【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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10-3……やっぱり金山くんっておもしろいね

 

演奏が終われば解散となり、自由時間だ。

 

「はるか」

 

同じ場所で高坂(こうさか)さんと演奏を聞いていたら、名前を呼ばれた。この声は堀田(ほりた)先輩だ。

 

「先輩、お疲れ様でした」

 

「はるかもお疲れ。格好良かったよ」

 

「いやいや、俺は演奏してませんから。高坂さんの方が……」

 

そう言いながら顔を向けると、高坂さんはいつの間にか来ていた加納(かのう)先輩と話している。

 

沙也(さや)、高坂さんの演奏聴いて凄く感動してたから。小牧(こまき)さんなんか、変に興奮しちゃって大変だったよ」

 

加納先輩も(あずさ)も同じトランペットだし、梓はソロ担当だから、感じるものがあったのだろう。

 

「このあと暇?」

 

「えっ? 演奏、聞かなくていいんですか? ああ……まだ時間ありますね」

 

浜松海浜高校の演奏は最後なので、まだ1時間くらい時間がある。お茶しに行っても大丈夫か。

 

「喫茶店でも行きますか? あ、でも俺、この駅の改札出たの初めてなんで、何処に何があるか、知らないんですよね……」

 

言い出しておきながらお恥ずかしい……。

 

「それなら、私いい店知ってるけど、そこ行く?」

 

「あ、じゃあお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高坂さんの案内で来たのは、京都駅を出てすぐのところにある喫茶店風のお店だ。

 

外観は綺麗で新しいお店に見えるが、店内はかなり年季の入っている感じだ。

 

観光都市京都。見た目が悪いと注意されるからだろう……。

 

「いらっしゃいませ。……おや、麗奈(れいな)ちゃんか。いらっしゃい」

 

「どうも。端の6人席空いてる?」

 

「空いてるよ。えっと、4人で良いのかな?」

 

「ええ」

 

入店時に出迎えた、初老のマスターと思われる人と(いく)つか言葉を交わし、高坂さんは窓際の席についた。

 

「隣失礼します」

 

3人掛けの長椅子が、テーブルを挟んで2つ並んでいる。

 

加納先輩と堀田先輩が隣同士に座ったので、俺は高坂さんの隣に座った。

 

「好きなものを頼んで。支払いは持つから」

 

さらっとかっこいいこと言った……。

 

「いいんですか? 高坂先生」

 

「素晴らしい演奏を聞かせてもらったから。その労いってことで」

 

「じゃあ、はるかは?」

 

「俺ですか?」

 

労いというならば、演奏していない俺は対象外だな……。

 

金山(かなやま)くんにはお礼を渡したから、私は加納さんと堀田さんの分を払おうかな? 金山くんは自分で払って」

 

高坂さんの顔はにやけてる。本気で言っている訳ではないのだろう。

 

「マジですか……」

 

3人に見えないように、鞄に仕舞ってある封筒を取り出す。

 

妙に分厚い。この話ぶりだと、お金に違いないんだろうけど、そうなるとかなりの金額じゃないか?

 

……なんだ。そういうことか。

 

開いてみたら、千円札が10枚入っている。

 

分厚いわけだ。

 

しかし、一万円も頂いて良いのだろうか? 譜面台を運んだだけなのに……。

 

もらった以上、不躾(ぶしつけ)なことは言えない。そのまま鞄に戻す。

 

 

 

「先輩方、注文決まりましたか?」

 

「私は決まった。あやちは?」

 

「私も」

 

「全員決まったね」

 

高坂さんがマスターを呼び、それぞれ注文を告げる。

 

自分は払わないからか、2人は遠慮なく注文している。

 

俺は程々にしておこう……。

 

「あれ、冗談のつもりだったんだけど……。遠慮しなくて良かったのよ?」

 

マスターが下がってから、高坂さんから声が掛かる。

 

「大丈夫です。元々そんなにたくさん食べれないので……」

 

「意外だね。その年頃の男の子なら、たくさん食べるでしょう?」

 

「俺はあまり身体動かさないんで、そんなに食べれませんね。部活も文化部ですから」

 

「それを言うなら、吹奏楽部も文化部よ」

 

「高坂さん。それ、本気で言っていますか?」

 

「間違ったこと言った?」

 

「そうじゃなくて。本当にそう思ってますか? って」

 

吹奏楽部が文化部。どこが?

