Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です、大学も始まり忙しくなってきた恵美押勝です。どうも最近暑い日と寒い日が交互に続いて嫌になります。何かといろいろ”新”がつくこの季節にこんな天候じゃストレスで体がおかしくなりそうです。そんな時、自分の小説がストレスの改善に役立ってもらえれば幸いです。
こっ恥ずかしい話もアレなんで、本編をどうぞ


Mission09.闇夜に踊る影~数~

戦場というのは独特の空気が流れていると言う、殺気だけでなく「自分がこの瞬間にも命を奪われるかもしれない」という危機感や負のオーラといった類の物が戦場を支配しているのだ。線上にいる兵士はまるで一秒が一時間もかかるような、時が止まったような感覚に襲われる

…と言ってもこれは人間だけが襲われる感覚だ、戦場において人間ではなく機械人形が支配するようになったのはこのような感覚に襲われて戦局が膠着するのを防ぎ戦争を円滑に進めるため、と言う意見もある。大多数の人間はその意見を一瞥したしバトーもそうした。だが彼はその意見を認めざるを得ない状況下にいる。彼の周りにいる第二部隊はそのような雰囲気を醸している人物が一人もおらずMDRなんかは携帯を弄っている始末だ。

「…お前らなぁ、生きるかに死ぬかの瀬戸際にいるんだ。もう少し緊張感を持ったらどうだ、特にスコーピオン。お前にこの部隊のすべてがかかってるんだぞ」

そう言ったバトーの視線の先には妙に浮かれ気味のスコーピオンがいた

「いやー、まさか私の武器が切り札になるだなんて思いもしなかったからさ、そんなこと今までなかったから妙に嬉しくって」

「浮かれるのはテメェの勝手だが自分のやるべきことを忘れてないだろうな?」

「うん、バトーさんのライターオイルで導火線を作りながら焼夷手榴弾でトラップを作って帰還する。以上」

「それだけ分かっていれば上等だ、それじゃよろしく頼むぞ」

バトーは持っていたライターをスコーピオンに渡し立ち去るのを見送った。

 

スコーピオンはしばらく走るとバトーからもらったライターを逆さまにして護身用ナイフの先をライターの底に向かって思いっ切り突き付け穴を開けた

(あとは、これを向きを戻してオイルをばら撒けば…)

逆さまにするとオイルがたれ流れてきて地面の草を油漬けにしていく、彼女はそうなっているのを確認しながら駆け出し目標であるTの字状にオイルをばら撒くことに成功した。

(よし、次は焼夷手榴弾でトラップを作ってっと…)

スコーピオンはポケットからワイヤーと包帯を取り出した

(戦術人形なのに包帯を持っているのは負傷してオイルが漏れ出た際、オイル漏れを防ぐために標準装備されている)

(まずはその辺の木に包帯で手榴弾を固定する…よし、出来た。その後に安全ピンにワイヤーを繋いで反対側の木にワイヤーを巻きつける…)

これでワイヤートラップが完成した。後は敵がここに引っかかってくれるのを待つのみである。スコーピオンは息を殺すように慎重になりながらも素早くバトー達の元へと合流した

戻ってくる最中にバトーから電脳通信が入ってきた

『スコーピオン、こっちは既に部隊の分隊作業を終えた。そっちは?』

『こっちはもう終わった、今そっちに向かっているところだよ』

『よし、お前は左翼に就け。ダミー人形もそこに分隊させた』

『了解!』

数分もしないうちにスコーピオンはバトー達の元へと戻った。見渡すと左翼にはZas、MDRが居た。

(ということはバトーさんは右翼に就いたのか…)

『…トカレフ、敵との距離はどうだ』

『2kmですね』

『トラップまでの距離は後1.5kmか…短いようで長いこと待機してなきゃいけないようだな…』

『暇だな~ネットやっていい?』

『お前この状況で首を縦に振ると思うか?』

『バトーさんだってこの状況下で煙草吸おうとしていたじゃない、似たようなもんじゃん。』

『…お二人さん、作戦行動中ですよ。私語は慎みなさい』

『…わーったよZas』

『…了解』

そしてしばしの間、沈黙が場を支配する。聞こえるのは銃を構える時に発生する音ぐらいだこの時ばかりはここが“戦場”になった。そうバトーは思った。悠久とも思える時間が経った、時間にしてほんの10分といったところでしかないのにそう全員が思えてしまうほどだった。SOPは内部時計を何回も確認するぐらいだった。そんな中、遠くからザッザッザッと音が聞えてくる

『…バトーさん、間違いない。来ました』

『…何Mといったところだ?』

『あと、700mです…』

『もう少し…あと200Mそのまま前進しててくれよ…』

息を殺し、バトーは伏せている自分の腹と地面が溶け合うような感覚になるまで存在感を殺し続けた。そしてついにピン、と何かが張った音がかすかに聞こえた。次の瞬間、低い音が響き腹をくすぐる。すると辺りは一面赤い光に包まれた

『よし!トラップが発動した!』

スコーピオンは電脳内で嬉しい悲鳴を上げた。だがまだ彼女らが姿を現すわけにはいかない。分断された相手が確実に彼女らの方へ進むまでは…

トカレフが炎の先を見えていた、直線の炎は目論見通り壁を作っていた。そしてその炎の勢いは当初の予想をはるかに超えていた。トラップに嵌められた鉄血兵が焼夷手榴弾の破片で損傷し見事に足を破壊されていた、その切断面から染み出たオイルがこの炎の壁の形成に一役を買っていたのだ。これは嬉しい誤算であった。トカレフは炎の熱でセンサーが焼き付かないように注意しながら鉄血兵たちを見ていた。確実に分断はされている、そのことだけは現段階ではっきりとしていた。そして一人の鉄血兵が炎の壁を一瞬だけ見たがすぐに視線を元に戻した

(これで敵はこの炎を潜り抜けての合流は不可能と判断したはずです…あとはそのまま前進してくれれば…)

そうトカレフが思考した瞬間、分断されていた鉄血兵たちが彼女らに近づいていくことを彼女は目撃した。

(残り450…400…350…300…250…200!)

