平成妖怪譚   作:事代 件

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きっとドライアイの私には苦痛です。




4夜 夢、飛ぶ

 

 

 

 

あれから飛ぶこと努めて四時間。

 

 

 

俺の身体はまだ浮いてすらいなかった。

そもそも言い出してはみたが、飛ぶことがいまいちピンと来ない。

どこに力を入れれば良いのかさっぱりだ。

 

 

「やっぱり叶わぬ夢なのか。きっとかのライト兄弟も今の俺と同じく空飛ぶ小鳥に嫉妬心を」

 

「?・・・まぁ、初めてで飛べなくてもしょうがないとおもうよ。」

 

「いや、そもそも羽がないと飛べないんじゃないのかなと。師匠みたいな妖精も射命丸さんもみんな羽があるじゃないですか。」

 

「天狗は知らないけど、あたいの場合は羽なんて飾りみたいなもんだよ。人間だって飛べる奴が居るんだから。」

 

「えっ!?なにそれこわい。」

 

「巫女なんかよく飛んでるよ。」

 

 

なんという神通力。もはや現人神。

 

 

「とりあえず今日はもう終わりにしよっか。こっちも疲れたし。」

 

「不甲斐ないです。」

 

 

確かにもう日が陰ってきている。

今から帰ったら確実に夜だ。妖怪に会わなければいいのだが。

 

 

「寝床はどこ?」

 

「俺のですか?」

 

「他に誰が居るのよ。あたいの寝床はここだし。」

 

「人里近くの山の中です。明日は何時から稽古を付けて頂けますか?それに合わせて出てこないと、歩いて二時間近くかかるので。」

 

「わかった。案内して!」

 

 

そう言うと彼女は後ろから手を回し、しがみついてきた。

なんだこれは?初めての経験に顔が赤くなる。混乱する

・・そもそも今まで生きてきて初めてなのか?

25年間無かったのか?

 

 

「飛んだほうが速いでしょ?」

 

 

 

言うが早く俺の身体は宙に浮いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

心拍数が高い。

しかし今までのとは違い、今回は少し心地いい。

 

 

「どう?飛んでみて。気持ちいいでしょ?」

 

「パラグライダーみたい。」

 

「ぱらぐらいだー?なんかカッコいい!!」

 

 

確かに飛んでみると速い。

時間にすると30分しかたっていないが、もうすぐ着きそうだ。

しかし寒い。

 

単純に夕方の涼しい空気の中飛んでるというのもあるだろう。

しかし、それよりも氷の妖精である彼女の体温はとても低い。

能力を抑えてくれているようで先ほどのように凍ることはないが、密着している背中は氷を背負っているようだ。

お腹を壊しそうである。

 

 

「手を引いて飛ぶみたいな感じにはいかないんですかね?」

 

「腕が抜けちゃうよ。」

 

 

漫画みたいにはいかないようだ。

 

 

「あっ!あの小屋です。」

 

「りょーかーい!」

 

 

躊躇いもなく彼女は小屋へと入っていった。

あとに続く家主(仮)。

 

 

「えっ!?本当に住んでるの?何もないよ?」

 

「昨日来たばかりなんです。」

 

「ふーん。じゃあ明日は6時起きね!よろしくぅ」

 

 

そういうと彼女は板の間に寝そべった。

 

??

 

 

「帰らないのですか?」

 

「こっちに居た方がこうりつが良いでしょ?だめ?」

 

「えぇ。別に大丈夫ですが。」

 

 

全然良くない。

そもそも男職場なせいで、異性と接する機会も多くない。

実は射命丸さんや師匠と話すのだってドギマギだ。

 

 

「zzz...」

 

 

まぁ、でも彼女は子供じゃないか。

姪っ子がお泊まりに来たと思えばいいか。

 

結構歩いたし俺も少し疲れた。

明日に備えて寝るとしよう。

 

 

 

どきどき

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

車掌の仕事で空調管理という難しい仕事がある。

朝冷えて昼暖かいこの時期は特に悩ませる。

一行路でも空いている始発駅では暖房を使い、頃合いを見て一度切りにし、終着駅の都心に近づけば冷房と扇風機を両方投入なんてこともある。

それに暑がりな人、寒がりの人、各車両の混み具合。

正直正解なんて無い。寒いと苦情を頂けば一発OUTだ。

 

 

「さっ!!寒っ!!!!」

 

 

びっくりした。

冷凍庫かと思った。

 

日は昇りはじめ、小さな師匠はすやすや寝ているようだ。

 

氷の妖精は冷房効果抜群だ。

そういえば彼女はいつまでここに居るのだろうか。

ずっと、という事は無いだろう。

布団でも調達しないとな。

 

 

「あれ?・・・おはよー。ここどこー?」

 

「おはようございます」

 

 

 

師匠の覚醒を待ち早速鍛錬にあたる事となった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「こぉ~・・・はあっ!!」

 

「声は関係ないと思うんだけどなぁ。」

 

 

 

あれから三時間。

色々試行錯誤してみたが飛べる気がしない。

 

 

「どういうイメージで飛ぼうと思ってるの?」

 

「やっぱり身近な物で鳥が飛ぶような感じですね。ばさばさー」

 

「なるほどね・・・もっとこう、力を抜いて良いと思うんだよ。体の中のパワーの流れを下にトーンとやる感じなのかな。」

 

「そもそも身体の中にある妖力ってのをイメージできないんですよね。俺としてもまだ人間という線も残ってるんじゃないかなと。」

 

 