 

(一部の楽器を除いて)肺活量が必要だし、サンフェスみたいに楽器持って歩きながら演奏する事もある。

 

運動部と文化部がくっついていると言っても過言ではないと思う。

 

世界遺産で例えるなら、複合遺産みたいな? そんな感じ。

 

「やっぱり金山くんっておもしろいね。私の付き人として正式に雇っても良い?」

 

まさかのスカウト?

 

「ダメです! はるかは副々部長として、私たちの引退後も部を支えてもらうんです。いくら高坂先生の頼みでも、それはお断りします」

 

加納先輩が真っ先に反論した。

 

「勉強こそ、学生の本分ですよ」

 

堀田先輩が続く。

 

「駄目か。仕方ないな……卒業後なら?」

 

「なら。まあ……良いです」

 

「私も異議なし」

 

先輩方……。

 

「あの……。俺の意見は?」

 

「そういえば、聞いてなかったね。どう?」

 

「有り難いお話ですが、遠慮します」

 

既に仕事を抱えている。

 

これ以上増えたら死ぬ……。

 

「あら。残念……」

 

「お待たせ」

 

「来たね」

 

マスターが注文した商品を持って来た。

 

 

 

各々、届いたドリンクとスイーツを戴く。

 

このお店、見た感じだと、スイーツのテイクアウトがメインで、喫茶店はオマケみたいな感じだ。

 

それでも、喫茶店の雰囲気も良く、家の近くにあれば贔屓(ひいき)にしたいと思う。

 

 

俺が頼んだのは、チーズケーキとチョコ掛けリングドーナツ、ホットコーヒー。

 

それでは、

 

「頂きます」

 

どれどれ。あ。

 

これは良い。

 

甘さが染みるー。

 

先輩方に高坂さんも、美味しそうに食べている。

 

暫し無言状態。

 

美味しい物を食べてる時って、言葉が出なくなるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走さまでした」

 

真っ先に俺が食べ終えた。

 

「どうだった?」

 

高坂さんも食べ終わったようだ。

 

「美味しかったです」

 

「良かった。2人は?」

 

先輩方は量が多いので、まだ食べている。

 

「どれも美味しいです!」

 

加納先輩は、ショートケーキが3種類。

 

「甘さ加減が絶妙ですね」

 

堀田先輩はチョコバナナジャンボパフェ(メニューにそう書いてある)。

 

「そう? だそうですよ、マスター」

 

高坂さんがそう声を掛けると、初老のマスターは手を挙げて応えた。

 

先輩方の食べている様子を、眺めていても誰得なので、折角だから高坂さんに話を振ってみる。

 

「良い雰囲気のお店ですね。レトロというか、クラシックというか……」

 

「でしょう? 慶大(けいだい)付属病院の近くにも系列のお店があって、そこのマスターが父の知り合いでね。だから、ここもよく利用してるの」

 

そういえば、確かにあの辺りにそんな感じの喫茶店がある。

 

店名は違ったと思うけど、系列店なのか。

 

あそこなら近いし、今度行ってみよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、堀田先輩が食べているパフェは大きいな。

 

それ、1人で食べる奴じゃないと思うんだけど……。

 

 

 





活動報告の方にも書きましたが、本日二回目のコロナワクチン接種を受けて来ました。

今のところは特になんの症状もありませんが、一回目でちょっと副反応が出たので、明日・明後日が少し心配です。

今回はなんとか間に合わせましたが、次回が遅れる可能性もあります。

ご迷惑お掛けしますが、御理解頂けると幸いです。


さて。次回は強豪 浜松海浜高校 の演奏です。

えっ? モデルとなった学校は、って?

ご想像にお任せします……。

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