【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~   作:小林司

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12-2……普通に捕まるからね

 

渋滞を脇道で回避しながら学校に戻ってきた。

 

駐輪場にビーノを戻し、ヘルメットをあった通りに掛ける。

 

そのまま部室に向かいそうになるが、鍵を返さなきゃならないし、何より先生に一言言いたい。

 

『職員室』

 

「失礼します」

 

滝野(たきの)先生しか居ないんだし、『戻りました』とかでも良いと思うも、やっぱりいつも通りの声掛けで入室。

 

「お帰りー。遅かったな。道混んでた?」

 

滝野先生の声。

 

一応室内を見渡すが、先生一人の様だ。

 

「混んでましたね。車で取りに来てたらアウトでしたよ。まあ、バイクなら渋滞回避可能ですから……。遅くなったのはコンビニ寄ってたからです」

 

先生の前まで行き、鍵を返す。

 

「サンキュー。しかしまあ、あいつらも慌てすぎだよな。ビデオカメラ忘れたのは大変だろうけど、スマホのカメラがあったろうに」

 

スマホのカメラ……。

 

カメラ……スマホ……。

 

あ。

 

誰一人スマホのカメラに気づかなかったのか……!

 

犬山(いぬやま)さんからLINE電話が来たわけだから、スマホはあった。つまり、最低1台はカメラがあったじゃないか……。

 

忘れたことで気が動転して誰も気付けなかったのだろう。

 

「確かに。でも、ビデオカメラ渡せて良かったです。助かりました」

 

「役に立てたなら良かったよ」

 

「工事は終わったんですか?」

 

「ああ。これで1階の女子トイレが使えるようになったよ」

 

そういえば、クリスマスの辺りから使用禁止になってたっけ。

 

排水管が詰まり、洋式便器からナイアガラの滝の如く、水が流れ出たとか……?

 

 

 

おっと、危うく肝心な話をし忘れるところだった。

 

「さて、改めまして。滝野先生、一言良いですか?」

 

「ああ」

 

先生は俺が何を言おうとしているのか、分かっているらしい。

 

まあ、答えは予想がつくけれど。

 

「先生、嘘吐きましたね」

 

「嘘は言ってねぇよ。言葉足らずと言うべきだ」

 

「まあ、確かにそうですね」

 

滝野先生は俺に、『原動機付自転車』と言ったが、あのビーノは『原付二種』だ。ナンバープレートが黄色なので、言い逃れは不可能。

 

金山(かなやま)なら頭良いから、原付でも原付二種でも問題なく乗れただろう?」

 

まあ、知識的な面や法律的な面でも問題なく……。待て待て。

 

「でも、あのビーノに50CC越えのモデル、あるんですか?」

 

「ないよ」

 

あっさり! じゃあ、あのビーノは何者?

 

「厳密には幾つか種類があるんだよ。125ccモデルもあるな。だけど、あのビーノは50ccモデルだから、それ以上のは無い。とはいえ、所有者は妹だし、聞いてみんことには分からん。でも、買ったときから黄色だったらしいけどな。中古車だから、前の所有者が何かしたんじゃないの? 知らんけどさ」

 

なるほど。

 

気にしても仕方ないか。あくまで俺は借りただけで所有者ではないんだから……。

 

まあ、もう乗ることは無いだろう。いや、無いことを祈りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室を後にし、部室に戻って執筆を続けていた。

 

突然、やや乱暴に扉がノックされた。

 

「失礼しまーす!」

 

そして、扉が開いた。

 

「金山くん、どういうこと?」

 

「説明求む!」

 

「驚いちゃったよ」

 

その途端数人なだれ込んできた。えっ? 何?

 

というか、もう15時か。

 

こんな時間になってるなんて、全然気付かなかった……。

 

 

 

やって来たのは、榎戸(えのきど)部長・開明(かいめい)先輩・犬山さんの3人。確か、3人とも演奏会のメンバー。

 

「えっと。俺は何を言えば良いの?」

 

「「「バイクに乗ってた話」」」

 

おお。3人ハモった。

 

って感動している場合じゃない。

 

「そりゃあ。運転免許持ってますから……」

 

そう言い、財布から取り出した免許証を見せる。

 

「本物だ……」

 

「免許持ってるんだね。知らなかった」

 

「いつの間に……」

 

無免許でバイクに乗ったら、普通に捕まるからね。

 

……実は、帰り道で警察に止められている。

 

飲酒運転の検問で、別に俺が悪いことをして止められた訳ではない。

 

お巡りさん、制服姿の俺に驚き、バイクが原付二種であることにも驚き、俺がちゃんと免許を持っていることを知って尚驚いていた。無免許運転(純無免・免許外運転)を疑っていたのか、悔しそうな顔をしていた。今思えば、なんか失礼な人だったな……。

 

飲酒運転の検問って、夜にやるものだと思ってたけど、最近は昼間にやることも多いんだって。

 

さておき。

 

「あれ? 部長には言ってあった筈ですよ」

 

