沢くんから。

 

『夏祭り』

 

彼の十八番(おはこ)らしい。

 

カラオケに来たときは、必ず最初に歌うんだって。

 

 

ノリノリな彼の歌声を聞きながら、私は自分のリクエスト曲を探す。

 

……あった。

 

送信……っと。

 

 

 

『渡月橋~君想ふ~』

 

私のリクエストだ。

 

渡月橋といえば、嵐山。ここ京都がモデルの曲。

 

そういえば、最近嵐山の方に行ってないな……。

 

 

 

『私鉄沿線』

 

これは佳介くんの曲。

 

なんというか……選曲が渋いよね。

 

しかもこの曲、一応別れの歌だよね? 私の前で歌うの……。なんて言えば良いんだろう?

 

 「僕は今日も人波避けて、帰るだけです、一人だけでー。この街を越せないまま、君の帰りを待ってますー」

 

佳介くんの熱唱……。ちょっと力が入りすぎてる。

歌ってるのは私じゃないけれど、恥ずかしくて顔が熱くなってる。

 

 

 

えっと、次は誰の番だろう……。

 

『阪急ブレーブス団歌』

 

「は、阪急ブレーブス?」

 

モニターに表示された曲名に、みんな驚く。

 

そもそも、阪急ブレーブス って何だろう?

 

イントロが流れ始めると、モニターに映し出されるのは……野球場か。

 

野球の応援歌?

 

佳介くんも白沢くんも驚きの表情。2人のリクエストではない? 私? もちろん違うよ。

 

そうなると、加木屋さん?

 

お、歌詞が表示されたから、前奏は終わりか。誰が歌うの?

 

そう思うのと同時に、加木屋さんがマイクを手に取った。

 

 「六甲おろしに鍛えたる。我ら熱と力のますらおだー」

 

普通に歌い始めたよ……。

 

良い声なんだね。そういえば、給湯器の音声案内の声と似てる。……全く別のことが頭に浮かんだ。

 

 「白球飛ぶ青空に希望は燃える。若き友どもよ、腕を組みいざ行けーよ、光り輝く勝利の道を」

 

何というか。軍歌みたいな渋いメロディーに、透き通った歌声。ギャップが凄い。

 

 「阪急ー、阪急ー。我らは阪急ブレーブスー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……思わず、聞き惚れてしまった。

 

「佳介くん、始まってるよ!」

 

それこそ、誰も次の曲が始まっているのに気づかないぐらい。

 

「あ、本当だ……」

 

テーブルに置いていたマイクを引ったくるように取り、歌い始めた。

 

 「一緒に出ようねって言ったのに~。いつも私が待たされたー」

 

今歌ってるのは『神田川』。これも渋い選曲。

 

因みに、一度佳介くんとお風呂屋さんに行ったときは、私が待たせた側でした……。

 

「加木屋さん、さっきの曲って?」

 

「阪急ブレーブス。今のオリックス・バファローズの応援歌」

 

やっぱり野球の応援歌なんだ。

 

メロディーといい歌詞といい。昔の歌なんだろう。

 

「よく知ってるね」

 

「祖母や母とカラオケに行くことが多かったから……」

 

そういうことね。

 

 

 

『優しさの理由』

 

あ、私の番だ。

 

 「退屈な窓辺に、吹き込む風に。顔をしかめたのは、照れくささの裏返しー」

 

歌っていても、頭の中には加木屋さんの歌声が流れている。

 

 「曖昧にうなづく、手のひらの今日」

 

私は歌うのが好きだから、たくさん歌いたいけれど、私の分を譲ってでも、もっと加木屋さんの歌声を聞きたい。そう思ってしまう。

 

「……」

 

「……」

 

視線を白沢くんや佳介くんに移す。どうやら、考えていることは同じみたいね。

 

 「心に呼びかける君のせいだね」

 

……なんか、今の状況と歌詞がマッチしてない?

