Ghost in the Doll   作:恵美押勝

33 / 57
ど~も恵美押勝です、最近暇になりすぎてHuluに登録して『あぶない刑事』ばかり見ています。その影響が小説にも表れているようないないような....
長話もアレなんで、本編をどうぞ


Mission10.ショウタイム~再会、姉よ~

幕…否、板が落ちた衝撃で舞った土煙が消えて現れたのは下敷きになりうつろな目でこちらを見ているイントゥルーダーであった

「…引っ張ってくれませんか。どうも私の下半身は未練がましいようで、あなたには分からないでしょうが別れるようで別れない関係ってのは気持ちの悪いものなんですよ」

人口血液だらけの手を素子に差し伸べ、はっきりとした声で彼女に頼んだ。彼女はその手を取って引っ張ってあげる、プツリと糸が切れたような音がしてイントゥルーダーの上半身だけが彼女らの元に来た

「上半身だけで生きていられるものなんですか?」

「いや、如何にハイエンドと言えどこんな状態で長く稼働できるわけがない。」

「音響反射板…いかに兵器と言えど大きさと重量でゴリ押しされたら勝てませんわ。」

「お前が私と話している間に部隊の内の人形がホールの天井裏に行ってワイヤーをカットしたって寸法だ。…しかしヒントはあげたのにな。演劇だけじゃなく日本古典にも親しんでおけ」

「…歌舞伎、能でしたっけ?」

「いや、今のは『枕草子』の一節で…いやそんなことはどうでもいい。」

「知恵比べでは私の負け、ですか…」

「演技力でもな、お前は役者にはなれんよ」

「これは手厳しい…やはり貴方も殺したかった」

「“も”?」

「本当は貴方より相方さんの方を殺したかった、だってアイツは私のアイデンティを愚弄したから…偽物のアイデンティティでも」

「偽物?」

「私の製造経歴を見れば分かりますよ…」

「偽物のアイデンティティに誇りをもったらお終いだな」

「あら、貴方だってそういったものはあるのでは?自分が気が付いていないだけで。本当に人間であるという証拠もなく、自分の記憶は本当に自分が記録してきたものなのか。いえ貴方でなくても誰だって自分を殺して偽物のアイデンティティを持って生きている。マリオネットは私だけではない…!」」

「…お前の言う通りだよ、私だって“本物のアイデンティティ”なるものは存在しない。この世の中に存在しているモノが“本物”を持っているのはそういない」

「そう…でしょうね」

「だがな、偽物のアイデンティティなんざに誇りはもたん。誰だって自分を殺してそんな自分を恨んで生きている。殺したくなるほどな。お前のは誇りなんかじゃない、ただの開き直りだ」

「…ただの開き直りでも私にとってそれが私自身が助かる方法だったんです」

「…少佐、お話し中すいません。一つそいつに聞きたいことがあるので」

「構わんよM4,M16のことだろ」

「えぇ、…イントゥルーダー、M16姉さんを何処へやった?」

「…知るもんですか」

「役者の時間は終わったのよ、イントゥルーダー」

「知るわけがありませんわ。私はマリオネット、命じられた通りに動くだけの人形…」

「ならその命令を教えなさい」

「そうベラベラ喋っちゃつまらないでしょう、謎は少し残るぐらいがいいエンディングに…いえこれは鉄血の為じゃない、私個人の嫌がらせのようなものですね」

「…っ!」

苛立ちを隠せなくてM4は自身の銃をイントゥルーダーの額に押し付ける。彼女は無駄だと分かっているが奴のすべてを見下したかのような笑いがどうしても癪に触ったのだ

「…無駄だと分かっているのでしょう、さぁそろそろ出て行ってくれませんか。最期ぐらいは自分一人でいたい。糸のない人形がようやく自由になれたんです。気を利かせてくれてもバチは当たらないと思いますよ」

その言葉を最後にイントゥルーダーは沈黙した。閉ざされた瞳が再び開くことはない

「行きましょうご主人様、任務は終わりました」

「お前も感傷になるタイプか、まぁ分からないでもない…私も色んなハイエンドは見てきたが鬱気味の奴は初めてだ…頭の出来が他のと一つ違うというべきか」

(だが自死を選ぶことはなかった、何故だ?それは自身に絶望して開き直ることにあるがこれまでの奴は情報漏洩を防ぐために自死を選ぶのが多かった。上半身だけになったとき何故そうしなかった…?何故だ?それほどまでの忠誠心が無かったとみるべきか、確かに奴事態そこまで鉄血に思い入れがある様子はなかった。自分のことを操り人形というぐらいだからな)