いつの間に、なんて言ってるけど、免許取得前に連絡してある。

 

「聞いたっけ? ……あれ。そういえば、立華(りっか)との合同練習の前に、何かそれっぽい話したねぇ」

 

「それです」

 

『免許合宿行ってくるから、年内は部に顔出せません』

って断りを入れたのに……。

 

定演前で忙しかったとはいえ、聞いていなかったとは。何か悲しい。

 

 

 

話はまだ終わっていないらしい。

 

「あのバイクは金山くんのなの?」

 

「いいえ。滝野先生の妹さんのものらしいですよ」

 

今ので開明先輩が微かに反応した。

 

確か、トランペットパートの先輩だ。というか、関西大会の日に見てる。

 

「あー。あの妹さんね……」

 

早紀(さき)先輩、ご存知なんですか?」

 

開明先輩がいかにも、知ってますという反応だったので、犬山さんが喰い付いた。

 

「まあね。あの人私の家の近くにある酒屋さんで働いてるから……。時々配達してるところに鉢合わせるのよ」

 

「先輩、酒屋行くんですか?」

 

「メグちゃん、酒屋って言っても、お酒を買うわけじゃないからね?」

 

当たり前。それに俺らは未成年だから、そもそも買えない。

 

愛実(めぐみ)ちゃん。今早紀ちゃん配達してるところって言ってたよね」

 

「確かに……!」

 

「部長は知ってるんですか?」

 

「顔を見たことはあるよ。美人だね」

 

「あ、でもあの人美人だけど、八方美人でもあるので、接するときは要注意だよ」

 

なるほど。

 

というか、俺を蚊帳の外に盛り上がってるんだけど……。

 

まあ良いか。

 

俺は気にせずに、俺のやることをやるだけ……。

 

 

 

「来年、新しい子達どれくらい入部してくれるかなぁ……?」

 

「あ。そういえば(もえ)部長。入部希望者が現れるよ」

 

夢中で気付かなかったが、いつの間にか話題が変わっていた。

 

「入部希望者?」

 

「冬休み明けに私のクラスに編入生が来たのね。自己紹介でトランペット担当してたって言ってた」

 

なるほど。編入生か。

 

そう思い、前を見るが、そこに彼女の定位置を姿はない。

 

確か、今日もバイトのはず……。

 

この学校にすっかり馴染んでいるらしいが、加木屋(かぎや)先輩も編入生だ。

 

普段なら、その定位置で読書しているか、絵を描いている。

 

「それなら入ってくれるかもね」

 

「ただ……。男の子なんだよね……」

 

何か問題が?

 

「それがどうしたの?」

 

「いや。今トランペットパートって、3年生の先輩方を除いても5人居るじゃん? コンクールメンバーを選ぶことになった場合、大抵の曲なら5人居れば充分じゃない?」

 

今年は6人だっけ。

 

「まあ、確かにね。あの曲だから6人選ばれたようなものだし……」

 

「今年、うちでメンバー落ちしたの、私1人だけだったけど、今は人数的には丁度足りてるのよ。当然、4月になれば新しい子が入部してくるわけで、その子達の入る余地が無くなっちゃうよね」

 

「そっかー。でも、それは本人の実力だから」

 

「私、今から緊張してきました……」

 

「愛実ちゃんはコンバスだから、メンバー間違いないと思うよ。上手いしね」

 

そう。日比野(ひびの)先輩を部長に推す声も、唯一の奏者だからって潰された位だ。2人しか居ない貴重なコンバス奏者。

 

「仮に、メンバー落ちしても、サブメンバーとしてサポートしたりで忙しいんだよ。それもそれで楽しいし」

 

なるほど。ほたか として支えてきた開明先輩の言葉には重みがあるな。

 

「仮に、その編入生の子がサブメンバーになっちゃったら、男1人だから不安じゃないですかね?」

 

ん?

 

「いや、新しい1年生から出ないとも限らないよ」

 

「皆さん。俺を忘れてませんかね?」

 

呆れ口調で言い放つ。

 

お、3人と目が合った。

 

「そういえば、金山くん男の子だっけ」

 

「あんまり異性として意識しないから……。一緒にいても違和感無いし」

 

マジかよ。そんな認識なのか……。

 

「付いてるんだよね……?」

 

ちょっと! 今の誰?

 

「ちゃんと付いてるからね! 正真正銘男だから。何なら見せようか!」

 

「見せてくれるの?」

 

「そこ喰い付かないで。冗談だから!」

 

この人らの相手、疲れるわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ? なにか忘れているような……。

 

あ!

 

「そういえば、黄前(おうまえ)先生知らない?」

 

カメラの件で一言言っておこうと思ってたんだ。

 

まあ、先生相手に怒るつもりはないけど。

 

「黄前先生……?」

 

「あ、ごめん。塚本(つかもと)先生」

 

「家近いからそのまま帰ったよ」

 

「あ、でも、私がカメラと金山くんの話をしたら、あからさまに声震わせながら、帰るって」

 

逃げられた……。

 

 

 

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