登山は好きです。
山に向かい一匹の妖精と一匹の妖怪が飛んでいた。
チルノと俺だ。
まだ慣れていないので、2メートル程の低空飛行だが。
それぞれ一升瓶の酒を担いでいる。
慧音さん曰く御神酒を持参すれば、話が進みやすいとのこと。
「なんだかんだ朝は冷えるな。」
「そう?暑いくらいだよ。」
風を切って飛ぶのは気持ちいいのだが、体力を使わないので体温がどんどん奪われていく。
ダウンジャケットが欲しいところだ。
あるのかな?
「分かると良いけどね。夢仁が何の妖怪なのか。」
「そうだな。やっぱりこの際カッコいい奴が良いけどな。」
「妖精とか。」
「・・・・・」
しまった。
ちょっと嫌な顔をしてしまったかもしれない。
今の沈黙もマズかったか。
「もしかして・・嫌なの?」
ピーンチ。
「いや、違うのだよ。全然違うのですよ。俺は妖精って柄じゃないじゃんかー!それにほら!妖精って可愛いものじゃんかー!」
「えっ・・・?」
「で、でしょ?」
「うーん。えへっ、そう?可愛いって言われちゃった。ありがとう!」
あれ?なんか違う気がする。
まぁ、喜んでるし良しとしよう。
「でもなんだろうな。例えば小豆研ぎだったら嫌だな。研いだこと無いし。」
「夢仁はもったいないお化けじゃない?」
「もったいないお化け?」
「もったいないお化け。」
実は心当たりが一つ有ったりする。
勿論もったいないお化けではないのだが。
あいつと俺はそれが原因で、オカルト研究かぶれみたいなことを始めた。
しかし、それは当たって欲しくない。
それならもったいないお化けの方がマシである。
チルノと出会った湖や畔の館を横目に過ぎ山が近づいてきた。
「じゃあそろそろ歩こっか。」
「もう飛ばないの?」
「山の中は足下が不安定だから、ちゃくりくする時危ないよ。」
「なるほど。」
彼女は結構気が利くタイプなのかもしれない。
それにしても登山なんて何年振りだろうか・・・覚えてないな。
きっと例によって初めてなのかもしれない。
「やっぱり運動着も必要だな。制服に革靴の登山は辛い。」
「確かに夢仁はいつもその格好だね。動き難そう。」
「通気性無いから蒸し暑いよ。」
「引っ付いてあげようか?」
「・・・それだと寒すぎるから遠慮しとくよ。」
「べたー!」
「やめて!!」
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小川はとても澄んでおり、少し冷えた山の空気は汗ばんだ身体に気持ちいい。
登山を趣味にしてみるのも良いかもしれない。
「あ゛っあじぃ・・歩くのってこんなに辛かったっけ?先に飛んで上で待ってても良い?」
「困るよ。道分かんないもん。」
「えっ?じゃあ今どこに向かっているの?」
「おい、ちょっと待て。今なんて言った?」
確かに二人並んで歩いていたので、互いが案内して貰っていると勘違いしていた。
でも歩こうと言ったのはそっちなのだから、そこは責任を持っていただきたい物だ。
木が生い茂り、今何処にいるのかわからない。
やっぱりこういう時は、来た道を一回戻るのが良いのだろうか?
「あっ!そうだ!!」
「ん?どうした?」
「飛べば全部見える!!」
「おぉ、ナイスアイディア!頭良い!」
「へへー」
まだ飛ぶという事を覚えたばかりの俺には中々出ない発想だった。
やっぱり師匠はデキる妖精だ。
結局飛ぶことになり、いざ空へというその時だった。
「待ちなさい!ここから先は人跡未踏の天狗の聖域。貴方達のような低俗妖怪の来て良い場所ではない。即刻立ち去りなさい!」
後ろから聞こえた透き通る凛とした声には聞き覚えがあった。
胸が高鳴った。
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「誰かと思えば、この間の子供妖怪ではないですか。」
「この成りで子供と言われてもな。」
「大丈夫ですよ。私もこの成りですが数百年生きてます。大抵は子供みたいなものです。」
確かに天狗ならそれ位生きてても不思議ではない。
妖怪というのは見た目で判断しても駄目みたいだ。
俺だって周りの少女達に比べればおっさんだが、一番若手の三歳なのだから。
「あの様子でしたから、既に命尽きてるかと思ってました。こんな所に何しに来たのですか?それに何故氷の妖精が一緒に?」
確かにチルノに助けて貰わなければ、そうかも分からなかった。
神社に向かっているのを含めて事の経緯を彼女に話した。
「なるほど、それで神社に向かっていたわけですね。でも全然方向が違います。仕方ないので私が案内して差し上げましょう。出来れば飛ばない方が良いんですよね?」
「なんと有り難いことだろうか。彼女は可憐なだけでなく天使のように優しかった。」
「夢仁わざとやってる?」
三人に増えたパーティーは、昼過ぎ頃ようやく神社に到着した。
中規模の神社で外の世界とそれほど変わりはなかった。
太い注連縄があるので出雲系か諏訪系だろうか。
諏訪大社には一時間程の所に住んでいたが、一度も行ったことがなかった。
もう行けないと思うと残念だ。
「射命丸さん、ありがとうございました。後は何とか大丈夫だと思います。今度お礼にお茶でもご馳走しますね。」
「遠慮しておきます。貴方はお茶を奢るお金を持って無いですから。それにここまで来たのですから、この後もお供させて頂きます。面白い情報が知れれば、それでチャラで大丈夫ですよ。」
うーん。なかなか堅いな。
「あら?御参拝の方でしょうか?お疲れさまでした。」
自分たちの話し声を聞いてか、境内から巫女さんが出てきた。
まだ高校生位の見た目だ。
家の手伝い?それともバイトだろうか。
「大体そのような感じです。実は神社の方が外の世界からいらっしゃったと伺いまして、それでお聞きしたいことが。」
「そうですか。それでは社務所の方へどうぞ。お持ちのお酒は御神酒でしょうか?みんな喜ぶと思います。」
みんな喜ぶ?
神主さんの事だろうか。
詳しくは知らないが、御神酒ってすぐ飲んじゃって良いものなのかな。
それとも神様の気持ちが分かるという、ちょっと痛い子なのだろうか。
三人は社務所兼住宅に上がっていった。
「早苗お昼まだー?」
二柱の神様がゴロゴロしていた。
一気に書いてしまうと長くなりそうなので分割。
短めになりました。