ここ第501統合戦闘航空団が存在するヴェネツィアでは新たに人員が配置されることになり、そのウィッチの到着を待っていた。そんな待機中の人物の中にはミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐や坂本美緒少佐、ゲルトルート・バルクホルン大尉がいた。
「それにしてあれから2年か。懐かしいな。」
「それにしても驚くべき人物ね。まさかまたウィッチとしての彼に会えるなんて夢にも思わなかったわ。そうよね、お姉さん?」
「ミーナ?!茶化さないでくれ!だが、正直嬉しい誤算だ。これで戦力が一層充実するだろう。」
ミーナの手元には綺麗な履歴書があり、その顔写真には懐かしの人物が写っていた。かつてこの501統合戦闘航空団の初期メンバーとして活躍し、無念にもウィッチの能力を失った伝説の人物だった。噂によれば再度ウィッチ化を果たし、各地で活躍。その活躍は各地で轟き、撃墜数は前人未到の770機とされている超が付く大物に成長していた。そんな懐かしい元メンバーに思いを馳せていると基地に輸送機が到着する。
「来たわね。さあ、迎えに行きましょうか。」
輸送機が滑走路に着陸し、扉が開く。そこから出てくる人物はその場にいた人物が予想していた体格より一回りも二回りも成長した赤松勇その人だった。軍服に身を包み、階級章には少佐の星が輝いていた。ゆっくりと階段を降り、隊長であるミーナの下にやってくると自然な所作で敬礼をし挨拶をする。
「扶桑海軍少佐、赤松勇です。本日より第501統合戦闘航空団に着任、特殊遊撃任務の任につきます。」
「501にようこそ、勇少佐。着任歓迎するわ。久しぶりね。」
「はっ、ミーナ中佐もご健勝そうでなによりです。」
しっかりと握手を交わしかつての友情を確かめる。やはり男子らしくすっかり成長し、身長はミーナが見上げる姿勢となり、声も幾ばくか低くなったようだった。
「ゆう、久しぶりだな。」
「坂本少佐もご活躍は新聞でも確認しましたよ。」
「もう階級も同じ少佐だ。それに敬語もいらんぞ。」
「わかった。」
坂本も挨拶をし、しっかりと握手して厚く、逞しくなった体躯に感心する。そんな中最も勇に会いたい人物が堪えられないように声を掛ける。
「ゆう!!」
バルクホルンは嬉しさと懐かしさや感動が一気に押し寄せて自分でもどんな表情になっているか分からなかった。だが、決して凛々しいものとは言えないだろう。その証拠にミーナが早くも苦笑いしていることからも分かってしまい、顔が熱くなってしまい余計に気恥ずかしくなった。しかし、勇はバルクホルンを見据えるとゆっくりと近づいて抱きしめた。
「姉さん・・・何にもまして会いたかった。」
「ゆう・・・私もだ。」
感動の再開にだれも口をはさむ野暮はしなかった。少しの時が流れ、勇が離れるとその頬には一筋の光が流れたがだれも指摘はしなかった。感動の再開も済ませ、今度は講堂にて勇の挨拶となった。ほとんどが顔見知りであるが、一応現状の勇の紹介も兼ねて全員を集めた。もちろん勇も会ったことのない人物も含まれていた。
講堂に集まる前、宮藤芳佳はリネット・ビショップ曹長に尋ねる。
「ねえリーネちゃん、今度来るウィッチ?の人ってみんな知ってる人って言ってたけどどんな人か知ってる?」
「うん、芳佳ちゃんが来る前に501を抜けちゃったからね。でも、私がここに着任するときまでにも大活躍してて、私の命の恩人でもあるんだあ。」
「へえ、リーネちゃんの命の恩人なら優しい人だね!よかった、怖い人が来たらどうしようかと思ったよ。あのペリーヌさんが緊張しているから。」
そこでペリーヌを見ると、本人はその会話を聞いていたのかむきになって否定する。
「緊張なんてしてませんわ!これはその・・・もう!素晴らしい人とだけ言っておきますわ!」
「すごい・・・あのペリーヌさんが素直に人を褒めるなんて。」
「なんですって?!」
