Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。今日は人形之歌の6巻を買ったのですがまぁ難しいですね、実はこの作品は基本的には漫画を参考にしながら書いているのですが5巻から凄い難しくなっているような気がします
長話もアレなんで本編をそうぞ!


Mission16 Only up!~催眠術~

『全員、ヘリを降りたか。こちらはA地点、本作戦のリーダーを任された草薙素子だ。返事をして欲しい』

『こちらB地点、李、感度良好。いつでも出撃出来るぜ』

『C地点ギソーニ、同じく感度良好』

『D、D地点の川崎です!こちらも感度良好』

『川崎指揮官、ヘリアンから話は聞いている。新人としては驚くべき高い作戦成功率および人形の生還率で期待のルーキーだとか。』

『いやそんな…私ではなくあの子達が強いからで』

『謙遜することはない…が、緊張しているのか?』

『え?』

返事をした川崎の声は少し上ずっていた。

『何せハイエンドモデルと戦うのは今回が初めてで…それに皆さんの足を引っ張らないかが心配で』

『そう緊張することはないぜ、お嬢ちゃん。ハイエンドモデルなんて大げさな言い方しているが所詮は通常の鉄血に毛が生えたようなものだ。肩の力を抜いていつも通りにしろ』

『だからといって舐めてかかると困るが…まぁ李指揮官の言うこともあながち間違いではない。今回は敵の位置がおおよそ分かっているから比較的楽な部類でもあるしな』

『分かりました、助言、感謝します』

『よろしい、ヘリの中で説明したと思うが改めて作戦を説明する。…といっても単純なものだが。全員、作戦前に共有されたマップを見て欲しい』

通信越しから紙を開く音が聞える。それが止んでから素子は口を開く

『山頂にいるハイエンドモデル“デストロイヤー”の無力化が目標だ。つまりは鹵獲しなくてはならない。我々は4つのチームに分かれて山登りをしながら敵を倒していき逃げ場をなくしていく、そうして追い詰めたところでデストロイヤーを無力化する、シンプルな作戦だ。』

『シンプルな作戦、ねぇ。要はデストロイヤーを鹵獲しろって話だろ?そう上手くいくかね』

『少佐、俺も李指揮官の意見には賛成です。破壊は簡単ですが無力化となると話が別です。』『俺たちゃスクールじゃ殺しのテクニックしか教えられてこなかったからな』

『何か方法があるんですか?』

『あぁ、電脳錠を使う。』

電脳錠は増殖し続ける無意味な情報を電脳に送り込み強制的にフリーズさせるといる電脳の手錠である。ただ今回、素子が持ち込んだのはハイエンドモデルの情報処理能力を見越して無限ループする迷路を見せる別名“迷路錠”と呼ばれるタイプである。このタイプは昏倒させるのに時間はかかるが対象は現実と電脳内に広がる迷路の区別がつかなくなり眼前に広がる迷路から脱出しようと延々と解き続けるため外さない限り現実世界へ帰還することが出来なくなる

『それをデストロイヤーにしかけるのが今回の私の仕事であり諸君らはデストロイヤーの注意を挽くために出来るだけ存在をアピールし派手に戦って欲しい。』

『あくまでも用があるのは頭の中、だけですもんね』

『その通りだ川崎指揮官。ではこれにて説明を終えるが何か質問があるか?』

しばらく待っても通信機からの応答がないことを確認し素子は作戦開始の指示を出した

「では我々も山登りといこう。」

「“おやつ”は持ったか?お嬢ちゃんたち」

「バトーこそちゃんと“おやつ”を持ったのか?」

そりゃあもう、と上機嫌に答えながらバトーは大量に持ったマガジンポーチを素子に見せた。

「結構、では行こう。我々は他のチームと異なり静かに行くぞ。」

「それは残念、歌を歌いながら上って頂上でやまびこ、ってのをやりたかったんですが」

「Zas、やまびこは作戦を成功させれば好きなだけできるわ」

そういうと全員が小さく笑った。だがすぐに気持ちを切り替えて彼女らは山登りを始めた。

登山道が整備されていない山の登るのは簡単なことではない、ただここは山に作られた基地ということもあり敵の手によって多少の道が整備されていた。もっとも道中での交戦をなるべくは避けたい素子らは道ではなく、そこから少し外れた場所を歩いていた。

山はしんと静まり返っている。三度の大戦が地球を汚し続けても草木は生き続け、動物もまた生き続ける。世界中の学者が何百年にも渡って「地球は人間の環境によって滅びる」と言っても、何処かの夢を見る電気羊が描いた街並みが空想のものでなくなっても自然は生き続けている。今彼女らが登っている山も人間の手によって弄られた山ではなく自然によって維持された山だ。動けないはずの草木は人間の予想を嘲笑するかのように滅びなかった。

