Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。早いもんでもうクリスマス。それが終われば年末であっという間に新年が来る。時の流れの速さってのは恐ろしいですわ。
そんなわけで少し遅めのクリスマスプレゼント(まだギリギリ間に合うよね?)
それでは本編をどうぞ!


Mission11.ウィークエンド~瞬き禁止~

屋上に向かうため素子らはパッカーブリッジの隣にあるビルに入る、再び素子を目にした受付嬢が彼女に声をかける

「さっきの方!社長があなたにこれを渡すようにと…」

「これは鍵か」

「はい、屋上につづく扉は普段閉鎖されているのでこちらをお使いください」

鍵を受け取った素子はすぐさまエレベーター近くにあった非常階段の扉を開けて屋上へ向かって駆け上った

『そう言えば目標のビルまでどう行くつもりなんだ?俺たちはジャンプで余裕だがこいつらは…』

『おいおいバトー、私たちを舐めてもらっちゃ困るぜ。なぁM4』

『お前ら軍用人形はそれでいいが民用上がりのG36はそうはいかないだろ、だから脚立を屋上にかけて渡る。オートバランサーは民用でも性能は十分だからな』

そうこう話しているうちに最上階まで到着した、受付で貰った鍵を使い扉を開けると室外機しかない殺風景な光景が広がる。

『私が先に飛んで脚立を支えておく、バトーは反対側を支えておいてくれ』

『了解、こいつらを渡らせたあと脚立をもってそっちへ飛べばいいんだな?』

『そういうこと、それじゃあ行くわよ』

素子はドアを出た瞬間、脚立をもって走り軽々とパッカーブリッジの屋上まで飛んだ

通常の義体だとそこまでの飛距離は出ないが公安で活躍できるような性能の義体だからこそ出来る芸当である

脚立をビルとビルの間にかけ両端をバトーと素子が支える

『いいぞ・・・G36、心配するなグリフィンに所属するにあたってお前のオートバランサーは軍用のソレと同レベルにアップグレードされている。安心して渡れ』

『分かりました、ご主人様。お気遣い感謝します』

『よし、M16から渡れ。盾かなんか分からないが重そうな荷物を持ってるから慎重に渡れよ』

『分かってるって少佐、これはもう私の半身みたいなもんだからそこまで心配する必要はないよ』

(しかしM16が持っているソレはなんだ?盾にしては細長すぎるし銃口の様なものは見えないから武器とも見えない・・・しかし使えないものを戦場に持ってくるような思考のAIならばここまで生き残ってこれなかっただろう)

そんなことを考えているとM16が渡り終えていた

『少佐、渡ったぜ。次は誰が行く?』

『…あぁ、M4、G36、バトーの順番で渡ってくれ』

『『『了解』』』

(仮にアレが武器だとしたら何故、一度も使われた様子がないんだ?単純に考えれば一度も使う必要性がなかった…主武装でクリア出来たから。だがこうも考えられないか?“使いたくても使えなかったから”。そう弾数が極端に少ないとか威力がありすぎるとか…

もしそういう武器なら…?)

そんなことを考えると全員が脚立を渡りパッカーブリッジの屋上に集合していた

『…少佐、全員渡り終えたぞ』

『了解』

『どうしたんだ少佐、ボーっとして』

『いやすまない、何でもないんだ』

『少佐、こちらWA2000。目標地点に到着待機に入るわ』

『銃口は10階の窓に向けています、命令さえしてくれればいつでも撃てますよ』

『あぁ、了解した。それとスナイパー組はあくまでも視線の誘導のためにある。犯人の居場所が確実にわからない以上、人に向けて発砲しないように。万一にも窓から逃げ出した時は遠慮なく撃て』

そう答えて彼女は電脳通信を全員に向けて発信した

『各員、今回の作戦は通常とは異なり人間を相手にする。そこで人に発砲出来るようにプロテクトを解除しておく。パスコードを入力してくれ。パスコードは…』

素子の指示通りに全員が電脳内にあるプロテクトを解除するための場所へアクセスし何桁ものパスワードを入力する、これで戦術人形でも人間に向けて発砲出来るようになった

『よし、突入準備…G36、聴覚端子を最大出力にしてくれ』

『了解…最大出力に移行しました』

そう言うとG36は腰を落とし地面に耳をくっつけた

『…ご主人様、お願いします』

素子は地面をコツンと爪先で蹴った、これは音の反響で人がいないか探知を行っているのだ。聴覚端子がハイエンドモデルかそれ以上の性能を持つG36だからこそ出来る芸当でありこれにより屋上から1,2階下までは探知が可能である

『…ご主人様、どうやたら探知範囲内には人はいないようです。ビルに入るなら今かと』

『…分かった』

屋上から10階までは4階分下がる必要がある。12階まで下がり、12階でもう一度G36による探知を行うのがベストであろう。素子はG36にこの事を伝えた

『まずは12階まで降りる、各員装備に問題はないか?』

メンバーがそれぞれ問題ないことを告げ、いよいよ彼女らはパッカーブリッジの中へと入っていった

 

発砲準備を終えたスナイパー組は素子からの命令を今か今かと待っていた。完璧にセッティングを終えたスプリングフィールドはブラインドが降ろされたパッカーブリッジ10階を見ながら相方に電脳通信で声をかける