そんなやり取りをしていると講堂に着く。席に座るとさっそくミーナとお目当ての人物が入室する。扶桑人特有の黒髪と白い軍服に身を包んだ男がミーナの後ろについて歩く。宮藤はふとその人物と目が合う。宮藤は微かに漂う目の端の冷たさのようなものを感じた。しかし、そんなことはさておきすぐに勇の紹介が始まった。
「こちら本日着任した扶桑海軍の赤松勇少佐よ。主な任務は特殊遊撃任務と言って、要はここを拠点に自由に出撃が可能な人員よ。我々にも力を貸してくれるとのことなのでみんなよろしくね。あとは自己紹介よろしくね。」
「紹介に与りました、赤松勇です。皆さんおひさしぶりです。またウィッチとして501の皆さんと戦えると思うと嬉しく思います。またお世話になります。よろしくお願いします。」
勇が自己紹介を終えると早速質問などに移った。そこで宮藤は質問を投げかけてみる。
「はい、宮藤さん?」
「あ、宮藤芳佳といいます。赤松さんはどういったお人なのでしょう。」
その質問にペリーヌが呆れたようにやや切れ気味で答える。
「はあ、あなたって人は・・・いいですこと!彼は私たちと同じウィッチ、いえウィザードと呼ばれる存在です。それも一度魔法力を失い、戦闘機パイロットとしても活躍し、その後ウィッチとして復活!最近は各地で活躍して今や撃墜数は770を超え、世界の救世主と言われる「荒鷲隊の軍神」でしてよ!同じ扶桑人としてしっかり覚えておきなさい。」
ペリーヌがすらすらと説明するが、当の本人は鼻頭をポリポリとかいて気恥ずかしそうにしている。ペリーヌは勇の武勇をどこからか入手しているらしかった。そこで茶々が入る。
「ツンツンメガネのくせに人を褒めちぎるなんて坂本少佐とゆうの二人だけなんじゃないかぁ。」
「あなた!人のことを何だと思ってらっしゃるの?!」
ここまでがテンプレートのように思える勇は本当に戻ってきたんだと言う安心感に包まれた。そして、宮藤の質問とペリーヌの過大評価を訂正する。
「ああ、なんだか誇張されているようだが俺はそんな大層な人間じゃない。同じ扶桑人として気軽に接してほしい。また、君たちの教育係もミーナ隊長から頼まれている。これからよろしく頼む。宮藤軍曹。」
笑顔が清々しい軍人の様で宮藤はすっかり勇のことを優しい人だと感じた。これにて紹介は終わり、各々勇と談笑していた。勇はもみくちゃにされながら和やかに時は過ぎて行った。
その夜密かにミーナと坂本、勇の三人が司令室に集まっていた。その部屋は月あかりだけが差し込むだけの明かりしかなかったが、それだけ内密の話をするのに雰囲気がピッタリのものだった。ミーナが口火を切って話は始まった。
「それであなたの履歴書には綺麗ごとが並べ立ててあるけど、これは事実なのかしら?」
厳かな雰囲気な中、ミーナの静かな口調は闇夜に溶けてしまうような勇に吸い込まれていった。
「事実は書いてあります。それ以上のことであることを聞きたいのであれば軍機に触れない程度ならお話しできます。」
「つまりは隠し事があるということね。」
「なあゆう、私たちとの仲じゃないか。良ければ話してみてくれないか?」
ミーナと坂本の前に置かれた勇の履歴書にはこう記されていた。
『・サーレマー島基地にて司令及び指揮官の故意喪失
・大尉拝命
・原隊343空第一中隊壊滅
・無断逃走
・連合軍に身柄拘束
・少佐拝命
・501基地にて特殊遊撃任務受領』
これは明らかにおかしい人事異動と階級の昇級だった。そもそも拘束されてから昇級していることがおかしく、時系列が合わなかった。また各地で噂になるような武勲が一切記載されていなかった。何か勇自身が闇を抱えるとしか思えなかった。
「私からお話しすることはありません。命令の通り動くだけです。」
「あなたの本当の任務はなんなの?」
「本当とは?」
ミーナは特殊遊撃任務という任務自体を疑い始めていた。ミーナたちがいる統合戦闘航空団自体、隊長であるミーナが尽力してようやくかき集めた部隊である。そんな部隊を内側から壊されてはかなわない。ミーナが勇を警戒するのは当然のことだった。
