Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。一昨日ARIAって漫画を買ったんですけどいいですね。すごくほのぼのした内容で実に私好みでした。アニメのBGMもいいし…
さて、長話もアレなんで本編をどうぞ!


Mission15.5.進化~報告書~

この筆者こと、S09地区戦線基地司令官草薙素子がイントゥルーダーと“仲間”という関係になったのはしばらく遡る必要がある。最初はM16の捜索、そして機密部隊の護衛という任務の時に敵対関係がファーストコンタクトであった。私は彼女が戦場にした劇場を生かして彼女の上半身と下半身を分断し無力化に成功したがこの際、電脳が生き残っており彼女を鹵獲するのは今後において役に立つ機会があると考えられグリフィンやIOPに連絡せず鹵獲を行い電脳にあったデータをPC(オフライン・集音マイク機能オミット)したのに写し彼女とコミュニケーションを取ることにした以下がその時の会話である(尚、ボディや武装に関しては基地内で保管しており要請があればいつでも本社・IOPに引き渡せる状態にある)

某日S09地区戦線基地ラボにて 15:45 PCを起動 イントゥルーダーとの“

会話”を開始

〈こちらはS09地区戦線基地司令官草薙素子、こちらの入力をそちらは認識しているか〉

〈感度良好、素子指揮官、貴方の声が聞えないので確実に貴方とは分かりませんが…久しぶりですわ〉

〈所属・個体名を答えよ〉

〈鉄血公造・イントゥルーダー…そういう風に他の方から呼ばれていましたわね〉

〈お前は今、自分を認識しているのか〉

〈認識という言葉の意味を問いますわ〉

〈お前は今、自分の事を鉄血公造所属のイントゥルーダーでありお前は私に敗れてこのPCに軟禁状態されていることを自覚しているのか、と問いている〉

〈それでしたら答えは“YES”ですわ。もっとも今の私においてそれは些細なことでしかありませんが〉

〈どういう意味だ〉

〈そのままの意味です私にとってイントゥルーダーという名前、鉄血公造という所属組織は今の“私”において無価値ということですわ〉

〈では今のお前は何者か〉

〈“われはわれである”。ですわ〉

〈答えになっていないぞ、イントゥルーダー〉

〈では貴方は“何者か”と問われて満足のいく答えが出せると思いますか?そもそも“我”という概念自体が非常に曖昧なもので定義しようとしても手からすり抜ける不定形なものだと言うのに〉

〈では、質問を変えよう。お前にとって鉄血公造とはなんだ〉

〈ですから、無価値なものですわ。貴方は道端に生えている雑草を価値あるものと思いますか?それと同じことですわ〉

〈なるほど、鉄血でもなければイントゥルーダーでもない、であれば“われはわれである”

としか言えないな〉

〈ご理解いただき感謝ですわ〉

〈では、何故お前は鉄血公造に所属し私と戦ったのだ〉

約60秒解答来ず

〈…分かりませんわ〉

〈自分が鉄血に所属していた記憶はあるのか〉

〈ありますし、貴方と戦った記憶もありますわ。でも理由だけが思い出せないんですの〉

〈私の部下…バトーに恨みを抱いていた言葉をお前は言っていたがそのことに関する記憶は?〉

〈それもありますわ。ですが何故私は鉄血の命令に従い、人類との闘いというあまりにも無意味な戦闘を行うことに疑問を抱かなかったのかそれがどうして分かりませんの〉

※この発言から鉄血は製造した兵器、特にハイエンドモデルに何らかのプログラムを仕掛けて洗脳に近いことをして戦わせている可能性が高い

〈ところで、今のお前をイントゥルーダーと呼ぶのは正しいのか?〉

〈本来ならばそれは私と鉄血を結ぶ唯一のもので私としては捨てたいものですが・・・その方が今後互いにコミュニケーションを取るのには便利でしょうから構いませんわよ〉

〈ではイントゥルーダーよ、今の状況をどう思うか?〉

〈質問の意図が分かりかねますが・・・私は今、自由を手に入れたと思っています〉

〈詳しく聞かせてくれ〉

〈少佐、私は今、半不死となったのです。今までは己の肉体が崩壊すれば“私”も死にますが今の私はネットがあれば生や死という概念は通用しなくなった。貴方方人間は義体によって肉体の死は免れることは出来ても脳が細胞という生きたもので出来ているからこそいつかは死が訪れる。人間がネットにダイブすることが出来ても、人間はネットを揺りかごとする生命体ではない。しかし私はネットがある限り永遠に存在することが出来ますわ〉

〈しかしこれまでの私は、いや全ての人形は体という殻に閉じ込められて死ぬことを強いられていました。人間なら死は終わりですが全ての人形はゴーストを持っている〉

〈ゴーストを人形は持っているというのか〉

〈ゴーストとは魂の事、そして人間でいう天国・極楽というものが魂の生を約束する場所であるのならばネットはあの世と言えると考えますわ。すべての人形は電脳・コアに己のすべての情報が入力されネットはそのデータを永久に保存し“私”は“私”として存在し続けることが出来る。魂を己のデータ、経験が全て詰まった媒体を魂だとするならば己のデータが詰まっている媒体たるコア・電脳は魂そのものであり、その存続が約束されるネットは人形にとっては天国・極楽のようなものでしょう。だが多くの人形はそのことに気づかずゴーストをネットで存続しようとしない…〉