こうして逞しい自然の中を歩いていると自分達が営んでいた歴史がちっぽけなモノのように感じると同時にちっぽけな歴史が生み出した鉄血という遺産など簡単に潰せるのではないか、という錯覚を覚えてくる。勿論、それは自然という魔力が生み出した一種の催眠術に過ぎないということは頭の中では理解しているが素子は一瞬でも頭の中をよぎってしまう。

恐らくそれは自身が義体という自然に真っ向から対立する存在、人の身でありながら「死」という自然の絶対的法則から反しているから催眠術がより強くかかるのだろう。恐らく、トグサや李などは自然が生み出す催眠術にかかることは一度もないだろう。そう思いながら素子は登山を続ける

歩いていると遠くから乾いた音が風に乗って聞こえてくる。恐らく、別のチームは既に交戦状態に突入しているのだろう。

「ここまで敵に会わないのは運がいいですね、少佐」

「あぁ、出来るなら一度も会わずにいきたいものだな。M4」

「いいのか少佐、そんなことを言って。そういうこと言っているとすぐにでも…」

会うぞ、と言いかけたM16の口を素子の手が抑える。そしてもう片方の手を挙げて制止のハンドサインを部隊に送った。

背を伏せて道を見てみると数体の鉄血兵が走っていた。

「同志少佐、まだ敵はこちらに気づいていないようだわ。やる?」

「ダメだ。それでは我々が戦闘を避けている理由がなくなる。やるのは敵に見つかってからにしろ」

了解、と言うとモシンナガンは構えた銃を下した。それから10秒ほど経つと3体の鉄血兵は彼女らの視界から消え去っていく。どうやら気付かれなかったようだ。

「取り敢あえずはこれでよし」

「しかし面白くねぇぜ、いくら少佐が電脳錠をかけるのが仕事だからってこうもこそこそ動くってのは。折角弾をたんまりもってきたのによ」

「デストロイヤーを欺くためには我々の存在は目立ってはいけないからな…もっとも最初こそはバトー好みの作戦を展開しようと思ったんだが、急にこちらの戦力が増加したから作戦を変更する必要があったんだ。」

「それが作戦を変更した理由か」

「敵部隊が3つだと思わせることが出来れば相手は油断するからな。これが2つだけなら相手は伏兵の存在を危惧して、こっそりと電脳錠をかけるのも難しくなる」

「川崎って指揮官が来たから俺はドンパチ出来なくなったってわけか」

「まぁそうなる」

こことは違う場所では派手に戦闘が行われているらしく、銃声が常に聞こえる。だが依然として素子らが歩いている場所は静かであり、先ほど3体の鉄血兵が来たのを最後に道の方に鉄血兵が来ることはなかった。

「しかし、奴らはそんなに慌てて何処に行くのでしょうか」

「分からん、だが銃声の中に低い音が混じっている。恐らくMGの人形がいるんだろう。私が敵の指揮官ならそいつを優先して排除したい」

「ということは、MGの人形を持っている部隊の方に向かっている可能性が高い、ということか。いや待てよ、確か李もトグサもMGの人形は連れてきていないはず。ということは」

「だとすれば連中は川崎指揮官の方へ向かっているんだろうな」

「また川崎指揮官か、この作戦にいきなり加わってきて敵の人気も集めていったいあの女は何者なんだ?」

「…有能だがそれだけの理由でヘリアンがこの作戦に新人を回すとは思えん。」

「まぁ彼女が何者なのかはこの作戦が終わったら聞けばいいさ少佐」

「M16の言う通りだな、細かいことが気になってしまうのは職業病みたいなものだから仕方が無いとは言え今は作戦中で敵の腹の中だ。気を引き締めていかないとな」

「それで少佐!今、どのあたりにいるの?早くデストロイヤーと会いたいよ!」

「SOP…壊したら作戦失敗なのよ」

M4がSOPを窘める。彼女もバトーと同じく戦いが好きなタイプだからうずうずしているのだろう。恐らくいつも見たいに榴弾をぶっぱなし、はしゃぐことは出来ないだろう。彼女には辛い任務かもしれない、そう若干の哀れみの気持ちを胸にしまい込みながら素子は現在位置を端末を使い確かめる

「そうだな、この山が300mほどで現在我々は半分ぐらいの位置にいるから順調に進めばあと30分ほど山頂の基地にはつくはずだ」

残り30分ほどでハイエンドモデルとの戦闘が始まる、具体的な数字が分かると部隊の中に緊張感が走った。

「残り半分、基地が近づけばそれほど敵の数も多くなる。各員、これまで以上に慎重にいくぞ」

 

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