平成妖怪譚   作:事代 件

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勤労は生命維持活動だ


操れ!明晰夢を見る程度の能力
11夜 夢、就労


 

 

急ピッチでの弾幕の矯正を行った。

 

流石に美しさを争う弾幕ごっこに、スプラッターショーを披露するわけにはいかない。

 

しかし、猿夢が弾幕の基礎になっているので、小人召還するのは回避できなかった。

それなので、弾幕で人形を作りそれを活け作りにすることにした。

見ていて気持ちのいい物ではないが、抽象的な分まだマシだ。

 

そもそも普通の弾幕を出せなかったからこの有様になってしまったわけで、ここまで来るのに何人の小人を解体してきたか分からない。

 

あの一件でチルノはショックを受けたらしく、今日は気晴らしに友人のもとへ訪ねていった。

 

 

「えぐり出し!」

 

 

弾幕で出来た2m程の人形が小人の持つスプーンの様なものでえぐり出され、光の肉片が分散していく。

 

このえぐり出しと活け作りは撃てるようになってきた。

えぐり出しは弾数は少ないが、スピードも速く弾もデカい。

一方活け作りの方は大きさがバラバラで速度も遅く、強くない。

小手調べに使う程度だろう。

 

しばらく練習を続けていたので、そろそろ休もうかとポケットから煙草を取り出す。

そういえば残り5本しかないのだが、幻想郷に煙草は売っているのだろうか?

これは死活問題である。

 

取り敢えず悩んでもしょうがないので一本取り出して火を着けたときだった。

 

 

「何だか趣味の悪い弾幕。取り敢えずあの時死んでなかったのね。」

 

 

後ろからの突然の声に驚いた。

見るとチルノの様な容姿をした妖精が浮かんでいた。

全く気が付かなかった。

 

しかし誰だろう?

 

 

「あの時はごめんなさい。ちょっと悪戯をしただけのつもりだったんだけど、妖怪の貴方があんなに驚くなんて。」

 

 

向こうはこちらを知っている様だが覚えがない。

最近悪戯をしてきた奴か・・・

 

 

「もしかして・・・脛五郎か?」

 

 

まさか女の子だったとは思わなかった。

ネーミングミスだ!!

しかし、あのとき執拗に絡んできた脛こすりがこんなフラグだったなんて

 

 

「いやいや、人違いだよ。」

 

 

否定する彼女。

 

 

「なんだ違うのか。」

 

「なんだって何よ!この間私の能力で水に写る貴方を消した妖精よ!忘れちゃったの?」

 

 

あー。居た気がする。

あの時はマジで怖かったので逃げるのに精一杯だった。

だから気がする

あの怪現象は彼女の能力だったのか。

 

彼女は山菜を探しに来たら、たまたま見かけたので声を掛けたらしかった。

もちろん能力を使って脅かすのを忘れずに

 

 

「そういえば名前はなんて言うの?私はサニーミルク。さっき話したように光の屈折を操る程度の能力を使う妖精ね。貴方は?」

 

 

光の屈折を操るのか。

彼女の能力といいチルノの能力といい、自然そのものを操れるなんてチートじゃないか。

妖精は敵に回さない方が良さそうだ。

 

 

「猿橋夢仁です。妖怪で猿夢らしいです。」

 

「らしいですって他人事みたいね。猿夢って聞かないけど能力は何?」

 

 

俺は光や氷を操ったりなんて勿論出来ない。

 

 

「よく分からない、という感じです。そもそもよく聞くけど、能力ってのがどういう物なのか掴めてない感じですね。程度の能力って何なんですか?」

 

「そこからなの?」

 

 

聞くと能力は割と曖昧なもので、簡単に言うと自分の得意分野みたいな物らしい。

中には運命を操る吸血鬼や、死を司る亡霊なんて洒落にならない能力者も居るのだとか。

また強力な能力と妖怪の強さは比例しておらず、空を飛ぶだけだったり、花を咲かすだけでも強い奴もいるらしい。

そういう点も含めて程度の能力らしい。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

折角なのでサニーミルク氏を自宅に招待した。

一番の理由は彼女に幻想郷について二つ三つ質問したかったからだ。

悪く言うつもりはないが、残念ながらチルノ師匠は少し知識が少ない。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「座布団しかありませんが、おくつろぎ下さい。」

 

「本当に座布団しかないのね。しかもこの座布団の量。何人呼ぶ気なのよ。」

 

 

実は先日山の神社に行った時、寝具の代わりにと沢山の座布団を貰ってきた。

金はないが座布団はある。

 

 

「水すらもお出し出来ないのが心苦しいです。」

 

「私じゃなきゃ怒ってるわよ。」

 

 

取りあえずサービスにと五枚くらい座布団を重ねて勧めてみる。

彼女はそこから一枚抜いて普通に座ってしまった。

 

