【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
今日はホワイトデーですね。
だからといって、なにも特別なことはありません。ごめんなさい……。
今回は、最近では珍しく(?)短めでお送りします。
木曜日の朝。
「失礼します。1-2の
さて、どこから声が掛かるだろう……。
「あ、金山くん」
ほら来た。
「鍵なら
こんな時間から来ているなんて珍しい。
「ありがとうございます。失礼しました」
お礼を言って退室する。
しかし、滝先生がこんな時間から来ているのは珍しい。
普段、夜遅くまで残っていることはあるけれど、その代わりに朝は居ない。
今日来ているのは明日の演奏会絡みだろうか。
……いや、昨日学校が休みだったからか?
ゆうきが言ってたのだと、夕方には帰っていったらしい。帰るとき職員室に居なかったから、俺より早かったのは確かだ。
普段、学校がある日なら、俺より早く帰ることはない。文化祭の後に1回だけあった例外を除いて……。
あの日は、誰か大切な人の命日だったらしいけど、誰だろう?
『図書館閉架書庫室』
毎日来ている部室。
しかし、今日はいつもと違う心持ちで扉を開く。
「失礼します……」
鍵は開いているはずだから、ノックして扉を開ける。
「おはよう」
聞き慣れた声、しかしここで聞くのは久し振りの声だ。
「おはようございます、加木屋先輩」
加木屋先輩がいつもの定位置の所で立っている。
「おはよう。金山くん」
なぜ、今まで部活に来なかった(部活を休んでいた)か、聞いたわけではないんだけど、先輩が静かに語り出した。
「実は、私の父が、モモテラスのスーパーで店長をやってるの。私が転校してきた理由もそれ」
モモテラスのスーパー……。名前を覚えてないんだけど、確か岐阜県にもお店がある会社だ!
「それで、アルバイトの人が急病で休んでしまって、欠員が生じたのね。急な話だったから、私が働くことになって」
猫の手も借りたい状態になって、店長の娘が就労可能な年齢で、手伝ってもらえるなら助かるだろう。
「でも、金山くんに対して
確かに。もし、俺も同じ立場だったらそう思う。
「
先輩がそう言って頭を下げた。
「えっと、もう良いですから。頭上げてください」
まあ、これで加木屋先輩が部活に来なかった理由が分かった。
あとで
次は、先輩がこの同好会の部長になった件だ。
この間、昼休みの
「あの日の朝、職員室に行ったら、金山くんと加納先輩・
「それで新しい申請書を作ってきたと」
「うん。本当なら、先に出した申請書を訂正する形にするのが正しいんだけど、小田渕先生がそれを無かったことにしてくれて、私が後から出した申請書を提出してくれたの」
なるほど。じゃあ、
「俺はどうなりました?」
この一言で意図は分かった模様。
「金山くんは、部員全員から解職請求があったことにして、部長職を解かれたことになってるらしいよ……」
あの先生……。
『書類をでっち上げる位ならやっても良い』って言ってたけど、本当にやるとは。
「というわけで。改めまして、文芸同好会の部長になりました、加木屋 みなみです。これからもよろしくお願いします」
そう言い、先輩もとい部長が頭を下げた。
「こちらこそ、部長をよろしくお願いします」
俺も頭を下げる。
部長が変わったといっても、いつも通り何も変わらない。
先輩……部長は、いつも通り本を読んでいる。
俺はパソコンで原稿を進め……たいんだけど、とりあえず今は、昨日電話した通り、
『若手作家による短編集』と言っていたな……。
確か、来春には発売されるはず。
これは、卒業記念という形に出来るだろう。
よし。そうと決まれば、タイトルもそれに変えよう……。
なお、この『モモテラスにあるスーパー』。即ち、加木屋先輩のお父さんが勤めるスーパーは、最初は バロー(本社 岐阜県多治見市)を想定していましたが、結局 平和堂(本社 滋賀県彦根市)にしてあります。
本編とは関係ない話ですが、参考までに……。