【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
演奏が終われば解散となり、自由時間だ。
「はるか」
同じ場所で
「先輩、お疲れ様でした」
「はるかもお疲れ。格好良かったよ」
「いやいや、俺は演奏してませんから。高坂さんの方が……」
そう言いながら顔を向けると、高坂さんはいつの間にか来ていた
「
加納先輩も
「このあと暇?」
「えっ? 演奏、聞かなくていいんですか? ああ……まだ時間ありますね」
浜松海浜高校の演奏は最後なので、まだ1時間くらい時間がある。お茶しに行っても大丈夫か。
「喫茶店でも行きますか? あ、でも俺、この駅の改札出たの初めてなんで、何処に何があるか、知らないんですよね……」
言い出しておきながらお恥ずかしい……。
「それなら、私いい店知ってるけど、そこ行く?」
「あ、じゃあお願いします」
高坂さんの案内で来たのは、京都駅を出てすぐのところにある喫茶店風のお店だ。
外観は綺麗で新しいお店に見えるが、店内はかなり年季の入っている感じだ。
観光都市京都。見た目が悪いと注意されるからだろう……。
「いらっしゃいませ。……おや、
「どうも。端の6人席空いてる?」
「空いてるよ。えっと、4人で良いのかな?」
「ええ」
入店時に出迎えた、初老のマスターと思われる人と
「隣失礼します」
3人掛けの長椅子が、テーブルを挟んで2つ並んでいる。
加納先輩と堀田先輩が隣同士に座ったので、俺は高坂さんの隣に座った。
「好きなものを頼んで。支払いは持つから」
さらっとかっこいいこと言った……。
「いいんですか? 高坂先生」
「素晴らしい演奏を聞かせてもらったから。その労いってことで」
「じゃあ、はるかは?」
「俺ですか?」
労いというならば、演奏していない俺は対象外だな……。
「
高坂さんの顔はにやけてる。本気で言っている訳ではないのだろう。
「マジですか……」
3人に見えないように、鞄に仕舞ってある封筒を取り出す。
妙に分厚い。この話ぶりだと、お金に違いないんだろうけど、そうなるとかなりの金額じゃないか?
……なんだ。そういうことか。
開いてみたら、千円札が10枚入っている。
分厚いわけだ。
しかし、一万円も頂いて良いのだろうか? 譜面台を運んだだけなのに……。
もらった以上、
「先輩方、注文決まりましたか?」
「私は決まった。あやちは?」
「私も」
「全員決まったね」
高坂さんがマスターを呼び、それぞれ注文を告げる。
自分は払わないからか、2人は遠慮なく注文している。
俺は程々にしておこう……。
「あれ、冗談のつもりだったんだけど……。遠慮しなくて良かったのよ?」
マスターが下がってから、高坂さんから声が掛かる。
「大丈夫です。元々そんなにたくさん食べれないので……」
「意外だね。その年頃の男の子なら、たくさん食べるでしょう?」
「俺はあまり身体動かさないんで、そんなに食べれませんね。部活も文化部ですから」
「それを言うなら、吹奏楽部も文化部よ」
「高坂さん。それ、本気で言っていますか?」
「間違ったこと言った?」
「そうじゃなくて。本当にそう思ってますか? って」
吹奏楽部が文化部。どこが?
(一部の楽器を除いて)肺活量が必要だし、サンフェスみたいに楽器持って歩きながら演奏する事もある。
運動部と文化部がくっついていると言っても過言ではないと思う。
世界遺産で例えるなら、複合遺産みたいな? そんな感じ。
「やっぱり金山くんっておもしろいね。私の付き人として正式に雇っても良い?」
まさかのスカウト?
「ダメです! はるかは副々部長として、私たちの引退後も部を支えてもらうんです。いくら高坂先生の頼みでも、それはお断りします」
加納先輩が真っ先に反論した。
「勉強こそ、学生の本分ですよ」
堀田先輩が続く。
「駄目か。仕方ないな……卒業後なら?」
「なら。まあ……良いです」
「私も異議なし」
先輩方……。
「あの……。俺の意見は?」
「そういえば、聞いてなかったね。どう?」
「有り難いお話ですが、遠慮します」
既に仕事を抱えている。
これ以上増えたら死ぬ……。
「あら。残念……」
「お待たせ」
「来たね」
マスターが注文した商品を持って来た。
各々、届いたドリンクとスイーツを戴く。
このお店、見た感じだと、スイーツのテイクアウトがメインで、喫茶店はオマケみたいな感じだ。
それでも、喫茶店の雰囲気も良く、家の近くにあれば
俺が頼んだのは、チーズケーキとチョコ掛けリングドーナツ、ホットコーヒー。
それでは、
「頂きます」
どれどれ。あ。
これは良い。
甘さが染みるー。
先輩方に高坂さんも、美味しそうに食べている。
暫し無言状態。
美味しい物を食べてる時って、言葉が出なくなるよね。
「ご馳走さまでした」
真っ先に俺が食べ終えた。
「どうだった?」
高坂さんも食べ終わったようだ。
「美味しかったです」
「良かった。2人は?」
先輩方は量が多いので、まだ食べている。
「どれも美味しいです!」
加納先輩は、ショートケーキが3種類。
「甘さ加減が絶妙ですね」
堀田先輩はチョコバナナジャンボパフェ(メニューにそう書いてある)。
「そう? だそうですよ、マスター」
高坂さんがそう声を掛けると、初老のマスターは手を挙げて応えた。
先輩方の食べている様子を、眺めていても誰得なので、折角だから高坂さんに話を振ってみる。
「良い雰囲気のお店ですね。レトロというか、クラシックというか……」
「でしょう?
そういえば、確かにあの辺りにそんな感じの喫茶店がある。
店名は違ったと思うけど、系列店なのか。
あそこなら近いし、今度行ってみよう……。
しかし、堀田先輩が食べているパフェは大きいな。
それ、1人で食べる奴じゃないと思うんだけど……。
活動報告の方にも書きましたが、本日二回目のコロナワクチン接種を受けて来ました。
今のところは特になんの症状もありませんが、一回目でちょっと副反応が出たので、明日・明後日が少し心配です。
今回はなんとか間に合わせましたが、次回が遅れる可能性もあります。
ご迷惑お掛けしますが、御理解頂けると幸いです。
さて。次回は強豪 浜松海浜高校 の演奏です。
えっ? モデルとなった学校は、って?
ご想像にお任せします……。