Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。皆様お久しぶりです、ここのところ数週間、大学の課題やテストに追われ書く時間がなくこんなにも時間がかかってしまいした。ですが実生活の方もだいぶ落ち着いたのでどうにか今週からは従来のペースで投稿出来そうです。皆様よろしくお願いいたします。
それでは前置きは長くなりましたが本編をどうぞ!


Mission06.救出作戦は就寝の後で~一杯のビール~

重苦しい空気の中、素子らは基地に到着し人形たちはメンテナンス室へ、バトーは来客用の部屋へ、素子は司令室へとそれぞれ足を運んだ。彼女は部屋に入り椅子へと座り込む、目を閉じると暗い顔をしたM4,SOPの顔が思い浮かばれる。ふぅーっと息を吐くと目を開き卓上の電話の受話器を取りボタンを押す。相手は勿論ヘリアンだ、数回コールが鳴った後声が聞こえてくる

「少佐か。どうした?」

「救出作戦が終わったからその報告よ」

「分かった。聞こう」

「SOPMODⅡの救出を成功、どこも異常なし綺麗なものよ。ただ…」

「ただ?」

「SOPからAR小隊のメンバー、“AR15”が彼女と離れ単独行動をとった“という報告を受けたのよ」

「単独行動?らしくもない、どうしてアイツがそんなことを…」

「どうやら彼女は私の基地に鉄血が襲撃することを知ったらしくて時間稼ぎに出たらしいわ」

「…そうか」

「ヘリアン」

「分かっている。だが場所が…」

「場所はおおよそ判断がつく」

「なんだと?」

「解析班に基地襲撃時の人形を調べてもらった、大多数はさっきまでいた基地から来た奴なんだが…一部、とある場所から来てることが分った」

「…」

「ポイント09-319…S09地区の最果てにある元正規軍駐屯地、ここから来ている」

「そこにAR15がいると?」

「恐らくね、ここまでの帰路の最中センサーをかけたけど反応なしだった。ということは何者かに連れ去れたか…」

「…破壊されたという可能性は?」

「それはないわ」

「ペルシカ!?どうしてヘリアンと一緒に?」

「なに、ちょっと仮眠を取りにヘリアンの部屋にお邪魔しにきたんだけど興味深い話が聞こえてきたから飛び起きてね」

「それで、どういう意味なんださっきのは」

「あぁ、彼女たちはねご存知の通り機密の塊のような人形なのよ。もし破壊されて回収、解析なんてされたら大変だからコアが停止したら自爆するようにセットされているの」

「それで?」

「コアが停止した際に特殊な音波が発生される、その音波に反応して体内に仕掛けてある爆弾が爆破するようになっている…その威力はTNT爆薬20㎏分。もし爆発すれば半径10mが更地になるわ、でも衛星で見る限りその周辺はそんな風にはなっていない…」

「だから破壊されている可能性はない、と?」

「そういうこと。メカニックの話はおしまい…私はもう一度寝ることにするわ…」

「と言うことらしいわよ、ヘリアン?」

「あぁ、そうらしいな。分かった、大至急ポイント09-319に偵察班を向かわせる。」

「よろしく。それじゃあ….」

「そうだ、今回の救出作戦も少佐。君がやるんだ」

「そういうと思ってたわ」

「その言葉を待っていたんだろう?」

「まぁね、でもこんだけ頼まれるんだから少しぐらいご褒美があってもいいんじゃない?弾薬を少しまけてくれるとか」

「我儘を言うな、こっちだってカツカツでやってるんだ…それじゃあ少佐、後ほど」

「えぇ、後ほど」

電話を切りM4達に任務の事を話そうと司令室を出ようとするとドアノブが開けられる

「よぉ少佐」

入ってきたのはバトーであった。手には缶ビールを二本抱えており素子を飲みに誘ったのは明白だった

「一杯やらないか」

「アンタねぇ…今どういう状況だか分かってんの?」

「堅苦しいこと言うなよ、聞いた感じ最近働いてばっかなんだろ?」

「9課の時もそうだったわよ」

「まぁいいじゃねぇか、たまには休息とれよ。お前なら血中のアルコールを一瞬で蒸発させることもできるだろ?」

「アンタもね…しょうがないわね、それじゃ一杯だけよ」

「おっ珍しくノリがいいじゃねぇか」

「その代わり少し待ちなさい、先にすることがあるんだから」

「へーへー、待たせて頂きますよ少佐殿」

バトーの軽口を無視して素子は部屋を出る。向かう先はM4達がいるメンテナンス室だ。

扉を開けるとM4に腕の修理をしているのか両腕がないSOPがもたれている姿が目に入った。声をかけようとしたが先に気づいたのかSOPが目をこちらに向けるその目は期待にあふれていて光っていた。

