平成妖怪譚   作:事代 件

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あなたもわたしも理解は出来ない





生き抜け!狂鬱異変
18夜 夢、相違


 

 

 

魔理沙から呪いを移してから2ヶ月が経とうとしていた。

ここの所は毎晩猿夢にうなされる日々だが、それ以外は至って普通に過ごしていた。

 

最近村ではうつ病を患ったり突然発狂したりする人が多いらしいが、一見穏やかそうなこちらの世界でもやっぱり人は疲れてしまうんだなとしみじみ思う。

俺だってこんな状態が続いていれば、いつ狂ったっておかしくないのだから。

 

今日は寺子屋の仕事は休みでチルノは妖精仲間と出掛けている。

暇なのだ。

PSPでも持ってくればよかった。

仕方なく庭の雑草をむしって時間を潰していた。

日差しが気持ちいい。

 

「よぉ!まだ死んでなかったか。相変わらず忙しそうだな!」

 

そんなつかの間の日常にあれ以来音信不通となっていた戸見乃が突然訪ねてきたのだった。

 

 

 

 

 

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場所を移し戸見乃の家まで来た。

ずっと留守にしていたのか部屋中塵まみれで、少しすえた臭いがする。

あれからいつ来ても彼女が家に居ることは無かった。

 

「久々の我が家ー。うぉっ!きったねー!」

 

「…ずっと何処に行ってたんだ?割りと心配したぞ。」

 

緊張感の無さは以前と何も変わりがない。

 

「悪かったね。ちょっと考えていた計画が有って、その計画に突然時間制限が付いちゃった物だから急ピッチで進めて来たんだ。まだまだ初期段階だけどまぁ順調かな。本当はここまでに20年位かけようかと思ってたから随分な突貫工事だよ。」

 

「そういえば僕には計画が有るってよく言ってたな。それで顔を会わせる暇も無かったのか。てっきり俺の独断で呪い返しを行ったから愛想尽かされたのかと思ったよ。」

 

「まぁそれもあるけどねぇ。あのまま一緒に居たらイライラして殺しちゃったかも。でも嫌いにはならないよ。」

 

殺すことは有っても嫌いにはならないと…?

友達はもう少し吟味しないとな。

 

「こっちからも質問!最近の調子はどうだい?特に夢関係についてだ。」

 

「そうだな。当然だがあの日から一日も欠かさずに猿夢を見ている。後は日を追う毎に夢が強くなっていくかな。始めは猿夢の話の通りの夢だったけど、挽肉が二回来たり夢から覚めてもまだ猿夢だったりとかあの手この手で。」

 

「当然だよ。標的が強ければその分狩る側だって強くなっていく。パワーバランスが逆転した時、もしくは狩るのを諦めたときが君の消滅する時だ。」

 

残念そうな顔をする戸見乃。

一応心配してくれているのだろうか。

 

「もう頃合いだし君にも計画を話してあげよう。後々協力者にする予定だったし、タイミング的には丁度良いだろう。てか時間が無い。」

 

そう言い戸見乃はこちらに向きなおって正座をした。

顔はいつもの様にニヤケている。

 

「僕と君は人々の想像から産み出された畏怖されるためだけの存在だ。分かるね?酷い言い方をすれば一種の娯楽と言っても良い。そんな世界に対して君はどう思うかな?」

 

唐突な質問に言葉が詰まる。

最近妖怪だと自覚したばかりでそこまで考えたこともなく、何て答えれば良いか分からない。

 

「僕たちは絶対に報われない。畏怖される事自体がアイデンティティの僕たちはその運命から解放されることはない。」

 

質問の回答を用意する暇も与えず捲し立てる様にはなす戸見乃。

まるで自分の考え以外は認めないとでも言うように。

 

「僕たちには復讐する権利がある。…夢仁。一緒に世界をぶち壊そう。」

 

彼女は俺に片手を伸ばした。

 

 

 

 

 

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チルノは妖精仲間から聞いた不穏な情報の真意を確かめるために寺子屋へと訪れていた。

この話題に限っては近しい常識人の夢仁に確認する訳にはいかなかった。

寺子屋は休みなので開いてない可能性も有ったが残念ながら慧音の家は知らない。

 

「慧音先生いるー?」

 

「おぉ!チルノか。今日は寺子屋は休みだから私しか居ないぞ。どうした?お茶でも飲みに来たか?」

 

答えたのは事務仕事を任されている妹紅だった。

事務机でお茶を淹れてくつろいでいる。

休みの日なのに何故…?

