Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。ゼミの志望理由書とか中間課題に向けて準備していたらもう11月になってしまいました。もう1年たつのが早すぎる(去年も言ってるし来年も言うんだろうなぁ)
おじさんになってしまった私の話もアレなんで、本編をどうぞ


Mission11.ウィークエンド~アマチュアたちの午後~

(さて、まずはここから早く表に出てジャミング装置を破壊して基地に連絡を取らないとな…)

気絶した敵を駐車場の隅っこに引きずり念のために敵が持っている通信機を自分のポケットに入れる。

(…タイムリミットはかなりの猶予があるがその間に奴らが来ないとは限らない。来られないように少し細工をしておくか)

エレベーターを見るとまだこの階にいることが確認出来る

素子はポケットから襲撃時に使えるかもしれないとしまい込んでおいた簡易修復キットを取り出して封を開け2種類のパテを取り出し、それらを混ぜ合わせるように練る。これは人工皮膚と同じ素材で出来ておいて粘着力が凄まじくそう簡単に剝がれない。程よく練り混ざった所でエレベーターの扉を開けて側面にパテをくっつける。やがてエレベーターの扉が閉じパテが潰される。これでこの階の扉は開かない、同じような細工を非常階段の扉にも仕込んでおき素子は駐車場を後にした

表に出ると入店前と雰囲気は変わらず客が普通に退店しており警察などは来ていなかった

(あんだけ銃声がしたはずなのにビルの外には聞こえていなかったのか…)

だが、ビルの反対側を見ると長い列が出来ていた、先端を見るとどうやら公衆電話の行列であった

(ジャミング装置の範囲がこんなに広いとは…表の車にあるはずだ探そう)

素子は視覚端子を電波探索の状態に移行しビルを背にして周囲を見渡す、だが電波の強さを示す濃い色が見えないどころか何も見えない真っ暗の状況である。

(そんなに遠くからは来ていないはずだ、ひょっとしてビルの背面に止めているのか…?)

そう思いビルの裏側に回ろうと体を90度横に向いた瞬間、目の端に一瞬だが濃い色が見えた気がした。「気がした」とは言えこの状況でそのような光景が一瞬だけでも認知出来たということは

(間違いない、車はビルの方にある!)

確信を持ちビルの入り口を見ると先ほど一瞬見えたものがくっきりと見えた。しかし車があるなら駐車場を出て周囲を見渡した時に嫌でも目に入ったはずだ。それなのに何故気付かなかったのか、まさかと思い素子は視覚端子を通常状態に移行させた。すると先ほど見えていた場所には何も見えず、ただビルの入り口があるだけである。ひょっとしてと思い足元に落ちていた小石を握りつぶし粉末状にし、入口目掛け投げると粉の一部が空中に留まった

(奴ら車を光学迷彩で隠したのか。…大型のジャミング装置を積みつつ大人数を載せるんだ、かなり大きい車かもしれん)

粉がかかったところを中心に触っていき形状の把握を行う、やがて触っていくと何か窪みのような感触がした。その窪みから線を引くように触っていくとやがてもう一つの窪みらしい触感があった

(…この窪みはドアだな、となれば奴らトラックで来たのか)

素子は窪みに手を入れて思いっきり引っ張る、だがロックがかかっており中々開かない。

それでも諦めずに力を入れて引っ張るとやがてバキッと音がしてドアが勢いよく開かれた。

目の前には地面から浮いた大型の機械が見える、途端に爆音のノイズが電脳内でリフレインする。間違いなくこれがジャミング装置であろう。すかさず義肢の仕込み銃を展開、ほぼ最大出力で発射すると当たった瞬間に装置がバラバラになり破片が荷台の床を突き抜けて地面へと突き刺さった。

(よし、かなり荒っぽいが装置は破壊出来た。…ノイズは消えた、これなら通信可能だな)

急いで基地内にいるスプリングフィールドに電脳通信を行う

『あらお疲れ様です少佐、道具屋でコーヒーミルは買えましたか?』

『それどころじゃない、その道具屋が占拠された』

『…っ!?少佐、ご無事ですか!?』

『私は無事だ、だが義体とかのメンテパーツが売っているフロアにいる客が人質に取られている』

『…そこの階だけなんですか?』

『…不思議なことにそこの階だけだ、客が普通に帰っている』

『…不思議ですが今はそれを考えている場合じゃありませんね』

『あぁ、早速出撃準備をしてくれ。今回はヘリじゃなく車でビルの後ろに来てくれ。編成は春さんとWA、M4、M16とG36で頼む。それとバトーもよろしく』

『了解』

『アイツには「205で行く」と伝えておいてくれ。それで作戦内容を説明してくれるはずだ』

『了解、直ちに出撃します』

そこで通信が終わり、素子は直ちに駐車場へと戻った。

(あの車には確か、アレがあったはずだ)

トランクを見るとそこには確かに探していたのがあった

(はしご、これが必要なんだ。これをあのビルと隣のビルの間にかけて屋上から侵入する。長さは…2m、大丈夫あのビルの間は狭かった)

脚立を持ったまま今度はあのビルとは隣のビルに入る。途端にビルの中にいる人間からの視線が突き刺さる。いきなり脚立を持った人物が現れれば誰だって驚く、どうやらここは会社ビルのようであり彼女の目の前には受付があった。ずかずかと受付へと向かうと恐る恐る受付嬢が素子に質問する