そうなのだ。

断食生活が4日目に突入しても普通に活動しているのだが、人間諦めたわけじゃない。

そういう時もあるのだろう。

 

 

「ちなみに師匠はいつから飛べるようになったのですか。」

 

「あたい?たぶん最初からだと思うよ。だって妖精だもん。人間が歩くのと同じことだよ。」

 

「同じなのかなぁ。・・・こぉ~~・・はあっ!!!」

 

 

そして日が暮れ始めた頃ついに俺は・・・

 

 

 

 

諦めたのだった。

 

 

そして不貞腐れている。質が悪い

 

 

 

 

「そもそも飛べたらいいなとは思ってたけど、飛べるとは思ってなかったり。」

 

「駄目だと思ってたら飛べるわけ無いじゃん!!」

 

「だってだってー」

 

 

成人男性が少女に向かって駄々をこねている。

 

威厳?それはおいしいのですか?

 

 

 

「しょうがないなぁ。じゃあ少し私の話を聞いてもらおうか。」

 

「褒めても飛べないですよ。」

 

「褒めないわよ・・一々一言多いな。私の友達に大きな岩がいるの。」

 

「岩ってあの?」

 

「そう、その岩。とても長生きな岩でよく昔話をしてくれたの。」

 

 

ここは岩まで話すのか?とは言わない。

なんだか真面目な感じだ。空気くらいちょっとは読める

 

 

「その中の話の一つなんだけど、昔人間の友達が居たらしいの。でもその頃はまだ力を持ってなくて話したりは出来なかった。それでも人間は話し相手に岩を選んで毎日あったことや仕事の不満をしゃべってたみたい。」

 

「端から見たら狂人ですね。」

 

「空気読んでよ・・・。んでね、その人間は近くのお屋敷の使用人として働いていてその日も休憩中岩と話していたの。その時お屋敷ではだんな様が偉い人から預かっていた壷を割ってしまったの。」

 

 

なんとなく先の展開は読めた気がする。よくある話だ

こういう話は大抵報われないので好きではない。

 

 

「なんとだんな様はその失敗をそこに居なかった使用人のせいにしてしまったんだって。そして使用人の首を差しだして許して貰おうとした。やってないことを知っていたのは岩だけ。でも声を出して嘘を暴くことも出来ないし、走って助けに行くなんて事も出来ない。」

 

「そもそも大事な壷なんて預けなければいいのに。」

 

「そこ気にする?・・・そして岩は何も出来なかったことを、幽霊の姿になってまで別れの挨拶に来た友人を見て知った。岩は声も上げれずにいっぱいいっぱい泣いた。岩はこの話をした後にお前は飛ぶことも駈けることも出来る。その能力を生かしてお前にしか出来ないこと、やらなければならないことをやるんだって言ったわ。」

 

「流石にここまで聞くと茶々は入れられないと思った。」

 

「言ってる!言ってる!・・まぁ何が言いたいかというと、あんたは飛ぶことが出来るはずなのに飛ぼうとしない。飛びたくても飛べない奴だって居るのにってこと。」

 

 

正直彼女を少し見くびっていたと実感した。

皆までは言わなかったが、彼女はきっと岩の言いつけを守っているのだろう。

家まで送ってくれた事。

そして一晩俺を守っていてくれたこと。力の弱い俺を

 

 

ただ彼女が一晩一緒に居ただけで、部屋が冷凍庫になるなんて考えられない。

きっと俺が起きる直前に能力を使用したのだろう。

 

 

「あんたも助けて貰ってばかり居ないで、自分で強くなんないと。やるべき事をやらなくっちゃ。」

 

 

その言葉は良い発破になった。

 

 

それから、わずか3センチ浮くのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

すっかり日も落ち夜の帳がおりていた。

 

 

師匠はお祝いにと、捕まえてきた蛙を囲炉裏で炙っていた。

初めは躊躇したがこれが中々うまい。

見た目を除けば鶏のささみみたいで、久々の食事に内蔵がうれしい悲鳴をあげている。

 

 

「本当にありがとうございました。少しコツがつかめてきたので後は練習すればうまく行きそうです。」

 

「良かった良かった!人に物を教えるってのも中々面白いね。」

 

 

まるで自分の成功の様に喜んでくれている。

どこまで良い人なのだろうか、

 

 

「いや~でもあの話で飛べるようになっちゃうなんて、あんた結構良い奴なんだね!!」

 

「まぁ良い話でしたからね。民族学が好きで結構昔話は読んでたんです。」

 

「みんじょ、みんぞくがく?まぁいいや。確かにあの調子なら飛べる日も遠くないよ。」

 

「それにしても、あたいも頭良くないけどもっとバカが居たんだね。」

 

 

ニヤニヤしている。

今までの純真無垢な笑顔と違い、いたずらをした子供の顔だ。

 

 

「・・・なにかあるのですか?」

 

「だって・・ぷっ、岩が話すわけ・・くっ・・無いじゃん」

 

 

そして壷に入ったかのように大声で笑い始めた。

 

 

「えっ?まさか・・」

 

「うっくっくっ、全部作り話だよ。茶化しては居たけど目は真剣なんだもん。おっかしー」

 

「じゃあ使用人は?」

 

「大丈夫!可哀想な使用人は元々居ないよ。明日からは弾幕の練習も始めよっか。今度は何の話をしよっかなー」

 

 

してやられた。

正直ちょっと感動していたのに。

 

 

 

間違いなかった。

 

俺の師匠はこの人しか居ないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





チルノさんは意外と扱いずらい。
難しい単語を使おうとすればキャラが崩れる。
でもアリだとも思う。
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