今回は総武編ですよ
それと、アンケート結果で『ヒロイン』は増やすことにしまーす(꒪꒫꒪ノノ"パチパチパチパツ
週明けの学校、私は震えそうになる足取りで学校に向かっている。あの日に出会った先輩に胸の内を全て吐き出した私は確かに軽い気持ちになったし、いじめを解決してくれた先輩達に感謝している。
これでいじめは無くなる。私は正直嬉しかった。ずっと続いてきたこの苦しみから解放されるんだと。
「でも……まだ自覚できてないから怖いなぁ」
未だに信じきれないのだ。これが実は夢で現実ではないんじゃないのかと思ってしまう。
別に先輩達を信じていないだけでは無い。ただ突然の事で現実だと思えきれていないだけ。学校に近づくに連れて体は震えるし重くなる。それでも先輩を信じて私は進んだ。
学校について下駄箱に靴を上履きに履き替えて教室に向かう。廊下を歩いているとチラチラと私をいじめてる女生徒が見てくるが何も言ってこないししてこない。教室に入ればいじめっ子たちは離れたところから恨めしそうに私を睨んでいる。けど視線が合うとパッと目を逸らす。
やっぱり何もしてこない。
私は先輩達が本当に解決してくれたんだと、この時に実感した。
何もされないのが、言われないのが、ただただ嬉しかった。何度目かも分からない先輩達への感謝と嬉しさが私の中から消えない。
「ふふっ、あははっ」
誰も友達は居ないけど、今日一日は私にとってかけがえのないものになった。数年ぶりに何も警戒せずに過ごせて心は軽くなり思わず笑顔になってしまう。
午後の授業が終わって昼休みになり、鼻歌交じりに教室を出て屋上に向かう。もちろんお弁当を忘れない。廊下ですれ違う男子達が私を見てくるが気にしない。
「一色さん、ちょっといいかしら?」
以前、聞いたことのある冷たい声音がして振り向けば奉仕部の二人、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩がいた。一体私になんの用だろう?
「なんですか?」
「いろはちゃん、ここじゃ話しにくいから奉仕部の部室に行こ?」
「は、はぁ。分かりました」
言われるがままに二人について行き、部室に入る。中は前に依頼した時と変わっていて、
「単刀直入に言うわ。一色さん、あなたいじめを受けているでしょう?」
「……っ」
いったい何故、今になって聞いてくるのか。いじめなら解決した、いや、してもらった。なのに何でこの二人は今になってその事を聞いてくるのかが分からない。いじめられているのがわかっていたなら、もっと早く助けて欲しかった。
「その反応、本当にいじめられているのね」
「いろはちゃん!
私達が助けになる?言えばきっと助けてくれる?何を言っているのこの人たちは。それで解決するなら小学生の時にいじめは無くなっている。
「そうよ一色さん。先生たちは兎も角、私達は力になるわ」
「……」
「い、一色さん?」
「……先輩達は、いつから私のいじめに気づいていましたか」
「つ、つい最近よ」
「……どうやって知ったんですか?あの子たちは隠れていじめるのがとても上手かったです。それに私だって隠してきました。簡単にバレるなんて思えません」
あの時は親にも心配をかけたくなかったから、先生にもバレないように必死に隠していた。髪を切られても自分で違和感のないように切って、気分転換とか言って誤魔化していた。簡単にわかるわけが無い。
「じ、実はね、平塚先生にもしかしたらいろはちゃんがいじめられてるかもしれないから、何とか助けてやってくれって言われたからなの」
ということは私がいじめられていた事をこの人たちは知らないで、平塚先生は薄々と気づいていたと。それで奉仕部にお願いしたんですね。
平塚先生はいい先生だから、きっと一人ひとりの生徒を心配して気にかけてくれているんだと思う。生徒会長に勝手に立候補させられた時も一番に心配してくれたのが平塚先生だったっけ。担任とは大違い。
