投稿する暇がありませんでした。どうにかひと段落してつかの間の休息(明日まで)を得たのでどうにか仕上げました
それでは長話もアレなんで、本編をどうぞ。
作戦時間、残り25分
素子らと別れたバトーは単身敵基地正面ゲートへと赴くため、山道を下っていた。
「ビール三杯で敵基地に正面から侵入して工作活動を行う」そう豪語したはいいがそう言った自分のことをバトーは若干恨めしかった。『京レの隠れ蓑』…つまり光学迷彩を使うのは確かに有効ではあるが足音や足跡を消せるわけではない、鉄血人形は腐っても精密機器の塊である、そのような類の音や痕跡が発覚したら隠れ蓑など意味をなさなくなる。基地周辺には10体の人形が周回している、バトーでも分が悪いのは当然だがこの作戦は敵に発見されては元も子もないのだ。
(俺の体は少佐に比べると重いから神経を研ぎ澄まして歩かねぇとな…幸いなことに枯れ枝みたいな物がないみたいだが正面ゲートにたどり着いてどうするか、だ)
バトーは自らの眼で正面ゲートを確認する、鋼鉄製のそれは駐屯地ということもありその高さは容易に2mを超えていた。
(飛び越えることは不可能じゃないがその場合着地音でバレちまう。となればよじ登ってなるべく静かに着地…いやよじ登るためにはゲートにいる二体の人形の間に入らなくちゃならねぇ、リスキーすぎるぞこれは…少佐!)
正面ゲート以外にも進入口がないか見回すがコンクリートの壁しかなくどう足掻いても着地音無しに侵入することは不可能を意味していた。困り果てたバトーは素子に連絡を入れることにする
作戦時間残り20分
『こちらバトー、少佐、正面ゲートから侵入するのは無理だ。どう手段を使おうが着地した時の音でバレちまう。』
『誰がゲートを飛び越えろと命令した、それより今はゲートからどれぐらい離れているんだ?』
『約120mって所だが…』
『よし、あと3分以内にゲートに到着しろ。そうすれば開いてくれる』
『どういう事だ少佐?』
『説明は後回しだ。とにかくゲートまで向かえ!』
『…了解』
バトーは通信を切り慎重に走っていく。この辺り一面に枯れ枝や鳴子のようなアナログのトラップがないことは先ほどの偵察で判明した。あとは全神経を足に集中させて走るだけだ。
(しかしゲートが勝手に開くってはどういう事だ。少佐がハッキングでもしてくれるのか…?まさか、あのゲートは手動のみだぞ…だからあの2体の人形が開けなくてはいけないということだ…いや待てよ。つまり“開けなくてはいけない状況”、それが出来れば…)
そんなことを考えているとゲート手前に到着した。息を殺し伏せていると左側聴覚センサーがエンジン音が聞こえてきた。一般車両のような軽い音ではない、腹の底が震えるようなビリビリする重い音だ。山道をこんな音を立てながら進んでいくのは限られている
(輸送車両…トラックか?)