「ねぇわーちゃん、なんか嬉しそうじゃない?」

「急に何よ春さん、作戦中に…」

「だってわーちゃんからそう言う雰囲気をコード越しに感じるんですもの」

今、彼女らはうなじに接続されたケーブルで繋がっている。これはWA2000の視覚端子がサーモグラフィを使用できるためブラインド越しでもテロリストを認識出来る事を利用し彼女の視覚情報をスプリングフィールドとラグなしで共有するためである

「私の銃って、人質事件受けて創設された対テロ組織のために作られた銃だそうよ。でも採用には至らなかった…そんな私の銃が人質を取ったテロリストに向けて撃とうとしている。そう思うと少しね」

「なるほど…ちなみにその人質事件、結果はどうなったんですか?」

「死んだわ。全員ね。でも私は違う…」

(少佐も悪趣味ですわね、こんな時にわーちゃんを呼ぶだなんて)

スプリングフィールドは質問したことを若干後悔し口を紡ぎ目を見開くことに徹底した。彼女の目に映る赤みがかった人影がせせら笑っているように感じた

 

『…12階まで降りた、ここまで異常はないな。G36、頼んだ』

『了解…準備が整いました。ご主人様、どうぞ』

再び素子が爪先で床を突き音を反射させG36がその音で2階下までの状況を探る

『…少なくとも非常口の扉付近には誰も居ません。一部反射が凄いポイントがあります…』

『恐らくそれが店内だろう。そこに注目してもう一度やってみてくれ』

『承知いたしました。しかしこれは私のコンデンサに蓄えている電気を著しく消費するのでこれが最後です。それを超えると戦闘に支障が出る恐れがあります』

『了解した』

『…準備完了、ご主人様』

コン、と音がし再び静寂が場を支配する

『周波数を限定的にして探知したところ3人が立っていることが分かりました。恐らくテロリストかと』

『つまりあれから人数は増減していないんだな』

『それじゃあ楽勝だな、少佐が連絡してスナイパー組が撃った後、突入すればいいんだからな』

『そうだ、突入すると同時に煙幕を張る。バトー』

『持っているぜ』

『…よし、各員10階まで降りるぞ』

 

とうとう彼女らは10階まで降りることに成功した。

『…スナイパー組、準備はいいか?』

『はい、いつでも』

『いつでもいいわよ』

『今回の作戦はあくまでも犯人の無力化だ、殺しはなしだぞ』

素子はバトーの方を見て目線で合図を送る。すかさずM16が非常口の扉を少し開けその隙間からスモークグレネードを放り投げる

『よし、撃て』

煙幕が張られた同時にドア越しにガラスが割れる音が聞こえる。

『各員突入!』

ドアを蹴破り全員の視覚端子がサーモグラフィ状態に移行する。彼女らの目には突然視界が真っ白になり辺りを立ったままキョロキョロ見渡している3人組が目に入った

それからの勝負は一瞬だった。素子やバトーらが正確にテロリストらの手首を撃ち抜き銃を落とさせ、AR部隊が肩を狙い起き上がれないようにする。圧倒的であった、数はこちらが多いのもそうだが人間と戦術人形どちらが強いか、否いくらテロリストでも所詮は軍事訓練も何も受けていない人間が戦闘のために作られた機械や戦闘のプロに勝てる道理などあるはずもなかった。ツヴァイだけが戦闘への興奮が体を動かしたのかナイフを持って無謀にも素子らに突撃したが顔面へのパンチであえなく撃沈。あとの二人も手と肩を撃ち抜かれた痛みに耐えかねて寝転がっている

突入してから僅か10秒の出来事であった、あっけなさすぎる終わりだった。

素子が店内に入りノインに近づく

彼女に気づいたノインは怒りをあらわにして声を荒げる

「…お、お前は…!そうか…!」」

「そういうこと、マスターキーが手に入らなくて残念だったわね」

「…ふ、ふざけるな…俺は…死ぬのか…?」

「アンタはくたばらない、少なくともここでは。聞きたいことがある」

「…なにも言わねぇよ、このクソ女が…!」

「…そう、なら丁重にもてなしてあげる。M4、先に裏へ行っておいてくれ」

M4がロープを持ってノインを縛る、同時に出血した場所を包帯で締め上げ応急処置を施す

板さに顔を歪めたノインは素子と顔を合わせることなくM4に運ばれていった。他の2人も同じように処置された頃合いに通信が入る

『少佐、いまビルの入り口にある車に人が入って動かそうとしている』

『…!?馬鹿な、連中は裏にいるはずだし店長を誘拐しに行った奴が戻ってくるのにはまだ時間がかかるはずだぞ…分った。とにかく車を破壊しろ』

『…了解』

割れた窓ガラスの向こうから再び銃声が聞こえる、僅かながらシューという音が聞こえるのでタイヤを撃ち抜いたのだろう

『バトー』

『あいよ』

『…車の中にいる人間と確保したら先に帰っててくれ、人質を解放した後に警察と消防署に連絡して事情を説明してから帰る。流石にほっといて帰るわけにもいかないからな』

『了解』

幸いなことに人質の中に怪我人はいなかった、だが本来ならば警察が関与すべき問題にPMCが関与したという事実が事態を混乱させ犯人の引き渡しにもめたが最終的にはグリフィンがテロリストの傷が回復するまでの間犯人を預かるという形で決着がついたころにはもう夜中になろうとしていた。

 

 

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