まぁそのぶん趣味に費やせる時間が増えたので悪くはないのですが…
さて、自分語りはその辺にして本編をどうぞ。
一面の花畑の中に白いワンピースを着てる少女が佇んでいる。あれは自分?それとも他人?そんな質問に答えることなく。少女はしゃがみ込み花を摘み取る、そこで視点は少女自身の目線になる。名前は分からない特別きれいでもないその花を「私」は見つめてる、ふと花が段々と冷たくなってるのを感じた。花の命が消えていく…少女はそう思った、だがそれは間違いだった。それは自身の手を見たからだ、彼女の手は無機質な鉄だった。怖くなり周りを見渡すと花が赤く染まっていた、いや「紅く」染まっていた。そして辺りに鉄の臭いが醸し出す、積んでいた花はいつの間にか3輪になっていた、そしてその全てが紅く染め上がろうとしていた。
____その花だけは止めて!!!
そう叫んだ途端、花畑は消え少女もまた消えた。
そこでようやく、彼女は戻れた。夢という狭い檻の中から現実という広い檻へと…
S09地区戦線基地病室___
素子とカリーナはベットで眠っているM4A1をじっと見ていた。
「これがM4A1…赤い血を流す人形…本当に人形なのかしら。顔つきはどこにでもいる高校生みたいだわ」
「そうですか?人形なんてみんなこういう感じの顔ですわ」
「…何というか殺しのために生まれたとかじゃない、ある日突然拉致されていきなり殺しの訓練をさせられた新兵のような、そんなあどけない顔とでもいうのかしら」
「わっからないですわ、少なくとも戦術人形、とくにこの子は殺しのために生まれた人形ですよ?」
「…んまぁ、私の偏見みたいなもんよ。あまり気にしないで」
「…!少佐、目を覚ましますよ!」
目を覚まし、起き上がった彼女はあたりをグルグルと見回す、やがて素子を見るとはっとしたような顔になった
「貴方はあの時の」
「おはよう、M4A1。気分はどう?」
「はい、おかげさまで義体、メンタル共に正常です」
「そう、よかった」
「流石は16labのワンオフ機。回復のスピーチは段違いですね、あんだけボロボロだったのに」
「あの…私はどんな風だったんですか?」
「左足の人工筋肉繊維の断裂…右腕の人工神経と筋肉も切断及び断裂といったところですね」
「治すのは簡単だったけどお金がね、貴方のパーツは殆ど特注品だったから…」
「そうでしたか…」
「さてと、起きたばかりで悪いんだけどお仲間さんに連絡とれるかしら。ペルシカから私の基地から救出部隊を派遣することは聞いていると思うけど…」
「え、はい聞いています!」
「それじゃ、よろしく頼むわ。救出作戦のためには新しい情報が必要だから」
「分かりました!ちょっと待ってくださいね!あれ、私の通信機は何処に…?
「M4さんの装備品はこの箱に入っていますけど、電脳通信はしないんですか?」
「えぇ、多分サイレントモードにしていて電脳通信は出来ないでしょうから」
そう言ってM4はカリーナから渡された箱の中から通信機を取り出した
「あの、ここのLANをお借りしても?」
「勿論」
「それじゃ、お借りしますね」
M4はケーブルをLANに差し込み端末のランプが点灯したのを確認し、口を開いた
「AR小隊、こちらはM4A1です。誰か聞こえていますか?聞こえたら可能な限り返事をお願いします。繰り返します、こちらはM4A1です。聞こえていたら可能な限り返事をお願いします…オーバー」
通信を終えてM4は素子の方を見る
「返信があるまで時間があると思います」
「それじゃあ私は持ち場にも戻りますわね、少佐はどうされます?」
「私は暫くここに残るわ。彼女と話したこともあるし」
「分かりました…て、少佐仕事は?」
「もう午前中で終わらせたわ。そんなに無かったし」
「左様ですか…じゃ少佐、失礼します」
部屋にM4と素子だけが取り残される
「…あの、貴方は指揮官なんですよね?何で少佐と呼ばれているんですか?」
「私はもともと日本の公安でね…日本って分かる?」
「確かかつては大国だったけれど現在はホッカイドウ、という島以外人が住めなくなったとされる国ですよね」
「そう、そこの公安で働いてた時“少佐”って名乗っていてそれに慣れちゃったから“指揮官”何て呼ばれると妙にくすぐったくてね」
「お見かけしたところ少佐は全身義体ですよね?そうじゃなきゃスケアクロウの衛星を使えるわけが…」
「電脳の中身だけは生身よ…多分ね」
「…一つお聞きしたいことがあります。」
