Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。ようやく暇が出来たと思ったら発表のための資料を作らなければいけないし中間課題もやらなきゃいけないともう忙しい!精神と時の部屋が欲しい…
さて、身の上話もアレなんで本編をどうぞ!


Mission16.Only up!~勝利の女神~

一言で言えばマズい状況に置かれている。この山頂にある基地は私に持たされた基地だけど突貫工事で作られたため防御面はないに等しい。辛うじて司令部の前面にセントリーガンが置かれている以外は敵が侵入してもどうも出来ない。ここは1週間前に出来たばかりの基地でドリーマーに連れてこられた時はあまりの簡素さに文句の一つでも言ったが「アンタがM4を捕らえるためのお膳立てをしてあげる。アンタがM4を捕らえることが出来たら“ご主人様”にも気に入られるんじゃない?」と言われたから渋々ここで指揮を執ることにした。あの人の役に立てるのはアタシにとっても悪い話ではないが…それがどうだ、敵が3方向から攻めてくるわ戦地に送った人形はグリフィンのオモチャに対して何も有効打を与えず破壊されていくじゃないか。

もう敵は半分ほど進んだのではないか、もしもこのまま全ての敵がこの司令室に押し寄せたら?…勿論私は勝つに決まっている。ハイエンドモデルのアタシが、オモチャに負ける道理はないはずだからだ。だが、この狭い司令室では榴弾砲は使えない、そうだ、戦うための場所を移すだけだ逃げるわけじゃない、決してオモチャに負けるなんて1バイトほども思っていない。

そう思って私はドアを開けようとするが開かない、何回も何回もドアノブをひねるが開かない

「…まさか、ドリーマー!?ちょっと開けなさいよ!このイカレ女!聞こえてるんでしょ!?」

虚空に向かって叫ぶとノイズ音の後、憎たらしい声が聞えた

「何処へ行こうというの?まさか逃げようとしていたの~?」

「そんなわけないじゃない!ただ、私が出ないとそろそろこの基地が危ないと思って…」

「フフフ、貴方はここに居なきゃだめよデストロイヤー」

「どうして!?このままじゃ!」

「だってあなたが死ぬ姿がカメラに映らなくなっちゃうじゃない?」

デストロイヤーの電脳の演算が一時止まりコアが異常に発熱し冷却水によって冷やされた熱が水滴となって体表を濡らす

「あれ、もしかしてビビっちゃった?そんなわけないじゃない」

「…このイカレ女!IFFがなけりゃアンタをそのスピーカー越しから殺してやりたいわよ!」

「まぁ安心なさい、ちゃんと支援してあげるし最後の美味しいところは貴方にあげるわ。まぁなんて優しい上司なんでしょう」

「…分かったわよ」

「それでいいの、貴方はそこで砲塔でも磨いてなさい」

そう言い終わると天井のスピーカーからノイズ音が聞えそれっきり何も言わなくなった。

ドリーマー、いけすかない女だし笑えないジョークを言う奴だが奴のいいところはジョークをジョークだけに終わらせるところだ。その証拠に私は何回も奴にさっきのようなことを言われたがこうして存在し続けている。大丈夫だ、奴は私を助けてくれる。

そう思いデストロイヤーは椅子に座りモニターとのにらめっこを再開した。

 

…銃声音が遠くから聞こえてくる、相変わらず自分達以外の場所では戦闘が続いているようだ。

「しかし、ここに敵が来ていないってことは私たちが山頂に向かっているのはバレていないみたいね」

辺りを警戒しながらZasが話す

「これなら今回の作戦は簡単に終わりそうだ。少佐、敵の大将は完全にこちらの存在に気づいていないどころか考えもしていない。デストロイヤーは子供みたいな身長なんだって?なら少佐の格闘術さえあれば簡単に電脳錠で無力化出来ると思うぞ。それにあいつバカっぽそうだし」

「確かに簡単そうだな。だがM16、デストロイヤーが馬鹿だとしてもその背景にいるドリーマーなる存在には警戒が必要だ。例のジュピターとかいう存在にもな」

「やっかいな問題が出来ちまったな。遠距離から砲撃してくる大砲なんて俺らじゃどうしうようもない。こっから先は嫌でもそいつを意識しないといけなくなる」

「弾避けのお守りでも買うべきだったかもな、バトー」

「違ぇねぇや」

そう話しているとインカムから呼び出しを告げる電子音が鳴った。素子は“伏せろ”を意味するハンドサインを送りしゃがみながら応答するために通信機を操作した

『聞こえますか草彅指揮官、こちらは川崎です』

『どうした川崎指揮官』

『それが、どうも敵が現れなくなりました』

山から聞こえてくる銃声を聞くと確かにあのMGが起こす銃声音特有の腹の底がしびれるような重々しい音が聞えなくなっている

『恐らく、私の方に来た敵はすべて倒してしまったのかと』

『報告に感謝する。川崎指揮官、現在位置は?』

『丁度半分といったところでしょうか』

『ではそこから進み山頂の基地が目視で確認できる距離まで近づいたら停止し基地の監視を頼んだ』

『了解!』

川崎との通信を終了したのも束の間、またしてもインカムから電子音が鳴り出ると今度は李が、そして彼との通信を終えると今度はトグサからも通信が入った。彼ら二人もまた敵を全て破壊したらしくトグサに至っては山頂まであとわずかというところにまで来ていた。素子は川崎に出した指示を二人にも伝達し通信を切った。そういう自分達も、もう山頂にまで差し掛かっていた