「悪評が出回っていることには謝罪申し上げます・・・が、ミーナ隊長もあまり私に関わることは良案とは思えないと愚考します。」
「あら、それは脅しかしら?」
「どう取っていただいても構いません。ただ、他の隊員と極力衝突はしないことはお約束できます。」
「・・・それは助かるわ。坂本少佐はなにかあるかしら?」
「いや、ゆうが元気ならそれでいい。ゆう、お前もそれで損はないんだな?」
坂本の問いには勇は答えなかった。ただ、これ以上は聞くなと言う拒絶感があった。ミーナは勇を退室させると大きくため息を吐く。坂本がそっと肩に手を寄せる。ミーナのデスクから新たな書類を出すともう一つのため息が零れる。赤い文字で「極秘」と書かれている書類はミーナが独自ルートで入手したものだった。
「はあ、思った以上に勇少佐の過去は深い闇に包まれているわ。でも調べただけでも戦果は故意的に紛失されているものが232件、司令部からの抗命による批判が13件、他現地指揮官からの推薦状や感情の類が7件と明るく褒めることができない存在のようね。」
これにより頭痛の種が増えたミーナだった。
翌日から勇は通常のローテを組まれた編成に組み込まれることとなったが、妙に単独もしくはハルトマン、ミーナとのペアが多くなっていたことに気にする様子はなかった。しかし、驚くほど基地に順応する勇にミーナは警戒をしているのがあほらしく感じるほどだった。というのも、宮藤の作るご飯に舌鼓を打ちその日の夕食は5度もお替りしたほどだった。
「な、これは・・・」
「お口に会いませんでしたか?」
「いや、いやこれは・・・ここまでか。これほどなのか!」
ものすごい勢いで食していき、その日から食事が楽しみのようになっている勇を見て基地の隊員は愉快気に馴染んで行っているのだった。そして、宮藤とリーネ、ペリーヌの訓練を担当した日にはその醜態を見て表情が死んでいた。さらにそれを見学するミーナと坂本に凄い勢いで抗議をしてきた。
「ミーナ中佐!坂本少佐!あれはどういうことだ?!」
「まあ、宮藤は元は民間人だし、二人は一度軍籍を離れているからな。仕方ないとはいえこれでは使えないな。」
「使えないどこではない!もう一度訓練学校からやり直させろ!」
恐ろしい形相で講義し、口調まで荒っぽくなっている勇を始めて見たミーナは驚いたが、坂本は気にせず話を真に受けている。ミーナの中の勇は礼儀正しく言葉遣いも丁寧な好青年だった。
「そうだな・・・訓練学校に行っていては今後にいろいろ支障が出る。」
「こんなことでは棺桶がいくらあっても足りないじゃないか!」
「ふーむ・・・」
「あの美緒・・・」
「ああミーナ、そうだなあそこに頼むしよう。」
「そういうことじゃ・・・」
宮藤たち三人はアンナ・フェラーラという魔女に訓練を頼むこととなった。ミーナの心労が増えたが三人がいないうちに他の隊員と勇の交流は進んでいた。というのも久しぶりに編隊飛行をしようとなったバルクホルン、ハルトマンの二人と飛行していた時のことだった。ミーナからの匿名の通信がバルクホルンに入ってからだった。内容は『勇の今の戦闘能力が知りたい。だからハルトマンと模擬戦をしてほしい。』というものだった。バルクホルンは快く承諾し、いつもの訓練かのように模擬戦を指示する。ハルトマンは嫌々だったが、勇は何とも言えない表情をしていた。バルクホルン自体も人類でもハルトマンと自分の300機撃墜の記録は他の誰にも簡単に抜かせるものではないと考えていただけに、勇の撃墜数770機は驚異的なものだった。だから、どのように勇が成長したか見てみたくなったのだった。ちょうどペイント弾を装備しているため、すぐにも模擬戦が始められた。バルクホルンがルールを改めて説明すると二人は了承する。ここに人類ツートップの模擬戦が始まったのだった。
「よーい、始めっ!」
二人は勢いよく同高度から発進した。グルグルと旋回し、互いの後ろに着くべくしのぎを削っている。先に旋回を止めたのはハルトマンだった。
「先に後ろを取ったのは勇か。」