「なるほどなるほど。そういうことだったんですね。……お気持ちは嬉しいですけど、いじめはもう無くなったので大丈夫ですよ〜」
先輩達のおかげで私は解放されたから、もうこのことについては意味が無い。相談に乗ってくれようとした2人には悪いけど、やることなんてない。
「それは本当なの?迷惑をかけたくなくて嘘を言っているのではないかしら?」
「そうだよ、嘘をついてまで辛い思いしなくていいんだよ!」
「え?いや、えっとですね?本当に解決したんですよ?」
「なら、どうやって解決したか教えてくれないかしら?」
これは教えてもいいのだろうか?私的には行った方がこれ以上何も言われずにスッキリするけど、東雲先輩がやったことは結構犯罪くさいからこの人たちが、どう反応するかが不安になる。
「……。分かりました」
私はどうやっていじめを無くしたかを「いじめの証拠を突きつけて脅した」とぼかして教えた。二人はなるほどといった顔をするけど、実はもっとやばいことしてます。私がじゃないけど。
「自分で解決したのなら私達は必要ないわね。時間を取らせてごめんなさい」
「いえいえ〜お気になさらず」
「いろはちゃん、いじめじゃなくても何かあったら奉仕部に相談してね!」
「……あ、あはは。気に止めておきます」
私はお辞儀をして部室のドアに向かって歩いていく。その時に後ろの二人からある会話が聞こえてきて、思わず足を止めてしまった。
「ゆきのん、これからも奉仕部頑張ろうね!」
「えぇ、もちろんよ。クズ谷君がいなくても、私達だけで依頼を完璧にこなして見せるわ」
「そうだね。ヒッキーがいなくても問題ないよね」
クズ谷、ヒッキー。前も二人がこの名前を言っているのを聞いたことがある。
「あの……」
「?いろはちゃんどぉしたの?」
「そのヒッキーって、悪い噂で有名なヒキタニさんの事ですか?」
気になって思わず聞いてしまった。ずっと気になっていたのだ。あのヒキタニさんはなんでそんなことをしたのか。普通はやらないことをヒキタニさんは自分から進んでやっているように見えてしまう。この二人なら知っているかもしれないと思った。
「えぇそうよ。正確には比企谷なのだけれどね」
「っ!!」
まさかの名前に顔が強ばる。だって、学校で悪名高いヒキタニさんの正体が先輩なのだ。そんなのは嘘だと頭の中で信じたくないと繰り返す。だって、先輩は私を助けてくれたのだ。それにいじめられていたのは先輩も同じ。いじめられている人がそんなことするはずがない。
「う、噂って全部本当なんですか?文化祭実行委員長を罵倒してなかしたとか、告白をじゃました、とか……」
「本当だよ」
「そうね。事実よ」
「……う、そ」
私は何がなんだか分からなくなってきた。だって、先輩は優しかった。あんなに優しい人がそんなことをするなんて思えないし、信じたくない。
「嘘ではないわ告白を邪魔したのだって私達は目の前で見ていたのだから。彼は備品の癖に生意気なのよ」
「そうだよね。ヒッキー依頼の邪魔して嘘告白するから台無しになったもん!ほんとサイテーだよ!」
「……依頼、嘘告白?」
気になる単語が出てきて、復唱する。
「雪ノ下先輩、依頼ってなんですか?」
「それは……」
雪ノ下先輩が語ったのはこうだ。
修学旅行の数日前にとある男子生徒が『告白を絶対に成功させたいという依頼』をしたそうだ。先輩は渋っていたが強制的に参加させ依頼を受けた。その後に依頼してきた男子生徒の好きな相手の女生徒がきて、よく分からないことをいって先輩に向かって「よろしくね」と言って帰った。
そして修学旅行で告白をの間際、今まで順調だったのに突然先輩が告白相手に嘘告白をした。
その後に二人は先輩にあることを言ったという。
『貴方のやり方、嫌いだわ』
『もっと人の気持ち考えてよ!』
そして先輩を拒絶した。
「これが全てよ。彼の酷さがよく分かったでしょう?」
「……雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩」
