【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
ある人物の名言ですね……。
盗ってごめんなさい(字が違う?)
授業の合間や昼休みに、
いつも通り部室へ行く。
「失礼します」
「お。来た来た」
「お疲れー」
「お邪魔してまーす」
ノックして扉を開けると、いつもと違い賑やかだった。
えっと……これはどういう状況?
「何で皆さん揃ってるんですか? ここ、文芸同好会ですよ」
何で吹奏楽部の外部指導者がここに。
「仕方ないでしょう。急に部活が休みになったんだから」
その隣に座っている
「休みって、吹奏楽部が?」
「吹部以外に何処がある?」
他にはありませんね……。この3人が揃う部なんて。
「この一番大切な時期に休みなんて……。一体何があったんですか?」
「それはボクたちも知りたい」
だろうね。
俺も詳しい理由は知らないけれど、だいたい見当はついている。
勿論、それは口が裂けても言えない。
「加木屋先輩は来てないんですか?」
鍵が開いていたから、先輩が来ていると思ったんだけど。
「買い物に行ったよ。お茶が尽きたからって」
よく見ると、机にはお茶が人数分用意されてる。
ご丁寧に俺のまで……。
……無くなったから買いに行ったって? 先輩が1人で?
「
あそこか……。
正直、お茶を買うのなら、最近続々とオープンしたドラッグストアの方が安いと思う。
この10年位でコンビニ並みに増えた薬局たち……。経営成り立ってるんだろうか?
「ところで、
この間、ずっと無言で本を読んでいる。
しかも、それ。俺の本だけど(2つの意味で)。
「さてね? 本読んでるよ。面白いの? それ」
面白いか? そりゃあ勿論。だって俺が書いたんだから……。
でも、そんな風には言わない。いや、言えない。
「面白いですよ。読んでみますか?」
幸い(?)ここは閉架書庫だ。砂かけ なら、3冊はあるはず。
「はい。『砂かけ少女と夢見る少年』1巻。どうぞ」
『砂かけ少女と夢見る少年①』著…
「どうも」
「サンキュー」
2人に本を渡し、俺は自分の席に座る。隣が高坂さんだけど、もう気にしない……。
読み終えたのか、坂部さんが本を閉じ、顔を上げる。
「確かに面白いね。ヒロインの女の子が、指の間から砂が出る特殊体質だとか、主人公は
坂部さんの感想だ。
ジャンルは、ファンタジーと恋愛。主人公とヒロインは最終的にはくっ付く予定だ。最初はそういう予定ではなかったけど、担当と話し合ってそういう方向になった。
続いて橋本さんも本を閉じる。
「ぶっちゃけつまらん」
一言そう言い放つ。
まあ、ネットのレビューとかでそういう
「橋本先生とて、聞き捨てなりませんね」
今まで黙って読み続けていた高坂さんが顔を上げた。
目! 目が怖いって!
「いや、だってさ。何で指の間なの? これじゃあ手を振っても少ししか相手に掛けれないだろ?
ごもっとも。
「でもそれは、夢遊状態の主人公は動きが鈍いから、主人公が能力を発動させるまでの時間稼ぎですよ。砂で敵を怯ませるんです」
その通り。
主人公の能力が発動すれば、殆どの敵はひとたまりもない。しかし、それには時間がかかってしまうため、その間の時間稼ぎに、ヒロインが砂を飛ばすんだ。
「砂の必要ある? 水とか炎とかさ」
「ヒロインが強かったら、主人公の居る意味無いでしょう?」
「それに、砂なら目に入ったりしない限り、安全ですよ。まあ、目に入れば目潰しのオマケが付いてますけれど」
白熱してますね……。
ちょっとお手洗い。
トイレに行って戻ってきた。
「流石
「高坂が
「マジ凄いねぇ」
3人、窓際に居た。窓が開いているのか。
……。築山で梓が演奏しているらしい。トランペットの音色が聞こえている。
「どうしました?」
「ああ
「しかも曲が六甲おろし。橋本先生が阪神ファンだから今にも泣きそう」
橋本さんが阪神ファン。確かに、服装次第で見た目もそう見える。
「正直な話、小牧さんって何者なの?」
どうでしょう?
「金山くん?」
あ、俺に話しかけているのか。
「さて? 俺も詳しいことは知りません。吹奏楽部じゃないんで」
同じ中学の出身とはいえ、接点は多くない。
「トランペットが上手いただの女子高生です」
そうとしか言えない。
というか、高校生だった頃の高坂さんも、同じ様なものだったはず。そう聞いている。
梓の独壇場は続く。
トランペットの美しい音色が響いてきた。
『フライデーナイトファンタジー』『トランペット吹きの休日』『ルパン三世のテーマ』辺りは分かったけれど、この他にもタイトルを知らない曲も吹いていた。
「何度聴いても良いよね、小牧さんの演奏は」
「彼女、何でこんな所に居るんだろう?」
『こんな所に居る』とは『北宇治に在籍している』の意味だろう。
「何故でしょうね? 私もそれは気になってます」
「高坂が知らないのなら、本人しか知らないんだろう……」
「気持ちは分かりますよ。私も、滝先生の発言に反発して、練習が休みになったことがあって、あそこで好き勝手吹いてましたね」
「今の小牧さんみたいに?」
「ああ、その話なら滝クンから聞いたことあるよ」
「本当ですか!」
「うん。演奏聴いて一発で分かったって」
再び3人で白熱した話し合いになっている……。
部屋の主である俺は、蚊帳の外だ。
これじゃあ執筆するにしても、集中出来そうにない。
……今日は帰ろう。
加木屋先輩と滝野先生が戻ってくるはずだから、鍵の件は大丈夫だと思うし、このままで問題ないだろう。
吹奏楽部の外部指導者3人が、部活が休みになって文芸同好会に遊びに行った話でした。
大変長らくお待たせ致しました。今後も週一回ペースで頑張ります!