【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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ある人物の名言ですね……。

盗ってごめんなさい(字が違う?)




10-8……「ぶっちゃけつまらん」

 

授業の合間や昼休みに、紅葉(くれは)からの追求が続いたが、上手く交わしつつ、放課後を迎える。

 

いつも通り部室へ行く。

 

「失礼します」

 

「お。来た来た」

 

「お疲れー」

 

「お邪魔してまーす」

 

ノックして扉を開けると、いつもと違い賑やかだった。

 

えっと……これはどういう状況?

 

「何で皆さん揃ってるんですか? ここ、文芸同好会ですよ」

 

何で吹奏楽部の外部指導者がここに。

 

「仕方ないでしょう。急に部活が休みになったんだから」

 

坂部(さかべ)さんは物凄く機嫌が悪そう。加木屋(かぎや)先輩の定位置の椅子に足を組んで座り、腕組みもしている。

 

その隣に座っている橋本(はしもと)さんも同じ姿勢で座っていて、こちらも機嫌悪そうだ。

 

「休みって、吹奏楽部が?」

 

「吹部以外に何処がある?」

 

他にはありませんね……。この3人が揃う部なんて。

 

「この一番大切な時期に休みなんて……。一体何があったんですか?」

 

「それはボクたちも知りたい」

 

だろうね。

 

俺も詳しい理由は知らないけれど、だいたい見当はついている。

 

勿論、それは口が裂けても言えない。

 

「加木屋先輩は来てないんですか?」

 

鍵が開いていたから、先輩が来ていると思ったんだけど。

 

「買い物に行ったよ。お茶が尽きたからって」

 

よく見ると、机にはお茶が人数分用意されてる。

 

ご丁寧に俺のまで……。

 

……無くなったから買いに行ったって? 先輩が1人で?

 

滝野(たきの)先生が車出すから、モモテラス行ってくるってさ」

 

あそこか……。

 

正直、お茶を買うのなら、最近続々とオープンしたドラッグストアの方が安いと思う。

 

この10年位でコンビニ並みに増えた薬局たち……。経営成り立ってるんだろうか?

 

「ところで、高坂(こうさか)さんは?」

 

この間、ずっと無言で本を読んでいる。

 

しかも、それ。俺の本だけど(2つの意味で)。

 

「さてね? 本読んでるよ。面白いの? それ」

 

面白いか? そりゃあ勿論。だって俺が書いたんだから……。

 

でも、そんな風には言わない。いや、言えない。

 

「面白いですよ。読んでみますか?」

 

幸い(?)ここは閉架書庫だ。砂かけ なら、3冊はあるはず。

 

「はい。『砂かけ少女と夢見る少年』1巻。どうぞ」

 

『砂かけ少女と夢見る少年①』著…金 山人(こがねやまと) イラスト…ヤギ

 

「どうも」

 

「サンキュー」

 

2人に本を渡し、俺は自分の席に座る。隣が高坂さんだけど、もう気にしない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読み終えたのか、坂部さんが本を閉じ、顔を上げる。

 

「確かに面白いね。ヒロインの女の子が、指の間から砂が出る特殊体質だとか、主人公は夢遊病(むゆうびょう)のような状態で特殊能力が発動するって……。ファンタジーと、学園モノの合体みたいな? 楽しく読ませてもらったよ」

 

坂部さんの感想だ。

 

ジャンルは、ファンタジーと恋愛。主人公とヒロインは最終的にはくっ付く予定だ。最初はそういう予定ではなかったけど、担当と話し合ってそういう方向になった。

 

続いて橋本さんも本を閉じる。

 

「ぶっちゃけつまらん」

 

一言そう言い放つ。

 

まあ、ネットのレビューとかでそういう批評(ひひょう)も多いから、大丈夫。慣れている。

 

「橋本先生とて、聞き捨てなりませんね」

 

今まで黙って読み続けていた高坂さんが顔を上げた。

 

目! 目が怖いって!

 

「いや、だってさ。何で指の間なの? これじゃあ手を振っても少ししか相手に掛けれないだろ? (てのひら)からなら、ある程度たくさん掛けれるから、効果は抜群だろう」

 

ごもっとも。

 

「でもそれは、夢遊状態の主人公は動きが鈍いから、主人公が能力を発動させるまでの時間稼ぎですよ。砂で敵を怯ませるんです」

 

その通り。

 

主人公の能力が発動すれば、殆どの敵はひとたまりもない。しかし、それには時間がかかってしまうため、その間の時間稼ぎに、ヒロインが砂を飛ばすんだ。

 

「砂の必要ある? 水とか炎とかさ」

 

「ヒロインが強かったら、主人公の居る意味無いでしょう?」

 

「それに、砂なら目に入ったりしない限り、安全ですよ。まあ、目に入れば目潰しのオマケが付いてますけれど」

 

白熱してますね……。

 

ちょっとお手洗い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレに行って戻ってきた。

 

「流石小牧(こまき)さん」

 

「高坂が()れただけのことはあるね」

 

「マジ凄いねぇ」

 

3人、窓際に居た。窓が開いているのか。

 

……。築山で梓が演奏しているらしい。トランペットの音色が聞こえている。

 

「どうしました?」

 

「ああ金山(かなやま)くん。小牧さんが1人演奏しているんだよ」

 

「しかも曲が六甲おろし。橋本先生が阪神ファンだから今にも泣きそう」

 

橋本さんが阪神ファン。確かに、服装次第で見た目もそう見える。

 

「正直な話、小牧さんって何者なの?」

 

どうでしょう?

 

「金山くん?」

 

あ、俺に話しかけているのか。

 

「さて? 俺も詳しいことは知りません。吹奏楽部じゃないんで」

 

同じ中学の出身とはいえ、接点は多くない。

 

「トランペットが上手いただの女子高生です」

 

そうとしか言えない。

 

というか、高校生だった頃の高坂さんも、同じ様なものだったはず。そう聞いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梓の独壇場は続く。

 

トランペットの美しい音色が響いてきた。

 

『フライデーナイトファンタジー』『トランペット吹きの休日』『ルパン三世のテーマ』辺りは分かったけれど、この他にもタイトルを知らない曲も吹いていた。

 

「何度聴いても良いよね、小牧さんの演奏は」

 

「彼女、何でこんな所に居るんだろう?」

 

『こんな所に居る』とは『北宇治に在籍している』の意味だろう。

 

「何故でしょうね? 私もそれは気になってます」

 

「高坂が知らないのなら、本人しか知らないんだろう……」

 

「気持ちは分かりますよ。私も、滝先生の発言に反発して、練習が休みになったことがあって、あそこで好き勝手吹いてましたね」

 

「今の小牧さんみたいに?」

 

「ああ、その話なら滝クンから聞いたことあるよ」

 

「本当ですか!」

 

「うん。演奏聴いて一発で分かったって」

 

再び3人で白熱した話し合いになっている……。

 

部屋の主である俺は、蚊帳の外だ。

 

これじゃあ執筆するにしても、集中出来そうにない。

 

 

 

……今日は帰ろう。

 

加木屋先輩と滝野先生が戻ってくるはずだから、鍵の件は大丈夫だと思うし、このままで問題ないだろう。

 

 





吹奏楽部の外部指導者3人が、部活が休みになって文芸同好会に遊びに行った話でした。


大変長らくお待たせ致しました。今後も週一回ペースで頑張ります!
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