Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~もゼミ発表に追われた恵美押勝です。ようやく暇な時間が出来久しぶりにゆっくりとした休日を送りながらこの文章を書いています。本当は空きコマの時にちょくちょく進めたいんですがね…
言い訳話もアレですから、本編をどうぞ!


Mission14.リーダーとして~嘘~

鉢合わせをしないように弧を描くように裏側へ行ったのが功を制したのか3km先の通信が集中した箇所へは難なく到着することが出来た。だがM4は少し気がかりだった

(あまりにも静かすぎる)

目の前に広がる空間は整備された地面に、いくつかの小屋があることからここが敵の拠点なのには間違いない。彼女らが今位置しているのはその拠点の裏側なのだが見えるのは広がる空間だけであるべきものが存在していない

『M4、ここに敵がいたのは間違いないはずだが…』

『えぇ、静寂そのものです。』

『仮にも拠点ならば警備兵や監視用のドローンが居てもいいはず…SOP』

『だめ、全然見えない…ある一つの場所を除いて』

『それって作戦説明の時にSOPが言ってた通信が集中してる場所のこと~?』

『そうだよ、SPAS』

『じゃあこの場所がダミーって可能性もあり得るんじゃない?』

『SPASの言うことには私も賛成ですわ。デコイを置かれて私たちはここに導かれたのではなくて?』

『…でもはっきりと罠と断言できるわけじゃない。ここにいる全戦力が出撃しているのかもしれないのだから』

『Thunder様の意見も一理はあります、しかしいずれにせよ私たちはSOP様が見た場所へ行く必要があるのではないでしょうか?それが罠だとしても』

『私もさんせー!もしThunderの予想が当たってりゃこの作戦、楽勝じゃん。アタシは楽な可能性にベットするよ。それに罠だとしても引っかかれば何か分かるよ』

罠なら罠ごと噛み砕く、素子と共に何度も戦場を潜り抜けたからこそ彼女達はこの思考にたどり着いたといえよう。人形の思考は任務達成がベースとなっている。破壊されたら達成不可能なためリスクが低い方を選択する傾向にある、あえてリスクの高い方法を取るのは本来、戦術人形ではありえないことだ。だが人間が他人に影響されて思考が変化していくように人形の思考も変化していく。IOPから言わせればこれはバグであり戦闘に悪影響を及ぼすものと考えているが今まで回収・修正されたことはない。ペルシカから「待った」の声がかかったからだ

数秒の思考の後、M4は全員にこの場所を敵拠点と認識し、不明通信集合地帯の調査を行うと発表した

『SOP、念のために視覚端子をサーモモードに変更して建物を見ながら前進して頂戴』

『了解、アンブッシュの可能性もあるもんね~』

M4達は周りを見渡したがら歩いたがやはり敵が出てくることはなかった、歩きながらSOPが建物を見るたびに報告するのだが全て「何もない」であった。すべての敵が対赤外線コーティングでも施したとでも言うのだろか、そうでなければこの状況を納得できない。だがついに何も出くわすことなく目的地に到着してしまった。

「…SOP、電波はこの建物から出ているの?」

「間違いないよ」

「普通、ジャミング装置といえば屋外に設置するのでは?」

G36が訝しむ

「そりゃそうでしょ、電波を飛ばすのに建物は邪魔でしかないじゃない。・・・でも入るしかないわね」

「そうです、私たちはここにいくしかないのです。ショットガンのお二人、お願いします」

「オッケー!じゃあ皆はドアから離れてて!」

「ちょっと待って、蝶番を壊すのは私がやるから、アンタはドアを蹴破って。私の足じゃそこまでの力は出ないから」

「了解、じゃあお願いするね」

ショットガン以外の人形はドアから少し離れたところで半分に分かれ待機する、M4がスモークグレネードのピンに指をかけじっとドアを見つめるとバァンと発砲音が鳴った。Super-Shortyが蝶番を破壊しSPASがドアを勢いよく蹴破る、次の瞬間M4はスモークグレネードを建物の中に投擲する。数秒もかからず煙が噴き出し入り口の外から漏れ出したところで全員が突入した。だが発砲音が響かない、敵がいるなら鳴らないと可笑しいはずだ。

やがて煙幕が晴れると全員が驚いた。敵兵が一人もいないのだ、代わりに部屋の真ん中にはパラボラアンテナのような形をした機械が一つあるだけだった

「これか、SOP?」

「間違いないM16、これだよ!こいつがジャミング装置だ!」

「M4!」

「はい!」

M4がフルオートでジャミング装置に叩き込んでやると装置は火花を散らしてうなだれた。

これで一つ片付いた、後は通信施設を見つけて破壊するだけ・・・そう思っていると突如として目の前が明るくなった。暗くて気づかなかったがどうやら目の前にはモニターがあったようだ

