それでは、本編をどうぞ!
バトーが少佐を部屋に残し、持っていた手榴弾とワイヤーで基地の入口に簡易的な罠を仕掛けているとSOPが彼に駆け寄る。慌てふためく彼女の両肩を優しくにぎり落ち着かせると彼女はこちらに対して“バンシー1”と名乗る人物が援護するからそこを動くな、との連絡がいきなり入ったと告げられた。彼自身その名前には何の心当たりもなく敵の罠かもしれないと疑った。しかし動くなと言われても動けない現状の中、彼は心の隅でそれが本当であることを願いながら罠の設置作業を続けた。1分ともかからず入口の工作を終えてバトーは次の設置場所である屋上へ続くドアを工作しようと向かった時、彼は爆音とそれに続く重々しい銃撃音を耳にした。とっさに伏せたが揺れを感じずこの音がこの基地に向けられたことを確認すると彼はSOPに連絡を取ろうとした
『バトーさん、今の音は!?』
『分からん、鉄血の攻撃じゃないことは確かだが…』
『…バトーさん、鉄血兵の電波が見えなくなった!』
『このタイミングでのお前の装置の故障…は考えにくいな。ということはあの“バンシー1”とかいう奴の援護だというのか』
そう言い終わると彼の目の前にはSOPが立っていた。とにかく状況を確認したいと思い彼女と一緒にバトーはドアを開けて外の景色を見た。
浮ぶ黒煙に火薬の香りが鼻腔をくすぐる。そして目の前には大きく翼を広げた物体が見えた
「バトーさん、あれは…戦闘機?」
「いや違う、驚いたな…こんな時代にえらい骨董品を引っさげて援護に駆け付けた奴がいたもんだ」
あのフォルム、そしてあの銃声、間違いない
「あれはまだ新ソ連がロシアだった時代に使われた攻撃機、Su-25だ…」
基地の方から煙が上っているのを見たM4はM16と合流し、部隊を引き連れて基地へと向かっていた。その道中、まず彼女は姉にはバトー達に連絡を取るように頼み、自身はLZ変更のためにヘリパイロットに通信を取ることにした
『こちらヘルメス』
『ヘルメスさん、大至急移動をお願いします。場所は…』
『その声はM4A1か、またLZの変更か?』
『また?』
『さっき少佐からデータリンクでLZの変更が全てのヘリコプターに共有されたんだが…』
『少佐が、ですか。…分かりました。指示された場所までお願いします』
『了解、ジュピターとかいう砲撃が来ないように祈っててくれよ嬢ちゃん』
(少佐は完全に意識がないわけではないのね…しかしもっと早く連絡をしていれば少佐に無理をさせることもなかったのに)
そう考えているとM16が話しかけてきた
「バトー達は無事なようだ。どうやら私達と同じ、戦闘機に助けられたそうだ。しかしおかしな話だ、戦闘機を保有しているPMCなんてこのご時世、条約で存在は出来ないはずだぞ」
正規軍が自身の優位を保ちPMCに寝首を搔かれないために作った“条約”によってPMCは強大な戦力を持てないようになったこの時代において戦闘機や戦車といったものはどれだけ欲しかろうと保持出来るものではなく、条約を破れば待っているのは正規軍が得意とする“粛清”である。
グリフィンが保有しているヘリコプターはAW139をベースにアビオニクスに改良を加えた代物でありドアガンとしてM60機関銃を搭載しているがこれはあくまでも自衛のために搭載を許された装備であり近接航空支援に用いれば違反となる(もっと詳細に言うならばヘリに乗った戦術人形が自身の武器をヘリから地上にいる敵に発砲しても違反である)といったように航空機を保持していてもそれを満足に運用出来るとは限らないのである
「…正規軍が我々の援護を?」
「まさか、軍がPMCを助けるような真似するわけがないだろ。それにお前は見たか?あのケツを」
「いえ、そこまでは」
「あれは単発のノズルだった。新ソ連の主力戦闘機も単発だったがケツがあれとは違っているように見えた。それにあの国特有の青いカラーじゃなかった」
「確かSu-75でしたか。言われてみれば違うように見えたような…では何処が」
そう話しているとインカムに呼び出し音が聞こえた
『こちらはホーク・アイ、無事かM4A1』
『こちらに問題はありません、それよりも基地の方に煙が見えるのですがそれも貴方方が?』
『その通りだ、支援攻撃は終わったが君たちの撤退が完了するまで援護する。それよりも今ヘリコプターが見えるという通信が入ったのだがこれは君たちのか?』
『恐らくはそうかと思います。この近辺にスカウトが飛んでいる様子は見受けられません』
『了解した、共有しておこ…』
その時、M4は背後から爆発した音が聞こえた
『ホークアイさん、今のは!?』
『何かあったのか!?』
『ジュピターによる攻撃です!そちらでは確認出来ましたか!?』
『少し待ってくれ…あぁ確認した。君たちの周辺を攻撃した“バンシー2”が上空に何か光る物体が走るのを見たとの報告が来た!』
『着弾位置は分かりますか!』
『いや、バンシー2はキャノピー越しに見ただけだ。この付近を飛んでいるバンシー3を偵察に向かわせる』
