【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
大変長らくお待たせ致しました。
お待たせしておきながら、短めです。申し訳ありません。
翌朝、いつもと同じ時間に学校へ行く。
下駄箱で、
最近では、靴があれば直接部室へ向かうようにしている。その方が早いから……。
ノックし扉を開ける。
「おはよう」
「おはようございます」
加木屋先輩に挨拶をし、自分の定位置に座り、パソコンの電源を入れる。
立ち上がるまで時間が掛かる。
さて、暇だ。
先輩の方を覗き込んでみる。
「はい。
どうやら、先輩も覗き込まれると思って準備していたようで、すぐスケッチブックを差し出された。
「ありがとうございます」
受け取り、見る。
おお。紛れもなく高坂さんの胸像画だ。
トランペットを吹いているときのものだ。
鉛筆(シャーペン?)で描かれているから白黒だけど、写真と勘違いしそうな出来映えだ。
これ、言ったら失礼かもしれないけど、どんな美人・美青年でも、楽器吹いている時って、凄い顔するよな……。それまで忠実に再現してるよ。
えっと、もう一つは滝野先生だ。
先生もトランペットを吹いている時の絵だ。
しかし、滝野先生がトランペットを吹いている姿を見たことがない。
高校生の時、この学校でトランペットパートだったという話を聞いているけれど、話だけだ。
「先輩、滝野先生が楽器吹いているの、見たことがあるんですか?」
「無いよ。駅ビルコンサートの時に見た、ペット吹いてる男の子と、滝野先生を重ねて描いてみたの」
なるほど。
「じゃあ、滝野先生にフルート持たせたり、
「出来るよ。でも、本人に許可無くそれやるの、失礼じゃない?」
それもそうか……。
朝の部活を終え、教室へ。
「おはよー」
西尾先生が入ってきた。
「「おはようございます」」
「「先生おはよー」」
「さてと。朝礼始めるよ。出欠とるね」
「
「はい」
「
「はーい」
「
「はい」
「
「うい~」
「こら、まじめに答えなさい。次、
「はい」
「
「はいっ!」
「元気だね。次、
返事がない。
振り向くと、後ろの席は空いていた。
「あれ? 清水さんは来てないのか……。というか、吹部誰も居ない?」
確かに。
教室内を見渡すと、
「誰か何か聞いてる?」
先生がそう言って室内を見渡したところで、扉が開いた。
「おはようございます」
「部活が長引きました」
「遅くなりました!」
吹奏楽部のメンバー登場。
「何かあったの?」
「この件については、職員室で
「了解。じゃあ席ついて。出欠確認続けるよ」
あ、今わざと目合わせなかった。
「何かあったのか?」
だからといって確認しないわけにもいかない。
後ろの席に問い掛ける。
「金山くん。……
やはり。
「低音だっけ? あまり接点無いから、名前ぐらいしか知らないけど。先輩がどうした?」
知っているけれど、ここで本当のことは言えない。
「私、パートが違うから、詳しいことは知らないんだけど、今朝の朝練に来なかったの。まじめな人だから、無断欠席は疎か遅刻することさえ無い人だし。低音パートは大騒ぎだったよ。
Aメンバーではない、ということは、まあそういうことなんだろう。
「
あの先生が時間を忘れるなんて。相当焦っているようだ。
「はい、席つけー。授業始めるぞ」
1限目の始まる時間になると、教室に滝野先生が入ってきた。
あれ? 1限目は数学のはず。
「純ちゃん先生どうしたの? 1限目数学じゃないの?」
誰かが突っ込むように言った。
「時間割変更だよ。1限目と2限目は社会になった」
「えっ? 2限目もですか!」
「
「うわー」
先生の言葉に、社会が嫌いな人が悲鳴を上げた。俺は社会得意だし別に構わない。
しかし、黄前先生と松本先生が一緒に外出したってことは……。あの件だろうか。
「黄前先生って誰?」
「悪い。
「……そんなわけで、関ケ原の戦いで敗れた三成は……っと。チャイム鳴ったな。一旦終わり。日直、号令頼む」
「起立。気を付け、礼」
「「ありがとうございました」」
1限目が終わる。
このまま2限目も同じ授業だが、流石に一旦区切るらしい。
「滝野先生! ここ教えてください」
「板書し損ねたので、お願いします」
先生は室内に留まるようで、質問をする生徒が駆け寄っていく。
「ねえ、金山くん」
そんな様子を眺めていたら、前の席の
「えっと。何?」
「これ教えてもらえる?」
どれどれ……数学かよ。計算式が途中で途切れている。
「これは、ここが逆。ひっくり返して考えてみ」
「逆……ああ。そういうことね」
分かったらしい。
「そう。それで答え出るから」
「ありがとう」
「ねえ、金山くん」
柳津さんが向き直ると、今度は後ろの紅葉から声が掛かる。
「どうしたの?」
「金山くん。実は藤浪先輩のことを何か知っているとか?」
いきなり何言い出すの、この人は。
「何も知らないよ。論より証拠、疑うなら何か証拠出してよ」
中学の頃は『失言魔』の異名を
とはいえ、このことは話すわけにはいかない。
「証拠って……無いよ。どちらかといえば、金山くんなら知っているかもしれない、という希望みたいな?」
何故、自分で言いながら疑問形。