と思案していると電脳通信が入る

『少佐、こっちは片付いた。目立った損傷はない。そっちは?』

『バトーか、イントゥルーダーを排除。ダミー人形が一体やられたぐらいで後は大丈夫、任務達成だ』

『そっちに合流した方がいいか?』

『いや、少しやり残したことがあってな…現場で待機していくれ』

『了解』

通信を終えた所で素子は第一小隊の面々に顔を向けた

『なぁ、これ持って帰らないか?』

『これって…イントゥルーダーをですか?しかし奴は死んだはず』

『持ち帰ってどうするんですか?』

『研究の対象になるとは思うけど…』

『それもあるが貴重な情報源だ、今までの奴は自死するか完全破壊されてデータの回収も出来ないケースが多かったが今回は脳みそは綺麗だ。こんなレアケース滅多にないぞ』

『しかしどうやって、電脳はサスティナブルに保存出来る環境でなければ…今この状況でもこいつの脳は腐りかけているんですよ』

『案ずるなAR15、いい考えがある。グリズリー、お前ダミー人形に対して特別な意識を抱いたことがあるか?』

『単なる自分の分身で物言わない人形だよ?それこそコイツの言った操り人形に過ぎない。でもダミーで何をするの?』

『ちょっとな。お前はバラバラにダミー人形からバッテリーを持って来てくれ』

そういって素子はナイフを使ってイントゥルーダーの首筋にある差込口のふたを外しポケットからプラグの様なものを取り出しそれを差し込んだ

『少佐、これは』

『電脳錠だ、こいつの中にダイブする時間も度胸もないからな…』

と言いながらそれを外した

『これでこいつは自分の意志では何もできなくなった』

『少佐、バッテリー持ってきたよ』

ほい、と渡されたバッテリーを受け取り内蔵されているコードを引っ張り出してそれをイントゥルーダーの首筋にあるコネクタに挿入した。途端にAEDのショックを受けた人間のようにボディが痙攣する

『電脳を覆う殻には中身を保存するための技術が備わっている、電気さえ通っていればある程度は電脳の保存が出来る。勿論永遠ではないがこれを持って帰って基地に帰還するだけならこれで十分だ。…誰かヘリを呼んでくれ、ヘリにはカリーナを乗せるように頼んだ』

『少佐!M16姉さんは!』

『分かっている、まずはこいつを基地へ運んでもらうだけだ』

『残業続きね…』

そういってグリズリーは地面へ座り込んだ

『そう腐るなグリズリー、寧ろここからが本番だ。…バトー』

『少佐、残業は終わったのか?』

『一つはね、でもまだやることが一つある。M16の捜索を行わなくてはいけない』

『よし、もうひと仕事か…』

『これが終わったら帰れるぞ…取り敢えず第二小隊は小劇場内のホールに集合してくれ。地図は今から共有する』

『…受け取った、それじゃあ今から行くぜ』

通信を切り、自分自身が抱きかかえている上半身だけのイントゥルーダーを見る。安らかな死に顔というよりは何処か怒りや悔しさを感じる苦痛さを感じさせる顔であった

「…誰がヘリを呼んだ?」

「私です、ご主人様」

「あと何分で着く?」

「そうですね…この距離ならば20分といったところでしょうか」

「それじゃちょっと休憩するか…精神的に疲れた。こんな疲れは案山子にダイブした後に本社に自分の体を調査された時以来だな…」

「温かいコーヒーが欲しい…インスタントの甘いの…」

グリズリーは自身の銃を見ながらポツリと呟いた

「いいですね、私も欲しいです。砂糖は2袋入れたいですね」

イングラムがナイフをハンカチでふきながら答えた

「それでは帰りましたら私が皆様のためにお淹れましょう、ご主人様は?」

「私も欲しい、普段はブラックだが今日ぐらいは甘くていいかもな」

ホールの中には先ほどまでの殺し合いの空気はどこ吹く風とまったりと落ち着いた雰囲気を醸し出していた。だがM4はその空気になじまず一人立っていてグルグルとその場で回り時折立ち止まってはタンタンと地面に靴が当たる音が聞こえた

「落ち着きなさいM4,ヘリが来るまでは何とも出来ないんだから」

「そうは言うけどAR15、この間にも姉さんがどうなっているのか気が気でなくて…」

「アイツはそう簡単にくたばる奴じゃないってことは貴方が一番知っているでしょ、もうすぐ会えるんだからもっとこうドシっと構えていなさい」

「ドシっとって言われても…」

「じゃあ銃の点検でもしなさい、何かに集中していれば自然と落ち着いてくるから」

「…貴方は偉いわねAR15、なんだか私よりも隊長みたい」

「そう思うなら犬みたいに動き回るのをやめて座りなさい、貫禄ってのは“構え”が大事なのよ“構え”が。」

そうAR15に諭されてM4は回るのをやめて座ろうとした時

────人の妹を犬呼ばわりとは随分とひどいなぁ

「誰だ!?」

「ホールの入り口から聞こえました!」

突如として現れた声の主に向けて第一小隊の面々は銃を構える。…2人を除いて

「噓でしょ…」

「…まさかそっちから来るとはね」

「「M16(姉さん)!!」」

三つ編みに右目には眼帯、声の主はM4が素子らが探していた戦術人形、M16その人であった。

「よっ、久しぶり。元気そうじゃないかお前たち」

そう言ってM16は妹に近づき彼女の前に立つと背負っていたケース(彼女と同じような長さ)を地面に置き顔をあげた

「ただい…」

ただいま、心配をかけた妹に謝る意味を込めてそう言おうとしたのだろう、だがその言葉は妹の平手打ちによって口を閉ざされる

「…馬鹿、どれほど心配したと思っているんですか。そりゃあ姉さんは簡単には死なないって思っていましたし信じています、それでも…!心配だったんですよ!あんな夢も見てしまったし…!それほど心配をかけたのに“ただいま”ってどういうことですか!」

ひとしきり言うとM4は姉の胸に倒れこみ泣き始める。胸で優しく抱き留めるとM16は妹の頭にそっと手をやり優しく撫でる。パラパラパラとヘリが近づいてくる音が聞こえた

M16は妹を抱き留める力を強くする

「…ごめんな、M4」

ヘリの音はさっきと比べると大きくなっていたが彼女の声はしっかりと妹に聞こえ彼女はそれに答えるように顔を胸に沈める

──────ただいま、M4

──────お帰りなさい、姉さん

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。