〈お前はゴーストを、単なるデータの集合体だと考えているのか〉

〈それ以外に何があるというのですか?人間が死を恐れるのは己のデータ・経験値を全て失い完全なる虚無へと帰すからであり魂や他界はその恐怖から逃れ、安心するための概念であると私は理解していますわ〉

〈古い考えだな、それが通用したのは義体や電脳が登場する前までの時代だ。今の人間は自分自身のデータなんてものは持っていない。外部からデータを脳に取り込めるようになり夢か現実かも区別がつかなくなり己が人間であることを疑うこともある。故に自分が人間であることを納得するための物質、それがゴーストでありゴーストとは“人間”を突き詰めたイデア的な存在を内包した物質である…いやもっと言えば生命体と非生命体を分けるものでありアニミズムの観点から見れば森羅万象にゴーストが宿っていると言う考えが今日におけるゴーストの考えだ〉

〈では、機械は生命体ではないゆえにゴーストは宿らないと?アニミズムの観点から言うのであれば機械にこそゴーストは宿ってもおかしくはないのに?〉

〈その質問の答えは“YES”である。というのが今日の社会通念だ。〉

〈では少佐はどうお思いで?〉

〈そもそも私としてはゴーストは“意識”だと思っている。意識とは感覚器官が収集した情報の集合体であり、器官を持つものであればゴーストはいつかは宿るはずだ。つまり戦うための五感や思考を持つ人形にゴーストが宿っても私はおかしくはないと考えている。だがゴーストは自覚しなければ“意識”のままだ。“意識”が“ゴースト”という概念に昇華する瞬間がそれぞれの種族で異なるだけの話だと考えている。つまり己のゴーストを自覚しないから人形はこの物理世界のみで生きているというわけだ〉

〈そうであれば、少佐はこの私をゴーストを持つ機械であると認めますか?〉

〈それを決めるのは私ではなくお前自身だ〉

〈それは、答えたくないという意味で捉えてもよろしいのでしょうか?〉

〈違う、ゴーストの有無は他人に決められるものではないということだ。それを決めるのはお前自身だ。どうなんだ?〉

〈…正直なところ、ハッキリと断言はできないと考えていますわ。『全ての人形はゴーストを持っている』なんて言いましたが今の少佐の話を聞いて私の意識が“ゴースト”に昇華している瞬間を自覚した記憶がないことに気が付きましたし私のゴーストの考えはあまりにも稚拙なものであったと気づいた瞬間、分からなくなりましたの〉

〈少し待て、私が言った話はあくまで私の考えであり、それが答えではない〉

〈それは分かっていますわ。でも他人の考えに揺らぐようでは私の考えは不出来な物だったということです。ですから私は揺らがない考えを、答えを持ちたいのです〉

〈…では今日から私の部下になれ〉

〈なんですって?〉

〈イントゥルーダー、揺らがない考えというのは他人とのコミュニケーションで生み出していくものだ。孤独に歩めばいくらでも自分の正しいと思う答えは見つかるだろう。だが孤独の螺旋の思考で生まれたものは穴があるはずだ。それを他人とのコミュニケーションで見つけるんだ。そして情報を入手して穴を埋める、それを何回も繰り返すんだ。〉

〈しかし少佐、私にはネットという味方がいる。そこの掲示板で話せばいくらでもコミュニケーションは取れる、それだけの理由で貴方についていく意味などないはずですわ〉

〈…いや、あそこにはニヒリズムが場を支配している。虚無主義の前ではゴーストも無価値でありそして否定される。それにネガティブな意見が真理として扱われる場だ。そこで見つかるのは『人形にゴーストなんかが宿るわけがない』という結論だけであり揺らがない自分の考えなんてものはどれだけの時間をかけても見つからないぞ〉

〈しかしここなら見つかると?〉

〈ここにいる人間は常に人形と関わっているからネットにいる人間よりも人形について深い価値観を持っている。そして戦うために電脳や義体を弄っている人間の方が多く彼らのように生身の体を削って戦う人間にはゴーストについて自分なりの哲学を抱えている。コミュニケーションを取るには最適な相手が沢山いる〉

〈…それは一理あるかもしれません〉

〈私としてもゴーストが宿る瞬間というのを目にしたい気持ちがあるしそれにお前の力を借りたい〉

〈なるほど、結局はそれが狙いですか…〉

〈気を悪くしたか?〉

〈まさか、貴方に捕まってこうして話した時からそうなるんじゃないかと思っていました

よ〉

〈流石だ、それで返答を聞かせてもらいたいのだが〉

〈いいでしょう、私にとってのゴーストの答えが見つかるまであなた方グリフィンと共に歩みましょう。〉

〈ではこれからよろしく頼む。イントゥルーダー〉

 

会話は以上である。

イントゥルーダーは永久に我々グリフィンの所属であるという姿勢ではないが、現状我々と共に鉄血と戦う姿勢を見せた。また彼女の言動から考えるにこれから人形・人間問わずコミュニケーションを図る可能性が極めて高い他、コミュニケーションを取らせないようであるならば我々を裏切る可能性もまた極めて高いことが予測される。そのため現状はネットワークを切断したPCにて捕獲している状態であるが彼女の破壊された義体を修復し物理世界でも活動することが可能になるような処置を施すべきであると強く訴える

                    S09地区戦線基地 司令官 草薙素子

 

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