Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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どーもお久しぶりです。恵美押勝です。新年が明けたと思ったらもう2月も終盤に差し掛かろうとしているってことに驚きが隠せません。
では本編をどうぞ


Mission17.骨董品の舞う空~撤退~

『ホークアイから連絡だ、上空に鉄血兵を運んでいる兵器が飛んでいる可能性有り、捜索せよってさ』

曇天の空を飛ぶ一つの亡霊、RF-4EJの後部座席に乗るフライオフィサーがAWACS(早期警戒管制機)ホークアイに依頼された内容をキャプテンに伝える

『了解、全く人使いが荒いぜ』

『そういうな、俺たち“ウォー・ミュージアム”の中で偵察機能を持っているのは俺たちバンシー3しかいないんだからさ』

『それはそうだが…奴らいつの間に航空機を持っていたとはな、しかしレーダーに引っかからないとは奴ら何を使っているんだ。どう思う?』

『常識的に考えれば輸送機なんだろうがステルスを持った輸送機は今日まで作られていない。一応米帝がWW3に向けて作ろうとしたみたいだが制空権を一方的に取れると考えていた上層部に一笑されたらしいよ』

『ならばステルスヘリか?光学迷彩を持った特殊部隊用に作られたのがあったはずだ。確かRHA‐89とかだったような』

『いやあれはその機能のために大人数が乗れない仕様になっている。逐一投入出来るようなものじゃないよ』

『一機とは限らないだろ?』

『そうかもしれないけど…あれは並の戦闘機よりも高くつくんだ。F35が20機も買えるほどの値段がある奴をそう鉄血が何個も買うかな?奴らの戦法は数でゴリ押すタイプだ。それだけの金を費やすぐらいなら安いRipperとかを大量生産するはずだ』

『となれば、ステルス性もあり大量の鉄血兵を輸送出来る兵器…それでいて輸送機以外…そんなものがあるのか。…いや、一つだけある』

『君もそう思ったか。輸送機以外ならあれしかないだろうね』

フライオフィサーが景気とキャノピーの外を交互に見ながら話していると突如として体が座席に押し込まれる。

『「どうしたんだアフターバーナーなんか使って』」

『「見えなかったのか?今、前方で何か光った!』」

『何色だった?』

『「何色だった?」

「オレンジだ、今も光り続けてる』」

『「…これは照明弾の光にも見えるな。いや待ってくれ、何か黒い物体が見えないかい?』」

『「あぁ俺にも見える。ますます確認しなくちゃいけないな…行くぞ』」

亡霊が積むJ79-GE(IHI)-17エンジンが唸る音はM4達の耳にも聞こえた。

そして空がオレンジ色の光に染まっているのも彼女達の目に入った。そして空の一部がオレンジ色の光に染まっているのも彼女達の目に入った。

「…M4、あの光は照明弾に見えるが誰が撃ったんだ?」

「SOPやバトーさん達…でしょうか。しかし何のために」

「いや、あいつらは撃ってないと思う。光っているのが基地の真上じゃなくて少し後ろにずれているからな」

「でもあの位置に味方はいないはずです。みんなそれぞれ指定されたLZにもう到着するはずなのに…」

「分からんが鉄血が使った可能性もある…しかし奴らこれまでそんなものは使ってこなかったんだがな」

話していると呼び出し音が鳴った。

 

『…爆撃機、ですか』

『そうだ、ステルス性を持ち大量の物体を搭載可能な兵器は現段階では爆撃機しかない。…信じ難い話だが』

『爆撃機をどうにかしないといけないですね…』

『そこは俺たちの仕事だ。ヘリはどうなっている?』

『3機ともLZまで3分といったところです』

『了解した』

通信を切り目の前を見るとそこは目的地である基地だった。少し安堵するとM4の耳に彼女を呼ぶ声が聞えた。その声がした場所を探していると手を振っている2人が目に入った。

バトーとSOPが屋上にいることを確認したM4は武器を持つ手が強く握りすぎたことに気が付いた。ほんの少し力を抜き基地の中に入ろうとすると呼び出し音が鳴った

『待ってくれ、ドアに細工を施してあるんだ。』

解除されるまでの間、M4は他の部隊との連絡をしなくてはいけないことに気づいた

『こちらはM4です。今から重要な報告があります。』

M4はこれまでホークアイと話したことを伝えた。そして交戦はなるべく避けやむを得ず交戦する時も止まって行うのではなくその場から離れるように引き撃ちを守って交戦して欲しいことを伝えた

