今回はちゃんと坂柳有栖をだします。チョットイチャイチャ?ですよ
コツ、コツとチェス盤の上で駒を動かす音が鳴り響く。対戦相手はもちろん有栖だ。お互いになかなか決着がつかず、既に開始30分が経っている。ふと、有栖の顔色をうかがえばうっすらと口角を上げて笑っている。なにこれ、怖い。まるで飢えた獣が獲物を狩る時の表情だぞ。
有栖はコツっと、ビショップの駒を進めて来る。なるほど、そう来るか。これは勝つために誘導させているのかどうかが分かりにくいな。俺はポーンの駒を前へ進めて様子を見ることにする。有栖は少し手を止め考えると、ルークの駒を動かす。
「チェックメイトです」
それから20分ほど駒を進めていき、駒を動かす音だけが部屋に鳴り響く。そして、決着が着いた。今回は有栖の勝ちで幕を閉じた。
「参った。やっぱり強いな、有栖は」
「私と勝負して、勝つ確率が二分の一のあなたが言いますか?」
「まあ勝つために頑張ったからな」
本当に有栖に勝つために色々と頑張ったんだよな。ネットでチェスの必勝法を調べて試したけど無駄で、それならとチェスのあらゆる攻め手を調べまくってようやく2回に1回勝てるようになったのだ。
「そういえば八幡くん」
「なんだ?」
「この前、八幡くんに貸していただいた“ライトノベル”を読んだのですが、とても面白かったです」
「おぉ、それはよかった」
実は最近、有栖と一緒に家(俺の家)でアニメを見たのだ。その時にアニメは面白いと分かった有栖は俺にオススメのアニメを聞いたりライトノベルを借りたりするくらいにサブカルチャーをお気に召している。
「特にノーゲーム・ノーライフと言う作品は面白かったです。“『 』に敗北はない”と言う、とてもいい言葉は気に入りました」
「そのセリフカッコイイよな。俺も好きだぞ」
「私はノーゲーム・ノーライフを見てある考えが浮かびました」
「ある考え?」
「それは……」
「それは?」
スっと息をすってから間を開けてその言葉を放つ。
「私たちも、『 』のようになりましょう」
「……は?」
〜〜〜
それから一ヶ月後、今は5月の終り頃。
俺の部屋はパソコンやタブレットなどの電子機器が大量に設置されていて、2台のパソコンに向い合うように椅子には俺が座っていて、有栖は俺の膝の上に座っている。
なぜこうなった。
突然『 』を目指すと有栖が言い出し、俺はそれに付き合わされる形で参加。俺たちはunknownとニックネームをつけ、たくさんのネットゲームをありとあらゆる攻略方法を調べまくってそれを解析、そして自分達なりの攻略方法を見つけながらゲームを負け無しで勝ち続けた。
ちなみに有栖が膝の上に座っているのは、部屋に椅子が一つしかないからだ。リビングから持ってこようとしたが何故か止められてしまい「八幡くんの上に座ります」と言われた。もちろん断ったが、涙目+上目遣いで「ダメ、ですか?」と言われたら断れない。断ることなんて出来なかったんだよ……。
役割としては、有栖が出来なければ俺が、俺が出来なければ有栖がと互いを助け合うようにしている。まさに『 』と同じことをしているのだ。
今は二人で荒野で行動する銃撃サバイバルゲームをしている。名前は俺がunknown・1で、有栖がunknown・2だ。
「八幡くん、まずはロケット発射場に降りましょう」
「了解っと」
パラシュートでロケット発射場付近におりる。どうやらここは安置外のようだ。後で安置に向かえばいいのでまずは物資を集める。おっ、81式小銃あるじゃん。ラッキー、これ扱いやすいんだよな。ついでに近くにあったスモークグレネードと2×スコープを回収しておく。
「有栖、ちょっと場所離れてるけど大丈夫か?」
「問題ないですよ、今のところ敵影はありませんし。私は狙撃銃のCS LR4とM27を入手しましたが、八幡くんはどうですか?」
「俺は今のところ81式小銃だけだな。一応スモークグレネードも持ってるぞ」
「おや、まだ一つしか武器を見つけてないようですね。こちらにマシンガンが落ちていますが拾いますか?」
「いやいい、ちょうどショットガンのM860を見つけた。そっちにスコープあるか?4×スコープを余分に拾ってあるが」
「そうですね。持っていないので貰えると嬉しいです」
「なら合流するか。って、足音だ。すまん、こいつ倒してから行く」
「分かりました」
ゆっくり歩きながら足音と少しづつ距離を詰めていく。足音は俺のいる建物の周りをうろついているようだ。俺は足音が一番近づいたときに窓から飛び出て、敵がいるであろう位置を予測して銃口を向けて放つ。予測は的中して一気に敵の体力を削りきって倒した。
「よし、1キル」
倒した敵の物資を漁って弾丸と包帯、スポーツドリンクに手榴弾を手に入れた俺は有栖の元に向かう。途中に運のいいことに8×スコープを拾った。ラッキーだな。
「こちらも1キルですよ」
「お、そうみたいだな」
ちょうど有栖が敵を倒したところに合流。8×スコープを渡してCS LR4に装着させる。物資の交換も終わったので安置に向けて進み出した。
「ところで八幡くん、これはゲームに関することでは無いのですが……」
「ん、なんだ?」
「最近、週一のペースで一色さんが来ているようですね」
「そ、そうだな……」
何故だろう、有栖の声がワントーン下がって怖い。俺悪いことしたか?