「少佐、少佐!ここに来たってことは救出作戦が決まったんだね!」

「ええ、そうよ。といってもまだ出撃許可は出てないけどね」

「えー!!そうなの!?」

「その状況じゃそもそも出撃出来ないでしょ…」

「それで、AR15はどうなったんですか?」

「そうね…あくまでも予想だけど彼女、鉄血に捕縛されてる可能性が高いわ」

「捕縛…!?だったら尚更早く!!」

「場所は元正規軍駐屯地、どれだけの戦力があるのかわからないのに飛び込むなんて自殺行為よ。だから今は待つの」

「待つ…」

「私の国じゃ“果報は寝て待て”っていう言葉があってね。待って耐え忍んだ先にいいことが起こるって意味よ」

「慣用句、って代物ですか…分かりました少佐、今は待ちます。ね、SOP」

「…分った!でも待った分、戦場じゃ暴れさせてもらうから!!」

「えぇ、思う存分暴れなさい。だから今はおやすみ」

そういいながらM4達を撫でているとM4から寝息のようなものが聞こえた。彼女が寝るという話はどうやら本当のようだ。素子はロッカーからタオルケットを取出し二人にかけてあげた。扉から出ようとすると後ろから少佐、とSOPの声が聞こえた、振り返ると小さな声で「おやすみ」と言った。彼女は少し微笑みながらおやすみ、と一言言ってメンテナンス室を後にした。扉を出ると口元を緩ませニタニタ笑うバトーがいた

「なによ…」

「いや別に、お前にそんな母親らしいところがあったんだなってよ。指揮官だけじゃなく母親まで板についたか」

「…バカ」

そう言って軽くバトーをこ突く

「お、照れているのか?まぁいい…早いこと飲もうぜ明日も早いんだろ?」

部屋に戻り互いに来客用の椅子に座る、そして卓上に置かれている缶ビールを手に取る。よく冷えていて結露していて缶はビショビショだった。プルタブを開けプシュッと言う音とともにゆっくり喉に入れていく。独特の苦みが味覚センサーを刺激し染み込む。

「しかしだ…少佐、どうしてまた指揮官なんてやってるんだ」

「…あの時、第三次世界大戦が終わった後日本国は北海道を除いて事実上の崩壊、公安なんてものが存続するはずもなく9課も解散。それは貴方も知ってるでしょう?」

「あぁ…」

「その後、私は各地を転々とした。食事に関しては私には無関係だけども問題はこの体のメンテよ…金がなければゆっくり死んでいくだけ。だから私は仕事を探したのよ、だが中々見つからなくて…そんな中であったのがこのグリフィンの求人広告よ。高給取りだし全身義体化であるこの私にピッタリだと思ったからね。入社試験さえ突破してしまえばそこからは早かったわ…そういう貴方は?」

「俺はまともな仕事なんて出来るわけねぇと思ったから、傭兵なんかやっていたぜ…まぁ少佐の知っての通り俺は元レンジャーだからこういった仕事には向いていた。だが傭兵仕事は危険な割には報酬なんざ雀の涙程度だった。だから俺は同じ危険でも報酬が段違いな賞金稼ぎの道を選んだ…」

「あそこにいたのは仕事の関係で?」

「そりゃそうだ」

「仕事の内容を教えてもらっても?」

「…まぁいいか終わったしな」

バトーはそう言うと残りのビールを飲み切って缶をテーブルに置いた。

「あの時、俺はあの地区にいる鉄血の戦力を図ってこいという以来があったんだ」

「何それ?賞金稼ぎというから誰かを殺すとかそう言う依頼かと思ったんだけど」

「まぁ殺しに関係ない依頼もたまに来るのさ。そう言った仕事はまぁまぁ稼げるから人気で早いタイミングで誰かが契約するわけなんだが。何せ鉄血の基地に忍び込むっていう依頼なんだ。誰も怖がって来やしない、だから俺がやったってわけさ」

「…なるほどね」

「まぁ俺としちゃあんなところ調べて攻めた所で鉄血関係はお前らグリフィンがやっているんだろ?だから意味ねぇと思うんだが、まぁ金さえもらえればそれでいいさ」

「ねぇバトー」

「どうした」

「9課の他のメンバー。課長やトグサ、イシカワ、パズ、サイトー、ボーマとかはどうしているのかしら」

「さぁな…親父はもう年で逝ってるかもしれないが他のメンバーはどうだか…トグサなんて妻子持ちだしこの先辛れぇだろうな…」

「そうね…それでも私、この先また彼らに会える気がするのよ」

「そうお前のゴーストが囁くのか?」

「そう…9課のメンバーが簡単にくたばる訳がない、そう思っているの」

「お前本当に変わったな、昔のお前はもっとこう…冷めていたきがするんだが」

「こんだけ世界が変われば、私だって変わるわよ」

「そんなもんか」

「さて、そろそろお開きにしましょ。私も明日早いし」

「…なぁ少佐」

「?」

「いや、何でもない…寝るのはあの部屋でいいか?」

「えぇ、そうして頂戴」

それじゃ、と一言良いバトーは部屋から出て行った。一人残された素子は血中のアルコールを蒸発させるとソファで横になり眠りに就くのであった。

 


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