【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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今日はホワイトデーですね。

だからといって、なにも特別なことはありません。ごめんなさい……。

今回は、最近では珍しく(?)短めでお送りします。



11-5……文芸同好会の部長

 

木曜日の朝。

 

「失礼します。1-2の金山(かなやま)です。文芸同好会の部室の鍵を借りに来ました」

 

さて、どこから声が掛かるだろう……。

 

「あ、金山くん」

 

ほら来た。

 

「鍵なら加木屋(かぎや)さんが持っていきましたよ」

 

(たき)先生が教えてくれた。

 

こんな時間から来ているなんて珍しい。

 

「ありがとうございます。失礼しました」

 

お礼を言って退室する。

 

 

 

しかし、滝先生がこんな時間から来ているのは珍しい。

 

普段、夜遅くまで残っていることはあるけれど、その代わりに朝は居ない。

 

今日来ているのは明日の演奏会絡みだろうか。

 

……いや、昨日学校が休みだったからか?

 

ゆうきが言ってたのだと、夕方には帰っていったらしい。帰るとき職員室に居なかったから、俺より早かったのは確かだ。

 

普段、学校がある日なら、俺より早く帰ることはない。文化祭の後に1回だけあった例外を除いて……。

 

あの日は、誰か大切な人の命日だったらしいけど、誰だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『図書館閉架書庫室』

 

毎日来ている部室。

 

しかし、今日はいつもと違う心持ちで扉を開く。

 

「失礼します……」

 

鍵は開いているはずだから、ノックして扉を開ける。

 

「おはよう」

 

聞き慣れた声、しかしここで聞くのは久し振りの声だ。

 

「おはようございます、加木屋先輩」

 

加木屋先輩がいつもの定位置の所で立っている。

 

「おはよう。金山くん」

 

 

 

なぜ、今まで部活に来なかった(部活を休んでいた)か、聞いたわけではないんだけど、先輩が静かに語り出した。

 

「実は、私の父が、モモテラスのスーパーで店長をやってるの。私が転校してきた理由もそれ」

 

モモテラスのスーパー……。名前を覚えてないんだけど、確か岐阜県にもお店がある会社だ!

 

「それで、アルバイトの人が急病で休んでしまって、欠員が生じたのね。急な話だったから、私が働くことになって」

 

猫の手も借りたい状態になって、店長の娘が就労可能な年齢で、手伝ってもらえるなら助かるだろう。

 

「でも、金山くんに対して啖呵(たんか)切った後だったから、このことを言い出しにくくて」

 

確かに。もし、俺も同じ立場だったらそう思う。

 

塚本(つかもと)先生には言ってあったんだけどね。金山くんには黙って部活を休んでごめんなさい!」

 

先輩がそう言って頭を下げた。

 

「えっと、もう良いですから。頭上げてください」

 

まあ、これで加木屋先輩が部活に来なかった理由が分かった。

 

あとで黄前(おうまえ)先生を問い詰めるとしよう……。

 

 

 

次は、先輩がこの同好会の部長になった件だ。

 

この間、昼休みの加納(かのう)先輩との約束をすっぽかした日。『問題は全て解決した』と言っていたのは、加木屋先輩がこの同好会の部長になったからだった。

 

「あの日の朝、職員室に行ったら、金山くんと加納先輩・小田渕(おだぶち)先生が話し合っていたのを見て……。お昼休みに職員室に行ったら、今度は加納先輩と小田渕先生が話し込んでいて。2人からその話を聞いたの」

 

「それで新しい申請書を作ってきたと」

 

「うん。本当なら、先に出した申請書を訂正する形にするのが正しいんだけど、小田渕先生がそれを無かったことにしてくれて、私が後から出した申請書を提出してくれたの」

 

なるほど。じゃあ、

 

「俺はどうなりました?」

 

この一言で意図は分かった模様。

 

「金山くんは、部員全員から解職請求があったことにして、部長職を解かれたことになってるらしいよ……」

 

あの先生……。

 

『書類をでっち上げる位ならやっても良い』って言ってたけど、本当にやるとは。

 

「というわけで。改めまして、文芸同好会の部長になりました、加木屋 みなみです。これからもよろしくお願いします」

 

そう言い、先輩もとい部長が頭を下げた。

 

「こちらこそ、部長をよろしくお願いします」

 

俺も頭を下げる。

 

 

 

部長が変わったといっても、いつも通り何も変わらない。

 

先輩……部長は、いつも通り本を読んでいる。

 

俺はパソコンで原稿を進め……たいんだけど、とりあえず今は、昨日電話した通り、安曇(あづみ)さんへ送る方の原稿の準備だ。

 

『若手作家による短編集』と言っていたな……。

 

確か、来春には発売されるはず。

 

これは、卒業記念という形に出来るだろう。

 

よし。そうと決まれば、タイトルもそれに変えよう……。

 

 

 





なお、この『モモテラスにあるスーパー』。即ち、加木屋先輩のお父さんが勤めるスーパーは、最初は バロー(本社 岐阜県多治見市)を想定していましたが、結局 平和堂(本社 滋賀県彦根市)にしてあります。

本編とは関係ない話ですが、参考までに……。
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