自分語りもアレなんで、本編をどうぞ
過去においては開戦の合図は狼煙であったり法螺貝であったりする、時代は進みそのようなアナクロな手段はとられなくなったがこの近未来においても開戦の合図は行う。素子のもつ端末から電子音が響いたのがその合図である
『少佐、特殊部隊が到着し行動を開始したようだぜ。俺たちは引き続き索敵活動を行うってことでいいか?しかし暇だな。こいつは….煙草を吸ってもいいか?』
『ダメに決まってるだろ、私はこれから衛星とリンクして索敵を行う。その間…やく5分間通信ができないから一応理解しておいてくれ』
『了解….だが衛星ってのはあのスケアクロウとかいう奴からぶんどったのを使うのか?』
『いや、うちで飛ばしてる衛星があるんだ。そいつを使う』
グリフィンでは宇宙から鉄血を確認するために衛星を飛ばしている。その正確な数は上層部しか認識していないが性能は優れており鉄血兵の数はもちろんその種類まで把握できる。しかしこの衛星を使用するには通常であれば基地内にあるコンピューターからアクセスする必要がある。指揮官クラスの権限を持つ人間の電脳からアクセスすることもできるが情報量が多いため並大抵の電脳では焼き切れる可能性が高い
(私なら出来ないことはないが…無線でやる以上時間もかかる。だからあまりしたくはないのだがどうもこの辺りがきな臭いからな)
『第一部隊へ、これより私は衛星へリンクして索敵を行う。その間のG36とイングラムはバックアップおよそ5分間頼む。その他のメンバーは先行していてくれ、その間の索敵はグリズリーに一任する』
『了解いたしました。ご主人様』
『了解…』
『第二部隊はどうするんだ?』
『第二部隊は索敵しながら先行していてくれ、私のリンクが終わったら敵の所在地をマーカーしたマップを全員に共有する』
『了解』
(さてと…)
指示の後、動いた人形達を見送り素子は衛星のリンクを開始する。まずはグリフィンのコンピューターを経由して衛星にアクセスするための権利を手に入れ彼女の意識が空へと登っていき幽体離脱のような感覚になる。視点がどんどん上へと昇りいよいよ素子の視覚端子が衛星のカメラとリンクして彼女はこの地球を見ていた。拡大してS09地区を見渡し索敵を開始する。鉄血がいるならばそこが赤くマーカーされる仕組みなのだが…数秒もせずともして結果が出た。
…恐ろしいことにマップ全体におびただしい数の赤がマークされていた
(…!この場所はS09地区でもそこまで鉄血が出現しない地帯のはず…しかしこの数70以上はいるか…?こんな数、近くに拠点があるとしか思えん…)
…臨時で拠点が出来たのか?
衛星の映像は最大数か月にわたり記録されている、素子は素早くこの地点のマップを一番古い時間から流してみるがその時にはこの地点にこんな数の鉄血兵たちはいなかった。作戦開始前から数週間前…9日前…7日前…と見るがまだ変化はない、3日前になりようやくマップの画面が今のような赤いマーカーが至る所散りばめられている画像になった
(やはりこの地点は鉄血の臨時拠点と化したのか…タイミングが悪いなんてもんじゃない、まるで機密部隊がここに来ることを知ったうえでの行動のようじゃないか)
そう考えると先程第一部隊が倒した部隊はパトロール中隊なんかではなく護衛部隊である我々が来たことを仲間に知らせるための囮部隊だったのではないかという思考に素子は至る
(囮部隊の鉄血兵の信号がロストした瞬間、拠点にいる大勢の仲間が護衛部隊及び機密部隊の攻撃にかかる….こういう算段で来るか。随分と頭を使うようになったじゃないか…何処で私たちの作戦の情報をつかんだのかは謎だが…これは予想以上の激戦になりそうだぞ)
素子は衛星とのリンクを解除しカリーナに機密部隊の進行ルートの半分地点に補給物資や武装を投下するように依頼しマップの情報を部隊全員に共有した
『おい、こいつは….俺たちは知らねぇ間に敵さんのど真ん中に入ちまったってことかよ』
