【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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1-5……文芸同好会へようこそ!

 

図書館閉架書庫室(としょかんへいかしょこしつ)

 

ノックしてから扉を開ける。

 

「失礼します。園田先生いらっしゃいますか?」

 

今日も扉に鍵はかかっておらず、室内の電気もついていた。

 

「我がお座敷へようこそ」

 

先生が居た。

 

「またそれですか……って、本当にお座敷がある!」

 

机の上に、手のひらサイズのミニチュア模型が置いてある。

 

しかも、畳敷きのお座敷だ……。

 

「今日はどの様なご用件かな?」

 

一瞬拍子抜けしてしまった。

 

一回深呼吸する。

 

「部員、集めてきましたよ。これが入部届です」

 

「お。昨日の今日でよく集めたね。さすが」

 

先生は大して驚いていない感じがする……。

 

「驚かないんですね」

 

「まあね。君ならこれぐらい容易いと思ってたよ」

 

俺なら?

 

「どういう意味ですか?」

 

「やる気があれば、大抵のことなら何でも出来る、ってやつ?」

 

なぜ自分で言っておきながら疑問形なんだ……。

 

「意味が分かりませんよ」

 

「金山くん、あなたについて少し調べさせてもらったの」

 

「は?」

 

俺について調べた? 何を?

 

いや、調べたところで分かるはず無い。

 

本名使ってないし。

 

「『砂かけ少女と夢見る少年』著者、(こがね) 山人(やまと)。あなたよね」

 

あっさり!

 

「どうしてそれを……?」

 

普通に調べたって出てくるわけがない。

 

坂上(さかがみ)出版に教え子がいてね。こっそり教えてもらった」

 

おい!

 

教えるなよ。人のこと……。

 

 

 

 

 

俺は、小学校四年生の頃から、物語を書くのが好きだった。

 

初めの頃は自分で読むだけだったが、それを友達に見せるようになり、クラスの一部で話題になったりした。

 

中二の時、部屋に隠してあった原稿が(ゆうき)に見つかり、いたく感動した母が、出来心で勝手に賞に応募した……。

 

 

出版社から電話があった時のことは、今でも覚えている。

 

だって、本人に心当たりが無いのに、賞の応募だとか、選考を通過したとか言われたんだからね。

 

頭に?マークを浮かべる俺と、それを見て青ざめる母の姿は、今となっては笑い話だ。

 

勝手に応募されたそれは、『第24回坂上出版ラノベ文庫小説大賞 審査員特別賞受賞』という結果で、俺は中三にして小説家デビューを果たした。

 

 

デビュー作は砂かけ少女と夢見る少年

 

変なタイトルだろう。

 

これ以上はノーコメント……。

 

 

 

 

 

 

「俺が作家と知って、先生は何をするつもりですか?」

 

何もしないんだろうけど、昨日初めて会ったばかりだし、よく分からない人だから、なんか怖い。

 

「別に何もしないよ。ただ、廃部寸前の部にこだわる理由が知りたかっただけ……。分からなかったけど」

 

いや、答え出てるだろ。

 

単純に、原稿を進める時間が足りない。

 

中学の時も(理由は伏せたけど)部活を辞めて、時間を確保していた。

 

文芸部に入れば、堂々と部活の時間を使って執筆(しっぴつ)出来るし、家が近いから入り浸れる。

 

そう考えていた。

 

 

 

 

「俺が小説家だってことは、家族以外には教えてませんから、くれぐれも……」

 

「分かってるって。私からは口外しません。バレれば話は別」

 

いや、バレませんから。先生が特殊なんです。

 

「えっと。この大里(おおさと)さん富士松さん小牧さんの3人は、名前を借りるって形になるのかな?」

 

「はい。大丈夫ですよね?」

 

「問題ないよ。富士松さんと小牧さんは掛け持ちになるから、部長金山くん、副部長大里さんという感じでいけるね」

 

俺が部長……。

 

まあ、菜穂子は名前を借りてるだけだからな。

 

「はい。とりあえず問題は無さそうね。さて、改めまして」

 

 

 

 

 

「文芸同好会へようこそ!」

 

 





お待たせ致しました。

これで、ようやく物語が始まります。

前置きが長かった感じですね。失礼しました。


本作での北宇治高校は、『北宇治=吹奏楽強豪校』というイメージが強い学校なので、吹奏楽部の活躍を追いかける という形で進めていこうと思ってます。

園田先生が前の顧問なので、無理矢理手伝わされる はるか といった感じですかね……?

はるか についても正体が判明しました。ベターな設定でしょうか? もう少し捻った方が良かったのかも。

あ、これあらすじに書いてあるから隠せてませんね(汗)。


これからもお付き合いいただけると幸いです。

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