「何かしら?」
「んー?なに?」
深呼吸して、まずは第一声。
「あなた達は馬鹿ですか?」
なんで、この人達は気づかなかったんだろう。同じ部活で同じ時間を過ごしたのに、少しも先輩のことをわかっていいない。あって間もない私でも分かったことがこの人達には分からない。
こんなの、先輩が可哀想……
「バカとは何かしら?」
「そんなこと人に言ったらダメだよ!」
「クズ谷とかヒッキーと不愉快にしかならないあだ名を言うことは良いのに、馬鹿と言ったらダメなんですか?」
「そ、それは」
「だいたい、なんで先輩と一緒にいたのに理解してあげられなかったんですか?もしかして、理解しようともしなかったんですか?だとしたら先輩が可哀想ですよ」
「ま、まって。いろはちゃん、もしかしてヒッキーのこと知ってるの?」
この人、またヒッキーって変なあだ名で先輩のことを呼んでいる。そんなのでよく馬鹿と言ったらいけないとか言えたものですよ。
「知っていますよ。さっきはぼかして説明しましたけど、いじめが解決出来たのは先輩が助けてくれたからですしね」
「いいえ有り得ないわ。彼がいじめを解決できるなんて無理よ。だって、彼はいじめられていた側なのだから」
「………雪ノ下先輩は先輩がいじめられていたのを知っていたんですか?」
「もちろんよ。いじめは彼の自業自得よ」
分かっていて止めなかった?ふざけるなと思った。雪ノ下先輩は正当な理由があればいじめはあっていいといっているのだ。そんなのあっていい訳がない。それに先輩は正当な理由なんかじゃない。きっと、守るための行動だった。それを分からない奴らは先輩を寄って集っていじめて……。
「……雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩。私は、ハッキリいってあなた達が嫌いです」
「「っ!?」」
「だいたいなんですか、絶対に告白を成功させるって。そんなの相思相愛じゃない限りむりですよ。告白される相手のことを考えたんですか?もしかしたら誰とも付き合う気が無いかもしれないじゃないですか。由比ヶ浜先輩こそ、『人の気持ち考えて』ください」
「ぁ、ぅぅう」
「それに雪ノ下先輩。話を聞いていると、先輩のことを人として見ていないじゃないですか。そんな人を道具として見ているようなやり方、私からしたら『そのやり方、嫌い』です」
「そ、それは……」
二人は私の言葉に何も言い返せない。当たり前だ、これで言い返してきたら人間としてどうかと思う。
「……はぁ。本当はもっと言いたいけど、そうしたら先輩のした事を台無しにしてしまうので言いません。これからはよく『人の気持ちを考えて』そして『行動の意味』を考えてください。それでは失礼しました」
これでこの二人が先輩の行動の意味に気づいてくれればいいのけど、多分分からないと思う。私は二人に一礼してドアからでた。
「平塚先生も大変ですね。こんな問題児を抱えて」
「まぁそう言うな一色」
廊下には壁に背をかけた平塚先生がいる。さっきからずっと会話を聞いていたことはわかっていたので驚いたりはしない。
「私は言いたいことを言いました。先輩は本当に可哀想ですよ、あんな人達に囲まれていたなんて」
「私もこうなるとは思わなかった……。今更後悔しても遅いことはわかっている。それでも、私は選択を間違えたことを未だに引きずっている」
平塚先生の表情は苦虫を噛み潰したようで辛そうだ。きっと、心から先輩のことを心配し、このことを後悔しているのだろう。
「平塚先生も十分に優しいですね。……あの二人は変わると思いますか?」
「さぁな、それは二人次第だ。だが、本気で道を踏み外しそうになったら、私は全力で止めるさ」
そう言って去っていく平塚先生の背中を眺め、私も残りわずかな休み時間を謳歌するために歩き出した。
平塚先生の口調って、思ったより難しかった……。