とりあえず小屋まで帰ることになった。
夜は人を襲う妖怪も多く出歩き、戦い方を知らない俺が動き回るのは危ないとのこと。
寝床も確保したいところ。
「あの小屋しか無いもんなぁ」
今朝の事もある。
正直気が進まない
そのことを考えても憂鬱なだけなので、射命丸記者について考えてみる。
彼女は外界(じゃあここは何だ?)から来た俺に興味を持ったようだ。
また取材に訪れるので何か面白い事件でも起こして欲しいと言っていた。
何を期待しているんだ?
しかし、彼女の探究心に天狗の機動力。さぞかし優秀な記者なのだろう。
新聞を書いていると言った。一度読んでみたいものである
どうやって取ればいいのだろう。
勧誘に来るのだろうか?
とりあえず可愛かった。
しばらく山を下り、射命丸とのデートまで妄想を膨らましたところで小屋が見えてきた。
先に集落が見えるが、人里には近づかないほうが良いとアドバイスを受けた。
妖怪の退治屋も多く住んでおり、俺みたいな訳の分からないのが行くと最悪封印らしい。
もし仮に俺が妖怪だったらそれは困るだろう。
小屋の扉をゆっくりと開ける。
「おじゃましまー」
日も陰った室内は薄暗いが、置いて行った制帽以外は特に何も無い。
もしかしたら今朝の隙間が・・とも危惧したが大丈夫みたいだ。
とにかく疲れた。体力よりも主に精神面が。
板の間に寝そべって今日を回想してみる。
妖怪に会う、妖精に会う、崖から落ちるetc
疲れてるわけだ。
これからどうしようか。
先ずはこの場所に対する知識が無さすぎる。
先ず此処がどこなのかという所から、人里が危険という生活の知恵(?)まで何も知らない。
そこを固めつつ元の場所への帰り方を模索していこう。
「明日は人里を避けつつ情報収集かな」
口にしてみてこんなにおかしい事はない。
人に聞かずにどう情報を集めるのだ
今日はもう寝よう。
目を覚ましたらいつものベットである事を願って。
最後に今まで避けてきた思考もしてみる。
「俺・・・殺してないよなぁ・・・・」
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「駄目かぁ」
板の間の硬さ、相変わらずの気持ちいい朝の空気に嫌気がさす。
そう例の小屋だ。
ふと疑問に思う。
一昨日から飲まず食わずが続いてる訳だが、飢えや乾きは感じるのに身体は動く。
まだ三日だけという話なのだが、正直自分が人間なのか自信が無くなってきた。
予定通り探索のため外に出る。
天気が良いので今回は制帽も着用してみる。
最近忘れていたが、帽子とはこういう用途だったか。
最後に日よけに帽子を使ったのは何時だったかな。
小学生位だろうか・・・あれ?覚えて無いや。
人里とは反対方向に進むが、歩くのは普通の道を選んだ。
森の中は迷うと困るし、動物も怖い。
田んぼの中の畦道を進む。
覗けばオタマジャクシが沢山泳いでる。
辻には菜の花に囲まれた道祖神が立ち、鎮守の森には小さな祠があったりする。
正面には大きな山があり小さく鳥居が見えている。
この辺りの信仰の山なのだろうか。
景色だけは素晴らしくザ・日本の原風景だ。
たまにすれ違う人は作務衣の様な物を着ている。
残念な事に声をかけると皆視線を逸らし、足早に離れていく。
確かにこの地域に俺の制服姿は浮いている。
タイムスリップしたかのようだ。
今一瞬怖い事を考えてしまった。
それこそ帰り方分からないぞ。
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時々妖精が出てきては悪戯をし、今は脛こすりに纏わり着かれている。
歩きにくいったらありゃしない。
これだけ普通に魑魅魍魎が闊歩してると、感覚もおかしくなってくる。
ちょっとフェイントをかけて脛こすりをかわしてみた。
「プギィ!!」と怒りまた直ぐに足に纏わり着いてくる。
ちょっと可愛いかもしれない。
更に1時間ほど歩いたところで湖が見えてきた。
脛五郎(脛こすり)は気づけば居なくなっていた。
寂しい。
湖は少し霧で覆われており、先に奇抜な洋館が建っている。
ちょうど対岸にあるそれまでの距離は1,5km位あるだろうか。
大きくそびえる山の麓に洋館。
周りは森で囲われており、湖からの霧で廃墟的な雰囲気を醸し出している。
このままパソコンのデスクトップに使えそうだ。
しばし見惚れていた。
綺麗な景色を見ながらの一服は格別だ。