 

「なんで貴方が不満そうな顔をするのよ。で、何のようなの?」

 

「幻想郷で生活するに辺り知りたいことがあります。」

 

「まぁこの前のこともあるし、知ってる範囲でなら構わないわ。」

 

 

そして俺は質問した。

一つ目は人里に降りて仕事を探したいが、退治される心配はないか。

二つ目は妖怪である俺を雇ってくれる所が有るのかということだ。

 

金が無いとやっぱり辛い。

 

 

「多分仕事をするだけなら大丈夫じゃない?でも博霊の巫女だけは別。見かけたら関わらず直ぐ逃げるのが一番ね。二つ目は、まぁ中々無いわね。妖精ならメイドをしたり出来るけど。」

 

 

執事ならまだしもメイドはキツいだろう。

それなら三つ目の質問だ。

 

 

「豆腐は売ってますか?あと高野豆腐は知ってますか?」

 

「豆腐なら普通に売ってるけど、高野豆腐って何?絹とか木綿の仲間?」

 

 

完璧な返答だ。

これは儲けられるかもしれない。

 

 

「そうですね。高野豆腐はビジネスです。」

 

 

 

 

 

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俺は高野豆腐が好きだ。

チルノの能力を知ったとき、豆腐さえ用意できれば直ぐに作れるなと思った。

しかし、チルノに話してみると高野豆腐を知らなかった。

チルノの意見を大衆意見と考えるのは危険だ。

だが、二人まで同じことを言えば信憑性も増す。

多分幻想郷に高野豆腐はない。

 

サニーミルクにお礼の座布団を三枚プレゼントし追い返すと、俺は早速人里へ降りた。

 

 

「それで、何で家に来るんだ?」

 

 

慧音さんは嫌な予感がしたのかとても不機嫌そうだ。

 

 

「単刀直入に言います。お金を貸して下さい。一万円ほど!!」

 

 

人生二度目の土下座。また幻想郷に来ての二回目の土下座。

 

 

「駄目だ。そもそもそんな大金有る訳ないだろう。城でも建てる気か?」

 

 

城?キャッスルが一万円で建つ時代がやってきたのか?

いや根本的に違う。

幻想郷は生活水準が外に比べ随分昔だ。

もしかしたら、

 

 

「質問したいのですが、一円でつけ蕎麦を何杯食べられますか?」

 

「随分話が変わったな。つけ蕎麦か、大体50杯は食べれるんじゃないか?」

 

 

危なかった。

この世界は通貨価値が明治近くで止まっている。

高野だけに200万円の高野豆腐とか最早宗教的だ。

 

 

「すみません間違えました。一円貸して下さい。」

 

「駄目だ。君とはまだ一回しか会ったことがない。金額の問題ではなく信用の問題だ。働かなければ金は手に入らない。」

 

 

まぁ、そうなるかなとは思っていた。

しかし元本が無ければ商売を始められない。

仕事が無いのだからそれは集めようがない。

地道に山菜を採って売るしかないか。

しばし待たれよ豆腐ドリーム!

 

 

「ところで君は珠算や算術は出来るか?見たところ計算は早かったようだが。」

 

「そろばんは簡単な割り算までなら。算数はまぁ得意です。」

 

「丁度良かった。算術の講師を探していたんだ。家でやってみないか?私は歴史が専門だから数字はあまり得意じゃないんだ。」

 

 

それは願ったりな提案だった。

数学となると難しいが、算数は仕事柄出来ざるを得ない。

そして丁度変わった資格が欲しくて珠算を習っていたのだ。

正直役に立つ日が来るとは思っていなかったが。

 

また今度簡単な試験をして、大丈夫そうなら寺子屋のアルバイトに講師として雇ってくれる事になった。

 

「では今度面接お願いします。」

 

「あぁ、宜しく。しかし君はそんなに蕎麦が食べたいのか?」

 

 

 

 

 

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家に帰るとチルノは既に帰っており、座布団を広げてくつろいでいた。

 

 

「夢仁~弾幕は少しは見れるようになった?またあれを見るのは勘弁だよ。」

 

「思った通り弾幕で人形を作れば小人の仲間討ちは無くなったよ。やっぱり殺害対象が必要だったみたい。」

 

「難しいことは分かんないけど大丈夫なんだね?じゃあ明日からまた練習に付き合ってあげるよ。」

 

「そうだ!今度からの練習時間の事なんだけど・・・」

 

 

今日有った出来事、寺子屋でのアルバイトについて説明した。

すると彼女は目を丸くして言った。

 

 

「夢仁が先生?出来るわけ無いじゃん!あたいよりバカなんだから。」

 

 

そしてケラケラと笑った。

まだ平和な日常。

 

 

 

 

 





鉄道員は算数が常に着いてまわります。
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