『分かりました…すいません、隊員が通信を変わりたいと言っていますので変わりますね』
M4は通信中に肩を叩いてきたM16にインカムを渡した
『ホークアイ。私はM16A1だ。一つ確認したいことがある』
『何だ』
『基地の方も攻撃したそうだがそっちの方にジュピターの攻撃が来たか確認できるか?』
『分かった。攻撃を担当したバンシー4に聞いてみる』
『頼む、確認出来たら私に連絡してくれ。周波数は65.9だ』
ホークアイとの通信が終わりM16はインカムをM4に返す
「M4、SOPやバトーに連絡を取るんだ」
「了解」
M4はSOPに連絡を取ることを決め通信をかけた
『M4、どうしたの?』
『SOP、今ジュピターによる攻撃があったのだけれどそっちはどう?』
『あの音の正体はそれかぁ!今は静かなもんだよ!鉄血の屑共がいなくなった!おかげでヘリが来るまで耐えられそう!』
『了解、とはいえ油断しないでね』
『M4は大丈夫なの?』
『うん、こっちも支援攻撃のおかげで基地まで問題なく近づいている。あと500mってところかな』
『分かった!待ってるからね!』
通信を切るとM16が通信機を使って話している姿が見えた、恐らくホークアイと話しているのだろう
その上空を戦闘機がけたたましい音を鳴らして通過するがM4は思考の海にダイブして気がつかなかった
(ジュピターによる攻撃は基地の方には来ていない。それは私を捕縛するためにわざと基地に攻撃をしていないと考えられるけど…しかし鉄血兵を倒した後に攻撃が来るのを偶然と片付けられるの?確かギソーニ指揮官も増援の鉄血兵を破壊した後に攻撃が来たと言っていた…自身の背後に着弾したとも言っていた。鉄血兵とジュピターの攻撃には関係が…?)
そう考えているとM16が話しかけてきた
「M4、さっきホークアイと話していたんだが基地の方を攻撃したパイロットから砲撃は見えなかったと報告が来たそうだ。」
「SOPも攻撃は来なかったと言っていました」
「そうか…」
「姉さん、私考えたんです。この攻撃は鉄血兵と関係しているんじゃないかって」
「どういう意味だ」
「つまりですね、ジュピターの攻撃しているのは無作為にしているのではなく誘導されているのではないか、ということです」
「まぁそれはそうだろうな。誘導無しでやれるような兵器ではないだろ」
「ではその誘導は何か、その正体が私は鉄血兵と考えています」
「鉄血兵が終末誘導を?…しかしそれでは基地の方が攻撃を受けていないのは何故だ」
「問題はそこです。私は最初、敵が基地に私がいるからそれを生け捕りするために攻撃していないと思いましたが連絡を受けて支援が行われるまでの時間を考えると500m先にいた敵は100mも動いていない。そうであるならばそのあたりの場所に砲撃しても基地には影響がないはずなんです。もし基地に影響を及ぼすぐらいの威力があるなら今頃私達もギソーニ指揮官も死んでいたでしょうから」
「であれば益々攻撃は来ない理由が分からないな。再装填に時間がかかるとかか?いや最初基地の周辺が一斉に食らったんだ。そこまでかかる兵器じゃないはずだ…」
「恐らくは“交戦”がトリガーになっているのではないでしょうか。姉さんとギソーニ指揮官は共に交戦してその後に砲撃が来ました。しかし基地の方は交戦する暇もなく破壊されて砲撃が来なかった」
と、その時インカムに呼び出し音が鳴った
『ホークアイだ。偵察に行ったバンシー3から報告が来た。驚いたな、敵の砲撃はバンシー3が鉄血を仕留めた場所とそう違わないところに着弾していた。君たちは運がいい。支援なしだったら君たちは今頃全滅だっただろう。引き続き支援を行う…いや待て。レーダーに感あり、新手の敵だ!…なんだこれは、馬鹿な、レーダーから消えた』
『それは敵がレーダー範囲から逃れた、ということですよね』
『あぁ、こっちが攻撃指示を出す間もなく消えた。俺たちは何も手を出していない。つまり敵がステルス系の装置を起動したのかそれか俺の真下にいるかだ』
『しかし鉄血は航空機なんて持っていないはず…』
『他の奴に聞いてみたが何も見えていないそうだ。』
そういえば、とM4は思い出す。
(前回の拠点襲撃の際、鉄血は空から来た可能性が高いと少佐が話していた。もしかすると…)
『ホークアイさん、レーダーに映ったのは鉄血兵かもしれません!敵は空中から来ている可能性があります!』
『にわかには信じ難い話だな…だがそれならばすぐ反応が消えたのも納得がいく話だ』
(もしそうなら地上の味方が…!しかし敵と交戦すればジュピターの攻撃が来る恐れがある砲撃を回避しつつ鉄血兵を排除するには敵が交戦したことを気付かない内に破壊、つまり暗殺に近い方法で排除しなくてはいけない。しかしそれは敵の位置が分からない以上困難な話…仕方がない、今はこれ以上敵が投下されないようにその元を破壊する必要がある。それには彼らの協力が不可欠だ
『敵は鉄血兵を投下出来る航空機を持っているかもしれません。ホークアイさんお願いしたいことがあります。貴方の仲間にその航空機を探して欲しいのです』