ポケットから一本取り出し咥えて火を着けた。
まぁ完全に油断していた。
「あんた誰?あたいのなわばりに勝手に入った上に、火の魔法を使うなんて良いどきょうじゃない!!」
声は上から聞こえた。
みると青いワンピースを着た少女だった。
水晶のような羽だろうか?背中に纏っている。
「なにぼーっとしているのよ。あんた見たところ妖怪ね。このおとしまえしっかりつけてもらうんだから。」
分かるのは俺に対して敵意を持っているという事。
正直襲われるのは初めてだ。予想してなかった訳じゃないが、どうして良いか分からない。
「くらえっ!氷符アイシクルフォール(EASY)」
叫ぶと同時に彼女の周囲に氷の塊が無数に現れた。
昼過ぎの太陽に一つ一つが反射し輝いている。
光の粒に囲まれた彼女は、少女でありながらそれはもう氷の女王だった。
神々しい。その言葉が表現としては適切なのだろう。
勝てるはずがない、俺は氷の女神に勝てるはずがない
ゆっくりと動き出したそれらは宝石の万華鏡のようn
ピチューン
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「あっ!起きた!!」
目を開ければ先ほどの少女の顔があった。
どうやら意識を失ってたらしい。
「避けなきゃ弾幕ごっこにならないじゃん!あんたバカなの?」
先ほどあれほど神々しかった彼女も今見れば年相応の無邪気な少女に見える。
「さっきのあれ何なんですか?避けられるわけ無いですよ。」
「もしかして妖怪の癖に弾幕ごっこ出来ないの?」
弾幕ごっこ?何だその物騒な遊びは?この地方の風習なのだろうか。
「ごめんなさい・・・」
「ほんっとにバカなのね。じゃあ弾幕を出す事は出来るの?もちろん飛べるよね?」
「出せないし、飛べません。」
彼女は驚愕の表情を浮かべていた。
あんな芸当を飄々とこなして、驚愕したいのはこっちの方だ。
しかし、これはチャンスかもしれない。
そう、この世界の情報収集の。
「その、弾幕ってのは簡単に出せるんですか?飛ぶのって自分にも出来ますかね?」
「むしろそれで今までよく生きてこれたね。普通出来ないほうがおかしいよ。」
さっきから随分な言われようだが、実力差ははっきりしている。
俺は腹を括った。
「お願いがあります。出来るのであれば飛び方を教えてください。貴女の弟子にしてください!!」
人生初の土下座だった。
しかし今後もこのような事が有るかもしれない。
彼女は本気を出していないだろうが、今度は命を落とすかも知れない。
そんな状況の中で空を飛べるというアドバンテージはでかい。
射命丸も何故飛ばないのかと聞いてきた。
もしかしたら俺には飛べる資質が有るのかも知れない。
「でし?私の子分になるってことなの?」
「飛び方を教えていただけるなら概ね正しいと思います。貴女の手となり足となりー」
「でもあたいも暇じゃないのよ。それにいっぴきおおかみって奴なのよ」
口ではそう言っているが頬は少し綻んでいる。
正直な性格なのかもしれない。
それに俺だって一匹王子だ。
気が合うかもしれない。
もうひと押しだ!!がんばれ汚い大人!!
「先ほどの美しい弾幕を見て分かりました。貴女は相当の実力者だと。貴女にこそ師事したい!!」
半分本気だ。
彼女の表情は笑顔を通り越してすでに破顔だ。
ちょっと罪悪感。
「しょうがないわね。あんた弱っちいみたいだし、このままだとすぐ死んじゃうものね。でもかくごして!修行はとてもかこくよ!!」
「はいっ師匠!!どこまででも着いて参ります!!」
ちなみに人生において師匠は二人目。
一人目は俺が車掌の見習いの時の指導員の先生。
意志の弱い俺をよく一人前にしてくれたものだと思う。
どんな人だったっけ・・・?あれ?まぁ今は良いか。
「そういえばあたいの名前はチルノ。湖上の妖精よ!えっと、人に名前を聞くときは自分も名乗るものよ。」
どういう理屈だ?とりあえずとてもいい人なのだろう。
「俺の・・自分の名前は猿橋夢仁です。小河内鉄道松姫乗務所の車掌です。」
「てつどう?じょーむ?」
「・・・いや気にしないで下さい。よろしくお願いします。」
そう言って手を差し出した。
「おうっ!よろしくな!!」
手が凍った。
こうして奇妙な師弟関係が始まった。
チルノの発言の変換、未変換はその単語をチルノが自信を持って言っているかどうかです。
その他の誤字脱字は著者のミスです。表現ではありませんごめんなさい