…これは余りにも簡単すぎるな

素子はそう思った

「まだハンターとかいうハイエンドモデルを相手にしたときの方が歯ごたえがあったぜ」

「少佐、作戦は予想以上に順調に進行しています。」

「…あぁ」

M4からの呼びかけに素子は素直に賛同出来なかった。このままいけば簡単にチェックメイトだ。デストロイヤーの知能が低くても背後にいるドリーマーという人形はそこまで愚かではないはずだ。ジュピターによる援護を行えば囲まれている状況は難なく打破することが出来るだろう。だがあのクレーターを作るほどの攻撃力だ、これ以上の接近を許し、そのタイミングで発射してしまったらデストロイヤーのいる基地にまで影響が出るどころか本体を基地事破壊してしまう恐れがある。それはドリーマーという人形にとっても望むことではないだろう。故にこのタイミングで攻撃が来ないのであればジュピターによる心配はないはず、素子はそう考えた。しかしそう考えてもやはり胸騒ぎがするのだ、勝利の女神はこちらに微笑みかけているというのに

(しかし、ここで退却という選択肢はない。退却し次にこの基地を攻めたとてジュピターによる攻撃が途中にないという保証はどこにもない。しかもこの簡易な基地から見て仮に我々が撤退したらデストロイヤーはこの基地を放棄し逃走する可能性も高い。やはりここは攻めるしかない…)

そう考えていると再びインカムに電子音が鳴る

『どうした』

『こちら川崎、視認できる距離まで近づきましたが基地入口にあるセントリーガンからの攻撃を受けています!交戦してもよろしいでしょうか!?』

『交戦を許可する…が、川崎指揮官、次回からはそういう確認は取らなくても大丈夫だぞ』

『了解!』

『こちら李、現在基地左側面にいるが変化なし!』

『こちらギソーニ、右側面にいますがやはりこちらも変化はありません』

(基地の警備は正面のセントリーガンのみとはな…一夜城でももう少し警備はありそうなものを)

何もない基地後面を見て素子はメンバーの方へ振り向く

「よし、これから基地内部に強行突入する。」

「突入たってどうするんだ少佐」

「あんなコンクリの壁なんて私とバトーの拳があれば十分だ」

「相変わらず住む世界を間違えているわね…」

と、WA2000が苦笑する

「その後はデストロイヤーを捜索し見つけ次第私が電脳錠をかける。上手くいけば数分で終わる戦闘だが相手はハイエンドモデルだ気を引閉めてかかるぞ」

そう話しているといよいよ山頂にたどりついた

『川崎指揮官、セントリーガンはどうなった』

『破壊に成功しました。現在、部隊は入り口付近で待機しています』

『了解、李指揮官はどうだ?』

『側面で待機している、目の前が灰色のコンクリで出来た壁面しかない』

『ギソーニ指揮官は?』

『状況は李指揮官と同じです。我々は川崎指揮官の後に続いて正面から突入しますか?』

『いや、突入する部隊は私だけだ。3人は万が一デストロイヤーが逃走した場合に備えて欲しい』

『了解』

『あいよ』

『了解しました。』

素子とバトーは壁面にたち拳を構えた。

『では、合図で突入するぞ』

3 拳を引く

2 腕に力を入れ、腕の表面に人工血管が浮かび上がる

1 両者とも呼吸を整え、辺りは風の音しか聞こえなくなる

『突入!!』

それは凄まじい音だった。

全身義体2名が力をこめた拳はコンクリを発泡スチロールのごとく簡単に打ち破った。破壊の衝撃で起こった煙の中を大勢の人形が素子やバトーがかき分けながら突入する

「SOP、お前は電波を可視化することが出来たな!?」

「うん!」

「その機能で一番通信が集中している場所を探すんだ!」

即席であってもそれなりの広さがありSOPの機能をもってしても中々見つからない。しかしこれだけ歩き回っても不思議なことに物音は素子らが歩く音しかせず銃声などは基地内部は勿論、外部からも一切しないのだ。