「どうしたの?」
「少佐は“夢”を見ますか?」
「夢?…懐かしい言葉ね。そんなもの昔は見た気がするけど暫くは見たことがないわ。
いや、“見ることが出来ない”と言うべきかしら。電脳化の弊害みたいなものね」
「少佐は人間なのに夢を見ることが出来ないんですか」
「そういう貴方は?まさか夢を見るとか言わないでしょうね?」
「その“まさか”なんです」
「…本当に?」
「はい、でもその夢がどうも気味が悪いんです」
「ただ夢を見るだけならまだしも悪夢ときたか。それでどんな夢なの?」
「花畑が赤く染まっていく夢なんです初めは周りの花が、そして手に持っている花にも…それだけでも不気味なんですが一番不気味なのは保持している花の数で三輪なんです」
「三輪…それってAR小隊の残りのメンバーじゃないか」
「そうなんです。人は確かこういう夢を“予知夢”と言うんですよね。そんな夢がもう何回も見るんですよ。私、この夢を見るたびに仲間のことが心配で心配で…」
「それで、その夢は今も見たのか?」
「はい…」
「そうか…お前はとことん不思議な人形だな」
「…?」
「悪夢は見るわ赤い血は流す…まるで人間みたいじゃない」
「…本当にそうですよね。私は人形のはずなのに」
「貴方は“自分が何者であるか”とか考えたことはあるの?」
「いいえ、私はいくら人間みたいでも人形ですよ。蠟の翼をつけたアポロンが鳥になれないようにいくら人間らしい要素を身につけても私は機械なんです、人形なんです。…少佐はひょっとして自身が何者であるかが気になるんですか?」
「そりゃあね、一応人間扱いはされてるけどこんな体じゃ人形達に紛れて生活するとしょっちゅうそんなことばかり考えちゃうわ」
「…仮に分かったところでそれは1mmも役に立たないと思いますよ」
「随分と達観した事を言うのね、若いのに淡白だわ…ただM4A1.これだけは言っておくわ」
「?」
「人は機械には効率さを求めてるわ。人形たちは性格こそあれ人間の期待を効率よく応えられるように設計されてるから余計な機能はついていない。それでも…貴方には“夢を見る”と言う人形にはとうてい不要な機能がついてる。どうして機械にそんな機能を取り付けたのか…その理由はきっと貴女にとって重要なものになるはず。それだけは忘れないで」
「…分かりました」
M4が頷いたその時、LANにつないでいた通信機から突如としてノイズ音が響いた
「…!M4」
「はい!AR小隊の誰かです!」
『…M4か?』
ノイズの中から、少し低い女性の声が聞こえてきた
『姉さん!M16姉さんですか!?』
『元気そうな声だな、その様子じゃ無事に救出されたか?』
『はい、今はグリフィンの戦線基地にいます。そちらの様子は?』
「目障りな鉄屑共とデートの真っ最中さ…私はまだ大丈夫だ。先にAR15とSOPを頼んだ」
『分かりました。…姉さん、お気を付けて』
『私は死なんさ。絶対にな』
そこで通信は切れた
「よかった…」
「先ずはM16が安全、と…さてお次は誰が来る…?」
次にノイズ音の中から凛とした雰囲気の女性の声が聞こえてきた
『M4?こちらはAR15』
『AR15!無事だったのね!』
『あなたの声がそんなにも明るいってことはどうやらグリフィンの基地にいるみたいね』
『そっちの状況は?』
『そうね…決していい状況とは言えないけど当面の間は大丈夫みたい』
『そうそう二人とも五体満足、弾も満足だよー!』
『SOP!?貴女も一緒だったの!?』
『そうそう、私達は無事に合流できたの!』
『分かった。姉さんはまだ合流できそうにもないから先に迎えにいくね』
『待ってる…』
そこでいきなり通信が終わった
口をぽかんと開けM4が通信機の方を見るとケーブルを外した素子の姿が目に入った
「な、何をするんですか!せっかく通信できたのに!」
「…ノイズの音が少し不可解だったからな。ノイズ音の中に独特な音が聞こえたんだ」
「まさかそれって…盗聴!?」
「もしくは逆探知か…いずれにしれも救出作戦は少し後回しだ!これから基地防衛戦にむけて体制を整える!」
「少佐…」
「そんな悲しい目で見るな、ちゃんと救出作戦は発令するから。でもこの基地がやられちゃそれどころじゃないでしょ?だからもう少しだけ、もう少しだけ我慢して」
「…了解!」
いい子ね、とだけ言うと素子は指令室へと急いだ。
その背中を見たM4は自分自身でも訳が分からず立ち上がって彼女を追いかけるのだった