人を呪わば?
俺は起きてしばらくの間は放心状態で、何を聞いても反応がなかったらしい。
それ程までに自分で自分を惨殺するという行為には来る物があった。
「結構ギリギリだったみたいだねぇ?」
戸見乃は相変わらずのニヤケ顔でこちらを見ていた。
こいつ実は俺のことを嫌いなのでは?と思うこともしばしばだ。
「取り敢えずは魔理沙はこっちの世界に戻れたみたいだけど、これからどうするの?最終的な解決にはなってないんでしょう。まさか魔理沙が寝る度にこれを繰り返すつもり?」
「えっ?これを寝る度に繰り返すのか?それは勘弁願いたいぜ。」
霊夢さんの言う通り呪いが解けたわけではないのだ。
「それについては考えがあります。」
さっき夢の中で猿夢を実行する自分とは別に、もう一人の自分を創り出すことができた。
出来るはずだ。
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「今日もまた一人っきりだよ。つまんないなぁ。」
誰が返事してくれるわけでも無いのだが、気が付けばチルノは呟いてしまっていた。
明らかに最近は独り言が増えた気がする。
それとも話す機会が増えたからだろうか?
「別にここあたいん家じゃないから帰ってもいいんだよね。でも帰っても誰も居ないしつまんないんだよなぁ。」
妖精仲間の友達は多いが一緒に住んでるわけではない。
結局今の状況と何ら代わりはないのだ。
今までは妖精である自分にここまで対等に相手をしてくれる妖怪(人間?)が居なかった。
それがまた心地よく自分がここで帰りを待っている原因の一つなのかもしれない。
そして、つい先日に現れたアイツだ。
今日も一緒に出掛けていってしまっている。
どうやら夢仁とは昔から知り合いだったようだが、何か関わってはいけない、そんな不吉な印象を醸し出していた。
似ていると言えばこの幻想郷の管理者と近い気がするが、ベクトルは全く違う気がする。
「だから一緒に行かないでって言ったのに・・・」
まぁ半分は友達を取られたくないという嫉妬もあるのだが。
「早く帰ってこないかなぁ。」
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「霊夢さん。呪い返しは出来ますか?」
夢仁の予想外の質問に一瞬ではあるが、霊夢と魔理沙は面を食らってしまった。
そして戸見乃は間髪を入れさせなかった。
「おい、夢仁。お前今何を考えた?それは駄目だ。許せない。」
今回は戸見乃と打ち合わせをしたわけではない。
恐らく素で怒っている。
繰り返しにはなるが、こいつは普段絶対怒らない。
「霊夢さん。出来ますか?」
「・・えっと。出来ることは出来るわ。つまり魔理沙に掛かった呪いを貴方に跳ね返すって解釈でいいの?」
「はい。それで魔理沙さんに掛かった呪いは解けますよね?正直俺には他の方法は思いつきません。」
勝手に話を進める俺に戸見乃は苛立ちを増していく。
「無視すんじゃねぇバカ野郎。言ってる意味分かってんのか?お前これから寝る度に自分に殺されるんだぞ?いつか自分自身に殺されるぞ?」
「口調がおかしいぞ戸見乃。つまりは勝ち続ければいいんだろ?」
「こんな時にキャラなんて作ってられるか?勝ち続ければ勝ち続けたでお前は猿夢としての意義を達成できずに消滅するぞ。」
なんと!今までのキャラは作ってたのか。
これはショックだ。
「そうよ。戸見乃の言う通り妖怪は自分の存在意義を達成できなければ消滅してしまう。貴方はいずれにせよ死ぬことになるわ。魔理沙が助かるなら私には知ったことないけど。」
勝手も負けても駄目とは・・・。
予想外にこの手は厳しかったようだ。
引き分けでも結局意義を達成できないから同じことだろうか?