「ええ、これは見ものね。」
しっかりと見物するミーナと坂本は冷静に戦況を分析していた。空中戦はさらにヒートアップしていた。背後を取られたハルトマンが急降下をするとユニット性能の差から引き離されてしまう。勇は潔く後を追うのを諦め、距離を取る。そこを逃さず急降下で速度を付けたハルトマンが追う形となる。すると勇は捻りこみによりハルトマンの背後を取ろうとする。しかしハルトマンも急減速で取らせない。勇はまだ背後が取れないことを悟ると、急上昇をかける。ハルトマンは太陽の陰になった勇を狙えず予想を付けて牽制する。すると突然勇が目の前でハルトマンに向かって銃を構えていた。
「まさかっ!木の葉落としっ?!」
坂本が驚愕の表情を浮かべる。
ハルトマンはこの状況に驚き、咄嗟に自分の固有魔法を使用してしまう。
「シュトゥルム!」
疾風に揺れる木の葉のように勇が体勢を崩す。その隙を逃さずハルトマンが射撃する。しかし、その弾は全て虚空を掴むだけだった。ハルトマンは目を見開いたが、その時ハルトマンの心をぎゅっと鷲掴みするような恐怖が支配しかけた。冷や汗とともに振り返ると、そこにはどこから湧いたのか勇がぴったりと逃げられない距離でハルトマンに銃を向けていた。ハルトマンはそこにいるのがもはや人間とは思えなかった。魔王かなにかではないかと錯覚するほどの殺気だった。そこで模擬戦終了のホイッスルが鳴る。
「そこまでっ!」
「へっ!?」
ハルトマンは呆気に取られて変な声が出てしまっていた。勇はと言うとゆっくりと銃を降ろすと、ハルトマンに礼を述べる。
「ハルトマン、流石だったよ。まさかあそこで固有魔法を発動されるとはね。」
いつものような優しい口調に安心していると、微かに勇はこう囁いた。
「でも、俺じゃなきゃ死んでたぞ。」
その言葉に乗せられる殺気ともいえる重圧にハルトマンは先ほど感じたものと同じ感情が湧く。ふと勇を見るともう先ほどと同じような優しい表情に戻っていた。ハルトマンは勇に少なからず前と同じではない勇を感じていた。バルクホルンと嬉しそうに話す勇につい言ってしまった。
「ねえ、あんた誰だよ。」
そういった瞬間の勇の悲しそうな驚いた表情を見逃さなかったが、バルクホルンが仲裁に入る。
「こらっハルトマン!もう模擬戦は終わったんだ!熱くなるなんてお前らしくない!」
「ちがっ・・・そう、かも・・・はああ、なんだか疲れちゃったよ。あたし先に降りてるね。」
「あっこらハルトマン!まったく!ゆう、ハルトマンの奴にはあとで言っておくから。」
「トゥルーデ、別に気にしてないから大丈夫だよ。それよりここでのネウロイについて教えてよ。」
バルクホルンの話もそこそこに勇はバルクホルンと仲良くおしゃべりに興じてしまった。そんな中ミーナと坂本が話し合う。
「まさかあそこまでの実力だなんて・・・」
「それにハルトマンの最後の攻撃の時、どうやって回避したのか私には見えなかったわ。」
「うん?そうか、ミーナには見えなかったか。」
坂本の煮え切らない様子にミーナは勇の実力の底知れなさに、さらに警戒するのだった。
翌日、宮藤達のいる場所にネウロイが襲来するが、彼女たちはそれを撃退。無事に成長して帰還した。さらに数日後、暑い盛りの頃、基地は薄着のウィッチたちであふれていた。一方の勇はシャーリーと一緒にユニットや武器の整備にあたっていた。
「いやーやっぱり私のマーリンエンジンは今日も最高だな!なあ、ゆうのユニットもいじってやろうか?」
「いやいい。それよりそっちの器具を借りてもいいか?」
「おう!ほらよっ・・・てどうしたんだ?」
「・・・いや、俺はいつか捕まるかもしれんと思ってな。」
「ん?」
シャーリーは男性である勇がいるにも関わらず下着のまま開放的なグラマラスな体を曝け出していた。そこにバルクホルンが飛んでくる。
「シャーリー!お前と言うやつはそんな薄着でっ!ゆうに変なものを見せるな!」
「変なもんってお前なぁ・・・まあいいじゃないか。」
「よくない!」
「そう言ってるぞハルトマン?」