『…そこの木偶人形、聞こえてるかしら』

幼い少女の声だ、画面には銀髪のツインテールの幼女が映っていた

『…聞こえている、といったらどうする』

『ん、その眼帯女はM16ね。聞こえているなら自己紹介しても?』

こんな見た目でも鉄血…恐らくハイエンドモデルがこちらとの接触を図っているのだ無視するのには惜しい話し相手だ。そう思いM16は勝手にしろ、とぶっきらぼうに呟く

『私は鉄血公造“デストロイヤー”よ。お会いできて光栄だわ』

『デストロイヤー、M16の名前を知っているということは私の名前も知っているだろう。貴様に質問したい、よろしいか?』

『…嫌だと言ったら?』

『ならば通信を切るまでよ』

AR15がハンドルを引きわざとらしく音を立てる

『分かった!分かったわよ!質問していいから!』

『では質問する今回の騒動、何が目的だ?』

『アンタたち、木偶人形のポンコツ頭じゃ分からないわよ』

『…つまり貴様は説明できないというわけか。見た目通りのバカということか、木偶人形を馬鹿に出来ないな』

『そんなわけないでしょ!いいわ!説明してあげる!まずそもそもアンタたちの基地を襲うのは…』

次の瞬間、プツリと電源が切れてしまった。

『SOP!今の通信、モニターしてた!?』

SOPがモニターからコードを抜きAR15を見た。彼女はモニターにデストロイヤーが映った瞬間すぐさま首の端子からケーブルを伸ばし接続したのだ

『勿論!枝もバッチリ植えたから追跡出来るよ!』

『いえ、追跡はナシです。皆さん最初に話したことを覚えていますか』

『ハイエンドモデルの破壊は後、でしたよねM4さん』

『その通りです、Thunderさん。これより我々は…』

すると電脳通信の呼び出しが来た、相手は素子のようだ

『少佐、どうやら通信は回復したようですね。これから敵通信施設を破壊しに行きます』

『…待て、まだ通信施設は破壊していないのか?』

『えぇ、そうですが…』

『よく聞いてくれ、たった今拠点を襲撃していた全ての鉄血兵が活動を停止した。私はてっきりお前達がしたものだと思っていたが…』

『帰投した方がいいですか?』

『あぁ、そうしてくれ。我々は今から拠点を放棄し撤退するからなるべく急いで基地へ戻るようにな』

通信はそこで終わった。M4はAR小隊のメンバーを見て先ほどの内容を説明する。

「つまりここはダミーだったわけ?」

「その可能性は十分あります、super-shortyさん。」

「かっこよく空から登場したというのに骨折り損のくたびれ儲けってわけですの…」

PPKが悲しい声を出す演技をする

「ともかくこの場所から撤退し拠点へ戻ります。AR小隊の皆さん、よろしいですか」

「「「「「「了解」」」」」」」

走りながら帰路についているM4は疑問が尽きなかった。何故、敵がここまでいなかったのか、何故ジャミング装置が室内にあったのか、何故、通信施設を破壊していないのに鉄血兵が停止したのか。そもそもこの拠点のサイズで仮にもグリフィンの拠点を襲えるほどの通信を賄えるのか。

そして何故、敵は秘匿にされていた拠点を奇襲できたのか。内通者がいなければ不可能な芸当と敵はなしとげた。だが内通者が誰なのかM4には分からない

(そもそも内通者がいたとしてそれは人間か?それとも人形なの?)

だが、鉄血兵が人形を懐柔・洗脳した例は聞いたことがない。そもそも鉄血兵は人形を破壊しようとするだけで接触を試みることはない。AR小隊の場合はイレギュラーなのだ。自分だって戦いでしか鉄血とコミュニケーションしたことはないし、それも中身のない会話だ

内通者が人形なわけがない、そうM4は結論付けようとしたが途端、電脳がスパークしたような感覚を覚える

(…いや、まさか)

いるではないか、1体だけ、それに最近。可能性はそれしかない、M4の思考は確信に満ち溢れていた。だがそれを言ってしまえば確実に終わってしまう、失ってしまう。だが言わなければならない、しかし失うのは恐ろしい。だが言わなくてはいけない。Siかし、うsiな…だga,言わna…

思考を言葉に変化できなくなってくる

言語化のプロセスが思考という川から外部に表明したいことを母語という餌をつけた釣り竿で釣り上げる行為だとするならば川が大荒れし釣れない状況に立たされているのだ。

(頭がごちゃごちゃする…自分が何を考えていたのか分からなくなってくる…)

複雑に物事を考えすぎて顔に現われていたのだろう。M16が大丈夫か、と声をかけてきた。その言葉にM4は「大丈夫です」と“嘘”をついた。条件反射のようなものだった、川から何とか釣りあげようとするのを邪魔されないように電脳が一種の防衛システムを働かせたのだろう

その嘘にM16は気づいているようには見えなかった、いやこれはそう自分が見ようとしただけかもしれない。

やがてAR小隊は基地へと戻った。眼前には沢山のヘリが見える、こちらに手を振る人間が一人、素子だ。だがよく見るとヘリアンとクルーガーも一緒にいる、一抹の不安を覚えつつもM4は彼女達の下に辿り着いた

「…AR小隊、ただいま帰還しました」

「ご苦労様、いろいろ労いの言葉をかけたい所だけど、そうもいかないから他の指揮官の所属の人形はそれぞれのヘリに行って頂戴。」

李やトグサの基地所属の人形はそれぞれのヘリに戻ったところでクルーガーが口を開いた。

いつの間にか後ろには重装備と重装甲で覆われた人間の兵士が立っていた

…AR15に銃口を向けて

やめろ、それはもう決まりじゃないか

「恐らく、君たちも気づいているだろう。我々の中に内通者がいる。ヘリアン、説明を」

説明しなくていい、このまま黙っていてくれ

「了解しました。…今回の騒動が発生する前、異常な通信量が拠点内から発信されていることが先ほど分かった。その発信源が君だ」

やめろ、やめてくれ、それ以上は

___AR15、ただいまを持って通信モジュールを停止させ、別拠点にて尋問を行うご同行願うぞ

 

 

 

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