『報告は以上になります。次に皆さんの現在位置と状況の報告をお願いします』

『こちら川崎、LZまであと2km。李指揮官の部隊と合流しました』

『そういうわけです。こちらはスオミ、どうにか敵と交戦せずにここまで来られました。それといいニュースです。李指揮官の意識が回復しました。指揮官に交代しましょうか?』

『よろしくお願い』

了解、とスオミが言うとガサゴソと音が聞え、男の声が聞こえてくる

『M4、李だ。頭が割れるように痛ぇが何とか無事だ。と言ってもついさっき起きたばかりなんでな。状況はスオミに教えてもらったが指揮を執れるような状況じゃない、おまけに人形におぶってもらっているとはいえ足の折れた新人と一緒だ。2kmだがまだ時間がかかるとは思う。』

『こちらはギソーニ、あともう少しでLZに到着する。運のいいことにあれから一度も交戦していない。』

『分かりました。繰り返し伝えますが交戦は避けるようにお願いします。とにかく足を止めないことを意識してLZまで移動してください』

通信を切ると、目の前にある扉からノックする音が聞えた。どうやらバトーが罠の解除を済ませたようだ

「待たせたな」

「…お二人は」

「無事だ。何とかな。あのスホーイがいなければやばかったが…」

「少佐はどうなんです?」

「…死んではいない」

「そこまでマズい状況ですか」

「とりあえず来てくれ」

そう言うとバトーは手を振り案内し始めた。どうやら少佐たちがデストロイヤーと戦闘した司令室に行くようだ

「少佐はこの中にいる」

ドアを開けてもらうと目の前に見えたのは誰かの上着をかぶせられ仰向けに寝ている少佐の姿だった

「…少佐、私です。M4A1です」

しかし彼女は何も答えてくれない

「この上着は…」

「俺がかけたんだ」

「これをどけても?」

「いいぜ。…ただし覚悟しておけよ」

M4が上着をどかすとそこにはおびただしい数の“棘”としか言いようのない何かが刺さっていた。そして彼女の腕は両方とも無くなっておりよく見ると彼女の体から血がにじみ出ていた

「両腕の欠損に大量出血ですか…これは酷い」

「これでもSOPと俺が持っているサバイバルキットに人工皮膚用の止血剤やら人工皮膚膜使って止血は出来たんだ。だがこの出血量はいくら全身義体化とはいえマズい」

「実際、意識がもうないみたいです」

「あぁ…だがこれ以上は俺たちじゃどうしようもない。後はヘリが来るのを待つしかないんだ…」

「…ちょっと待ってください。デストロイヤーはどうしたんですか?」

「ん、俺が少佐の応急処置をしている時にはモニターの前でくたばっていたはずだが…」

バトーは視線をモニターの方に向けるがそこには何も存在していなかった。たちまち彼の眉間にしわが寄る

「くそっ、まだ生きてたか。何処に行きやがった…そもそも動けるような体じゃなかったはずだ」

彼が見たデストロイヤーの姿は右足と右手首を欠損した状態だった。

そんな体で動けるのは不可能だ、だからバトーは今までデストロイヤーの存在を気にかけていなかったのである。

『SOP、俺だ。デストロイヤーが逃げた可能性がある。至急基地内を捜索してくれ。俺も探しに行く』

通信を終えるとバトーはM4の方を向いた

「悪いが少佐を頼んだ。お前の部隊の部下も2人ほど借りるぞ」

「その必要はない」

突如、彼らの後方から聞き覚えのある幼い女の声が聞えた。聞く者を苛立たせるその声を忘れるわけがない。無意識の内に銃を握り後ろを振り向くとトリガーにかかる力がさらに強まった

「…デストロイヤー」

「お前、何処から…いやそんなことはどうでもいい。芋虫のように這いずり回って逃げようと思ったのか?馬鹿な野郎だ…」

バトーはセブロの銃口をゆっくりと真下にいるデストロイヤーの頭に向ける。引き金を引けば間違いなくとどめを刺すことが出来るだろう

「待て」

「なんだ命乞いか、もう遅いぜ」

『そうじゃない、待てと言っているんだ。』

「何…!こいつ電脳通信を…俺の脳に侵入しやがった!」

『M4、私だ。こんな姿だが草薙素子だ』

「私にも通信が…自分が草薙素子だって」

「少佐だと…だが俺たちの電脳通信のパスを知ってるのはグリフィンの人間ぐらいしかいねぇ、それにグリフィンの人間じゃない俺のパスなんざ限られた人間しかいないはずだ。…確証が欲しい」