「へ~?あつぅ。」
「お、お前たちと言うやつは・・・」
ハルトマンやルッキーニまで薄着の状態でバルクホルンは頭が痛くなった。そこに宮藤とリーネが昼食を持ってくる。
「皆さんご飯ですよ~ってこの箱はなんですか?」
「それは試作機のジェットストライカーだ。」
宮藤の疑問に答えた声の主は坂本だった。続いてミーナも書類を持って格納庫に入ってくる。シャーリーたちに薄着でいることを指摘するとジェットストライカーについて説明をしている。それに興味津々のシャーリー。すると辛抱堪らないといった様子で試乗を申し出る。
「時速700キロ!?なあ、これ私に乗せてくれよ。」
「いや、これはカールスラントの機体だ。だからカールスラント人である私が乗るべきだ!」
バルクホルンがムキになって対抗するが、シャーリーも負けじと言い返すといった押し問答が繰り広げられている中、抜け駆けでルッキーニが脚を入れてしまう。
「いっちばーん!」
その瞬間ジェットストライカーは起動し、青白い魔法陣を多重に展開し始める。しかし、そこでルッキーニはストライカーから飛び上がって逃げ出してしまう。それをなだめるシャーリーと煽るバルクホルンという謎の構図が繰り広げられている光景を眺めながら、勇に坂本が話しかける。
「あのジェットストライカーについてゆうはどう思う?」
「ジェットか・・・いつか時代を作る代物だとは思うけどな。だが、今の俺には乗る機会はないさ。まだ零戦があるしな。」
「そうか?ゆうなら喜んで乗りたがると思っていたがな。」
「・・・俺も零戦も老いていく存在なのかもしれんな。」
「何か言ったか?」
「いや、何でもない。」
一瞬勇が悲しそうな表情をしたが、坂本には気づくことは出来なかった。そこからバルクホルンとシャーリーのジェットVSレシプロ機の様々な競争が繰り広げられる。しかし、そのいずれにおいてもジェットは抜群の性能をたたき出した。それを見た勇はこう呟いた。
「ジェットか・・・あれがあれば一切合切を振り切れるのかもな。」
バルクホルンとシャーリーの競争が激化していくにつれバルクホルンの体調が衰弱していくが、勇はこのとき連合軍総司令部から密命を受けてとある場所にて活動していた。
「最近、ネウロイの襲撃頻度にブレがありすぎる。俺の予想では・・・」
勇が活動している中、バルクホルンはついに魔法力の過剰供給により墜落してしまう。原因はジェットストライカーが以上に魔法力を吸収してしまう仕組みであると判明し、当分の間バルクホルンは飛行禁止処分が言い渡され、ジェットストライカー自体がお蔵入りとなってしまった。その間バルクホルンは自分のストライカーを扱えなかった己の無力さを後悔し、トレーニングに励むがユニットに問題がある以上乗り手ではどうしようもなかった。そんな中突如超高速ネウロイが襲来し、ミーナ、坂本、ハルトマン、エイラ、ルッキーニ、シャーリーが迎撃。敵本体に攻撃を仕掛けるも分離し、各個高速で基地に突撃を敢行し始めた。
「シャーリー!お前のスピードを見せつけてやれ!」
「了解っ!」
坂本の指示の下シャーリーが自慢の高速でネウロイを追い詰めるが、不規則挙動で一向に捕まえることができずにいた。
「くそっ!動くなよ!はぁ、はぁ・・・」
「・・・っ!」
それに耐えられずにバルクホルンは宮藤とミーナの静止を振り切り出撃してしまう。
「駄目よトゥルーデ!あなたはまだ万全じゃないのよ!今度は本当に暴走してしまうかもしれない!?」
「すまないミーナ!あとで罰は受ける!」
『その罰俺も共に引き受けよう。』
「ゆう?!」
突然の勇の登場に一同は動揺するが勇の支援があると分かれば作戦の成功率が上がる。これに気を許したバルクホルンはジェットストライカーの鎖を引きちぎると全速力で発進してしまう。一方のシャーリーは未だネウロイに有効打を与えられないでいた。そんな中一つの通信が入る。
『これより支援攻撃に入る。弾着まで4,3,2・・・今だトゥルーデ!』
「ああ!」ズドンっ!
