まぁ身の上話もアレなんで、本編をどうぞ。
子供という生き物は無邪気で愛嬌があり素直な性格をしている…だが子供というのは狂気を孕んだ人間だ、虫を平気で踏みつぶし、爆竹をつかい
爆破させたりもぎ取る…「命を奪う」ということに関して「悪」と思い込んでいないからだ。
子どもにとって「残酷なこと」は「遊び」と同じ…SOPMODⅡと言う人形もまたそういう子供のような人形だ…
とある区域の廃墟ビル内.
鉄血が蔓延るこの区域でつかの間のセーフティーゾーンにいた時、彼女はM4からの通信を受け取り心底ホッとした。しかしこちらが話している途中にもかかわらずいきなり通信が切れ、彼女は今ほんの少しだけ腹を立てていた
「なんで途中で切っちゃうのさ!!せっかく通信できたのに!!」
「静かに、近くに鉄血がいるかもしれないのよ」
大きな声を出すSOPをAR15は窘める。彼女らの関係はまるで姉妹のようだった
「まぁ、来てくれることは間違いないんだろうけどさ。会ったら問い詰めてやらなきゃ」
「…SOP、M4は話の途中で通話を一方的に中断するような奴じゃないわ」
「と言うと…?基地の通信環境が悪かったとか?」
SOPの疑問にARは首を横に振って答える
「多少のノイズは混じっていたけど彼女の声はくっきり、はっきりと聞こえた。何か“中断せざる理由”があったに違いない」
「まさか、敵襲!?」
「いいえ、それはないわ。通信越しからは銃声や足音は聞こえなかった、つまり基地事態に問題はないということ。ということは….」
彼女は自身の銃を床に置き指を顎に当て考え出した
(途中で切断するということはこれ以上の会話をしたくない、と言う意味の現れ…つまり会話をすると何か“不都合”な事があった。…もしや、あのノイズ!)
突如として電脳裏に浮かんだそれは彼女を勢い良く立たせた
「うわっ!どうしたのAR15!?」
「…盗聴されていた」
「え?」
「M4が危ない!」
「どうしたのさAR15!」
「いい?私達の通信は鉄血らに盗聴されていた。間違いなく!」
「それって、奴らがM4のいる場所に向かってるということ!?」
「ええ、そうよ。奴らにとって重要なのはM4の抹殺。私達なんて眼中にないはず」
「じゃ、じゃあ早く教えなきゃ!」
SOPは耳についてある角のような通信機を触り起動させたが
「…!」
ガリガリと音が聞こえるだけで通信にはならなかった
「クソ!通信妨害か!」
「…だったら私が奴らの足を食い止める必要があるみたいね」
「じゃあ、じゃあ私も!!」
「ダメよ、貴方はここに残って。あなたが居なきゃM4達はここに来れないのよ」
「…でも!」
「大丈夫、私はここで死ぬつもりはないわ」
「AR15…!」
そうとだけ言い残すと彼女は銃を構え階段を下りた。一人残されたSOPは自身の銃を見た。力の象徴である銃を持ちながら何も出来ない現状、自分自身に腹を立てて行き場のない怒りを銃に叩きつけようと手を振りかざしたその時
「おい」
後方からハスキーボイスの男性の声が聞こえた…
S09地区戦線基地、戦闘準備用ロッカー____
盗聴されていたことを知り素子は武器や防具を取りに向かう途中電脳通信で基地の見張り人形に尋ねた
『WA2000!』
『少佐!今連絡入れようと思っていたところよ!』