一瞬考えこむ表情を見せ、真顔になったと思うとデストロイヤーが口を開いた

「…タチコマだ」

その言葉にM4は聞き覚えがなかった。彼女がバトーを見ると表情一つも変えず黙り込んだままだった。

「…お前が飼っていたのはバセット・ハウンド…名前はガブリエルだったか。」

「驚いたな、コイツは間違いなく少佐だ。9課の人間しか知らねぇことを知ってやがる」

「しかしバトーさんの頭の中を覗かれた可能性があります」

「いや、覗かれた時の特有の違和感がなかった。…信じがたいがこのデストロイヤーは少佐としか思えん」

「…説明させてもらってもいいか?」

デストロイヤー…否、草薙素子が口を開いた

「…端的に言おう。今の私は電脳錠を経由してこいつにダイブし無理やり動かしている状態だ」

「じゃああそこで上着をかけられているのは…」

「抜け殻のようなものだ。しかしダイブした私は永遠とこいつの頭の中にいられるわけじゃない。義体のエネルギーが切れて電脳が腐れば私も死ぬ。そこでだ私の体を死なせないために一つの方法を思いついた」

そう言うと素子は服と肌の隙間から一本の細いチューブを取り出した

「オイルで動く鉄血兵とは異なりハイエンドモデルは人工血液で動いているらしい。人工血液ってのはある目的のためにそう種類は多くない」

「ある目的…輸血か」

「そうだ、このチューブを使ってこの体と私の体で輸血を行う。」

「ちょっと待てよ。得体の知れない鉄血の血を使うよりも俺の血液を使え。同じ種類のはずだ」

「気持ちはありがたいが義体、特にお前のような義体から輸血してもらうにはここにある道具じゃ無理だ。…やるしかない」

素子はチューブをM4に渡しそこでM4のインカムに通信が入った。

『こちらヘルメス、LZに到着。これより着陸態勢に入る』

『了解』

『ヌート、テュールは人足先にLZに到着して現在、隊員を乗車させているところだ。もうすぐ帰れるぜ』

『了解、ヘルメスさん。最後まで気を抜かないようにお願いします』

通信を切ると素子はM4は素子からチューブをに渡されバトーにこの体を自身の体に近づけるように頼んだ

「今からやるのはおおよそまともな輸血とは言い難い荒療治だ。…では説明するぞ。」

「まず。M4は私の右手に巻かれている布切れを取ってくれ。そうすると血が噴き出すはずだから切断面にこのチューブをねじ込むんだ。それと同じタイミングでバトーは私の体に止血処置を施したところを取り除いてくれ。そして露出した切断面にチューブのもう片方をねじ込む。これだけだ、理解したか?」

「…了解」

「分かった。だがよ、こいつは激痛なんてもんじゃねぇぞ。ハイエンドモデルに痛覚があるのかは分からないが…」

「覚悟は出来ている。ただ」

「何だ」

「バトー、お前ハンカチ持ってるか?」

「持っている」

「すまないがそれを畳んでくれないか」

「…お前のやりたいことは分かった」

そう言うと素子は口を開けたのでバトーは畳んだハンカチを挟んであげた

「行くぞM4、準備はいいか」

「いつでも出来ます。少佐、行きますよ」

頷いたのを合図にM4は手首に巻かれた布切れをほどき、バトーはナイフを使い治療した箇所に切れ込みを入れた。瞬間、両方の体から血が噴き出しM4は一瞬ひるむが意を決してチューブを切断面にねじ込む。途端に素子からくぐもった声が聞こえてくる。それを気にしながら深く、深くねじ込んでいく。チューブがニュルニュルと人工筋肉をかき分けて入る感触に若干の嫌悪感を覚えながらもある地点でチューブから血液が飛び出るようになった。そしてチューブの先端をバトーに渡す。彼は表情を一つも変えることなく確実にチューブを切断面に挿入し人工血液がデストロイヤーから素子へ滞りなく送られるようになった。