 

「妹紅でも良いや。ちょっと噂話で気になってることが有るの!!」

 

「でも良いやって酷いな…。取り敢えず落ち着け。お茶でも飲むか?お煎餅もあるぞ。」

 

「熱いのは苦手って忘れちゃったの?じゃなくて、聞きたいのは夢仁の事なの!」

 

こっちは焦っているのに、妹紅の落ち着きすぎた雰囲気にペースを崩される。

しきりにお茶を勧めるのも少し腹が立つ。

長く生きすぎるのも考えものだ。

 

「あのヘタレ小僧の事か。何があった?」

 

チルノは妖精仲間から聞いた内容を話した。

 

内容は昨今の村で爆発的に増えたうつ病と発狂の事だった。

この異変の特徴としては村の有力者やリーダー格が多く発症していることだ。

もちろん責任が重く発症しやすい人種では有るが、偶然と片付けるのにも限度がある。

意図的なものであるという考えも自然と浮かんでくる。

 

そして犯人として浮かび上がったのは他でもない猿橋夢仁だった。

精神に直接関与する夢に干渉が出来る能力と新参者の妖怪であるため信用が無かったのが原因のようだ。

 

「あくまで妖精内での噂話で信用できるって訳じゃないんだけどね。」

 

「あのヘタレ小僧にそんな事する度胸は無いだろうし、その動機もない。でもあまり穏やかな話ではないね。こっちの方でも少し注意してみるよ。」

 

「うん、ありがとう。」

 

「まぁ冷めたお茶でも飲みな。」

 

 

 

 

 

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戸見乃がとっぴ押しもない事を言うのは良く有るが今回は更にとっぴ押しもない。

いつから悪の帝王にでもなったんだ?

 

「随分と固まっちゃってどうしたのさ?」

 

「普通の反応だと思うぞ。そもそもどうやるのさ?」

 

「難しい事じゃないよ。先ずは有力な人間相手にちょっかいを出す。んでもって異変を感じ取って出てきた妖怪やらなんやらに弾幕勝負を挑む。ここからが味噌で、相手にばれない程度にちょっぴり呪いを混ぜる。ここは難しい所だが僕はコツを掴んでいる。」

 

「そんなに簡単に行くものか。そもそもそれで滅びるほど世界は柔くないぞ。」

 

果たして本気で言っているのだろうか?

冗談にしては度が過ぎてるし、当人は至って真面目だ。

 

「普通なら僕たちの力だけなら不可能だ。しかし、ここは幻想郷。強大な力がそこら中に満ちている。外の世界では表面を覆う霧散んした力達を一気に放出しなければならないが、ここでは概念自体を崩壊させることができる。」

 

「その強い妖怪に負けて退治されるだけだろ。」

 

「違うよ違う。僕たちは戦わない。崩壊の糸口を作り、後は混乱が雪だるま式に広がるだけなのだから。ただそのためには夢仁の力が必要なんだ。夢に干渉出来る夢仁の力がキーとなる。」

 

よくゲーム何かでラスボスが最後まで連れ添ったパートナーだったなんてお寒い場面がある。

 

現実で起こるとこれ程までに白ける展開は無い。

 

「大体分かったかな?それじゃあ早速今夜夢仁にやってもらうことが有るんだけど…」

 

「俺やんないよ?」

 

「えっ…そうなの?困るなぁ。…えっ‼やんないの!?」

 

まるで協力するのが前提みたいに話しやがって。

そんな面倒なことやるわけ無いじゃないか。

 

世界を滅ぼしたらビールが飲めない。

 

「悪いけど一人で頼む。そろそろ帰って夜ご飯の準備をしなきゃいけないんだ。」

 

「いやいや、帰さないよ!えっ?夢仁は僕の事大好きだから何でも協力してくれるんじゃなかったの?」

 

自惚れにも程があるだろう。

すまないが未だにこいつの事は男友達だと思っている。

 

それに世界を滅ぼしたらビールが飲めない。

 

「世界を滅ぼせたらお祝いくらいしちゃるよ。んじゃバイバイ!」

 

振り返り戸に手を掛けるが、ガタッと何かが引っ掛かっている様にびくともしない。

 

「おい!何すんだよ!」

 

「取り敢えず協力しない事は理解した。でもここまで話して帰す訳には行かないよ!」

 

あんたはドラマに出てくるヤーさんか。

 

「大丈夫!邪魔はしないから!」

 

断った辺りから不味いとは思ってた。

戸見乃がトミノ地獄の具現で有ることは知っていたが、どこまでの力を持ってる妖怪であるかは知らない。

しかし、戸見乃の今放っている妖力はヤバい。

一都市伝説のそれではなかった。

 

取り敢えず穏便にこの場を離れようとしたのだが失敗したようだ。

逃げるタイミングを完全に逃した。

 

「僕は君を食べたいほど好きだった。こうなったのならもう我慢しない。僕の血肉になってもらうとしよう。」

 

「いや…あの、逃がして?」

 

 

 

 

「駄目、愛してる。」

 

 

 

 

 

 

 





オリキャラ三昧反省してます。
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