勇の攻撃は正確に細型になったネウロイの進路を妨害しつつその体勢を崩すことに成功していた。そしてバルクホルンがその正面から被弾面積が増えたネウロイを大口径の30ミリ弾で貫いたことで作戦は決した。
「すげえ・・・やったぞバルクホルン!」
『支援完了・・・なんか様子が変じゃないか?』
「ん?」
シャーリーは勇に指摘されバルクホルンを見ると、バルクホルンはうなだれてジェットストライカーに魔法力を吸い取られ暴走していた。急いでシャーリーと勇はバルクホルンの救出に向かう。位置的にバルクホルンを追う形のシャーリーと迎える勇と言う位置関係だったが、時速700キロ近いバルクホルンを受けとめられないため勇も同航する形で先を飛行していた。
「ゆう!そっちでバルクホルンを受け止めてくれ!」
「そうしたいが思ったよりも速度が出ている!横から手を出すとジェット気流でトゥルーデの体がバラバラになってしまうかもしれない!」
「なんだよそれ!?」
「一度後方から近づく!万一に備えてシャーリーも頼む!」
勇の作戦でバルクホルンを止めようとするがチャンスは一度きりであり、それもタイミングを間違うと自分も怪我をするリスクがある危険な賭けに出た。バルクホルンがついに勇の後方に迫る。相変わらずのジェットストライカーに苦笑いする勇だったが、ゆっくりとバルクホルンの体に手を寄せる。バルクホルンの体ごとゆっくりと減速方向に持ち込もうとするが、あまりの速度に零戦が悲鳴を上げていた。
「くそっ!持ちこたえてくれ!」
しかし、零戦は限界とばかりに蓋板が歪み始める。そこにシャーリーが追い付き始める。だがあと少しのところで追いつかない。勇は意を決し自分の体を持って空気抵抗をあげることを試みる。
「やめろゆう!?体がもたないぞ!?」
「口よりも速度に集中しろ!俺はどうなっても構わん!」
「くそぉぉぉぉ!!!」
シャーリーは勇の言う通り速度にのみ魔法力を集中させる。その思いが届いたのかシャーリーのP-51ムスタングがソニックブームを発生させながら追いつき始める。バルクホルンを減速させるために勇も体を張っているが既に限界が近づいていた。
「止まれぇぇ!!!」
そして、ついにシャーリーがバルクホルンのユニット緊急脱出装置に手をかける。勢いよくユニットがバルクホルンの足から外れ海へ落ちていく。その勢いを殺すように勇とシャーリーに挟まれたバルクホルンはとても気持ちよさそうにシャーリーの胸をもんでいた。時を同じくしてシャーリーは至近距離にある勇の顔にたじろぎながら作戦の成功にほっとしていた。勇もホッと一息つくと、ようやく異性の顔が近くにあることを考えないようにしていたシャーリーの耳をその息が掠める。
「ひっ!」
顔を真っ赤に赤らめさせる横でルッキーニが講義をするところまでお約束であった。
「それ私のぉ!!」
基地に戻るとバルクホルンは意識を取り戻し、ミーナに怒られバツとして大量のイモの皮むきを命じられていた。その大量のイモの出どころはというと、ハルトマンの双子の妹であるウルスラ・ハルトマン中尉だった。
「この度はお騒がせしてすみません。このこは本国に持ち帰ります。」
「いや、私こそ試作機を壊してしまった。すまなかった。」
「いえ、バルクホルン大尉がご無事で何よりです。」
ハルトマンに妹がいることに宮藤らが驚愕しているとき、ウルスラがふとある人物に気が付く。
「あら、あの人確か・・・なるほど、こんなところにいたのですか。」
ウルスラが見据える先にはバルクホルンの陰に隠れるように黙々とイモの皮むきをする勇の姿だった。
今回から急に501とのからみになってしまい申し訳ございません。回想編も用意してあるので続報をお待ちください。また、テレビアニメ編を導入する以上あまりストーリー改変ができないのがつまらない要因にならないように頑張ります。
ではまた次回で会いましょう。