「少佐、静かすぎるな。まさか野郎逃げたんじゃないだろうな」

「それはないよバトーさん!作戦中、この間つけた枝を確認したんだけど大きく移動してないもの」

「だがSOPよ、お前のつけた枝が敵に利用されて…」

バトーは喋るのをやめた、何故ならばSOPが急に立ち止まったからだ

「目の前のここに奴がいるんだな」

素子はSOPの耳にささやいた

「間違いないよ、この場所すごい通信が集中している。」

「SOP、内部の通信状況は一か所に固まっているだけか?」

「ううん、固まっている場所からほんの少し離れた場所にチラホラと電波が見えるよ」

「…部屋の中はそこまで広くはない可能性が高いか」

ならば銃火器による戦闘よりも格闘戦に持ち込む方が有利だろう。デストロイヤーは榴弾砲でこの狭い部屋では思うように撃てないはずだ。そう考えると素子は持っているセブロC-26AをM4A1に渡す

「…この中にステゴロが得意なのは誰だ?」

「…そりゃあまず俺だろうな」

「だったら少佐、AR小隊からはSOPを推薦しよう。あいつは単純な殴り合いなら小隊の中で誰よりも強い」

M16がそう言うとSOPは胸を張った

「…よし、私とバトーとSOPで突入する。まずはM16が煙を焚き、それを合図に突入した後、格闘戦に持ち込みどさくさに紛れて私が電脳錠をかける。理解したか」

「了解だ」

「了解」

小声で会議を済ませるとM16がポケットからスモークグレネードを取り出し突入隊に目を配る

素子がその視線にうなずきを持って答えるとM16がピンを抜き扉に向けて転がした

すぐさま煙が噴き出したのを合図に素子とバトーが走り出しその勢いを生かし扉を蹴り破った

部屋の中に入り眼前に飛び込んだのは幼い女子が酷く驚いた顔だった。間違いない、こいつがデストロイヤーだ。

(そうと決まればやることは一つだ!)

素子はその酷く驚いた顔に握り拳で見えなくした。柔らかな人工皮膚の後に人間の骨とは明らかに違う硬さが拳に伝わってくる。しばらくすると全ての感触はデストロイヤーが後方に吹き飛ぶという形で消え去る

「…3人がかりなんてこの卑怯…!」

デストロイヤーの抗議はSOPの蹴りで封じられた。戦術人形による本気の蹴りが顎に命中したのだ。並みの人間なら、否人形だとしても電脳がシェイクされ脳震盪で済めば運がいいだろう。だが

「流石にハイエンドモデル、そう簡単に気絶しないか」

デストロイヤーは立ち上がり鼻から垂れた人工血液を指で拭った

「人間とポンコツにのされるようなアタシじゃないわよ!」

デストロイヤーは怒りに任せ拳を目の前にいるバトーに振るわれる。

「そんなトーシローの怒りに任せたへなへなパンチがあたるかよ」

バトーは余裕の表情で拳を避けたが直ぐに真剣な表情になり右手を動かした、デストロイヤーの拳は確かに外れた、しかしそれは次の蹴りのための布石だったのだ。ガードしたとはいえハイエンドモデル全力の蹴りを腕にうけたバトーは苦悶の表情を浮かべながらもなんとか耐えきった

「面白れぇ、力いっぱいのガキとの勝負かよ。」

「腐ってもハイエンドモデルだ、小柄だからリーチの差があってこちらが有利とはいえまとも喰らえば無傷とは言えまい」

「その前にぶん殴ればいい話だよ!」

第2ラウンドが始まろうとしていた、リングにいた4人が拳を構えるとインカムからの電子音が聞えてきた。だがいつもの電子音とは違う

(これは緊急通信!このタイミングでか!?)

だが、この通信をのんびりと聞いている暇はない。その電子音をコングとし4人の暴力装置が一歩前に出る。

『こちらヘリアントス…緊急…』

耳に流れる声は声として処理されずノイズとして電脳の中を通り過ぎていく。だがその声が突然聞こえなくなる。

「…っ!?」

デストロイヤーの頭突きによって素子が倒されたのだ。インカムが耳から外れ地面に転がる

「リーチの差は足のばねを利用して無意味にさせるのよ!」

とっさに両手でガードしたとは言え完全にマウントを取られてしまった。だが素子はそれに焦ることもなく腹筋に力をこめ上半身を投石器のように起こし頭突きで受けたダメージを頭突きで返す

短時間に2回も頭部にダメージを受ければ流石のデストロイヤーも応えたようであり頭をグワングワンと回している

「今だ少佐!マウントを取ってやれ!」

「言われなくとも!」

素子は立ち上がり電脳錠を取り出した、そしてデストロイヤーに覆いかぶさり王手をかけようとしたその時

耳をつんざくような爆音が聞えた、次の瞬間素子は天井を見ていた

『緊急、緊急…AR15…脱走…見かけ次第…射撃…許可…』

 

 

 

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