「わざわざ千葉から東京まで来て、八幡くんに会いに来る。一体どうしてでしょうね?」
「さ、さぁな……」
やばいよ怖いよぉ〜、なんで有栖さん機嫌が悪いんですかね?今さっきまで楽しくゲームしてたじゃん!荒野で行動してたじゃん!内心怖がりながらも遭遇する敵を着々と倒していく。これで10キルだ。
「それに、一色さんの私物まで増えていますよね?」
「いやそれはだな、いろはが勝手に置いていったのであって俺が悪いわけじゃない。それに有栖も置いているだろ?」
「確かに置いていますけど……。?いま、一色さんのことをなんと?」
「ん?いろはって言ったけど?」
「……」
あ、あっれ〜、おっかしいぞぉ〜?有栖から負のオーラが出ているぞ?え、俺何かした?
「……一色さんのことをいつから名前呼びになったのですか?」
「さ、最近だが……」
実は二週間ほど前にいろはが突然「先輩、ゲームしましょう!負けた方は罰ゲームです!」と言い出したのだ。普通のゲームなら、俺はいろは相手には負けない。だが、やったのは俺にとっては普通ではないゲームだったのだ。なんでゲームを受けたかって?それは「しなかったらお米ちゃんに先輩に傷ものにされたって言います」と言われたから。てか、いつの間に小町と仲良くなったんだよ。あったの1回だけだろ。
それでゲームの内容だが至って簡単。ただ、見つめあって最初に目や顔を逸らした方が負けというもの。これだけならいい。しかし、実際にやってみるとやばかった。
初めの数十秒はただみつめか会うだけで、恥ずかしかったがポーカーフェイスと強い理性で逃げようとする俺の心を押しとどめていた。ここで拉致があかないと思ったのか、いろはが顔を少しづつ近づけ始めたのだ。俺は負けじと堪えていたが、あと数センチで顔と顔がくっつくと言うところで顔を逸らしてしまった。しかし、その時にいろはも顔を逸らしてしまったようで両者引き分けと言う形で幕を下ろした。
結果、引き分けなので両方罰ゲームをお互いに言うことに決まった。俺は近くのコンビニでジュースを買ってくることを命じ、いろはが名前呼びをすることを命じた。これが名前呼びになった経緯である。
これを聞いた有栖は、
「そうですかそうですか。……八幡くん、これが終わったら一色さんとしたゲームを私ともしましょう」
と意味不明なことを言う。
「まて、なぜそうなる」
「別にいいでは無いですか。もし、して頂けないのなら小町さんに八幡くんに泣かされたと言います」
「分かりましたやらしていただきます!」
くそぉ、小町を出されたら逆らえないだろが。はぁ、まぁいいや。
そんなこんなに話しているが手元は動き続け、顔はパソコンの画面を見ている。安置もだいぶ小さくなってきていて、そろそろ決着が着くだろう。人数を確認すればあと6人と表示されている。つまり敵はあと4人だ。
「八幡くん、ちょっと前の建物に向かって特攻してみてください。援護射撃で絶対に倒されはさせませんので」
「了解」
たぶん建物の中に敵がいるんだろうな。よく見たら窓の影から敵の影が見える。俺は言われた通りに特攻する。建物にあと数メートルに差し掛かると、二人の敵が窓から姿を現して攻撃してくる俺はそれをジグザグに走りなるべく当たらないようにするが、数発が着弾して体力を半分まで削られた。
だが、問題ない。もう勝敗は着いた。発砲音と共に敵の頭を撃ち抜いて一人を倒した。そして俺は仲間がやられて焦っているもう1人のいる窓に向けて手榴弾を投げ込み、爆発で倒す。残りの人数は3人、どうやらあと一人倒せば終わりのようである。
「あと一人だな」
「そうですね。どこに隠れているのでしょうか」
背中合わせにして周りを確認していく。敵が俺らを狙いやすいようにわざと外で囮だ。すると釣られたのか、弾丸が飛んでくる。何発か有栖に着弾したようだが、近づきショットガンで撃ち抜いた。
「勝ったぁ〜」
「ドン勝、これで158回目。私達に敗北はありませんよ?」
「あぁ、他のゲームでもまだ負け無しだ」