『今です!』

『全員発砲開始!SOP!Zas!ありったけの榴弾をぶち込んでやれ!』

『了解!』

『了解!この瞬間を待っていたんだ!!』

開幕と共に榴弾が放たれるポン、という軽い音が森林に響き渡りその直後爆風が辺り一面を襲った。一度のタイミングで両翼共に3発の榴弾がぶち込まれ着弾点にいた鉄血兵たちはたちまちその四肢を地べたへとぶちまけた

『榴弾を撃ち終えたら、2人は後ろに下がれ!残りの奴らが残敵の処理にかかる!トカレフ、残敵の数はどうだ!?』

硝煙越しにトカレフの視覚端子が残敵の位置を捉える、バラバラになった腕などもセンサーに反応してしまうのでセンサーや実際に見える光景を頼りに報告を行う

『左翼…6体、その内小破なのは一体だけです!右翼も同じく6体!こちら小破は2体です!』

『遠慮はいらねぇ数の暴力で押し切れ!どの道これしか策はないんだからな!』

『言われなくとも!』

ARやSMGの人形達が残敵に向かって弾薬を撃ち続ける、銃声に交じってSOPの嬉しそうな叫びも聞えてくる。鉄血兵たちは先程の榴弾で全員が漏れなくダメージを追っていた、その状況から立て直す暇もなく銃弾の雨嵐を喰らうことになったのだ成す術もなく蹂躙されていった、そうであるのだから鉄血兵たちが全滅するのにそう時間はかからなかった…

周囲に敵影なしとトカレフから報告を受け取ったバトーはすぐさま素子へと連絡をする

『少佐、こちらの戦闘は終了した。こちらの負傷は0だ、引き続き警戒に当たりつつ作戦に戻る。…そっちはどうだ?』

『こちらは今戦闘中だ、今相手にしていられるほどの余裕がない』

『了解、気をつけろよ』

 

バトーらが戦闘を行うほんの少し前、先行した部隊から敵襲に逢っていることを報告された素子らはその先行部隊と合流を果たし戦闘を開始していた

『今合流した、グリズリー、手短でいい敵の数は?』

『今の所は15か14ってところ!弾薬の消費も激しい!』

『全員、近くにいる奴とバディを組み、各自補給ポイントへ前進しろ!殿は私が務める!』

『少佐が!?無茶です!』

『心配するなM4!私にとってはこういう状況の方がやりやすいんだ!それより補給物資に箱がある、そいつを開封してくれ!それだけでいい!』

『箱…?一体何があるっていうんですか?』

『武器だ、私の!』

『ならば一度に少佐も行かなければ!』

『武器は勝手にくるんだ』

『勝手に…?』

『いいから早く!』

『了解、少佐!ご武運を!』

M4を筆頭に第一舞台の人形が次々と補給ポイントへと急ぐ、人形達は途中爆発音と電脳内に一瞬ノイズが入るのを体感した。素子が手榴弾とEMPグレネードを投擲したのだろう。

人形達が全速力で走った甲斐があり補給ポイントまでは7分弱で到着できた。急いで投下されたコンテナを開き各々が補給や応急処置を行う中、M4は素子に頼まれた例の“箱”を探していた、そしてそれは銃弾ボックスがひしめく補給コンテナの底にまるで隠れるかのように存在していた。細長い箱を開けると中には同じく細長いケースのようなものがあった

(細長いケースに保管されている…これは銃?ならば勝手に来るというのは一体…?)

M4はそんなことを考えながらケースの留め具を外して開ける。その中には細長い筒のような物体が入っていた

(これは…鉄血のスカウトみたいね…これが新武器…この衛星が新武器っていうこと?)

素子はこの任務の前にも何回か衛星を利用していた、だがこれはそれとは全く異なる形状であった。そしてM4が手に取るべきか迷った瞬間、衛星は勢い良くケースから浮遊して箱から飛び出し素子がいる方へと飛んで行った、まるで磁力に引かれる磁石を思い出させる超スピードで。

 

…彼女がいかに全身義体化の最高傑作であろうとやはり数の暴力には勝てない、戦場においては数がモノを言うのだ。先程のバトーのように…彼女の左腕は銃弾が貫通しており右肩も負傷していた。残った右腕で敵を狙うが肩の負傷でうまく定まらない。だが彼女は絶望などしていなかった、それどころか勝利の確信を得ていた。

そんな彼女の心境など露知れず、鉄血兵たちは彼女に近づいていく。そして銃口が彼女を覗いたとき。一筋の空気を裂く音が鉄血兵の一人を吹き飛ばした。そして、間もなく“何か”が一人の鉄血兵の胸を“貫いた”

「来たか、新兵器」

 

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