『…それじゃあやっぱり』
『基地前方5km先に鉄血の大部隊!双眼鏡で見える限りでもVspid20体、Ripper30体いるわ!』
『…展開が早いな。一方向だけか?』
『ちょっと待って、監視塔のコンピューターで確認してみる…』
WAが調べている間、素子はロッカーに到着し防弾ジャケットを羽織った後C-25、セブロm5、衛星を取り出してそれぞれ装着する
『確認できたわ。どうやら連中この基地を完全に包囲するつもりみたい』
『チッ…今のうちに基地周辺にクレイモア地雷を撒いといて』
『了解、全員で今すぐとりかかるわ』
『撒けて余裕があるなら虎の子の電磁パルス地雷も撒け。余裕がなければ防衛ラインにて待機。金網を越えるまで撃つな』
電磁パルス地雷とはパルスにより踏んだ対象者(主に人形などの機械類)を強制的にシャットダウンさせる地雷だ。
『了解』
『あとWA!他のライフルの子達も監視塔に集めさせて!』
『了解!』
そこで通信は切れた。さてと、と小さくつぶやきロッカーを出ると目の前にM4が居た
「少佐、私も戦わせてください!」
「M4か…体の調子はどうだ?」
「先ほど少佐の後をつけていた時にスキャンしましたが問題ありません!」
「よし。じゃあ48番ロッカーを開けろ。そこにお前の装備品が入っている。暗証番号は“2029”だ!」
「分かりました!」
「準備が終わったら東門へ。そこにスコーピオンとMDR、イングラムを向かわせるから彼女らと一緒に戦って。」
「了解!」
「それじゃ、さっさと蹴散らして救出に向かうぞ!」
S09地区は侵入できる入り口は正門と西門、南門、東門、そして正門の隣にある搬入口である。基地周辺は金網で覆われており見張りの人形も監視塔で24時間監視している、更に現在では金網の外にクレイモアを内側には電磁パルスを設置されている普通なら侵入は困難だが。今回は数に物を言わせての突撃だ、金網での妨害は気休め程度にしかならないだろう
(だからこそクレイモアとパルスが重要なんだ。基地の人形だけじゃまともに相手にできない、最初のクレイモアでどこまで巻き込めるかお楽しみってわけだ)
C-25を構え素子は正門に立って出た。目の前では9A91やZas、ステンMk-Ⅱらがクレイモア地雷を撒き終わったところで9A91は彼女を見つけるとその報告をしに彼女へと近づいた
「少佐、作業終了しました!」
「よし…」
『正門は作業が終わった。他の入り口はどうだ?』
『搬入口、完了致しました。ご主人様』
『こちらトカレフ、西門終わりました!』
『TMPです…南門…完了しました…』
『M4A1です。東門、終了しました』
『よくやった、WA!鉄屑共の状況は!?』
『残り3km!このスピードじゃあと20分ぐらいにはクレイモア地雷地帯にまでつくわ!』
(20分か…微妙な時間だな…)
『分かった、WA!残り1kmになったら全員に連絡を入れろ!各員、WAからの通信があるまで電磁パルス地雷を設置しろ!通信はそのまま開いとけよ!』
通信が終わり次第、全員が武器倉庫へと向かい地雷を取りに行く、素子も例外ではない。
持ってきた地雷を設置するころには残り時間は15分をきっていた
(あと15分…!可能な限りばら撒かないとな…!)