『少佐、大多数の敵部隊が第二部隊に接近中です!数はおよそ30と言ったところでしょうか。とても私たちだけでは相手にすることが出来ません!』
『トカレフ、隊列やそっちと敵の距離は分かるか!?』
『横に広がってます!距離はおおよそ5kmです!』
『少佐、敵の拠点にある通信施設を破壊すればいいんじゃないの!?』
『ダメだ、スコーピオン。今からじゃ到底間に合わん。要は一度に30機を相手にしようとするからダメなんだ。第二部隊だけで15体+1人いるんだ。15機の部隊が2波でやってくるように分断させればいい』
『それはどうやって….』
『方法はある…これはスコーピオン、お前の力が必要だ』
『私!?』
『そうだ、お前は焼夷手榴弾を持っていたな。いいかここから500mほどオイルを直線引いてからその直線の先端から横にまたオリルを引いてTの字にした後、縦横のオイルが交わる点に焼夷手榴弾でトラップを作れ。幸いにもここは草が多い。草を有効活用しろ』
『敵が罠に引っかかれば焼夷手榴弾の炎がオイルに伝っていき炎の壁が出来る…これで分断させるって作戦?』
『そうだ』
『確かに鉄血レベルのAIならば炎によるダメージを避けるから炎に突っ込んで合流を図るという選択は取らねぇ、だがオイルってのは….ん?あ….!成程なぁ…』
『そういうこと、貴方が吸おうと思ってた煙草のライターを使うわ。分断さえすれば
左翼の分隊を8体の人員が、右翼の分隊を同じく8体の人員を相手にするんだ』
『8対15っても辛くないか?』
『そっちにはZasやSOPといった榴弾が使える』
『…確かにそうだ、榴弾が上手に当たればかなりの数の鉄血兵をスクラップに出来る。』
『鉄血のクソ共は散開して動くってことをしないからね!かなり有効だと思うよ!』
『だから、両翼それぞれに彼女らを設置して初動で榴弾を撃ち、数を減らす、後に残りの人員が残敵を処理する流れでいけ』
『…かなり無謀な作戦だな』
『それは分かっている、だが現状機密部隊を守りつつ我々も生きて帰るにはこれしか選択肢がない』
『了解、そっちも来てるかもしれねぇんだから気をつけろよ』
『分かっている。無事を祈るぞ』
通信を切り、素子はG36とイングラムに声をかける
「よし、先行した奴らと合流するぞ」
「ご主人様、収音センサーに若干の反応があります。一度先行部隊をこちらに合流させるのがよろしいかと」
「G36さんは視覚端子の性能が低いかわりに聴覚端子の性能はいいですからね…確か」
「3km先の針が落ちた音が聞こえる性能である、ということは言っておきましょう。ただ足音というよりは草木が揺れる音でしたから確実に鉄血兵が来たとは言えませんが…」
「…風とか野生動物の可能性もあるってことかぁ」
「いや、カリーナから要請した補給物資がそろそろ来る頃だ。そいつを回収したいからここを動く必要があるんだ」
「補給、ですか?お言葉ですがまだその必要はないかと…」
「弾薬もダミー人形もまだ問題ないですよ」
「いや、補給物資に用があるんだ。あの中にはこっちの状況を打破するための切り札がある」
そう言い終わると端末から電子音が聞こえた、機密部隊が2km進んだことを知らせるサインだ
「もう2km進んだのか、まだ15分ぐらいしか立っていないぞ…」
「早く終わらせてくれるならこちらとしてもありがたいんですけどね」
「そうだな、仕事が早い奴は何処だって重宝されるものだ。さて、それじゃあ行くぞ」
そう言って足を進めると電脳通信が入った
『…グリズリーか、どうした』
『少佐!早くこっちに来て!こっちに敵が来た!』
『何!?すぐ向かう!数は!?』
『軽く20機はいるよ!連中、さっきと違って私たちが確認したらすぐに撃ってきた!こっちの居場所がバレてるみたいだよ!!』
通信からは焦ったグリズリーの声が聞こえる、9対20では流石に厳しい。素子は通信の回線は繋いだままにしとけ、と命令しながら彼女らと共に全速力でグリズリー達の元へと向かうのであった。