「僕だって同じくアイツ等二人の事なんか知ったことじゃない。なんなら夢仁が瞬きをする間にアイツ等を処理したっていい。幻想郷だって破壊できる力を僕は持っている。後は僕が何とかするから。」
「いいから黙ってろ!これは俺の呪いで俺の夢だ!自分で抱えていたほうがまだ解決しやすいはずだ。すぐに死んだりなんかしないよ。」
戸見乃はその後少しうつむいた後
「このっ・・わからずやがぁ・・!」
と言って家を出て行ってしまった。
少し声が震えていた気がするがそれは無いだろう。
「女の子は泣かしちゃ駄目だぜ?」
戸見乃に限ってそれはないだろう。
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呪い返しは霊夢さんが呪文を唱えあっという間に終わった。
しかもメジャーな不動明王の生き霊返しの呪文だった。
「神社なのに仏教系の呪文使われるんですね。これ本当に効果有るんですか?それなら戸見乃だって暗唱できますよ?」
「有名だという事はそれなりに効果有るって事なのよ。それにこう見えて私結構力の強い巫女なのよ。効果はあるはず。あと妖怪がやったっら逆効果になりそうな気がするけど。」
そういう物なのだろうか?
確かに説得力はある。
「一応もう一晩だけ付き合って貰うわ。仮に失敗してたら貴方の力が必要になるから。」
「まだ私はあの夢を見る可能性があるのか。」
「魔理沙も呪われるって事はそれなりの行いをしてきたって事なのだから、今後はもう少し慎みを持って行動する事ね。」
「うっ・・・了解だぜ。」
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「挽肉ー挽肉ー。」
「ふざけんな!挽肉二回目とか無しだろ!!」
俺は更にもう一人俺を作り、身代わりになって貰う。
もう一人の俺も無惨に挽肉になっていくが、他人事という訳にはいかない。
残念ながらそっちの俺の意識も流れ込んできてしまうからだ。
二回目はきつい。
そこでようやく目が覚めると、チルノが湯飲みに水をくんで心配そうに覗き込んでいた。
「ありがとう。もう大丈夫。」
「ここの所毎日うなされてるけど本当に大丈夫?」
「怖い夢を見てるだけだから問題ないよ。」
霊夢さんの呪い返しは無事に成功したようだった。
魔理沙は猿夢を見ることは無くなり、代わりに俺は毎晩俺自身と戦っている。
チルノに貰った水を飲む。
ぬるい井戸水の筈だが、チルノが持っていたのでよく冷えていておいしい。
「もしよかったら内容話してよ。力になれるかもしれない。」
彼女には呪い返しを行い、俺が猿夢を見ていることを話していない。
「仕事のミスの夢をよく見るんだ。人の命を守る仕事だからね。どうしたら見なくなるかな。」
本当のことを言う訳にはいかないが、これもこれで何だか白々しい気がする。
「そっかぁ・・そうだねぇ・・・。」
随分と真剣に考え始めてしまった。
罪悪感が沸いてくる。
そういえば彼女は毎晩俺のせいでよく眠れていなかったんだっけ?
「もしうるさかったら別の部屋で寝ないか?よく考えればわざわざ横に布団を並べて寝るのも変な話だもんな。」
「えっ!?それは駄目っ!!」
乗り出してくるチルノ。
別に駄目な理由なんてないだろう。
「そうだ!良いこと考えた!!」
まさか悪夢に対する対抗策が見つかったのだろうか?
あの後戸見乃に謝りに行って、ついでに対抗策を考えたのだが何も出なかった。
しかしチルノの発想は普通の人とは違う。
まず着眼点が違うのだ。もしかしたら・・・
「これからあたいが添い寝してあげるよ。これで怖い夢を見ても大丈夫!」
「添い寝!?そんなの駄目に決まってるだろう!!第一寒くて俺が風邪を引いちゃうだ・・・いや、もしかしたら冷やすのは有りなのか?」
次の日の朝、俺は風邪を引いた。
大分開いてしまいました。
すみません。