切断面を露出させチューブを挿入しもう片方を渡す。文章に表せばたったそれだけの動作であるのにM4は思わず座り込んだしまった。

「大丈夫か?」

「平気です、ただ少し力を入れすぎちゃって…」

「お前の表情凄かったぞ、このまま少佐を殺すんじゃないかと思うほど鬼気迫るものがあった」

「…人がまさに死にかけているのによくそんなジョークが言えるな」

息も絶え絶えの状態で素子はハンカチをバトーに向けて投げた。ハンカチには歯型がくっきりと付いており彼女の顔を見ると少しやつれているようにも見えた。

「こっちの体の血液が少なくなっていくのを感じる、輸血はなんとか成功したみたいだな…」

「基地に戻るまでは持ちそうだな。さてと、あとはヘリに乗るだけだ。少佐を丁重に運ぶぞM4。…そうだSOPを呼び戻さねぇとな」

バトーがSOPを呼び出す間、M4は自分の部隊の仲間を集め、仲間たちにデストロイヤーの体と素子の義体を運ばせるように指示を出した。それぞれの頭と足を持ち運ぶ準備が整うとSOPが部屋の中に入ってくる

「…M4!バトーさん!どうしたのこんな血だらけで!」

SOPに言われ自分の体を見てみると服にべったりと人工血液がついていた。もしやと思い顔をグローブで拭ってみるとやはりグローブに付着した。よく見るとバトーもまた至る所に付着していた。

事情を知らないSOPから見ればM4やバトーが倒した筈のデストロイヤーによって傷つけられたと見てしまうだろう。M4はこの誤解は早く解くべきだろうと思い軽く説明した

「じゃあ後は帰るだけか…」

「そう、だけど私は一度自分の体の中に入るわ。輸血でエネルギーを補充しているとはいえ。消費はできる限り抑えておきたいから…」

そういい終わるとデストロイヤーは糸が切れた人形のようになった。

「では皆さん、屋上に行きましょう」

そう時間もかからずにLZに到着した一同はヘリコプターに乗り込んだ。素子を床に置きデストロイヤーを座席の上に乗せ重力に任せ血液が安定して送られるようにした。チューブの根本を掴み、量を調整しつつM4は他に部隊に連絡をするために通信機を操作した

『こちらM4、現在我々はヘリコプターに乗りホットゾーンを離脱します。皆さんはどうですか?』

『こちら李、俺たちもヘリに乗った。川崎指揮官もちゃんと乗ったぜ』

『ギソーニだ。今、LZに到着しこれからヘリに乗るところだ』

『了解、あともう少しです。必ず全員で帰還しましょう』

通信を切るとエンジンやローターが回る音が聞えた。もうすぐ離陸するとヘルメスが知らせてくれた。

(少佐も今の所は無事、とはいえトグサさんの部隊の人形は2人が本体までも破壊されてしまった…全員を守ることは出来なかった…)

それでも破壊されたのはジュピターによる砲撃という完全予想外の攻撃であり、それを考慮にして動けば何も出来ないことはM4も理解している。そして破壊された人形は基地に帰りメンタルモデルを新たな素体にインストールすれば復活することも理解している。しかしM4はそれには懐疑的な目で見ていた。メンタルモデルはPCのように常にバックアップが取られているわけではない。衛星をリンクして基地のコンピューターへ保存される方法が提案されることもあったがIOPはデータがハッキングされることを恐れ基地内のオフラインのコンピューターのみ保存を行うという極めてアナクロな方法を提案しそれは採用された。

つまり復活した戦術人形はこの戦いで得られたデータを備わっていない。それをかつてコミュニケーションを取った人形と同じと見なすことはM4にとって強烈な違和感を覚えるものだった。

しかしそう考えるのはごく少数であり多くの人形、人間は“復活”と捉えコピーされた一種のクローンと捉えていない。だから時々、AR小隊のメンバーはバックアップを取ることが出来ないということに恐怖と同時にありがたさを感じる時がある。

(もしも姉さんが死んだとして、バックアップしたメンタルを載せた人形が私を妹扱いした時、私はそれを姉さんと呼ぶことが出来るのだろうか…)

