【本編完結】君へ捧げる物語~北宇治高校文芸同好会へようこそ~ 作:小林司
土曜日の朝。
「お待たせ~!」
「待った?」
「いえ。俺も来たばかりです」
5分も待ってない。
「行きましょうか。あ、切符買いますか?」
「
「俺もICOCAです。じゃあ電車乗りましょうか」
堀田先輩と二人でのお出掛け。
なお、これは決してデートではない。
そう。
本来ならば、吹奏楽部顧問の滝先生や松本先生が行くべきなのだが、サンライズフェスティバルの事前協議があり不在、部長の加納先輩も同行。
代わりに昨年顧問の園田先生に回ってきたのだが、園田先生も別件で不在。
回りに回って、吹奏楽部副部長の堀田先輩と、文芸同好会部長の俺が行くことになった。
だから、断じてデートではない。正装として制服を着ている。
しかし、
どうしてこうなった?
電車はロングシートなので、二人並んで座った。
そうしたら、発車してすぐに堀田先輩は眠ってしまった。
俺の肩を枕代わりに……。
毎日部活で頑張っているから疲れも溜まっているのだろう。
寝顔も美しい……。役得?
そういえば、堀田先輩のことをあまり知らないな……。
吹奏楽部の副部長で、部内一の美人で、吹奏楽部のマドンナ的存在。
ユーフォニアムを吹いている、低音パートのパトリ。
常に笑顔で、左目の泣き黒子がチャーミング。
……結構知ってるじゃないか。
まあ、ソースが
いや、これはあくまで学校内での話だ。
私生活については何も知らない。
どの辺りに住んでいるのか、家族構成は、好きな物・嫌いな物、趣味や特技、ファッション、恋人の有無……。
ユーフォニアムを吹き始めたのは何時か。それも聞いたことはない。
結局、俺はこの人について何も知らないんだな……。
30分ちょっとで、終点の
乗り換えだ。
「先輩。終点ですよ」
寝ている先輩に声を掛け、起こす。
「あれ……? もう着いたの?」
寝ぼけ眼。
「着きました。乗り換えです」
電車を降り、案内表示に従って歩く。
「はるかは来たことあるの?」
慣れたように歩くからか、そう尋ねられた。
「いいえ。俺も初めてです」
案内表示を見ていれば、初めてでもある程度分かる。
地上に出ると、道路の真ん中に駅……ホームがある。
「路面電車なんだね」
そう。嵐電*1といえば、京都府唯一の路面電車である。
嵐電に揺られること20分。
駅近くの喫茶店に入る。指定された場所だ。
「あ、こっちだよ」
俺たちに気付いたらしく、窓際の席から手を振っている。
すらっと背が高く、サラサラの黒髪が『大人の女性』という感じを際立たせている。
「お待たせしました。道路が渋滞してて遅れてしまいました」
「渋滞って。車で来たの?」
普通そう思うだろう……。
「電車で来ました」
乗った電車がそもそも道路渋滞の影響で遅れていて、その先も渋滞が酷くどんどん遅れていった。
「なるほど。嵐電で来たのね」
しかし、この人声が園田先生に似ているな……。知らずに聞いたら間違えそう。
「とりあえず座って」
「失礼します」
堀田先輩が座った。
その隣に俺も座る。
「失礼します」
メニューが差し出される。
「決まったら店員さん呼ぶから、教えてね」
どれどれ……。
差し出されたメニューを眺める。
いろんな飲み物があるが、難しい名前だったりして、よく分からない。
ここは
「俺は決まりました」
「私も」
「じゃあ、店員さん呼ぶね。すいませ~ん」
店員が呼ばれる。
「ご注文どうぞ」
「カモミールティーを」
俺もカモミールティーは知っている。
堀田先輩、お洒落だな。
「ホットコーヒーで」
俺が注文すると、向かいの席の彼女は続けて、
「ホットコーヒー3つお願いします」
という注文をした。
「ホットコーヒーは全部で4つですね。お待ちください」
3つ、ということは、あと2人来るのだろう。
しかし、外部指導者は2人と聞いているが……。
「改めてまして。私は
この人は、傘木さんというのか。
北宇治の卒業生らしい。
「私は吹奏楽部副部長の堀田彩花です」
「あ、俺は、金山はるかです。文芸同好会の部長です」
「堀田さんと金山くんね。えっ? 文芸……同好会?」
やっぱり驚いたか。
「先生方や部長は、サンフェスの打ち合わせで、都合が付かなかったんですね。なので副部長の私と、訳あって彼が来ました」
訳、というほどの訳でもないんだが……。
「なるほどね……。あ、来た来た。こっちですよ」
平日朝の嵐電は、通勤・通学客で溢れていました。
昨年初冬に行ったとき、コロナ禍でか渡月橋は観光客が皆無でした。
嵐電は良いですよ。山ノ内駅とか……。
因みに、このために 六地蔵→(嵐電)嵐山 のルートを検索したところ、『JR利用、
均一運賃は、長く乗った方がお得ですよね。
因みに、JR嵯峨嵐山駅から嵐電嵐山駅って、歩けない距離ではありませんよね。私だけ?