Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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Mission14.リーダーとして~命綱~

M4は素子に指示された場所で待機していたがそこから10分ほど待ったが何も連絡がこない。こちらから通信しようとしてもノイズしか聞こえず繋がらない

「少佐とは連絡はまだ繋がらないのか?」

「姉さん、どうも通信妨害をされているみたいです」

「それってジャミング装置が近くにあるってこと?SOP、あなたには見えているの?」

SOPには特殊なヘッドセットや視覚端子を装備しており通信電波を可視化することが出来る。

「…う~ん、電波がやたらと重なって見える場所があるけどあそこに装置があるのかは分からないや、ただ鉄血兵が居るのは間違いないみたい」

「距離は?」

とAR15が尋ねる

「だいたい3kmって所かな、あそこまで行けば敵の拠点があるかもしれない。あの重なり具合からして大勢いることは間違いないしやたら分散しているんだよ、飛び散ってるように見えるの。多分あそこに建物があるんじゃないかな?」

「SOP、熱源探知に切り替えられるか?」

「無理、あれで索敵できる範囲は狭いの」

「でも、これで合流したあとの動きは分かりましたね」

後は少佐の指示のもとで敵拠点及びジャミング装置の制圧に当たる、なんてことはないいつものミッションだ。そう思っていると頭上から音が聞えた、これはジェットエンジンの音かと思ったがそれにしては音が軽い、何か空を切り裂くような紙を破くような音が頭上から聞こえる。

「M4、見えるか?空から6つの飛翔体がいる、恐らくあれが少佐の言った試作兵器じゃないか?」

「であれば、ここに着地する可能性があります」

AR小隊が待機しているのは木々がなく柔らかい草が生い茂る場所だ、着地には適した場所だろう。

「この地点から少し離れましょう、着地に巻き込まれるかもしれません」

M4の指示でAR小隊は100mほど離れてそこで姿勢を低くして待機する。やがて10秒ほどすると飛翔体の姿がはっきりと見えるようになったかと思うとそのまま垂直に地面へと落下を始めた。これでは着地ではなく墜落だ、そうM4が息を飲み込んだのも束の間、飛翔体は落下傘を広げゆっくりと地面に着地した。

「これが援軍ねぇ、開けてびっくり玉手箱というわけか」

「何ですかそれ」

「ニホンに伝わる物語さ…これ、私たちが開けなきゃいけないんだろうか」

「まさか、自力で開けられなきゃ兵器として欠陥じゃないの」

AR15がそう言うと落下物にあるパネルラインが観音開きし排気音と共に人影がヌッと出てきた

「お待たせいたしました。AR小隊の皆様」

「援軍とうちゃ~く!」

「G36さんにスコーピオンさん、それに他の人形達も…」

「これで私たちも動けるな…いや待て、少佐はどうした」

「本当だ!少佐が居ないじゃん!それじゃあこの電波状況の中どう指令を受け取ればいいの!?」

「M16様、ご主人様はこの兵器…アルテミスに搭乗することが出来ず、現在拠点にて防衛活動をされています」

「でも私たちは一応少佐からこの作戦の目標については聞いているんだよね」

スコーピオンが銃を見ながら言った

「それはどういう目標だ」

「ジャミング装置の無効化、及び敵通信施設の破壊でございます。」

「…なるほど」

「でも指揮官である少佐が不在の今、我々はどのように行動すれば…」

「…それは貴方の仕事、M4A1さん」

M4が声がした方を向くと青白い髪色をした人形が居た、彼女の目は真っ赤だった、まるで結膜炎の患者のようなその目にM4は見覚えがなかった。M4に限らずすべての戦術人形は基本的にグリフィンの人形は把握している、であれば全く見覚えのないこの存在はイレギュラーだ。味方なのには違いないだろうがこれから行動する中で全くの情報なしの味方と行動するのはコミュニケーションに支障をきたすかもしれない。彼女の言葉よりも彼女自身の情報が知りたい、そうM4は考え口を開く

「貴方は…」

「私はThunderと言います、ハンドガンを使う人形です…貴方のことは貴方の指揮官から聞いています。優秀な戦術人形だそうで」

「ありがとうございます。Thunderさん、それで先ほどの言葉の意味は」

「言葉通りの意味です。貴方がこの部隊のリーダー…いえ指揮官となって任務を成功させる、それだけの意味です。」

「…少佐は私がこの作戦の指揮を取れと、そう少佐自身がはっきり言ったんですね」

戦術人形が人形の指揮を執るなど異例だ、指揮というのは人間にとっての命綱だ、指揮が執れるということは人形と人間のつながりを意味し人形を監視していることも意味する。人形は人間の指示がなければ動けない、この主従関係が存在することで人間は機械だらけの戦場において存在意義を満たすことが出来る。少佐はその命綱を、存在意義を自らの意思で切ったのだ。それは考えられないことでありクレイジーであることはM4からしても明白だった。それだけに意思はハッキリとさせなくてはいけない