「まだ、ではありません。ずっとです」
「そうだな……」
「さて、八幡くん。先程言った通りにゲームをしましょう」
ゲームも終わりのひと段落と思いきや、有栖はまだ終わらせてくれないらしい。
「わ、分かった」
「ルールは一色さんの時と同じ、目や顔を逸らせば負けです。負けた方は勝った方の命令を聞くでどうですか?」
「別にいいぞ」
どうせ言っても変わらんだろうしな。絶対に勝たねば、有栖は何を命令するか分かったもんじゃない。だってこいつドSだし。
「では、ゲームを始めましょう」
「……」
「……」
お互い、まだ何も変化はない。有栖の顔って整ってて、よく見るといつも思っている以上に可愛いな。
目はちょっと鋭いがそれも気にならないくらいの美貌。そして柔らかそうな銀髪に小さな目や鼻、口。唇は艶やかで……って、何考えてんだ俺。そう、クールにだ、落ち着け。
「……」
「……ぁ」
有栖から小さな声が漏れる。目や顔をそらさないように集中していたが、いつの間にか顔が近くなっている。有栖は顔を赤くしていた。
「ど、どうした有栖。顔が赤いぞ?」
「そ、そう言う八幡くんこそ、顔が赤いですよ」
どうやらお互い恥ずかしようだ。早く終わられなければ。
「八幡くん、なかなか耐えますね」
「お前こそ。恥ずかしいなら負けを認めて良いんだぞ?」
「寝言は寝て言ってください。私が負けを自分から認めることなんてありません」
「そうか、なら続行だな」
自分でこうは言っているが、内心はめちゃくちゃ恥ずかしいし心臓バクバクでやばいですよはい。有栖も同じようでさっきよりも顔が赤くなっている。
数分、同じ状況が続くが、ついに有栖が動き出した。
顔を少しづつ近づけてきたのだ。お前もいろはと同じことをしてくるのかよ……。くそ、絶対に負けないぞ。恥ずかしい思いを理性で押し殺して有栖の顔が近づいてくるのを黙って見つめる。
「……っ」
「……」
あと、数センチで顔と顔がふれあいそうな距離まで近づいてきた。やばいな、このままじゃ決着がつかない。ここからは顔をもっと近づけていくチキンレースの始まりだ。
徐々に近かった顔がまた近くなり、接触まで1センチを確実に切っている。有栖の顔が目の前に大きく写り、俺の理性が警告を上げている。これ以上は危険だと。
ふと、有栖が目を閉じた。
目を閉じたということは、有栖が負けを認めたということ。しかしこの状況下では別の意味に見えてくる。まるで、キスを待っているような。
って、違うだろ俺!勘違いするな。有栖は友達であって俺のことが好きな訳では無い。もしここでキスなんかしたら確実に関係が変わってしまう。それが怖い。
でも、有栖の唇が目に入り、それに吸い寄せられるように俺の顔が意思に反対して近づいていく。
やめろ俺
やってしまったら戻れない
関係が変わってしまうがいいのか
「……ゃ」
あぁ、ダメだ。理性がもたない。
あと数ミリ、有栖の唇と触れそうになり、ついに……
ーピコンッ!
「「っ!?」」
あ、危なかった。メールの着信音がなかったら確実にキスをしていた。有栖は顔を伏せたまま何も言わない。
「あ、有栖……?」
「……あと、…こ、だったのに」
「……え?」
小声で何かを言っていたが、声が小さすぎて聞き取れなかった。もう一度声をかけようとすると、有栖は顔を上げた。まだ赤い顔している。
「は、八幡くん。この勝負は先に目を閉じてしまった私の負けです。命令はどうしますか?」
「……そうだな」
ん〜、何も思いつかん。というかさっきの衝撃が大きすぎてあんまり考えられないな。なんかないか……。
「あ、そうだ。ノーゲーム・ノーライフの白の真似してくれ」
「ち、ちょっと恥ずかしいですね。ですが分かりました」
コホン、と一息ついてから有栖は俺に向き直る。
「……にぃと白、二人で『 』。……『 』に敗北は、ないの」
この時の有栖は、恥じらいで耳まで赤くしていたちょっと涙目、そして上目遣いとめちゃくちゃ可愛かったです。
有栖って、可愛いですよね