とそんな思考をしている自分にまだ基地に着いたわけでもないのに戦闘と関係ないことを考えている場合ではないと呆れ、首を振りまだここが戦場であることを自覚しろと電脳に命令した。

チューブを握る力を調整しながら窓の外にヘリコプターが飛んでいるのが見えた、反対側の窓にも同じものが見えたので恐らく合流を果たしたのだろう。そういえば例の爆撃機がどうなったのかと思いM4はホークアイに連絡を取ることにしたその時、SOPが突然叫んだ

「上から何か来る!」

「上って何だ!?」

M16は扉から身を乗り出し上を見ると確かに人型の形をした何かが見えた。全体的に茶色く、戦術人形とは異なり全身を装甲で覆われたそれはほんの少し前にM16も見たものだった

「あれはEagesかよ!畜生、何でこんな所に」

Eagesはその言葉に反応するかのように動き出しそのカメラアイがM16を捉えた。だがそれを彼女は気にも留めなかった。なぜならばその上にも何体ものEagesが見えたからだ

「おいおい冗談きついぞ。よりにもよってこんなタイミングで投下された鉄血兵とかち合うのかよ」

「ドアガンじゃ上空の敵はやれない!私がやる!誰か足抑えていて!」

そういうとSOPは床に寝ころび上半身の一部を機外へ出したので慌ててM4が足をしっかりと握る

「…よし、この榴弾で」

銃を構えたEagesに攻撃しようとSOPは照準を定めるが、その銃口の先にはローターがありこれでは攻撃は不可能だ。しかし無情にも敵はヘリコプターに向けて引き金を引こうと指に力を入れた。万事休す。だがその時、突如として眩い光が見えたかと思うとEagesは消えてしまった。

まさか、攻撃もせずそのまま落下したのかと考えるがM4が地面の方を見ても何もいない

そして上空が明るくなったと思い顔をあげるともう一体いたはずのEagesが消えていた。

さらにもう一度光るともう一体が消えた。なんだこの状況は、M4はただ困惑していた。光の後には少し焦げのような匂いを残しそこにいたはずの敵が最初からいなかったように消えてしまった。敵はワープしてしまったのではないかと非現実的な考えが浮かび上がるほどに不思議な現状を目の当たりにしていた。ただその状況に呆然としているとインカムに呼び出し音が聞えた。

『こちらホークアイ、勝手ながら援護させてもらった。我々は今、君たちの近くに来ている』

そう言えば遠くから轟音が聞える。そう思いコクピットの窓を見ると遠くに双尾翼の戦闘機がこちらを向って飛んでいるのが見えた。そして目を凝らして戦闘機を観察するとお皿のようなものが乗っている

「野郎、ぶつかるつもりか!?」

ヘルメスがスティックを握り回避行動をとろうとすると前方の戦闘機は右に傾き腹を見せ下降しながら向きを180度変え双発ノズルを見せた。

『部下が君たちのヘリの援護を行う。周囲を見渡してみろ』

M4が見渡すと他のヘリの近くに多種多様な戦闘機がそれぞれ付いていた。ヘリが戦闘機に囲まれているという異様な光景であったが

『M4A1、状況はどうだ?』

『よくはありませんね、負傷者多数。内数名は重症です』

『…それならば我々の基地に来ないか?君たちの基地よりも近くにある』

『しかし…』

『信用できないのは十分承知している。だが我々はグリフィンと手を結んだ組織だ。我々の基地は君たちに劣らない医療施設を有している。どうだ、来てくれないか?』

M4は考えた、確かにいきなり現われ戦闘機で支援を行うというこれまで目にしたこともない組織をそう簡単には信用できない。そんな組織が存在していたこともましてやグリフィンと手を結んだことも知らない。だが仮に我々を罠にはめ抹殺することが目的なのであればその戦闘機の対地攻撃によって速攻終わらせてしまえばいい話である。それに仮に敵対組織であれば我々を護衛するという目的でグリフィンの基地までついていき基地を破壊するほうが良いだろう。そうもせず我々を助け、自分達の組織の基地に案内するというのは果たして敵対組織がすることだろうか?M4は確証を得たわけではない。しかし重傷者が多い現状、敵対組織が取り得る行動ではないということを合わせて判断し、信頼してもいいのではないかという結論に至った。

『分かりました。貴方方を信用します。基地までの案内をお願い致します。』

『了解した。ではエスコートさせていただく』

 

 

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