「…こ、今日はどのようなご用件でしょうか」

「いや、クライアントではない。グリフィンって分かるか?」

「…グリフィン、あぁあの人形を扱っている」

「そうだ、私はそこで指揮官をやっているのだが…」

そう言うと素子は懐から手帳を取り出し見せた

「ここの屋上を使わせてもらいたい」

「…申し訳ありません、私の一存ではどうにも」

「緊急事態だ、何かあったときの責任は私が取る」

手帳のメモをちぎり電話番号を記入し受付の台に叩きつけるとビルを後にした。

さぁ次は別のビルにお邪魔しなくては。彼女は急いでパッカーブリッジの前にあるビルに向かって走った

(パッカーブリッジ・ビル内)

ノインは暇を持て余していた。要求先である店長は暫く来ないしマスターキーが出来るのは数時間先であるからだ。とはいえ、彼の内心は狂喜していた

(やはりこの時代はコイツに限る。持たざる者、運命から逃れる途中の人間が生きていくのには暴力しかないのさ…それに奴らは運命から逃げきっているんだ。少しぐらい甘えてもバチは当たらないだろ。これで俺は運命から逃げられる…)

「なぁノイン、さっきあの女が言っていたこと本当じゃないよな?」

「小遣い稼ぎのためにって話しか?おいおいそんなのを信じているのか?俺らは同じ哀れな機械人形を人間に戻し、機械の奴隷と化した人間を救うために活動をする“フランシーヌ”だぜ。そして俺はそのリーダーだぜ?」

「…そりゃあそうだよな。俺らはあんたの思想についてきたんだ。小遣い稼ぎだなんてそんな邪な考えでやっているのなら」

ツヴァイはノインに銃を向けた

「貴様、俺を疑うのか?」

「…冗談だよ」

(ツヴァイ…こいつこそ“救済”したいと本当に思っているのか?)

ツヴァイは活動で人形を破壊するときじわじわとなぶり殺すように壊していく。殺人の衝動を人形で代用しているのではないかと思ったことが何度もあった

(いや、ツヴァイだけじゃない皆が疑わしいもんだ。こんな時代に他人を救いたいだなんてお人好しがいるわけがないだろ。俺だって)

そう考えると頭がジンジンと痛みだした。すかさずポケットから瓶を取り出し中身を手に取る

「持病かい?」

「あぁ、ちょっと前からな。一日に何回か飲まないといけないんだ」

「辛いねぇ」

「あぁ薬代だって馬鹿にならないんだ」

痛む頭が脈を打つのを感じながらノインは己の運命を呪った

 

その頃、戦線基地のメンバーはすでに準備を終えてバトーが運転する車両でパッカーブリッジまで向かっていた

「なぁ、バトー。出発する前に言っていた205ってのはなんだ?」

「M16姉さんの疑問ももっともです。だって私達いきなり招集されて作戦について細かい話はほとんど聞かされていないんですから。」

「205で行くって言っていたけど何よそれ?」

「ご主人様がお出かけの際にテロリスト集団に拉致され、脱出に成功したというのは聞きましたが…」

「あぁ、悪い。つい公安時代のクセがな。205ってのは【テロ鎮圧】って意味だ。これには作戦の趣旨だけでなくどのようにして鎮圧するかその作戦の内容までがこの番号に詰まっているんだ」

「テロ鎮圧、確かにそれなら私と春さんが選ばれるわけね」

「いくつかのビルでスナイパーが待機して、可能ならばテロリストを排除する。であればアサルトライフルの皆さんが出撃するのは何故なのでしょうか?」

「テロリストの人数が多いってのもあるが、戦闘のプロでもない限り突入されたらパニックになるもんだ。それが唐突なら尚更な」

「でも中には人質が居るんだぞ?」

「M16の考えているのは相手がプロの場合だ。ど素人は“人質さえいればイニシアチブはこちらの物” “ドンパチ繰り広げることはない”と思い込んでいるがその思いこみをぶち壊して強襲してやれば」

「…自分の命欲しさに応戦するしかない。もしくはビビッて戦意を喪失する、か」

「俺的には後者であってほしいが、ともかくアイツはこのテロリストが素人だと思ったからこの編成にしたんだろうさ」

「じゃあスナイパーは敵の排除というよりは挟撃と思い込ませて相手を怖がらせるという風に考えた方がいいのかしら」

「…久しぶりの仕事がビビらせ担当なんてなんか納得がいかないけれど」

「いや、万一にも犯人が逃走した場合にはお前さんたちの力は必要なんだから気は抜かないでくれよ」

そんなことを話していると現場に到着する。車を降りてあたりを見ると素子は既に現場にて待機していた

「よぉ少佐、待たせたな」

「みんな来てくれたか。では作戦を説明する。各員、私の電脳にアクセスしろ」

素子の電脳内ではこの街の地図が映されていた。

「作戦はシンプルだ、まず私とバトー率いるAR部隊が隣のビルからこのビルの屋上へ渡り非常階段を使い10階まで下がる。その時スナイパー組はここ、ビルの向かい側にあるビル内にて待機。合図と同時に10階の窓に向けて発砲、それと同時にAR部隊が突入、制圧する」

「質問」

「はいM16」

「今回ダミー人形はどうするの?今車内に待機させているけど」

「今回の作戦は人数が多すぎてもダメだ。今の人数が丁度いい。他に質問は?」

「ご主人様、テロリストの数は?」

「5人だが、一人はすでに無力化、もう一人は不在だから今は3人しかいない」

「成程、数は俺たちの方が上回っているわけだ」

「他に質問は?・・・では作戦を開始する。スナイパー組は先ほど提示した場所へと移動した後連絡をするように!」

普段と変わらない街は着実に戦場にとなろうとしていた。現実はじわじわくる。街はそれに気づかない人間ばかりだ。無論、痛む頭をマスターキーが手に入った明るい未来を想像することで現実を誤魔化している人間がこの現実など見れるはずもなく・・・

 

 

 

 

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