だがバトーは疑問を感じた、あの基地の中には輸送用の列車が存在しているのだ。そんなものが存在しているのにもかかわらずわざわざトラックを利用することが可笑しいのだ
だが、こんな場所を通りかかろうとするトラックがここと、鉄血と無関係であるとは思えない。バトーはこのトラックに賭けるしかなかった。時計を見ると素子と連絡を取ってから3分が経とうとしていた。
(もしや…)
そう考えているうちに眩い光が横から差し込んでくる。やはりあのエンジン音の正体はトラックであった、トラックは正面ゲート前で止まり人形達がそこに近づいてくる。しばらくしてから人形達はゲートを開いた。またと無い好機である、バトーは小走りをしてゲートを潜り抜ける。途中、人形の横を通ったがどうにかバレることなく元正規軍駐屯地への侵入をバトーは果たしたのである。入った途端、バトーは安堵の息を吐くのをグッとこらえ目標地点である輸送列車の線路へと向かう
作戦時間残り15分
ここの場所の地図は予めダウンロードをしておいたので迷うことなく辿り着ける。だが正面ゲートからは遠く、歩けば10分はかかる。そこで走るしかないのだがやはり神経を尖らせて走るしかないのだ。
(一難去ってまた一難とはこのことか?いや前門の虎後門の狼と言うべきか…)
基地内は多くの鉄血人形が巡回している、最悪バレても“眼”でどうにかなるのだが…
(これを使うときは最悪の事態なんだから出来るだけ使わないようにしてぇな…)
何とか線路にたどり着いたには作戦時間は残り10分を切っていた。バトーは急いで線路に置く石を探し始めた。だがここには車両を脱輪、横転させるようなサイズの石が存在していない。どうしたものかとプラットホームに上がり何か使えるものがないか左右に首を振り探し出す。と、そこで彼は赤く細長い箱型のような物体が見えた。
(こいつは…炭酸飲料の自販機か、洋モノのハイスクールドラマに出てきそうな代物だな)
なぜこのような物体が新造されたプラットホームに設置されたかは疑問に残る。だが、これはまたしても現れた好機であった。自販機の横幅は線路に挟まるような大きさであり厚さはそこまでは無い。倒して線路に置けば間違いなく気づくことなく接触し脱輪、横転するだろう。そうと決まればバトーの行動は早かった、300㎏はある自販機を軽々しく持ち上げプラットホーム数百メートルの位置まで持っていく。そっと地面に置き、倒したら準備は完了だ。腕時計を見ると作戦時間残り5分となっていた
(よし、早いことずらかるぞ…上手いこと行ってくれよ?)
プラットホームから離れて比較的安全が確保できる場所でバトーは素子に連絡を取る
『少佐、工作活動完了した。後…2分で列車が来る』
『了解、こちらもスタンバイ中…上手く出来そう?』
『あぁ、何とかな。お、来たぞ』
バトーは通信をつないだまま双眼鏡で列車を捉える。
『さぁ来い来い、いい子だからそのまますっ転べ…』
列車は順調に自販機を設置した箇所に速度を落とさず突っ込んでいった。
突っ込んでからは大惨事であった、最前列の車輌が前につんのめったかと思うとそのまま地面にくっつき紅葉おろしのように火花を散らしながら滑っていく、後続の車両はそれぞれ左側、右側へと蛇が地面を這うような形で倒れていく。
『少佐』
『あぁ、ここからも聞こえた。これから攻撃に移る。バトーは巻き込まれないよう現状の位置を待機しなさい。その座標だけは狙わないようにしてあげるから』
『へーへーご親切にどーも』
伏せていると突然背後から爆発音が響いた
(何だ?列車が爆発でもしたのか?)
バトーは一瞬そう思ったが現実は違っていた、双眼鏡で見えた列車はスクラップ当然になってるとは言え爆発したような炎や煙が上がっていなかったのだ
(…ということは基地の方からか?しかしグリフィンはロケットランチャーとかミサイルランチャーのような爆発性の武器を扱う人形はいないはずだ…)
こちらにとっては好機なことには間違いないのだがどうも引っかかる。
『少佐、今の爆発は!?』
『…分からない』
『何!?』
『こちらの攻撃により生じた爆発ではない、ということだ』
『それじゃ誰が…?』
『…もう一人の工作兵』
『そんなもの、いるわけが…いや待て。ありえない話だが一人だけ存在している』
『AR15…!捕虜である彼女が引き起こした…そう考えるべきなのだろう』
素子は双眼鏡を使い、爆発が起きた箇所を見ようとしたとき驚くものが目に入った。
それは敵である鉄血人形同士が同士討ちをしている光景だ、彼女が廃村で行った状況と酷似していたのだ。だが当然ながら彼女はそのようなことは行っていない
『AR15、これもお前がやったと言うのか…』
立ち昇る黒煙は開戦の狼煙のようであった。