 

 

 

私の次は白沢くんか。

 

「加木屋さん、これ歌える?」

 

マイクを使って話し掛けた。

 

これ?

 

あ。有名なやつだ。

 

「うん……大丈夫」

 

「じゃあ、一緒に歌って」

 

『ライオン』か。デュエット曲だから、丁度良いんじゃないかな?

 

 「星を廻せ 世界のまんなかでー」

 

白沢くん、やっぱり歌上手いよね。

 

 

 

 「キミが守るドアの鍵デタラメ。恥ずかしい物語」

 

加木屋さんも負けてない。

 

声が綺麗。

 

 「舐めあってもライオンは強い」

 

 

 

 「生き残りたい、まだ生きてたくなる」

 

サビに入ると2人のデュエット。

 

なんというか、凄い……。この一言に尽きると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次は佳介くんの『津軽海峡・冬景色』本当、選曲渋いよね。私と同い年のはずだけど、年齢詐称を疑いたくなる。

 

「加木屋さん。歌えるなら一緒に歌おう!」

 

強引な。あなたが選んだ曲を歌えるわけ……歌えるんだ。マイク持ってるよ。

 

 「上野発の夜行列車おりた時から、青森駅は雪の中」

 

うわー。2人とも声が良い。

 

最高、いや最強のデュエットだ。

 

ちょっと妬きそう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に時間が過ぎていった。

 

今は、お店を出た帰り道。

 

「楽しかったね」

 

「うん。またみんなで来たいよな」

 

後半、ほとんど加木屋さんが歌っていたけれど、白沢くんも佳介くんも、満足しているみたい。

 

「加木屋さん、また誘って良いかな?」

 

隣を歩く彼女の表情は、いつも通り無表情。どう思っているか分からない。

 

「えっと。また、加木屋さんの歌声聞きたいな……って」

 

「いいよ……」

 

「本当! ありがとう!」

 

良かった。また来てもいいって思ってもらえた。

 

「私も水野さんの歌声聞きたい……」

 

「そう? あ、アカネで良いよ。水野姓多いから、その方が分かり易いし」

 

現に、同じクラスに佳介くんがいるし、吹部にももう1人、羽衣(うい)ちゃんがいる。

 

「被るから、基本みんなからは名前で呼ばれてるの。だからアカネで良いよ」

 

「じ、じゃあ……アカネさん……」

 

照れくさそう? 最初はみんなそうだよね。

 

「うん。あ、私も加木屋さんのこと、みなみちゃんって呼んでも良いかな?」

 

「良いよ……」

 

「ありがとう。みなみちゃん」

 

あ、みなみちゃん笑った。

 

こんな風に笑うんだ……。

 

「えっと。今度何時が良いかな……。あ、全国大会が近いから、終わってからだね……」

 

そうだった。

 

全国大会まで残り1ヶ月強。

 

残された時間は限られている。

 

全国大会金賞。加納(かのう)先輩や堀田(ほりた)先輩、園田(そのだ)先生の為にも。そして何より自分たちで決めた目標を達成するために……。

 

 

 

 

 

 

「佳介くん。白沢くん」

 

「アカネさん?」

 

「どした?」

 

「全国大会、頑張ろうね!」

 

 

 

 





カラオケ行きたいですね……。

今、私の住んでいるところには、緊急事態宣言が出てて(9月28日現在)、カラオケ店は軒並み臨時休業なんですよ(涙)。

因みに、みんなが歌った曲は、私もカラオケで歌う曲です。


というわけで、10月になってカラオケ店が営業再開したので、行ってきました。

この曲順で歌ってみましたが、楽しかったです。

なお、2021年現在配信の無い曲は、他の曲を代わりに歌いました。


方向性が分からなくなるのと、利用規約に抵触しないように、歌詞を掲載している曲の数は抑えましたが、みんなで20曲ぐらい歌ったことにしてあります。


使用楽曲コード:01966405,03990761,05222834,06811345,15201392,70472203

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。