「えぇ、貴方の指揮官はハッキリとそう言いました。クルーガーさんの許可も受諾済みです。これはグリフィンが公式に認めた作戦です。これで問題はなくなったと思いますが」

命綱を切ったのは本当らしい、しかし不可抗力とは言え人形に指揮を執らせるのであれば

何故私のなのか、その理由が指揮モジュールを搭載しているからということは理解しているのだが何故私にその機能が備わったのか、私よりもM16姉さんの方が相応しいのではないか。…いきなり全てを任せられたことで電脳に負荷がかかったようだ、それで後半は今考えるべきではないことを考えてしまったようだ。自分は難しく悲観的に物事を受け止める“クセ”がある。難しく考えることはない、指揮というのは目標を達成するために導くことで目標というのは細かいタスクの集合体だ。単純化して考えることが今の私の特効薬だろう

(この機能を信頼して少佐は私に指揮を任せたんだ、ならばそれに応えなくては)

「分かりました、ではこれより援軍を含めたAR小隊は私の指揮の下、行動を行います。それでは簡単にですが作戦会議を行いたいと思います。実は私たちの方で敵の拠点の位置を予測しました。それではみなさん、電脳にて説明しますので共有回線の方を…」

M4は先ほどSOPが見た景色を元に作戦を説明した。作戦としては通信が集中している箇所の裏に回るように進軍し、その場所に拠点があるならば破壊活動を実行、いなければ一体鹵獲して電脳を解析し通信指令を受け取っている場所の逆探知を行いその場所へ進軍という形である

『以上が、今作戦の概要となります。みなさん、何か質問は?』

一人が手を挙げた、トグサの部隊から派遣されたPPKだ

『一つ質問よろしいかしら、鉄血の拠点に乗り込むというのには10体とあまりに人数が少ないのではなくて?いえ、今更人数について苦言しても何も変わらないでしょう、しかしグリフィンの拠点を襲撃するための拠点ともなればハイエンドモデルが存在しているかもしれません、通常の敵であればどうにかこの人数でも対処可能でしょうがハイエンドモデルと対峙した場合はどうお考えですか?』

『今回の我々の目標はあくまで敵通信施設及びジャミング装置の破壊でありハイエンドモデルの破壊ではありません。対峙した場合でも目標の達成を最優先とします、そして達成次第、即敵拠点から離脱します』

『あくまで任務が最優先と?』

『そうです、そして仮にハイエンドモデルが存在するのならば我々がそれを少佐に…人間の皆さんに伝えなくてはいけません。生きて帰ることもこの任務の達成条件です』

『なるほど、貴方の考えは分かりましたわ。いいでしょう。どうもありがとう』

他に質問のある方は、とM4は聞いたが誰も手を挙げなかった。

電脳空間から現実世界へ帰還し各人形が銃を構えなおす、作戦開始の時間だ。

「皆さん準備完了しましたか?それではAR小隊、敵拠点へ向けて進軍を開始します!」

3km…戦術人形ならば走れば15分といったところだ。戦術人形は息を切らすことも疲労を感じることもない、常に最高のパフォーマンスで走ることが出来る

周囲の警戒をしながら走っていると電脳通信にコールが入った、M16からだ

『何ですか、姉さん今は作戦行動中ですよ。何か気になることでも?』

『いやなに、我が妹ながらさっきの啖呵はかっこいいと思ってな。「生きて帰る」か。私たちからすれば不思議な言葉だが…』

戦闘機を生きているという人間はいないし戦闘機が破壊されたからと言ってそれが死んだと言う人間もいない。人形も同じように自分たちが生きている存在だとは思っていない、故に死ぬこともないと思っている。否、生死の概念を理解できないのだ。だからM4の言った「生きて帰る」という言葉は理解できない、外国語のようなものだ。他の人形がM4の言葉を訳すとすれば「ミッションを終えて帰還する」となる。M16はそう言わなかったM4は特別な人形なのだと改めて実感した。我々とは頭の作り方が違う、知能の問題ではなく人体で言うところの精神を他の存在と同調させる…共感が出来る機能を持った人形なのだろう

これこそがM4を特別な人形たらしめている正体なのだとM16は推察した。そしてその機能は恐らくは

『だけど?何ですか姉さん』

『お前が言うと言葉の意味が分かる気がするよ』

他の人形に勝手にコピーさせるウィルスのようなモノが付属しているのだろう。

 

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