平成妖怪譚   作:事代 件

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登山は好きです。


7夜 夢、登る

 

 

 

山に向かい一匹の妖精と一匹の妖怪が飛んでいた。

チルノと俺だ。

 

 

まだ慣れていないので、2メートル程の低空飛行だが。

それぞれ一升瓶の酒を担いでいる。

慧音さん曰く御神酒を持参すれば、話が進みやすいとのこと。

 

 

「なんだかんだ朝は冷えるな。」

 

「そう?暑いくらいだよ。」

 

 

風を切って飛ぶのは気持ちいいのだが、体力を使わないので体温がどんどん奪われていく。

ダウンジャケットが欲しいところだ。

あるのかな?

 

 

「分かると良いけどね。夢仁が何の妖怪なのか。」

 

「そうだな。やっぱりこの際カッコいい奴が良いけどな。」

 

「妖精とか。」

 

「・・・・・」

 

 

しまった。

ちょっと嫌な顔をしてしまったかもしれない。

今の沈黙もマズかったか。

 

 

「もしかして・・嫌なの?」

 

 

ピーンチ。

 

 

「いや、違うのだよ。全然違うのですよ。俺は妖精って柄じゃないじゃんかー!それにほら!妖精って可愛いものじゃんかー!」

 

「えっ・・・?」

 

「で、でしょ?」

 

「うーん。えへっ、そう?可愛いって言われちゃった。ありがとう!」

 

 

あれ?なんか違う気がする。

まぁ、喜んでるし良しとしよう。

 

 

「でもなんだろうな。例えば小豆研ぎだったら嫌だな。研いだこと無いし。」

 

「夢仁はもったいないお化けじゃない?」

 

「もったいないお化け?」

 

「もったいないお化け。」

 

 

実は心当たりが一つ有ったりする。

勿論もったいないお化けではないのだが。

あいつと俺はそれが原因で、オカルト研究かぶれみたいなことを始めた。

しかし、それは当たって欲しくない。

それならもったいないお化けの方がマシである。

 

チルノと出会った湖や畔の館を横目に過ぎ山が近づいてきた。

 

 

「じゃあそろそろ歩こっか。」

 

「もう飛ばないの?」

 

「山の中は足下が不安定だから、ちゃくりくする時危ないよ。」

 

「なるほど。」

 

 

彼女は結構気が利くタイプなのかもしれない。

それにしても登山なんて何年振りだろうか・・・覚えてないな。

きっと例によって初めてなのかもしれない。

 

 

「やっぱり運動着も必要だな。制服に革靴の登山は辛い。」

 

「確かに夢仁はいつもその格好だね。動き難そう。」

 

「通気性無いから蒸し暑いよ。」

 

「引っ付いてあげようか?」

 

「・・・それだと寒すぎるから遠慮しとくよ。」

 

「べたー!」

 

「やめて!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

小川はとても澄んでおり、少し冷えた山の空気は汗ばんだ身体に気持ちいい。

登山を趣味にしてみるのも良いかもしれない。

 

 

「あ゛っあじぃ・・歩くのってこんなに辛かったっけ?先に飛んで上で待ってても良い?」

 

「困るよ。道分かんないもん。」

 

「えっ?じゃあ今どこに向かっているの?」

 

「おい、ちょっと待て。今なんて言った?」

 

 

確かに二人並んで歩いていたので、互いが案内して貰っていると勘違いしていた。

でも歩こうと言ったのはそっちなのだから、そこは責任を持っていただきたい物だ。

木が生い茂り、今何処にいるのかわからない。

やっぱりこういう時は、来た道を一回戻るのが良いのだろうか?

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あっ!そうだ!!」

 

「ん?どうした?」

 

「飛べば全部見える!!」

 

「おぉ、ナイスアイディア!頭良い!」

 

「へへー」

 

 

まだ飛ぶという事を覚えたばかりの俺には中々出ない発想だった。

やっぱり師匠はデキる妖精だ。

結局飛ぶことになり、いざ空へというその時だった。

 

 

「待ちなさい!ここから先は人跡未踏の天狗の聖域。貴方達のような低俗妖怪の来て良い場所ではない。即刻立ち去りなさい!」

 

 

後ろから聞こえた透き通る凛とした声には聞き覚えがあった。

 

胸が高鳴った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「誰かと思えば、この間の子供妖怪ではないですか。」

 

「この成りで子供と言われてもな。」

 

「大丈夫ですよ。私もこの成りですが数百年生きてます。大抵は子供みたいなものです。」

 

 

確かに天狗ならそれ位生きてても不思議ではない。

妖怪というのは見た目で判断しても駄目みたいだ。

俺だって周りの少女達に比べればおっさんだが、一番若手の三歳なのだから。

 

 

「あの様子でしたから、既に命尽きてるかと思ってました。こんな所に何しに来たのですか?それに何故氷の妖精が一緒に?」

 

 

確かにチルノに助けて貰わなければ、そうかも分からなかった。

神社に向かっているのを含めて事の経緯を彼女に話した。

 

 

「なるほど、それで神社に向かっていたわけですね。でも全然方向が違います。仕方ないので私が案内して差し上げましょう。出来れば飛ばない方が良いんですよね?」

 

「なんと有り難いことだろうか。彼女は可憐なだけでなく天使のように優しかった。」

 

「夢仁わざとやってる?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

三人に増えたパーティーは、昼過ぎ頃ようやく神社に到着した。

中規模の神社で外の世界とそれほど変わりはなかった。

太い注連縄があるので出雲系か諏訪系だろうか。

諏訪大社には一時間程の所に住んでいたが、一度も行ったことがなかった。

もう行けないと思うと残念だ。

 

 

「射命丸さん、ありがとうございました。後は何とか大丈夫だと思います。今度お礼にお茶でもご馳走しますね。」

 

「遠慮しておきます。貴方はお茶を奢るお金を持って無いですから。それにここまで来たのですから、この後もお供させて頂きます。面白い情報が知れれば、それでチャラで大丈夫ですよ。」

 

 

うーん。なかなか堅いな。

 

 

「あら?御参拝の方でしょうか?お疲れさまでした。」

 

 

自分たちの話し声を聞いてか、境内から巫女さんが出てきた。

まだ高校生位の見た目だ。

家の手伝い?それともバイトだろうか。

 

 

「大体そのような感じです。実は神社の方が外の世界からいらっしゃったと伺いまして、それでお聞きしたいことが。」

 

「そうですか。それでは社務所の方へどうぞ。お持ちのお酒は御神酒でしょうか?みんな喜ぶと思います。」

 

 

みんな喜ぶ?

神主さんの事だろうか。

詳しくは知らないが、御神酒ってすぐ飲んじゃって良いものなのかな。

それとも神様の気持ちが分かるという、ちょっと痛い子なのだろうか。

 

 

三人は社務所兼住宅に上がっていった。

 

 

「早苗お昼まだー?」

 

 

二柱の神様がゴロゴロしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 






一気に書いてしまうと長くなりそうなので分割。

短めになりました。
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