穴を掘り、地雷を手に取り埋めていく。ひたすらその作業の繰り返しだ。1つ1つ設置し終わる度に敵との距離が縮まっていると思うと素子は人工心臓が速く動くのを感じた。汗は流れないが流れたような嫌な感触が皮膚を這う
『残り1kmになった!総員デフコン5!デフコン5!』
デフコン5…戦闘準備して構えの体制に入れ、ということだ
(電磁パルス地雷は粗方撒けた…この層状地雷で大幅に減ってくれると思うんだが…)
そう思っていると正面からザッザッザッザッ、と大量の足音が聞こえてくる。それは正面だけでなく辺り一面に響き渡り思わず銃を握りこむ。素子は今のうちに衛星を飛ばし彼女の周りに浮上させる
『全員、伏せてろ。なるべく低く、息を殺せ…敵はこちらが準備を整えてることなんて考えていない。落ち着けよ。落ち着いてじっと待つんだ…』
足音はどんどん近づいてくる、どんどん、どんどんと大きくなってくる。そしてその音が耳の中で鳴り響き脳内を埋め尽くさんとしたその時
ドン、ドン!と辺りに爆発音が聞こえてくる。鉄血らがクレイモア地雷に引っかかったのだ
爆発時に放たれた無数の鉄球が踏み込んだRipperやVspidらを貫く。
『よしっ!先ずは引っかかってくれたか!まだよ、まだ撃つな…!』
そのころ鉄血陣営では混沌と化していた。中途半端な場所にいたため完全に破壊されず鉄球により足を破壊され歩行不能になり地面に伏せる人形。仲間の屍を踏んで進む人形、仲間の屍につまずいて起き上がる暇もなく踏まれる人形…この地帯だけで約3割の戦力を失った。だがこの鉄屑共は意志を持たない、そんな混沌な状況でも勢いを殺さず直進し続ける
金網までは残り200mになった。勢いは衰えない。残り100m、素子らがいる陣営は息を殺し物音一つ建てないが殺気が確かにその場を支配していた
金網までの距離…残り0m
ついに金網に夥しい数の鉄血人形らが群がり押し込む。カシャンカシャン、と金網が鳴り歪む。MDRは今頃「リアルゾンビ映画キタコレww」などと掲示板に入力していることだろう
『全員立て!そろそろ金網が限界だぞ!』
素子の指示で全員が立ち上がり各々の銃を構える。そしていよいよ金網が倒れ鉄血人形らが押し寄せてくる。だがその瞬間、電磁パルス地雷が発動される。電撃が踏み込んだ人形の体に流れ耐えきれなかった電脳がショートを起こし頭部が爆発する。このパルスは数分間地面に残りそれを踏んだ人形は爆発まではしなくても一定時間行動不能になる
『よし撃て!撃ちまくれ!ここが最初で最後の防衛ラインだ!撃ち損じるな!』
素子らの前をマズルフラッシュの閃光が支配する、発砲音が重なり轟音が轟く。電脳通信でなければコミュニケーションは出来ないだろう。
次々と破壊されていく鉄血人形達、足を破壊され芋虫のように這って接近してくる人形も監視塔にいるWA達によって額を撃ち抜かれる
状況はこちらに圧倒的に有利だった、不意打ちによる先制攻撃、そして金網を乗り越えた先には電磁パルスによる攻撃で行動不能にさせられる。そして抜け目のない銃による攻撃。反撃の隙など与えるはずがなかった
『こちら監視塔!基地周辺の敵勢力順調に減少中!やっぱりクレイモアとパルスがいい仕事したみたい!』
『このままの勢いを保て!弾薬はいくらでもあるんだ!出し惜しみするな!』
素子はそう言い衛星を飛ばし、上空から攻撃を行う。とにかく撃つ、撃つ。耳もマヒして銃声の音が聞こえなくなるくらい。硝煙の匂いと鉄血らが流したオイルの臭いが混じり異様な臭いが漂ってきたころ、素子はもう一つの衛星をドローン替わりに敵勢力後方を見ると鉄血らの動きが止まっているのが見えた
(ん…?これはひょっとして…!?)
彼女がそう思った瞬間、鉄血部隊が基地から遠ざかっていくのが見えた
『よし!敵部隊、撤退していくぞ!!』
『こちらも確認しました!ご主人様!』
『どうやら終わったみたいですね』
『疲れました…』
『これで救出に行けますね…不思議な気分です』
『どうしたM4?もっと喜んだらいいじゃないか』
『あ、いえ。私今まで少人数で任務をこなしてきたのでこういった大人数でするのに慣れてなくて…不思議です、なんだかおなかの底から熱いものがこみあげてくるような…』
『それが勝利の味、って代物さこいつは戦うものなら誰もが味わえるものさ。人間でも…人形でもな』
それじゃあ、早速準備をしよう。そう言い残し素子は通信を切った。
太陽が沈み、夜になろうとしていた。基地の周りを闇が包み込む。骸達もまた包み込まれたが異様な臭いだけは闇には溶け込まなかった